2008. 4. 21 No.22-157 Japan Airlines Captain Association 日本航空機長組合 TEL FAX 03-5756-3909(HND) JCAWebSite http://www.jalcrew.jp/jca mail [email protected] 経営は無理やり することなく、 しっかりと社員に せよ 07 年度の決算を検証するシリーズ④ シリーズ③では、経営がたった 2 週間で、なぜ急に「新たな特別損失を見通す」に至っ たかを検証し、金融機関との関係と JALFIO 要求との関係を挙げました。 この④では、もう少しこの点を掘り下げて解説します。 機長組合では、この一連のどたばた劇のあらすじを ① 07 決算が大幅に改善することから、社員への還元を決めた社長 ② 一部の社内“勢力”が大株主金融筋に、社員還元の方向性があるとご注進 ③「還元など認めない」という金融機関から圧力 ④ 社長不在中、お上からのお達しに「0.1 ヶ月+1 万円」という期末手当でお茶を濁す ことを決定した一部経営と労務 ⑤ それでもなお大幅な利益が出てしまうため、新たな決算操作を決定 と推定しています。 今回のニュースでは、この流れを改めて読み物に編集してみました。題して、 劇場 大手金融機関 と 某役員 & 労務部 「社員還元など許さない」 今回のシリーズ物の中では少し“コーヒーブレイク”的なニュースですが、深くて暗い地 下室で行われたことを、皆さんの想像を膨らませながら読んでみてください。 第一幕「事実関係」 第一場 「年間一時金を巡る暗闘」 JJ 労組では、至近の経営状況をきちんと反映させた夏・年末の一時金を支払うように要 求してきました。しかし、経営と JALFIO は「会社は予算が立てられるし、社員も生活設 計が立てやすい」として、予算を基にした年間一時金を決定し、これを JJ 労組にも押し付 け続けてきました。 このような歴史の中で、経営が「08−10 再生中期計画」で示した考え方は、07 年度の 一時金水準(年間 2 カ月+8 万円、06 年度対比で年間 150 億円の人件費抑制)を 08 年度 も維持するという考え方でした。 また、JALFIO は、職場からの強い不満の声があったものの、年間要求「2.2 カ月+5 万 円」を決定しました。合わせて 07 年度の営業利益が予算を上回った場合は、すでに合意し ている 07 年度の一時金を「再協議する」ことで、社長の『利益が計画を超えたら社員に還 元したい』との発言と整合性を取ろうとしました。 その後、経営は JALFIO に対して「08 年度年間一時金回答:年間 2.1 カ月+4 万円」を提示しました。(JJ 各労組には「年間一時金に対する 考え方」として提示)そして、経営と JALFIO の考え方には「0.1 カ月+ 1 万円」の違いが残りました。 第二場 「還元事始」 一方、中間決算で上方修正された年間の営業利益水準は、第 3 四半期の決算でも、ます ます好調!、中期計画で予定した最終利益 70 億円を大きく超える見通しとなりました。 『今期は 70 億円の利益がどうしても必要だ。我慢してくれ』と言い続け、一時金の大幅削 減などを強引に実施してきた経営にとっても、放置できない状況になりました。 JJ 労組は期末一時金を要求、3 月 14 日には社長面談も行いましたが、その席上で社長 は『07 年度の利益から職場に還元したい。還元した後に 70 億円の利益が残れば良い』と 発言する事態になりました。 職場はこの発言を受けて、社長の決断により職場のモチベーションが盛り上が ることを期待し、日航再建に向けての展望を感じていました。 第二幕「状況証拠による推定」 第一場「泣く子と地頭と銀行さまには勝てない?」 しかしです。日航内にはりめぐらせた情報網からこの事態を察知した「銀行さま」は、 おりしも出張であった社長の留守を預かる日航経営者を呼びつけ「還元など、とんでもな い。この資金貸付証が目に入らんか。わが XXX 銀行も現場締め付けのリストラで再建した のだ。いくら社長が約束したとは言え、還元などせいぜい 10 億 20 億が限度だ」と、 157-2 のたまわったかどうか・・・。この天の声を素直に持ち帰った某役員の力説により、社内では この後「還元は 10 億∼20 億程度」との相場が出来てしまいました。 第二場「転んでもタダでは起きぬ癒着労政」 担当役員で論議になったのが「一体、還元案をどうするか」です。例え ば社員に 2 万人に 10 億円を分配すると一人 5 万円になりますが、それだけ では社員に「こんな低額では生活の足しにならない」と言われるだけです。 そこで「悪知恵はお任せあれ」と出てきたのが、JAL 労務。 『会社の一時金案と、JALFIO の要求案との差は 0.1+1 万円。この原資は 10 億円。関連も合わせると 20 億円か・・・』と密かに計算して、「やはり定額では 高齢者に薄くなりますので、係数方式が宜しいでしょう。関連も合わせると 0.1 +1 万円で総額 20 億円になります」と言ったとか言わないとか・・・。 かくして、一時金回答と還元原案を合わせると、JALFIO の年間一時金要求にピッタリ、 との猿芝居の原稿が出来上がったのです。 エピローグ 「余った利益はどうしよう?? そうだ費用の前出しがある!!」 ところがです。これで銀行への申し訳が立っても、実際に収支が好調な以上、20 億円し か還元しないのでは、利益が(最終利益計画 70 億円より)余ってしまいます。余った利益 があれば、その 40%以上が税金として取られ、社外に流出してしまいます。 「社員に還元出来るものもせず、国庫に収めてしまう」これでは、社員がついて来るわ けがありません。そこで浮上したのが、「費用の前出し」手法です。これならば、07 年度の利益を少なく出来、かつ出るはずだった利益の一部が 08 年度に回せる。 そして 3 月 28 日、竹中経営企画室常務(当時:現副社長)は、新たな特別損失を計上す る方針を組合に表明したのでした。 あとがき JAL 経営に今一番必要なのは安全運航に直結する“社員のモチベーション アップを第一に考えること”。大株主金融筋からの圧力に屈することなく、 「JAL にとって必要な施策である!」と説得するくらいの信念をもって経 営に当たっていただきたいものです。 さて、07 年度の決算見通しをめぐる、経営の姿勢をレビューして来ましたが、次の⑤で は、このシリーズ①から④(当ニュース)について、現時点で担当者がどのような説明が 出来たのか、出来なかったのか、そこをお知らせします。 157-3
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