平成26年度 第2学期 終業式 12 月 22 日(月) 「Every wall is a 飯塚 door.」 この秋、ボートを2艇購入しました。名前を付けてくれと頼まれ、「蒼穹」と「 昴」と命名しま した。「蒼穹」は「大空・青空」。「昴」は「星座」ですね。合わせて、『蒼穹の昴』(大空に輝くスバ ル)です。 そうきゅう すばる これは、 浅田次郎という小説家の『蒼 穹の 昴あらが 』という小説をもとにしました。中国の清時代を 舞台に、考えられない逆境を乗り越え、運命に 抗 って生きる少年を描いたこの小説のテーマは、 「勇気と希望」です。浅田さんが語るには、逆境を生き抜くには、希望が必要。しかし、勇気の ないところには希望はない。勇気と希望は表裏一体。 希望だけ持って、頑張る勇気を持っていないと、まわりへの不平や不満ばかり持つようにな ばんゆう る。勇気だけ持っていて、何の希望も持っていなければ、乱暴な勇気、蛮勇。まわりに迷惑を かけるだけになります。勇気と希望のどちらか一方だけではだめ。勇気と希望を表裏一体のも のとして、自分の心の中に持つことが大事と言っています。 今日は、皆さんに、「勇気」や「希望」について考えてもらいたく、次の言葉を紹介したい。 「Every wall is a door.」 これを訳してみて下さい。「wall」はW・A・L・L。壁です。 エマーソン(アメリカの思想家・詩人 1803 ~ 1882)という人の言葉といわれ、私は数年前に出 会いました。 直訳すれば、「全ての壁は扉である」。どんな意味でしょう? 人生という長い道のりの中では、遅かれ早かれ、誰もが大きな壁にぶつかります。その壁を前に、 悩んだり苦しんだりします。「壁を乗り越えろ」と言うけれど、簡単に乗り越えられないから壁なん ですね。では、大きな壁を前にしたとき、どうすればよいか。 げん だ ゆう じ 「希望学」という学問を唱える松江市出身の東京大学教授の玄田有史さんは、 「大きな壁にぶつかったときに、大切なことはただ一つ。壁の前でちゃんとウロウロしていること。ちゃ んとウロウロしていれば、だいたい大丈夫」と書いています。(『希望のつくり方』) ちゃんとウロウロするというのは、とにかく立ち止まらずに粘ってやってみるということですね。 スマートに簡単にはいかないから、ウロウロと表現しているのだと思います。 ちゃんとウロウロしていると、壁の下に小さな穴が見つかって、それを掘っていくとトンネルにな って抜けられるかもしれない。あるいは壁に小さなドアが見つかって、そのドアを開ける魔法の鍵が ふとしたことで見つかるかもしれない。ひょっとしたら、壁のように見えていたものが階段のように 斜めになって、少しずつその階段を昇っていけば越えられるかもしれない。また、ウロウロしている うちに、空からヘリコプターらしきものが飛んできて、たらしてくれたロープに必死でつかまれば、 壁の向こうに連れて行ってくれるかもしれない。 大事なことは、今もこれからも、君たちはどうしても壁にぶつかる。ただその壁の前でちゃんとウ ロウロする粘り強さやあきらめない、しぶとい姿勢を身に付けることだと思うのです。 「Every wall is a door.」 「全ての壁は扉である。」英語的な言い回しですが、<壁と見えるものも、実は扉。越えられない壁は ない。>そして、<壁を越えれば、新しい世界が待っている。壁は扉なんだ>と考えれば、壁の向こうに 希望があり、立ち向かう勇気が増してくるのではないでしょうか。 壁を壁と思ってあきらめず、扉だと思って扉を開ける鍵を見つける、壁の前でちゃんとウロウロすることが 大事だというのは、英語の世界でも一緒なんですね。 3年生、君たちの前に立ちはだかっている、受験という大きな「壁」は未来への「扉」です。 最後まで、壁の前で本気でウロウロするしぶとい姿を、しっかり見せて欲しい。 1,2年生も、自分なりのそれぞれの壁の前で、ちゃんとウロウロして欲しい。 みなさんが、新年を、勇気と希望を持って迎えることを願っています。
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