講義資料

第7章
財政・金融政策とマクロ経済
11月14日(金) 1 限目
7.7-2. 金融政策と有効需要
金融政策の本質は、利子率を「てこ」として、投資を刺激したり抑制
したりすること
⇒ 金融緩和を例に見ていく
B
貨幣量
増大
C
利子率
低下
D
投資増大
生産・所得
増加
A
Step A: マネーサプライの増大
・ 買いオペレーション
・ 法定預金準備率の引き下げ
Step B: 利子率の低下
Step C: 投資の刺激
Step D: (乗数メカニズムによる)経済全体
の生産と所得の増大
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7.7-2. 金融政策と有効需要
Step B と C は、金融政策の効果の大きさに影響を与える。
Step B: 貨幣量の増大が利子率を大幅に引き下げるほど
Step C: 投資が利子率低下に敏感に反応するほど
⇒ 金融政策の効果は大きくなる!
⇒ 金融政策が実際に働くかどうかは、この2つの条件がどの
態度満たされているかに大きく依存する
<Step B>
どのような状況の時、利子率は貨幣の増大に対して敏感に
反応して低下するのか?
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Md: 貨幣需要曲線
Ms: 貨幣供給曲線
7.7-2. 金融政策と有効需要
金利
(r)
r1
Md
Ms
金利
(r) Md
Ms’
E
Ms
Ms’
E
E’
r2
E’
r3
Ms
Ms’
貨幣需給量
(Md, Ms)
① 貨幣需要が利子率にあまり
反応しないケース
Ms
Ms’
貨幣需給量
(Md, Ms)
② 貨幣需要が利子率に敏感に
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反応するケース
7.7-2. 金融政策と有効需要
貨幣供給量が Ms から Ms’ へ増加したとする。
② 貨幣需要曲線の “傾きがゆるやか“
⇒ 利子率はほとんど下がらない
⇒ 金融政策の効果は弱い
① 貨幣需要曲線の “傾きが急”
⇒ 利子率は大幅に下がる
⇒ 金融政策の効果は大きい
流動性のわな(Liquidity trap):
貨幣需要曲線が“水平”
⇒ 利子率に変化なし
⇒ 金融政策は効果なし
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7.7-2. 金融政策と有効需要
<Step C>
投資の利子率に対する反応について
一般的には、利子率の低下は、投資資金を借り入れる際の
利子コストの低下を意味するため、投資は増加するはず
⇒ 企業の投資意欲の大きさに依存する
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7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
前節では、金融政策を扱った
⇒ 財政政策もマクロ政策の重要な柱
第3章の乗数分析では・・・
財政支出の増大
⇒
その乗数倍の生産や所得の増大
⇒ 資産市場との関連を考慮すると、修正が必要になる!
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7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
GDP増大
“財市場”
政府支出増大
(財政拡張)
“資産市場”
乗数プロセス
投資抑制
(クラウディング・アウト)
GDP の減少
貨幣需要増大
利子率上昇
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7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
財政支出増大の波及経路
財政支出
増大
A
GDP
増大
B
貨幣需要
増大
C
利子率
上昇
D
投資
減少
E
乗数プロセス
Step A: 財政支出増大によるGDP up
Step B: 貨幣需要 up
GDP
減少
Step C: 利子率 up
Step D: (利子率 up)による投資 down
Step E: GDP down
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7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
Step A
⇒
GDP の増大
Step B ~ E
⇒
GDP の減少
利子率 up
⇒
投資 down
⇒
GDP down
<クラウディング・アウト効果>
⇒ 政府支出の増大が、利子率を引き上げることを通じて
民間投資の一部を「押しのける(crowd out)」。
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7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
Step B:
所得 up が貨幣需要に及ぼす影響が大きいほど
Step C:
貨幣需要 up が利子率を引き上げる効果が大きいほど
Step D:
利子率の変化に対して、投資が敏感であるほど
⇒ クラウディング・アウト効果は大きい!
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Md: 貨幣需要曲線
Ms: 貨幣供給曲線
7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
金利
(r)
金利
(r)
Ms
Md‘
Md
Ms
Md‘
E’
r3
Md
r2
E’
E
r1
Ms
E
貨幣需給量
(Md, Ms)
① 貨幣需要が利子率に敏感に
反応するケース
Ms
貨幣需給量
(Md, Ms)
② 貨幣需要が利子率にあまり
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反応しないケース
7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
① 貨幣需要曲線の傾きが“ゆるやか”
⇒ 財政政策の効果は大きい
② 貨幣需要曲線の傾きが“急”
⇒ 財政政策の効果は小さい
金融政策の効果が大きいのは・・・
・ 貨幣需要が利子率にあまり反応しない
⇒ 貨幣需要曲線の傾きが“急”
⇒ 財政政策とは逆!
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7.7-3. 財政政策とクラウディング・アウト効果
まとめ
金融政策が有効であるためには、利子率が動いて、投資
が刺激されなくてはならないが、財政政策においては、利子
率や投資の変化は政策の阻害要因でしかない。
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