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力学系のセミナー (5月31日)
守田 智
生態系のカオス
Chaos, Solitons and Fractals の Chaos in ecology の特集から話題を拾って今後の研究の礎としたい。ま
ずは、preface (Vikas Rai & W.M. Schaffer: Chaos, Solitons and Fractals 12 (2001) 197-203) の紹介。
生態系の微分方程式でのカオスの発見
• Li T-Y, Yorke JM: “Period three implies chaos.” Am Math Monthly 1975;82:985-92.
• May RM: “Biological populations with nonoverlapping generations: stable points, stable cycles
and chaos.” Science 1974;186:645-7.
• May RM: “Simple mathematical models with very complicated dynamics.” Nature 1976;216:45967.
以来、実にたくさんの研究がある。
モデルの中では、カオスの普遍性は証明されているが
自然の系では、カオスの存在を確認するのは難しい。
非線形性、多変数 → カオス?
データ:観測時間が短い。観測エラー or ノイズが大きい。→ 正確なダ イナミクスが見えない。
この困難に対処するいろいろな方法が研究されているが、特に以下の2つの場合には困難は際立っている。
• カオスが不安定な周期軌道を含んでいてそれを経巡る場合
Auerbach D, et.al: “Exploring chaotic motion through periodic orbits.” Phys Rev Lett 1987;58:23879,
Lathrop DP, Kostelich EJ: “Characterization of an experimental strange attractor by periodic
orbits.” Phys Rev A 1989;40:4028-31
• カオスが強い周期的成分を持つ場合
Ellner S: “Detecting low-dimensional chaos in population dynamics data: a critical review.” In:
Logan JA, Hain, FP. (eds.), Chaos and insect ecology, Virginia Exptl. Station Information Series,
91-3, Blacksburg VA; 1991. p. 63-90
もう1つの問題は非線形系でみえる時間変化がアトラクターによる物とは限らないということだ。
chaotic saddle による metastable chaos, あるいは空間を導入した系での supertransient.
ということで、じつは生態系にカオスが見られるかどうかはよく分からない。
もし、生態系でカオスがまれだとすれば、それはなぜだろうか?
• 可能性1:生態系では散逸の度合いが大きく、これがカオスを排除する傾向があるから。
Rai V, Upadhyay RK; “Crisis-limited chaotic dynamics in ecological systems” Chaos, Solitons &
Fractals 2001:12:205-218,
Upadhyay RK, Rai V: Chaos, Solitons & Fractals 1997;8:1933.
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• 可能性2:カオス的に振舞う種があっても、その揺らぎの大きさから滅亡してしまうから。
Berryman AA, Milstein JA: “Are ecological systems chaotic ± and if not, why not?” Trends Ecol
Evol 1989;4:26.
自然の生体系を実験室系にうまくおとした例はほとんどないが、flour beetle (Tribolium) は例外である。
flour bettle は古代から穀物倉庫に住んでおり、実験で使うビンの中でもさほど変わらないといえる。
また、系は単純であるのでモデル化に適している。
Cushing らは実験とモデルを用いて解析している。
Cushing JM, et.al.: “Nonlinear population dynamics: models, experiments and data”
J Theor Biol 1998;194:1-9
Cushing JM, et.al.; “An interdisciplinary approach to understanding ecological dynamics”
Ecol Model 1996;92:111-9
Costantino RF, et.al: “Chaotic dynamics in an insect population”
Science 1997;275:389-91
これらの結果が自然の系にそのまま応用できるわけではもちろんない。
なので、彼らが出した結果を生態学者らが全面的に認めているわけでもないようである。
などなど、はっきりせんことがいっぱいでうんざりきそうになるが理論家はへこたれないということで。
Allen らはセレクションがカオスを排除してしまうという前述の主張に挑んでいる。
そして近い軌道間のの指数関数的増大が環境の変動による滅亡をしばしば減らすことを示した。
Allen JC, et.al.: “Chaos reduces species extinction by amplifying local population noise.”
Nature 1993;364:229-32
Rosko D, et.al: “Chaos and metapopulation persistence”
In: Yamaguti M, editor. Towards the harnessing of chaos. New York: Elsevier; 1994. p. 115-44.
移住を考えた場合の空間的同期の効果は、カオスの軌道の指数関数的増大と反対の寄与を持つ。
Blasius らは phase coherence (phase synchronization) の概念を北アメリカの lynx-hare 系に応用した。
Blasius B, et,al,: “Complex dynamics and phase synchronization in spatially extended
ecological systems” Nature 1999;399:354-9.
この北アメリカの野生の系での10年周期については他の研究も最近行われている。
Gamarra JGP, Sole RV: “Bifurcations and chaos in ecology: lynx returns revisited”
Ecol Lett 2000:3:114-121
King AA, Schaffer WM: “The geometry of a population cycle: a mechanistic model of
snowshoe hare demography” Ecology; 2000:?
より一般的に重要なのは hamilton limit である?
よく分からないのでとりあえずパス。
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補足:
✸✸✸Allen(1993) の例 ✸✸✸
移住のあるメタポピュレーション (写像系) +外部ノイズ
xi,t+1 = f [(1 − m)xi,t + mxi ] + ui,j + zt
i:index population, t:time, ui,j :local noize, zt :global noize
i は、10 まで取るとし、f (x) は Riker equation か logistic map の2通り考える。
global noize は大域的に影響するイベントはまれだと仮定し小さい確率 p で加える。
(絶滅を引き起こす)
xi,t がある程度小さく(ここでは 0.01 or 0.001) なった時 0 とみなす。
結果:カオスが生じる r で絶滅確率が減る。
理由;これはカオスの軌道の指数関数的増大より同期が破れ、どこかで (ある i で)xi,t が0になっても、
他の場所で生き残っておりそこから再移入可能だからである。
✸✸✸Blasius(1999) の例 ✸✸✸
空間的広がりのある3種系モデルで uniform phase evoluton and chatic amplitude (UPCA) を説明する。
6領域で lynx の 1821 年から 1934 年までデータがある (Elton & Nicholson J.Anim.Ecol. 11, 215-244 (1942))
u˙ i
v˙ i
w˙ i
au − α1 f1 (ui , vi )
−bi vi + α1 f1 (ui , vi ) − α2 f2 (vi , 2i ) + D j (vj − vi )
−c(wi − w∗ ) + α2 f2 (vi , 2i ) + D j (wj − wi )
u:vegetation, v:hare, w:lynx, i:index of patch, j:nearest neibourso of i
パッチは正方格子上に配置する。w∗ は lynx が hare 以外も食する効果を考慮して入っている。
a = 1, bi ∼ 1, c = 10, α1 = 0.2, α2 = 1, w∗ = 0.006, fi (x) = xy/(1 − ki x) で ki = 0.05, k2 = 0 とする。
D < Dc
Dc < D < Df
D > Df
⇒ unsynchronized regime
⇒ phase synchronized regime
⇒ full synchronized regime
位相同期状態 (phase synchronization) では位相成分間に引き込みがあるが、振幅を比較した時には
相関が小さい。この傾向は観測データでもみられる。
また位相同期状態は外部ノイズや季節変動に対してロバストであることも数値計算で示せる。
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