8 - Info Shako

浜松市における交通環境良好地域への住み替えによる交通行動変化の実態
-交通情報の獲得に関連して-
筑波大学大学院 システム情報工学研究科 社会工学専攻
佐藤正尭
静岡大学 情報学研究科
西原純
1. 研究の背景・目的
2. 調査の実施概要
方法
期間
対象地域
対象者
サンプル
高齢化
負のスパイラル
公共交通サービスの水準低下
移動困難者の増加
住み替えを契機とした交通行動変容
たとえば… 転入者MM、引っ越しMM*
調査項目
住み替え先の公共交通サービス水準は?
行動変容者の特徴は?
正のスパイラル
住み替え前後において、人々が交通行動や関連する意識を
目 どのように変化させているのかを、交通情報の獲得の実態と
的 あわせて、交通環境や個人・世帯属性の観点から要因ととも
に実証的に明らかにする
*浅見知秀・谷口綾子・藤井聡・石田東生 (2009):「引っ越し MM とバス利用促進 MM の相互作用による
バス利用促進効果分析」, 土木計画学研究・講演集(CD-ROM), 39, 論文番号 300
3. 公共交通サービス水準(LOS)の算出
横溝ら(2008)* の「バスLOS」の概念をもとに検討
各地点を無作為に出発して8分以内にバス・鉄道に乗車できる確率
「運行本数」と「乗車地までの歩行時間」を総合的に評価
ポスティングによる留め置き返送方式のアンケート
配布…12月下旬、 回収期間…配布から約2週間
浜松市中区
築年数3年以内のマンション(14棟)居住者
配布…301部、 回収…58部 (回収率19.3%)
「個人・世帯属性」、「日ごろの外出の様子」、
「公共交通利用に対する意識」について
浜松市中区内における築年数
3年以内のマンション224棟の
うち、210棟(約94%)がバス停・
鉄道駅から500m圏内に立地
公共交通LOSについて、Lv.3
であるマンションの割合が高い
区域全体ではバスの主要路線
沿線、中心部では鉄道駅周辺
に、公共交通LOSの高いマン
ションが多く立地
LOS分類
LOS値
Lv. 3
40%Lv. 2
20%-40%
Lv. 1
0%-20%
Lv. 0 ※8分以内に到達不可
*横溝恭一・森本章倫 (2008):「バス LOS を考慮した被験者分類と MM による行動変容に関する研究」, 都市計画論文集, 43(3), pp.793-798
4. 結果
各交通手段利用日数の変化 (属性別)
10
浜松市外
5
11
バス
鉄道**
公共交通**
クルマ**
-5
-10
N=57
-15
浜松市中区内
N=57
8
N=58
浜松市内
N=58
N=57
N=57
静岡県内
静岡県外
N=57
従
前
居
住
地
7
3
Lv.
クルマ
-4
LOS
公共交通
8
2
11
9
7
3
0
(人)
4
6
6
20
N=58 0%
20%
40%
いつもしている・している
Lv.1
浜松市中区内
Lv.1
(日)
60%
80%
100%
時々している・していない
住み替えを契機としたバス利用への転換のためには、
一定以上の公共交通LOSが必要
N=56
Lv.3
0%
N=55
N=55
2
女性
男性
11
6
13
26
鉄道
公共交通
-2
-4
-6
-8
男性
(日)
*10%有意
女性
クルマ*
性
別
N=56
0%
20%
40%
60%
80%
100%
いつもしている・している
時々している・していない
【西遠都市圏PT調査】
1日あたりバストリップ数は
女性が男性の約2倍
住み替え前後で
男性 …バス利用を増加させる
女性 …クルマ利用を増加させる
16.1%
努力(徒歩・自転車)
目的地変更(公共交通機関)
37.5%
5.4%
7.1%
複数の用事をまとめる
身内のクルマ利用に便乗
**5%有意
0
バス
Lv.3
静岡県外
10% 20% 30% 40% 50%
努力(公共交通機関)
クルマ利用を控える
性別
N=55
Lv.2
0
Lv.2
浜松市内
静岡県内
目的地変更(徒歩・自転車)
-12
3
住み替え前後で意識して変えた交通行動
【理由】
・健康への配慮
・公共交通利便性
14
0
4
3 2 2
浜松市内からの住み替え …LOS 低
静岡県外からの住み替え …LOS 高
*10%有意
-8
4
N=58
25
0%
20%
40%
60%
80%
100%
いつもしている・している
時々している・していない
1
鉄道**
15
14
15
住み替え前後で
県外居住者 …一部クルマ利用に転換
区外~県内 …クルマ利用を減少
0
バス**
*10%有意
5
N=58
N=57
4
居住地選択 (従前居住地別)
10
浜松市内
0
(日)
公共交通に関する情報収集頻度 (属性別)
14.3%
1.8%
5.4%
なし
N=56
44.6%
「公共交通サービスの満足度」への影響
「不便に思う点」をダミー変数とした重回帰分析
・バスや鉄道の運行本数が少ない
・道路が混雑する
定
・運賃が高い
時
性
・バスが時刻表より遅れる
※決定係数(R2乗値)… 0.421
**5%有意
5. まとめ
 住み替えを契機としたバス利用への転換のためには、一定以上のバスLOS (本調査ではLv.3以上)が不可欠
⇒ 転入時に、居住地選択を自発的に公共交通機関に配慮する方向に誘導する「引っ越しMM」 実施の必要性
 住み替え前に鉄道の利用を習慣としていた人、特に従前居住地が県外である居住者は、住み替え後に鉄道利用を大幅に減少させている
公共交通LOSの高い地域に居住しバス利用を増加させてはいるものの、鉄道利用の減少分には満たず、クルマ利用への転換がみられる
⇒ 定時性を主とした運行改善の重点化と併せて転入初期のMMをパッケージとした施策を実施することが有効である可能性
 女性は男性と比べて公共交通に関する情報獲得意向が高いものの、実際には公共交通利用を減少させ、クルマ利用を増加させている
⇒ 女性の住み替え者向けの交通誘導施策が有効である可能性