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県立広島大学人間文化学部紀要
7
.4
35
1(
2
0
1
2
)
非活動期の食餌摂取による糖質代謝リズムへの影響
保手演由基・植田さっき・出口佳奈絵
佐 野 尚 美 ・ 加 藤 秀 夫 ・西田 由香
県立広島大学大学院総合学術研究科
緒 昌
日本人の摂取エネ ノレギー量は年々減少しているにもかかわらず,肥満やメタボリツクシンドローム
は未だに大きな社会問題となっている1)。その原因として,運動不足やライフスタイノレの多様化によ
る生活リズムの乱れが影響していると考えられている 2)。
平成2
0年国民健康・栄養調査結果では. 1
5
歳以上において午後 9時以降に夕食を摂取する者の割合
が昭和 6
0
年の 4.4%から 1
1
.4%まで増加しており,就寝前の夜遅い時刻や通常では寝ている時間帯に食
事を摂取する者が増加している 3)4)。夕食時刻が遅い人ほど,肥満者の割合が多く太りやすいとの報告
がある 5)。さらに夜間の食事摂取は肥満だけでなく,糖尿病や高血圧などの生活習慣病を誘発する 6)。
食生活が多様な現代社会で,心身の健康と生体リズムに焦点を当てた研究方法が注目されている。従
来は,生体リズムの形成において明暗サイクノレとの関連が注目されてきたが7),徐々に摂食サイクノレ
の重要性が明らかになってきた 8)9)。つまり健康を維持するためには,何をどれだけバランス良く食べ
るかという栄養学に,食事のタイミングも考慮した食生活が重要である 。
本研究では,摂食パターンの栄養生理的意義を明らかにするために,実験動物を用いて通常の摂食
時刻から逸脱した非活動期の食餌摂取による生体への影響を検討した。
方 法
1,実験条件
8週齢のW
i
s
t
a
r
系雄ラット 5
0匹を用いて,暗期を 9 :00~21 :0
0に限定した 1
2時間の明暗サイクノレ
で飼育を行った。活動期(暗期)である 9:00~16 :0
0に普通食(エネ ノ
レギー組成比・蛋白質20%.
脂肪20%. 糖質60%) を与え
8日間の予備飼育を行った。
3時 .17時)摂食させたコ
予備飼育後,食餌量を均等に分けて,活動期である暗期に 3回 (9時. 1
ントローノレ群と,暗期に 2回 (9時. 1
3時)と非活動期である明期に 1回 (
2
1時)摂食させた夜食群
を設け,摂食ノ〈ターンの違いによる影響を比較した(図 1)。食餌の量・質は両群とも同一にし ,摂食
時刻のみが異なるように調整した。体重は週 1回
, 一定時刻に測定し,自発的運動量はラット回転式
運動量測定装置 (KN-78-R) を用いて計測した。
・
・
-
・
l
J
E竃主i
;
••正司E主. w
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1
3
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0
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7
:
0
0
明期(非活動期)
2
1:
0
0
図1.各実験群の摂食パターン
4
3
非活動期の食餌摂取による糖質代謝リズムへの影響
保手演由基ほか
2
2日間の飼育後,空腹時の 8 :00から 4時間毎の計 5回,各群 5匹ずつ解剖と採血を行った。解剖
時には肝臓と 2種類の筋肉(長指伸筋,ヒラメ筋),
4種類の内臓脂肪(腎周囲,副皐丸,後腹壁,腸
間膜)を採取した。また,肝臓での代謝動態を検討するために,門脈と肝静脈から同時採血を行った。
採取した肝臓,筋肉および血液サンプノレは,分析に用いるまで
8
0Cで凍結保存した。
0
2
. 測定方法
血糖はグ、ルコ ースCIIーテストワコー(和光純薬工業株式会社),血中中性脂肪はデタミナーL TGII
(協和メデックス株式会社),血中総コレステローノレはデ、タミナーL TCII (協和メデックス株式会社)
を用いて測定した。
肝臓グリコーゲンは,グリコーゲン以外の肝臓成分を強アルカリで加水分解し,収集したグリコー
ゲンを塩酸に溶かして沸騰浴中で加水分解した後,生成されたグ、ノレコースをグ、ノレコース CII-テストワ
コー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。筋肉グリコーゲンは,グリコーゲン以外の筋肉成
分を強アノレカリで加水分解し,収集したグリコーゲンをフェノール硫酸法で、測定した。
3
. 統計処理
実験結果は,平均値±標準誤差で示した。 2群聞の比較には対応のない t検定を用いた。同一実験
食における時刻聞の比較には一元配置分散分析を行い,有意差を認めた場合にはT北 eyHSD
法による
p
ASWS
t
a
t
i
s
t
i
c
s1
8f
o
rWindows;SPSS
多 重 比 較 検 定 を行った。統計解析には統計用 ソ フ ト ウ ェ ア (
]apanInc.)を用い,有意水準を
5%未満とした。
結 果
1日 3回の食餌は,摂食時間帯に関係なく両群とも完食した。摂食時刻の違いによる体重および内
臓脂肪量への影響を図 2に示した。体重はコントローノレ群,夜食群ともに実験開始から増加を示し,
両群間に差はなかった。体重 1
0
0
g当たりの内臓脂肪量は,全ての部位において夜食群で高い傾向に
あったが,有意な差はなかった。また,運動量についても両群間で差は認められなかった(図 3)。
5
400
γ
ロコントロール群
:
!
:4
∞
E
4
旦 2凹
・夜食群
C
2
切
コ 3
、
ーコントロール群
¥切
サー夜食群
)
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耐
2
握
100卜
且
EE
醤
E
14
実験日数
図
44
2
1
。
腎
周
後 盲IJ
腹 畢
囲
壁 丸
2
. 摂食時刻の違いによる体重・内臓脂肪への影響
全体
7
腸間膜
O
1
県立広島大学人間文化学部紀要
7,4
35
1(
2
0
1
2
)
1200
コントロール群
ぞ 1000
霊 800
600
酬爾剛市
回
400
200
O
図3
. 侵食時刻の違いによる運動量への影響
肝臓を中心とした糖質代謝
コントローノレ群と非活動期に摂食させた夜食群の門脈中の血糖は,いずれも 1日 3回の摂食によっ
て増加する日内変動を示した(図 4A
)。夜食群では,最初の摂食において ,コントロール群と同じ食
餌を摂取させたにもかかわらず,急激な血糖上昇が起こった。門脈中の血糖は糖質摂取そのものを直
接的に反映しているが,肝臓から放出された肝静脈の血糖は両群ともほぼ一定に保たれていた(図 4
B)。 このことから ,肝臓において摂食後の血糖調節が行われていた。 このことをより明確にするた
め,門脈血糖から肝静脈血糖を差し引いた値を算出して肝臓での糖質代謝を調べた(図 5)。摂食前
の空腹時 (8時)では,血糖の差が負の値を示した。このことは,肝臓での糖新生によって肝静脈血
に糖質が放出されていたことを示している 。一方
1回目の摂食後 (
1
2時)と 2回目の摂食後 (
1
6時)
は血糖の差が正の値であることから,肝臓での糖質の代謝利用や取り込みが促進したと見受けられ
0時には,空腹によって肝臓での糖新生が促され,肝静脈血糖が高くなった。そして 3
る。夜食群の 2
回目の再摂食後 (
2
4時)の円脈血糖は摂食によって再度高い値を示した。
A.門 脈
[B 肝 静 脈
│ ・・1彊~;-
「
…
一
夜食群
│摂食 │
摂食│摂食
t
t
2
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-0ーコントロール群 3
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.-夜食群
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明期
ー ー 出 ー諸国 ー
明期
コン
トロール群│
摂食│摂食!摂食│
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6 2
0 2
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4 08
時刻
時刻
t
t:
p
<
O
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0
1V
S 同食餌条件の8時
図
4.摂食時刻の違いによる血糖値への影響
4
5
非活動期の食餌摂取による糖質代謝リズムへの影響
保手j
賓由基ほか
・
・
明 期
g
t
コントロール群│ 摂食 │摂食 │摂食
夜食
ロコントロール群
1
5
0
・夜食群
E)
坦饗司
万 ¥国
(一
1
0
0
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。
5
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8
1
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6
2
4
2
0
0
8
時刻
図5
. 肝臓における糖質代謝 リズム (L
I門脈一肝静脈)
肝臓および筋肉のグリ コーゲン代謝リ ズム
生体での代表的な糖貯蔵物質であるグリコー
ゲンの 日内リズムを調べた。コントローノレ群の
肝臓グリ コーゲンは,摂食前の空腹時に低く,
摂食に伴って緩やかに増加 し
│園理主園明 期
コントロール群│摂食 │
摂食 │
摂食│
夜食群
鑓議選翻
醐
3回の摂食終了
糖質を全身に供給するために減少する 日内リズ
ム が 認 め ら れ た ( 図 6)。夜食群の肝臓グリ
増加していなかった。非活動期の摂食でも 血糖
値 は増加 し
, 肝臓に糖が取込まれていたが,グ
リコ ーゲン合成には利用されないことが明らか
となった。次に ,筋肉活動に重要な役割を果た
している筋肉グ リコーゲン貯蔵量を
2つの筋
線維タイプ別に調べた。 白筋(長指伸筋)のグ
リコ ーゲン量 は
, 両群とも摂食による増加がな
く
, 明確な日 内変動はなかった(図 7A)。赤筋
'
コーゲンも摂食に対応した増減を示したが,非
活動期の摂食後は コントロ ーノレ群のレベノレまで
--0ーコントロール群
120
凶¥凶
E)入ゐ│円岳、
(崖 ・
後にピー クを示した。その後,非活動期には,
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-.-夜食群
1
0
0
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6 20 24 04 08
時刻
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0
1 vs コ
ント
ロ
ール
群
図6
. 侵食時刻の違いによる
肝臓グリ コーゲン代謝への影響
(ヒラメ筋)のグリ コーゲン量は,コン トロ ー
ノレ群において ,摂食前の空腹時に低く摂食によって増加し ,その後減少する 日内 リズムを示した(図
7B)
。夜食群も活動期に摂食すると,筋 肉グリ コー ゲン量の 増加 が認められたが,非活動期の摂食後
(
24時)では増加はみられず,むしろ減少した。このことより,非活動期の摂食によって得た栄養物
はグリ コー ゲン合成に利用されないと考えられる。
4
6
7,4
3
5
1(
2
0
1
2
)
県立広島大学人間文化学部紀要
(B.赤筋(ヒラメ筋)
A.白筋(長指伸筋)
・・陪置理圃・
明 期
│
摂食│摂食│摂食│
翻
離醤盛醸
8
8
[
子
一 コントロール群
auaA
、
守 仁、
4
寸内正
(握・凶¥一回
f │円 子 、
E)入 '
t
-.-夜食群
6
2
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時
20 24 04 08
08 1
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08 1
2 1
6 20 24 04 08
時
表IJ
表IJ
-:p<O.
01vs コントロール群
図7
. 侵食時刻の違いによる筋肉グリコーゲン代謝への影響
潤
廼-
期/
剛昭一
寸ょ門判群
川食
〆' コ 夜
群
44
Ii 一
・
1
0
0
〆
-〆
T古μ
後も 1日を通して高いレベノレを保持していた。
一
明
レステロ ーノ
レはコントローノレ群よりも高 く,その
ー一
た,空腹時における夜食群の血中中性脂肪,総コ
5
7ネ-一イ 竹
0
)。ま
食によっ て減少する変化 がみられた(図 1
圃﹁
中の総コレステローノレは, コント ローノレ群では明
確な 日内変動は認められなかったが,夜食群は摂
ιム耳什
その後減少する変化がみ られた(図 9)。一方,血
200
治
工
、
血中中性脂肪は摂食によって緩やかに増加し,
300
T叶口
ンと密接に連動し ていた。
400
l
れた。 このように血中 の遊離脂肪酸は摂食パタ ー
¥33鑑醤理制御掛
動期の摂食によって減少する こ相性の変化がみら
500
(
一
を摂取していない時刻 に再び増加し,その後非活
. .摂 一 ノ
食群も空腹時に高く,摂食によって減少し,食餌
司君摂 覇 幽 ¥
し,再び増加する日内変動がみられた(図 8)。夜
Et醐盟
吋 餅
川夜
の空腹時に高値を示し, その後摂食によって減少
EE
食霊
一一群争
血 中遊離脂肪酸は,コント ローノレ群では摂食前
. .摂麗 幽 ¥ ¥ ¥ 、
非活動期の摂食による脂質代謝への影響
O
6 2
08 1
2 1
0 24 04 0
8
時刻
-:p<O.
01vs コントロール群
什 p<O.01vs 同食餌条件の8時
図8
. 摂食時刻の違いによる
血中遊離脂肪酸への影響
4
7
非活動期の食餌摂取による糖質代謝リズムへの影響
期
一
桐灯一頭
一 穂
ロ
円
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時刻
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一排出川
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言 150
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保手演由基ほか
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イト コントロール群
ート 夜 食 群
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時刻
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0
1vs コントロ
図9
. 摂食時刻の違いによる血中中性脂肪への影響
ル群
図1
0
. 摂食時刻の違いによる
血中コレステロ ールへの影響
考 察
本研究は,摂食ノ号
タ ー ンの栄養生理的意義を明らかにする目的で,通常の摂食時刻から逸脱した非
活動期の食餌摂取による生体への影響を検討した。
先行研究では,非活動期の摂食により体重 ・内臓脂肪量の増加が報告されている 10)11)。 しかし本研
究では,非活動期の摂食による体重・内臓脂肪量の増加は認められなかった。食餌組成や摂食量を統
ーした上,自発的運動量も同じであったことから,結果的に両群のエネノレギー収支はほぼ同一であっ
たと考えられる 。一方,血中の中 '
1
全脂肪や総コレ ステローノレは,非活動期の摂食を継続すると空腹時
に高値を示し,その後も 1日を通して高いレベルを示した。不規則な食生活は肝臓時計遺伝子のリズ
ムを崩壊させ,血中の中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝異常を引き起こし ,動脈硬化の原因
になると報告されている 12)。両群の摂食量を同一にした本研究では,非活動期の食餌摂取により,体
重や内臓脂肪量は増加しなくとも,脂質代謝は変化することが明らかとなった。
食餌由来の糖質は小腸で吸収され,門脈を経由して肝臓に入る 。そのため門脈の血糖は摂食ノ号ター
ンを反映し,摂食後直ちに増加した。一方,肝臓で代謝を受けた後の肝静脈の血糖は両群ともほぼ一
定に保たれていた。両群とも空腹時は肝臓から糖を放出し,摂食後は肝臓への糖の取り込みや利用に
よって,肝臓での血糖調節が正常に行われていた。 しかし,夜食群では最初の摂食後 (
1
2時)や再摂
食後 (
2
4時)に門脈血糖の急激な上昇がみられた。と のことから,非活動期の摂食によって血糖増減
が激しくなり,その結果血糖調節の負担が大きくなったと考えられる 。
生体での代表的な糖貯蔵物質である肝臓と筋肉のグリコーゲン代謝リズムを検討した。 中村ら 13),
出口ら 14) の報告と同様に,摂食後は赤筋であるヒラメ筋グリコーゲンが直ちに増加し,遅れて肝臓グ
リコーゲンが増加する日内リズムが認められた。 白筋である長指伸筋グリコーゲン量は摂食による増
加がなかった。この ことから,赤筋グリコーゲンは摂食後の血糖維持に重要な役割を果たしており ,
肝臓グリコーゲンは,主に空腹時の血糖維持に重要であることが明白になった。今回は,非活動期に
48
県立広島大学人間文化学部紀要
7,4
3
5
1(
2
0
1
2
)
摂食させると肝臓に糖が取り込まれでも,肝臓グリコーゲンの貯蔵量は増加しなかった。また赤筋グ
リコーゲンも,非活動期の摂食後は増加しなかった。視床下部から分泌されるオレキシンは,交感神
経の活動を高めることによって骨格筋へのグルコース取り込みとグリコーゲン合成を促進する 15)。こ
のオレキシンを放出する視床下部のオレキシン神経は活動時に活性化されることから,オレキシンが
不活発な非活動期の摂食後はグリコーゲン合成が十分に行われなかったと考えられる。非活動期の食
餌摂取により,血中中性脂肪が高値を示したことから,グリコーゲンとして合成されなかった栄養物
は脂肪合成に利用されたと考えられる。
以上の結果から,血糖の調節に寄与している肝臓と筋肉のグリコーゲンは,同じ食餌を摂取してい
ても摂食時刻の違いにより代謝リズムに影響を及ぼすことが明らかとなった。また脂質代謝への影響
から就寝前の夜遅い時刻や通常では寝ている時刻に食事を摂取することは,糖質や脂質の代謝異常
を誘発し,肥満やメタボリツクシンドロームの一因となることが示唆された。今後は食事の量や質だ
けでなく,食事のタイミングにも言及し,一次予防の使命である特定健診や食育による健康管理に応
用していくことが栄養学の新しい課題である。
要 約
本研究では摂食パターンを重視し,摂食時刻の違いが生体へ与える影響を検討した。肝静脈中の血
糖は一定に保たれていたが,非活動期に摂食させると門脈中の血糖増加が著しく,血糖調節の負担が
大きくなると考えられた。食餌量を同一にすると,非活動期に摂食させても体重や内臓脂肪量に差が
認められなかったが,空腹時の血中中性脂肪とコレステロールは高値を示した。生体での糖貯蔵物質
である肝臓と筋肉のグリコーゲンは,非活動期の摂食後は増加せず,グリコーゲンの代謝リズムには
摂食時刻が関与していることが明らかになった。このことから,生体のリズム形成には食事時刻の影
響が大きく関与し,健康的な日常生活を送るためには食事のタイミングを考慮することが栄養生理学
的に重要である。
文 献
1)厚生労働省:平成2
1年国民健康・栄養調査結果の概要. h
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)
2) 香川靖雄:時間栄養学の概略.時間栄養学,女子栄養大学出版部, 2
0年国民栄養調査成績.第一出版, 1
2
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1
2
7(
19
8
7
)
3)厚生省:昭和 6
3
1(
2
0
1
1
)
4) 厚生労働省.平成20年国民健康・栄養調査結果.国民健康・栄養の現状,第一出版, 2
5)関野由香ほか:食事時刻の変化が若年女子の食事誘発性熱産生に及ぼす影響.日本栄養・食糧学
会誌, 6
3(
3
),1
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6(
2
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)
6) 平賀裕之ほか:夕食時刻の遅い若者における健康障害.心臓, 3
9,1
3
0
1
3
4(
2
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0
7
)
7)中川八郎ほか:摂食行動のリズムとその生物時計.蛋白質核酸酵素臨時増刊, 2
7(
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) 中村直紀ほか:摂食パターンの違いによる肝臓および筋肉グリコーゲンの日内リズム.県立広島
女子大学生活科学部紀要, 9,5
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大学人間文化学部紀要, 6,2
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Abstract
Effect of food intake during the rest period
on the rhythm of carbohydrate metabolism in rats
Yuuki HOTEHAMA, Satsuki UEDA, Kanae IDEGUCHI,
Naomi SANO, Hideo KATO, Yuka NISHIDA
In this study, we focused on feeding patterns and examined the effect of feeding during the rest period
in rats. Plasma glucose in the portal vein reflected feeding directly, but blood sugar in the hepatic vein was
almost kept a fixed and there was no effect of feeding during the rest period. Although body weight and
abdominal fat were maintained by consuming the same amoup.t of food, we observed that the levels of plasma
triglyceride and cholesterol increase in rats fed during the rest period. The hepatic glycogen had a circadian
rhythm that increased by feedings during the active period, but did not increase after feeding during the rest
period. Furthermore, the red muscle glycogen also did not increase after feeding during the rest period. These
observations demonstrate that feeding habits during the rest period may change the rhythm of glycogen and
lipid metabolism, and it is important for healthy daily life to consider the timing of food intake.
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