研究会抄録 岩田良子先生

当院における CESM の現在の実績と今後の展望
国立がん研究センター東病院
子 1) 佐竹光夫 1)
2)
放射線診断科 1)
和田徳昭 2)
乳腺外科 2)
岩田良
臨床腫瘍部 3)
米山公康 2) 山内稚佐子 3) 久野博文 1)
康祐紀子
藤井誠志 3)
当科乳癌術前画像カンファレンスにおいてマンモグラフィ(MX)で病変が指摘できな
い、あるいは比較的不明瞭と考えられた症例に対し、2011 年 6 月から 2014 年 2 月まで
に CESM を 100 例施行した。内訳は浸潤癌 85 例(乳頭腺管癌 27 例、充実腺管癌 12 例、
硬癌 31 例、その他 15 例)
、非浸潤癌は DCIS のみで 14 例である。装置トラブルが 1 例
あった。主病変以外に浸潤癌または非浸潤癌が存在した症例は、同側・対側を含め 11
例であった。数例をのぞき MRI を施行している。
前半の 44 例 48 病変で描出能を検討した。検出能は MX30/48(62.5%)、
CESM46/48(95.8%)であり、CESM のみで病変を指摘できたのは 16 病変(16/48
33.3%)
であった。MX でカテゴリー3 の石灰化のみで腫瘤性病変を指摘できない症例は 9 病変だ
った。CESM により病変の検出は向上した。48 病変でカテゴリーも検討した<上記はカ
テゴリー1(MX)→3or4(CESM)が 16 病変ということになる>。カテゴリー3(MX)→4(CESM)
は 25(25/48
52.1%)病変であった。そのうち、MX でカテゴリー3 の石灰化のみの病変
が CESM でカテゴリー3or4 の腫瘤であった病変は 9 病変であった。CESM により病変の
描出も格段に向上した。
病理組織で病変長径が測定された、断端陰性の浸潤性乳管癌 38 症例で病変長径を検
討した。病理組織で病変長径は平均 18.8mm(7~36mm), CESM では 16.5mm, MRI で 16.3mm
であった。CESM で病理組織より小さく計測された病変は 18 病変で平均-8.9mm(-4~
-22mm), MRI では 18 病変で平均-9.0mm(-3~-19mm), CESM で病理組織より大きく計測さ
れた病変は 17 病変で平均 4.5mm(1~25mm), MRI では 17 病変で平均 5.6mm(1~38mm)で
あった。病変長径測定において、CESM は MRI に近い好成績であった。断端陰性という、
比較的限局した病変であったためと思われる。厳密に乳管内進展を同定する必要のある
症例では MRI が必須であるが、全摘、あるいは放射線照射で対応する症例では CESM で
きる可能性が示唆された。
CESM は簡便、迅速、比較的安価に行え、MX のみが描出可能である微細な石灰化に加
えて、腫瘤性病変の描出を格段に向上させる。症例を重ね、使い方や適応をよく検討し、
MX に情報を追加する方法として積極的に活用されることが望ましいと考える。