円借款用 事業事前評価表 1.案件名 国名:インドネシア共和国 案件名:高等人材開発事業(IV) L/A 調印日:2014 年 2 月 24 日 承諾金額:7,075 百万円 借入人:インドネシア共和国(The Republic of Indonesia) 2.事業の背景と必要性 (1) 当該国における人材育成セクターの開発実績(現状)と課題 インドネシアでは、地方分権法(1999 年施行、2004 年改正)により、地方におけ る公共サービスの提供に係る政策の立案・管理等が各地方自治体に委ねられることと なった。さらに、中央地方財政均衡法(1999 年施行、2004 年改正)により、財政面 での地方分権推進も行われた。国家開発計画策定法(2004 年施行)では、各地方政 府がそれぞれ開発計画を立案した上で中央政府が取り纏めることが定められ、各地方 政府が国家開発計画の策定・実践における重要な役割を担うことになり、専門的な地 方政府行政官の能力向上が求められている。同時に地方分権化推進の中で、中央政府 行政官に対しても、利害調整や交渉能力の向上が求められている。 他方で、インドネシアの中央・地方全公務員のうち、学士を取得しているのは約 30%、修士・博士に至っては約 2%と、専門的な業務を担当できる人材が少ない。さ らに、公務員数の 20%が中央政府に集中しており、量的にも地方の人材不足は特に 顕著である。 (2) 当該国における人材育成セクターの開発政策と本事業の位置づけ インドネシア「中期国家開発計画」 (RPJM:2010-2014)では、開発・企画計画の 分野における人的資源開発に向けて①優秀な専門家としての企画官の能力向上及び ②中央・地方開発企画庁における計画企画力の質向上を戦略の方向性として挙げてい る。高等人材開発事業(IV)(以下、「本事業」という。)は、特に地方政府の企画官 の能力向上を重視しており、人材育成の他にも、開発計画策定・実施能力の向上によ る地域開発への取組みの一環として位置付けられる。 (3) 人材育成セクター対する我が国及び JICA の援助方針と実績 我が国政府の「対インドネシア共和国 国別援助方針」 (2012年4月)では、重点分 野として「更なる経済成長への支援」及び「不均衡の是正と安全な社会作りへの支援」 を掲げ、高等人材育成支援及び地方開発のための制度・組織の改善支援を目標として いる。また、対インドネシアJICA国別分析ペーパーにおいても高等人材育成及び中央 政府と地方政府の能力強化は更なる経済成長及び地方開発に係る重要分野に位置づ けられており、本事業はこれらの方針・分析に合致する。 我が国は、過去に「高等人材開発事業」(1990-1998)、「高等人材開発事業(II)」 (1995-2004)、「高等人材開発事業(III)」(2005-2015)を通じ中央省庁及び地方政 府行政官の日本留学、国内進学を通じた能力向上による人材育成に協力してきた。 「高 等人材開発事業(III)」においては、特に地方政府の企画官や財務担当官を対象とし、 地方分権に対応した行政能力の向上に貢献している。 (4) 他の援助機関の対応 世界銀行は 2011 年より財務省、外務省及び国家開発企画庁等の中央政府 11 省庁を 対 象 に 「 Scholarships Program for Strengthening Reforming Institutions Project (SPIRIT)」を通じて公共財政・官僚制度改革に係る分野における留学・進学・短期 研修プログラムを支援している。 (5) 事業の必要性 上記のとおり、本事業はインドネシアの開発課題・開発政策、並びに我が国及び JICA の援助方針と合致していることから、JICA が本事業の実施を支援する必要性・妥当 性は高い。 3.事業概要 (1) 事業の目的 本事業は、インドネシア中央政府及び地方政府において、政策企画に携わる人材を 対象に、日本及びインドネシア国内で学位プログラム並びに短期研修を実施し、公共 政策の企画・実践力強化を目指し、また関連分野において高度な知識を有する人材育 成を図り、もって中央・地方行政能力の向上に寄与するもの。 (2) プロジェクトサイト/対象地域名 インドネシア全国及び日本 (3) 事業概要 ① 日本留学(留学、短期研修、日イ教員交換研修) 博士課程:12 名、修士課程:550 名、短期研修:635 名、日イ教員交換研修:60 名) ② 国内進学(博士・修士課程、短期研修、語学研修) 博士課程:15 名、修士課程:1,300 名、短期研修:3,625 名、語学研修:562 名) ③ コンサルティング・サービス:プロジェクト管理、大学選定・入学補助、学費・ 生活費その他の経費支払事務等(ショートリスト方式) (4) 総事業費 8,728 百万円(うち、円借款対象額:7,075 百万円) (5) 事業実施スケジュール 2014 年 2 月~2020 年 10 月を予定(計 81 ヶ月)。全事業参加者の学業終了時(2020 年 10 月)をもって事業完成とする。 (6) 事業実施体制 1) 借入人:インドネシア共和国(The Republic of Indonesia) 2) 事業実施機関:国家開発企画庁企画官教育センター(Center for Planners Development, Education and Training (CPDET), BAPPENAS) 3) 操業・運営/維持・管理体制:国家開発企画庁内に運営委員会(Steering Committee)が設置され、運営方針等の策定を実施する。委員会の下には、 CPDET 内に Project Implementation Unit が設置され、本事業の運営を行う。 (7) 環境社会配慮・貧困削減・社会開発 1) 環境社会配慮 ① カテゴリ分類:C ① カテゴリ分類の根拠:本事業は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」 (2010 年 4 月公布)上、環境への望ましくない影響は最小限であると判断さ れるため、カテゴリ C に該当する。 2) 貧困削減促進:特になし。 3) 社会開発促進(ジェンダーの視点、エイズ等感染症対策、参加型開発、障害者 配慮等):本事業では、全参加者の 80%を地方行政官とすることを目標として いる。また、選抜過程において男女の機会均等が確保されるよう配慮している。 (8) 他ドナー等との連携:特になし。 (9) その他特記事項:特になし。 4. 事業効果 (1) 定量的効果 1)運用・効果指標 指標名 目標値(2022 年) 【事業完成 2 年後】 学位取得率(日本留学)(%) 95 学位取得率(国内進学)(%) 95 研修修了率(日本)(%) 99 研修修了率(国内)(%) 99 地方参加者の割合(%) 80 復職後の関連部署勤務率(学位取得プログラム修了 2 年後) (%) 80 参加者の昇進率(学位取得プログラム修了 4 年後) (%) 80 2) 内部収益率 留学事業の収益性計算は適当でないとの理由から算出しない。 (2) 定性的効果:事業参加者の業務能力向上、所属機関の行政能力向上。 5. 外部条件・リスクコントロール 特になし。 6. 過去の類似案件の評価結果と本事業への教訓 (1) 類似案件の評価結果 「高等人材開発事業(II)」の事後評価結果等では、実施機関へのフィードバックと して、行政機関における人材育成分野について、継続して専門性の高い人材を輩出し、 質・量的拡充を図るとともに、留学中の研究内容が帰国後の配属先で活かされるよう 人事に配慮し、環境を整えることが重要であると評価されている。 (2)本事業への教訓 本事業では、事業参加者が留学・進学・研修を通じて培った知識を復職後も活用で きる部署への配属を確保するため、実施機関は参加者の所属機関に帰任後の人事配置 を考慮するよう予め文書にて通知し、帰任後の人事配置をモニタリングすることとし ている。 7. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる指標 1) 学位取得率(日本留学) (%) 2) 学位取得率(国内進学) (%) 3) 研修修了率(日本) (%) 4) 研修修了率(国内) (%) 5) 地方参加者の割合(%) 6) 復職後の関連部署勤務率(学位取得プログラム修了 2 年後)(%) 7) 参加者の昇進率(学位取得プログラム修了 4 年後)(%) (2) 今後の評価のタイミング 事業完成 2 年後。 以 上
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