LC/MSによる未知成分の組成式の決定

LC/MSによる未知成分の組成式の決定
液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)を用い,LCで分離した成分の組成
式を推定して,未知成分を同定した解析例を紹介します。
有機物の組成式の推定方法
表1 有機物を構成する元素の精密質量
初めに組成式の推定方法を説明します。
元素
精密質量
表1に示したように元素の質量は整数ではなく,
1H
1.007825
有機物の質量も整数にはなりません。そのた
12C
12.000000
め,同じ整数質量の化合物でも,小数点以下ま
14N
14.003074
での精密質量がわかれば,組成式の違いを判
16O
15.994915
別することができます。
当社では精密質量を測定できる飛行時間型質量分析計(TOF-MS)を用いて
分析します。その結果,未知の成分でも組成式を絞り込むことができ,信頼性の
高い解析が可能です。
有機酸の組成式の分析例
実際に,同じ整数質量(116)のマレイン酸(C4H4O4)とレブリン酸(C5H8O3)を
LC/MSで測定したMSスペクトルを図1に示します。
マレイン酸イオン
精密質量
理論値:115.004
測定値:115.005
推定組成式:C4H3O4
図1
レブリン酸イオン
精密質量
理論値:115.039
測定値:115.042
推定組成式:C5H7O3
有機酸(左:マレイン酸 右:レブリン酸)のLC/MS測定結果(MSスペクトル)
【MS条件】 イオン源:ESI 測定モード:Nega(-) 検出イオン:[M-H]-
この測定条件では,有機酸からプロトンが脱離した負イオン[M-H]- を検出して
います。イオンの精密質量として,理論値に近い測定値が得られていることがわ
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かります。それぞれの精密質量から推定した組成式は異なるため,マレイン酸イ
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オンとレブリン酸イオンを識別して同定することが可能です。
日立化成テクノサービス株式会社
有機酸の成分同定の分析例
LC/MSを用いて複数の有機酸が含まれる試料を分析し,負イオン[M-H]-の
精密質量を測定しました。推定した組成式と有機酸の同定結果を図2に示します。
この例のように,LC/MS分析により,未知の成分の同定が可能になります。
図2
有機酸含有試料のLC/MS測定結果(MSクロマトグラム)
【MS条件】 イオン源:ESI ,測定モード:Nega(-) 検出イオン:[M-H]【LC条件】 溶離液:アセトニトリル/0.5%ぎ酸水溶液(グラジエント測定), 流速:0.15mL/min
カラム:Inert Sustain C18(2.1mm i.d.×150mm) ,カラムオーブン:40℃
LC/MSの受託分析の例
LC/MS分析の特徴と応用例を次に示します。
LC/MS/MS分析にも対応していますので,お気軽にお問合せください。
特徴
応用例
・微量成分の組成式の推定,構造の解析
・熱で分解しやすい試料・難揮発性成分の測定が可能
(GC/MSとの比較)
・不純物,添加剤の分析
・劣化解析
・合成生成物の成分同定
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研究開発センタ 分析・技術開発部 嶋崎 Tel:0294-23-8013
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