電極表面を制御する電気化学実験の開発

電極表面を制御する
電極表面を制御する電気化学
する電気化学実験の開発
電気化学実験の開発
大西康幸
奈良工業高等専門学校 技術支援室
1. 緒言
電極反応は表面吸着過程を伴う電極触媒反応であるため電極表面の微量の不純物や反応中間体の吸着により活性サイ
トが消失する場合がある。この活性サイトを維持するには、不純物については電解による前処理により除去する対策を行
えばよいが、反応中間体の除去は通常の電解だけではその効果は望めない。
そこで、反応中間体の効果的な除去を目的とてアノード電位とカソード電位を制御する電位パルス電解について検討を行
ってきた。ここでは、電極材質に大きく依存している CO2 還元に着目し、カソード電位を CO2 還元が起こる電位付近に
設定し一定時間反応させ、その後被毒物質を電極から遠ざけるためアノード方向で酸化処理を行い反応中間体の除去を行
う。これを交互に繰り返す電位パルス電解により CO2 還元を行った結果を報告する(Figure 1, 2)
。
3. 実験
反応溶液は、0.5M KHCO3 を含む pH6.8 のリン酸塩緩衝溶液に CO2 を飽和したものを用いた。電極は、作用極に Cu 電
極(2mmφ×10mm)、対極に Pt 板電極(10mm×10mm)、参照極には sat. KCl Ag / AgCl を用いた。パルス幅とパルス電位
は、ポテンシオスタットとファンクションジェネレーターで制御し、記録計でパルス波形の確認を行った。電解により発
生した気体生成物は、ガスクロマトグラフで定性と定量を行った(Figure 3)
。
4. 結果と考察
4.1 定電位電解と電位パルス電解の比較
定電位電解では電極電位を-1.4V~-1.7V の間で一定に保ち、電位パルス電解ではアノード電位を 1.5V に固定してカソ
ード電位を-1.4V~-1.7V の間の一定電位に設定し CO2 還元を行った。
カソード電位とアノード電位のパルス幅は 10s で、トータルの反応時間は 30 分とした。定電位電解では、カソード電位
が卑な電位になるほど CO、CH4、H2 の生成量は増加を示した。電位パルス電解の場合も同様に生成量は増加を示したが、
H2 以外全ての電位において定電位電解より生成量が促進された。これは、電位パルスの印加により電極の反応中間体に
よる被毒が抑えられ、電極の触媒活性が維持されながら CO2 還元が進行しためと考えられる(Figure 4)
。
Upper-limit potential
for pretreatment of electrode
Electrode
CO2,
H2O
Reduction
(Metal)ad,
(Intermediate)ad
Oxidation
(Metal)n+,
(Intermediate)bulk
CO, H.C.,
H2
Lower-limit potential
for pretreatment of electrode
Figure 1. Principle of pulse electrolysis.
4.2 カソード電位のパルス幅の
カソード電位のパルス幅の検討
のパルス幅の検討
カソード電位を-1.5V、アノード電位を 1.5V に設定し、ア
ノード電位のパルス幅を 10s に固定してカソード電位のパル
ス幅を 10s~50s の間で変化させ電位パルス電解を行った。
パルス幅が 40s のとき CO 生成量が最大を示し、20s のとき
CH4 生成量が最大を示した。CO2 還元のレベルから考えると
CH4 生成の方が高いのでカソード電位のパルス幅は 20s を最
適条件とした。このようにカソード電位のパルス幅を制御す
ることにより目的とする生成物を選択的に生成できること
が分った(Figure 5)
。
4.3 アノード電位のパルス幅の
アノード電位のパルス幅の検討
のパルス幅の検討
カソード電位を-1.5V、アノード電位を 1.5V に設定し、カ
ソード電位のパルス幅を 20s に固定してアノード電位のパル
ス幅を 10s~50s の間で変化させ電位パルス電解を行った。
パルス幅が 20s まで、CO、CH4 の生成量は増加をするがその
Figure 2. Reaction scheme.
Coulomb meter
Potentiosatat,
Function Generator.
Gas burette
CO2 gas
Ag/AgCl electrode (RE)
Sampling tube
Electrolyte
Pt electrode (CE)Cu electrode (WE)
Figure 3. Set-up for potential pulse electrolysis.
2.5
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.70
-1.65
-1.60
-1.55
-1.50
-1.45
2.0
1.0
0.5
0.0
-1.40
Anodic bias : 1.5V
Anodic period : 10s
Cathode period : 10s
Electrolysis : 30min
1.5
-1.70
Cathodic bias / V vs. Ag/AgCl
-1.65
-1.60
-1.55
-1.50
-1.45
Potensiostatic
Potential pulsed
-6
Total volume of H2 / mL ( X 10 )
Anodic bias : 1.5V
Anodic period : 10s
Cathode period : 10s
Electrolysis : 30min
4.0
25
Potensiostatic
Potential pulsed
-8
Potensiostatic
Potential pulsed
5.0
Total volume of CH4 / mL ( X 10 )
-8
Total volume of CO / mL ( X 10 )
6.0
20
Anodic bias : 1.5V
Anodic period : 10s
Cathode period : 10s
Electrolysis : 30min
15
10
5
0
-1.40
-1.70
-1.65
Cathodic bias / V vs. Ag/AgCl
-1.60
-1.55
-1.50
-1.45
-1.40
Cathodic bias / V vs. Ag/AgCl
Figure 4. Dependence of gaseous products on cathodic bias on Cu electrode potential pulsed electrolysis anodic
bias 1.5V, anodic period 10s, cathodic period 10s .
10.0
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
10
8.0
7.0
35
Anodic bias : 1.5V
Cathodic bias : -1.5V
Anodic period : 10s
Electrolysis : 30min
-6
-8
20
30
40
50
Cathodic period at cathodic bias / s
9.0
Total volume of H2 / mL ( X 10 )
2.5
Total volume of CO / mL ( X 10 )
Anodic bias : 1.5V
Cathodic bias : -1.5V
Anodic period : 10s
Electrolysis : 30min
-8
Total volume of CH4 / mL ( X 10 )
3.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
Anodic bias : 1.5V
Cathodic bias : -1.5V
Anodic period : 10s
Electrolysis : 30min
30
25
20
15
10
5
0
10
10
20
30
40
50
Cathodic period at cathodic bias / s
20
30
40
50
Cathodic period at cathodic bias / s
Figure 5. Volume of gaseous products as a function of the cathodic period on Cu electrode; cathodic bias:
-1.5V, anodic bias: 1.5V, anodic period:10s.
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
10
20
30
40
Anodic period at anodic bias / s
50
25
-6
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
Total volume of H2 / mL ( X 10 )
Anodic bias : 1.5V
Cathodic bias : -1.5V
Cathodic period : 20s
Electrolysis : 30min
-8
9.0
Total volume of CH4 / mL ( X 10 )
-8
Total volume of CO / mL ( X 10 )
10.0
Anodic bias : 1.5V
Cathodic bias : -1.5V
Cathodic period : 20s
Electrolysis : 30min
20
15
5
0
10
20
30
40
Anodic period at anodic bias / s
50
Anodic bias : 1.5V
Cathodic bias : -1.5V
Cathodic period : 20s
Electrolysis : 30min
10
10
20
30
40
Anodic period at anodic bias / s
50
Figure 6. Volume of gaseous products as a function of the cathodic period on Cu electrode; cathodic bias:
-1.5V, anodic bias: 1.5V, cathodic period:20s.
後は減少する傾向を示した。一方、H2 はパルス幅が 20s までは減少しその後増加する傾向を示した。これは、アノード
電位のパルス幅の増加と共に Cu 電極の酸化溶解が促進され、同時に電極表面上に吸着する CO 濃度までもが低下したた
め生成量が減少したものと考えられる。一方、H2 は CO2 還元反応が促進されなかったため増加傾向をしたものと考えら
れる(Figure 6)
。
5. 結言
1. 電位パルスの印加により電極の反応中間体による被毒が抑えられ電極の触媒活性を維持しながら CO2 の還元反応が進
行した。
2. カソード電位のパルス幅を制御することにより還元生成物を選択できることが分った。
3. アノード電位のパルス幅の増加は Cu 電極の酸化溶解が促進され CO2 還元には不利な条件であることが分った。