141 リンパ球増多が診断の契機となった慢性 NK 細胞性リンパ増殖性疾患の 1 例 ◎荒金 裕貴 1)、森 真美 1)、榎木 雄美子 1)、川口 正彦 1) 一般財団法人 住友病院 診療技術部 臨床検査技術科 1) 【はじめに】慢性 NK 細胞性リンパ増殖性疾患(以下 と推定された.B-Cell 系マーカーの CD10,CD19,CD20 は全 CLPD-NK)は増殖細胞のクローン性が確定していない境 て陰性であり,慢性リンパ性白血病は否定的であった. 界疾患として 2008 年 WHO 分類において暫定疾患として 【経過】除外診断としてあがる NK 細胞白血病,NK 細胞リ 採用された.定義は末梢血 NK 細胞の持続的(6 カ月以上)な ンパ腫も臨床所見より否定され,経過観察にて 6 カ月以上 増加(>2000/µL)である.症例報告はほとんどなく,現状では のリンパ球増多の持続も確認された為 CLPD-NK と診断さ 診断されることは稀であると考えられる.我々は成人の末 れた.診断時より症状はなく,無治療経過観察となっている. 梢血液でのリンパ球増多に着目し,異常を疑った場合臨床 【まとめ】無症状で緩徐な経過を示す慢性リンパ球増多症 医に精査を促す取り組みを行っている.今回その中で本疾 を疑った場合,通常は慢性リンパ性白血病を想定するが,本 患の診断に至った症例を経験したので報告する. 症例のように CLPD-NK という稀な疾患も潜んでいる可能 【症例】60 歳代 男性 性がある.リンパ球増多とリンパ球形態異常を総合的に判 【現病歴】PSA 高値の為,精査目的で当院泌尿器科を受診. 断して,適切に細胞表面マーカー検査を実施することが診 生検前の血液検査にてリンパ球が増多(>4000/µL)してお 断に繋がる.今回検査室がリンパ球数増多に加えて顆粒リ り又末梢血液像において顆粒を有するリンパ球を認めた為 ンパ球の出現を捉え,臨床へコンサルトした事で,CLPD- 精査目的で血液内科へ紹介された. NK の診断に寄与できた.本疾患は一部の血球減少の進行例 【検査所見】WBC 6900/µL(Ly62.5%),Hb 14.0g/dL 反復する感染症の併存症例は予後が不良といわれているが PLT 抗体 陰性 末梢血細胞表面マーカー検査での CD16 , CD56 陽性細胞 不明な点も多い.可能な限り見逃さず診断していくことで, からリンパ球の約 70%が NK 細胞でその絶対数は 2635/µL 連絡先:06-6443-1261 213×103/µL,IL2-R367U/mL,HTLV-1 症例が蓄積され病態が明らかになっていくと思われる.
© Copyright 2024 ExpyDoc