【異文化言語評価論】冬期課題 2014/02/08 MH Chapter 8 Activities 8.1 Standards in context ■ あなたが働いている、もしくは馴染みのある会社や組織を考えましょう。そして、そこで勤務するにあたっての (1) クラス分け、(2) それを判定するテストまたは評価、そして、(3) 各クラスの standards をリストしてみましょ う。 (例): カフェの店員 Classification decisions Test or assessment ①ドリンク知識プロフェッショナ ②コーヒー等のドリンクに関する ① ル 知識のテスト ・自分の店で扱っているドリンクの ②接客プロフェッショナル ②接客技術に関する実践的テスト 材料への十分な知識があること。 ③ドリンク・料理技術プロフェッシ ③ドリンクを作る技術のテスト ・最適な飲み方を解説できること。 ョナル Standards ② ・正しい言葉遣いが可能であるこ と。 ・カウンター、フロアでストレスを 感じさせることなく円滑に対応で きること。 ・客の趣味に合った会話を展開でき ること。 ③ ・過不足なく材料を用いてドリンク を作れること。 ・客の好みに応じて味を柔軟に調整 できること。 ■ 完成したものを周りの人と比べてみましょう。standards は何からきたものですか?standards は (業務の) タスク に適当ですか 8.2 Standards for our safety ■ 本書では飛行機のパイロットやメカニックなど、言語能力において達成すべき standards を定める必要がある職 業を紹介されました。このような職業は他に思いつきますか?いくつかをその理由とともにあげてみましょう。 →人気のある観光地のタクシー運転手 (理由) 乗客の行き先を聞き、おすすめの観光地を紹介できることが必要とされるから。特に人気の観光地は 海外からの客も多い。それぞれの L1 に逐一対応する必要はないが、英語で上記の接客ができる standards は 必要だと考える。 8.3 Language tests in economic and immigration policy ■ 移民が入国ビザを取得するために必要な言語能力 standards は経済的状況によって変化します。 ■ 移民をコントロールするのに、言語テストを利用することは倫理的ですか?周りの人と話し合い、他とシェアで きる意見を作りましょう。 →必ずしも倫理的とは言えない面があることは否定できない。例えば、現状のように、IELTS のバンドスコア を生活の有無を左右するスタンダードとして採用し続ければ、英語の支配的地位を強め、少数言語の存在を脅 かしかねない。しかしながら、移民として他国で生活する以上、渡航先で最低限のコミュニケーションをとれ ることは不可欠である。ゆえに、移民の帰化テストとしては言語以外のコミュニケーションテストを課すこと も検討すると良いのではないだろうか。 8.4 The big debate: who’s to blame ■ p. 251 の記事を読みましょう。 ■ 発表者注: インドのパンジャーブでは、オーストラリアへの永住権を求めて IELTS の高スコアを持っている女性と偽装 結婚する事案が多発しているという内容。IELTS スコアの高い女性が留学でオーストラリアに行くという建前に なっている。彼らは永住権が手に入ると離婚する。男性の家族にとって結婚や渡航に必要な経費は安くないが、 トータルで見ると双方に利益のある話しで、パンジャーブの人は誰もがリスクを犯してでも海外に行こうとす る。最後の段落では、この事案の手助けをする弁護士が「(IELTS 高スコアの女性さえいれば) 簡単に海外にい かせてあげますよ。 」と発言している。 ■ 次の内容について話し合いましょう。 (1) テストがもたらした想定外の結果の責任を誰かに問うことは順当 (reasonable) なことですか? 特定の人物にのみ責任を問うことは難しいと考える。大元をたどれば、インドの雇用状況が悪化している事実 や、帰化テストとして IELTS を採用することの妥当性、さらにインドの経済移民が十分な外国語教育を受けら れない現状に問題があると思うが、最終的には個々人が現状を見定め、法の範囲内で生きる自律的に生きる術 を模索するしかないのではないだろうか。 (2) Paper Marriage 産業の責任は誰にありますか? これも難しい問題だが、強いてあげるとすれば国と偽造結婚を支援する弁護士にあると考える。国には、渡航 しなければならない状況を改善したり、留学や渡航に関する条件を強化するよう働く必要がある。偽装結婚を 増長させる弁護士に関しては、倫理的な問題がまずあげられる。 (3) あなたなら、責任を負う人に対してどのような措置をとりますか? 例えば、偽装結婚の首謀者やそれを支援した弁護士にはしかるべき刑事罰をもって対処すべきである。 (4) どうすれば記事で述べられているようなことを止められますか? この問題は自・他国の経済、政治的問題も孕んだものであるので、付け焼き刃な対策では真の解決は望めない であろう。例えば、国策的な面では教育や雇用の機会を充実させることがあげられる。また移民のテストに関 して言えば、言語能力だけでなく、アメリカで採用されているような歴史、文化、政治的知識を要請する試験 を用いることも必要ではないだろうか。 8.5 Writing PLDs ■ 学術講義の聴解力に基づいて学習者を 3 つの熟達度群に分けることを想像しましょう。 →①上位群: 学術的な講義を受講できる→Advanced Class とする →②中位群: リスニングの授業ももう半期受講する必要があり、そして講義内容の準備プログラムを受講でき る→Intermediate Class と名付ける →③下位群: 語学のみの授業を受講しつづけることになる→Basic Class とする ・この 3 群の PLD (performance level descriptors) をラベルとともに作成しましょう。 (1) Advanced Class ・専門的な内容 (馴染みのない語彙・表現を含む) の講義を聞き、主題を正確に理解できる ・専門的な内容の講義を聞き、詳細情報 (i.e., 用語の定義、日時、数値等) を正確に把握できる ・専門的な内容に関する複数人による議論を聞き、議論の主題を正確に理解できる ・専門的な内容に関する複数人による議論を聞き、各人の主張を正確に把握できる (2) Intermediate Class ・繰り返しや、緩慢なペースの発話によるサポートがあれば、専門的な内容の講義を聞き、主題を概ね理解できる ・繰り返しや、緩慢なペースの発話によるサポートがあれば、専門的な内容の講義を聞き、詳細問題を概ね把握で きる ・繰り返しや、緩慢なペースの発話によるサポートがあれば、複数人による専門的な内容の議論を聞き、議論の理 解を概ね特定できる ・繰り返しや、緩慢なペースの発話によるサポートがあれば、複数人による専門的な内容の議論を聞き、各人の主 張を概ね把握できる (3) Basic Class ・平易な語彙・表現からなるスピーチや講義を聞き、主題を理解できる ・平易な語彙・表現からなるスピーチや講義を聞き、詳細情報を把握できる ・平易な語彙・表現からなる会話を聞き、主題を理解できる ・平易な語彙・表現からなる会話を聞き、詳細情報を把握できる 8.6 Evaluating standards ■ WIDA English language proficiency (ELP) standards が ど の よ う な も の か 説 明 し ま し ょ う (http://www.wida.us/standards/Resource_Guide_web.pdf)。 ・言語学習と当該州が定める学問上のスタンダードとを繋げることを目指し、米国での英語学習環境に合わせて作 成された言語熟達度の指標である。 ・対象の年代は幼稚園年中組 (prekindergarten) から 12 年生と幅広い。そのため、英語だけでなく、他科目 (e.g., 数 学、美術) での言語使用も考慮した内容となっている。 ・5 種類の standards が設定されている。これらは、米国における英語学習者が、学校教育環境下で必要を迫られる 言語使用に重点を置いたものである。具体的には (1) 社会的・指導的言語, (2) 国語の (language arts) 言語, (3) 数 学の言語, (4) 科学の言語, (5) 社会科学的言語の 5 つの standards が定められている。 ・また、言語熟達度に関しては 1 Entering から 6 Reaching までの 6 レベルが設定されている。それぞれに第二言語習 得論に基づく記述が用意されており、例えば最上位の 6 では「抽象的なアイディア、暗示的意味、親密性の低い 状況」を学習することとなっている。 →感想としては、広範な科目における言語熟達度や使用例、さらに can do リストが詳細に設定されており、非 常に精緻に設計された standards であるという印象を受けた。どの standards や熟達度レベルにおいても、SLA や 社会言語学、心理言語学等の研究知見を積極的に取り入れる姿勢を示している点に特に感銘を受けた。米国の英 語学習者は日本以上に多様な言語的・文化的背景を持つ者が多いと予想されるが、このような standards が上手く 機能しているのか、学校環境を越えた社会一般の文脈でどのような役割を果たしているかに注目したい。 ■ 他にもたくさんのテスト基準に関する文書や、standards-based テストがインターネット上で閲覧可能です。そこ で、検索エンジンを利用して standards-based テストや評価を 1 つ選び、以下の観点から簡単に評価してみま しょう。 New Mexico Standards-Based Assessment (NMSBA) (1) 目的 ・生徒 (3 年生〜8 年生) が、それぞれの学年で達成すべき学力やパフォーマンスの基準を決定すること。そして生 徒がそれらの基準を満たしているかを確かめること。 ・生徒の学力に対する通時的な観察、評価を実現すること。 ・さらに 11 年生に対しては、卒業に要する学力試験として活用されている。11 年生のうちに 3 度テストを受けるチ ャンスがある。 ベーシックな standards-based 評価だと考える。毎学年、望まれる学力がテストされることを習慣付けられれば、生 徒も卒業学年に向けての学習計画立てやすいだろうと考えた。だが、ニューメキシコ州の現状は生活、学力、医療 のどのレベルをとっても全米最下位レベルであり、この目標を達成するための予算を教育行政に割けないのが現状 である。 (2) デザイン ・読解、数学、科学、社会学の 4 分野を対象とする。 ・問題形式は多肢選択式、短文回答式、自由回答式の 3 種類。予算の問題により多肢選択式が多くを占める。 ・採点結果に基づき 4 つのレベル (beginning step, nearing proficiency, proficient, advanced) に分類され、目標は全ての 生徒に proficient 以上をとらせること。 無論、各学年に設定する学力レベルに依るが、全ての生徒に proficient 以上を期待するのはニューメキシコ州の現状 では難しいと感じた。現に web (http://www.ped.state.nm.us/AssessmentAccountability/AcademicGrowth/NMSBA.html) か らテスト結果を DL したところ、proficient 以上と評価された生徒は、どの分野においても全体の半数程度であった。 ニューメキシコ州はヨーロッバ、ヒスパニック、アフリカ、アジア、アメリカ、アラスカ等様々な系統の人々が暮 らす他民族的性質をもつ土地であり、全米で唯一スペイン語を第二公用語として認めている。このような背景から、 一様に学年ごとの standards や熟達度の benchmarks を設定することが困難であることも頷ける。ただ、複数種類の問 題形式を採用している点は、妥当性への努力として見習うべき点である。 (3) 潜在的な影響性 (意図的/ 偶発的のどちらも) NMSBA がニューメキシコ州に良い影響を与えるには何が必要だろうか。前述の通り、現状のニューメキシコ州に おける教育事情はあまり良いとは言えない。高校中退者が多く、学力テストの結果も全米最低クラスである。これ をさらに詳しくみると、人種間での教育不均衡が浮かび上がる。つまり、高校卒業以上の学位を修める割合は、ヨ ーロッパやアジア系に比べ、ネイティブ・アメリカンやヒスパニック系で低い傾向にあるのである。しかしながら、 全米一のニューメキシコ州は今後もヒスパニック系の移住が予測されており、これを無視しての教育行政は有り得 ないだろう。このことから、人種間の教育均等に資することが NMSBA の喫緊の課題として考えられる。そのため には、高等教育を受ける機会に恵まれてきたヨーロッパ、アジア系以外の人種の学問的ニーズを分析し、それに応 じた standards を設定する必要があるだろう。テキストで述べられていたような、特定の人々に不利な standards を定 めて移民の数を減らすのではなく、彼らの現実に適合し、将来に資する standards の設定が求められていると考える。
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