超電導 Web21 - 国際超電導産業技術研究センター

2014 年 6 月 2 日発行
超電導 Web21
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特集:超電導技術動向報告会「HTS 機器冷却システムの現状と将来」
コールドテック
代表 上岡泰晴
高温超電導応用機器(HTS 機器)の冷却は、通常機器に対する大きなハンディキャップであるに
もかかわらず、現在までその開発は殆どされていなかった。図 1 に示すように、HTS 機器に最適な
能力を持つ冷凍機は存在していなかったのである。最近になって、冷凍能力が温度 65 K で 2 kW の
Turbo-Brayton 式の冷凍機が開発され、10 kW の冷凍機も開発が進んでいる。これらの冷凍機は、
主に高温超電導ケーブルの冷却を目途にしているが、HTS 変圧器や大型の HTS モーターにも使用
可能である。
表 1 HTS 機器に必要な冷却システム
Cooling capacity
Cable
2 - 20 kW @65K
Transformer
2 - 5 kW @65K
Motor
0.5 - 5 kW @65K
Size
Compact
Maintenance interval
30,000h
Efficiency
High >0.06 @65K
図 1 冷凍機と HTS 機器に必要な冷凍能力
表 1 には HTS 機器冷却に必要な仕様を示した。サブクール液体窒素冷却に対する仕様であるた
め、温度は 65 K とした。実用化時に必要なのは冷凍能力はもとより、メンテナンス間隔が重要で
あり、30,000 時間(3 年以上)の間隔が要求されている。このような要求に答えるには Turbo-Brayton
(磁気軸受けまたはガス軸受)式冷凍機が最適であろう。
一方、G-M 冷凍機、パルス管冷凍機あるいはスターリング冷凍機等の、より小型の冷凍機は、限
流器、小型モーター、ミキサーなどが社会インフラや工場、自動車、船舶に使用される場合、冷凍
能力は十分でも、30,000 時間というメンテナンス間隔の確保が大きな課題となる。場合によっては
10,000 時間でも使用可能な用途に HTS 機器の使用を見いだす必要がある。今までは、入手できる
冷凍機を使用して冷却システムを構築してきたが、それぞれの HTS 機器に最適な冷凍機を開発す
る必要があり、主に冷凍機の冷却部形状には開発の余地が十分にある。
冷却システムは冷凍機だけでは成り立たず、LN ポンプ、熱交換器や断熱容器、配管が重要な構
成機器となる。特に LN ポンプは、現在でも実用化に耐えるポンプが無く、早急な開発が望まれる。
HTS ケーブルの場合、吐出圧 1MPa、流量 5 L/min~100 L/min、メンテナンス間隔 30,000 時間が
要求され、いずれも難しい課題である。現在検討に値するポンプは、BarBer Nichols 製ポンプや、工
業用 LN ポンプあるいは LNG ポンプであるが、少流量低吐出圧または、大流量高吐出圧大侵入熱で
あって、少流量高吐出圧のポンプが無い。メンテナンス間隔に至っては全く不十分である。しかも
少流量高吐出圧のポンプの開発は技術的に非常に難しいので、開発開始が急務である。
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2014 年 6 月号
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