論 文 内 容 の 要 旨

(様式 3)
氏
名:前田亮
論文題名 :マイクロカロリーメータを用いたフ。ルトニウム同位体の高エネルギー分
解 能 LX線スペクトル計測に関する研究
区
分
甲
論文内容の要旨
使用済み核燃料再処理施設やウラン(U)・ブρルトニウム(Pu
)混合酸化物製造施設等の Pu を取り扱
う施設において, Puは放射線防護上の観点から高い精度で定量的に管理されなければならない。通
常の Puの定量管理では、 2
4
1
P
uの子孫核種である 241Amを化学分離した試料の α線 ス ベ ク ト ル 測 定
によって Pu同位体が分析される。この方法では煩雑な操作と 4 日程度の分析時間を必要とする。
さらに,放射される α線のエネルギーがほぼ等しいため, α線スベクトル測定で、は 2
3
9
P
uと 2
4
0
P
uは
, X線を放射するが、 α崩 壊 当 た り の y線と Kx
弁別できない。一方、 Pu同位体は α崩壊に伴い y線
線 の 放 射 率 は 0.05%程度と低いためスペクトル測定による同位体分析には適さない。しかしながら、
0keVから 22keVの領域の LX 線は、 5∼ 10%
程度の放射率で放射される。そこで、
エネルギーが 1
過 去 に α線分光分析と LX線分光分析を組み合わせた Pu同位体分析法が提案された。この方法で
は分析に正確な LX線放射率の数値が必要である。しかしながら、半導体検出器で測定された Lx
線スベクトルでは、各ピークの同定が不十分なため、 Pu同位体の分析に必要な精度の LX線 放 射 率
の値が得られていない。 LX線放射率の評価値を使用して Pu同位体の存在比を推定するためには、
LX線 ス ベ ク ト ル を 半 値 幅 50eV程度のエネルギ一分解能で、計測することが要求される。
近年,優れたエネノレギ一分解能を持つ X 線検出器として、超伝導相転移端温度計(TES)型マイク
ロカロリーメータが開発された。本研究では, Pu同位体から放射される LX線 に 対 し て 高 い 感 度 を
3
9
P
u線源, 2
3
s
P
u線 源 か ら 放 射 さ れ
有する TES型マイクロカロリーメータを用いて、 241Am線源, 2
る LX線のエネノレギースベクトルを計測し,半導体検出器では不可能で、あった各 LX線 ピ ー ク の 分
離を実証した。
以下に本論文の構成を記す。
第 l章では,本研究の背景と目的について述べた。
第 2章では, Pu同位体の基本的な性質と LX 線の放射特性について述べた。さらに、 LX 線 を 検
出する TES型マイクロカロリーメータの動作原理と、検出信号の読み出しに使用する超伝導量子干
渉素子増幅器について説明した。
第 3章では,本研究で使用した TES型マイクロカロリーメータによる LX 線 ス ペ ク ト ル 計 測 装 置
について述べた。従来のエネノレギー数 keV程度の X 線計測用 TES型マイクロカロリーメータは、
.
5μmの金吸収体を有感部とするため、プルトニウム同位体から放射される LX 線 に 対 す る 検
厚さ 0
出効率が低い。本研究では、 LX 線検出用に開発した厚さ 5μmの金吸収体を有感部とする TES型
0
0m K領 域 の
マイクロカロリーメータを使用した。液体ヘリウムが使用できない環境においても、 1
動作温度を安定に保持する冷凍機に TES型マイクロカロリーメータを取り付け、動作温度に冷却さ
れ た TESの特性を調べた。
第 4章では, TES型マイクロカロリーメータを用いた Pu同位体及び 241Am線源から放射される Lx
線のスペクトノレ計測実験について述べた。
なバイアス条件を決定した後,
241Am線源から放射される
LX線の検出実験により最適
LX線検出信号のパルス波高分布を取得し、個々の LX線が有する
エネルギー自然幅を考慮、してエネノレギースベクトルに変換した。得られたスベクトルでは、
1
7
.
7
5keVのピークに対して半値幅 4
7
.
6eVのエネルギ一分解能を達成し、このピークを解析して得
5
.
6
3士0.92%であり、文献値と比較可能な精度のデータが得られた。次に Pu
られた LX 線放射率は 1
同位体標準線源の使用が認められた施設において,
線のスベクトル計測実験を行った。
241Am 線源と
241Am 線源と
Pu同位体線源から放射される Lx
Pu同位体線源を同時に計測して得られた L X 線
2
.
6eVのエネノレギ一分解能で、あったが、
スベクトノレでは、ピーク半値幅 6
241Am と P
u同位体の弁別
が可能であることを初めて実証した。
第 5章では,有感領域を増加するために試作した 4個のピクセル配置 LX線検出用 TES型マイク
ロカロリーメータを用いて実施した, Pu同位体及び 241Am線源から放射される LX線スベクトル計
測実験について述べた。
241Am線源から放射される
LX線スベクトノレ計測で、は, 1
7
.
7
5keVのピーク
に対するエネルギ一分解能が半値幅 3
3
.
4eVへと向上した。この TES型マイクロカロリーメータを
用いて
241Am 線源と
Pu同位体線源から放射される LX線スベクトル測定実験を実施した。 241Am 線
源と Pu同位体線源の同時計測で得られた LX線スベクトルでは、ピーク半値幅 3
9
.
7eVと優れたエ
ネノレギ一分解能が得られ、
241Am と P
u同位体の高精度弁別分析に必要な明確なピークが得られた。
第 6章では,本論文のまとめと今後の課題,展望について示した。