第157回 原医研セミナーのご案内

第157回
原医研セミナーのご案内
下記のとおりセミナーを開催いたします。多数ご参集ください。
記
日
場
時:
所:
平成26年7月31日(木)午後5時〜
霞総合研究棟 7階 701セミナー室
演
題:造血細胞移植後の慢性GVHDにおける
男性特異的マイナー組織適合性抗原の役割
講 師:Fred Hutchinson Cancer Research Center
客員研究員 川瀬 孝和 先生
女性ドナーから男性患者への造血幹細胞移植(F->M HCT)では、他の性別の組み合わせに比べて急
性及び慢性の移植片対宿主病(GVHD)の発症リスクが高い一方で、再発率は有意に低い事が知られてい
る。これは女性ドナー由来の T 細胞の男性特異的マイナー組織適合性抗原(H-Y 抗原)に対する免疫反応
に由来すると考えられてきた。H-Y 抗原は Y 染色体上の遺伝子にコードされるペプチドで、男性特異的であ
るため、女性ドナー由来の T 細胞の標的となる。H-Y 抗原特異的 T 細胞が移植患者の GVHD 標的臓器の
細胞上に提示される H-Y 抗原を認識してその細胞を攻撃することにより GVHD が起こる。同様に H-Y 抗原
特異的 T 細胞が残存腫瘍細胞上に提示される H-Y 抗原を認識して、その細胞を攻撃することにより、移植
片対白血病(GVL)効果となって現れ、再発を抑制することも報告されている。さらに近年では女性ドナー由
来の B 細胞も移植後の免疫反応に重要な役割を担っていることが明らかとなってきた。
我々は F->M HCT 後の患者から経時的に得た末梢血単核細胞および血漿を用いて T 細胞・B 細胞の反
応を解析した。Y 染色体上の遺伝子とその X ホモログにコードされるアミノ酸配列の違いは無数に存在し、
それらが H-Y 抗原の候補となり得る。しかしながら、実際に上記のような F->M HCT 後の免疫反応に深く関
わっている H-Y 抗原はそれほど多くない事が分かってきた。また、われわれの検討では、T 細胞が慢性
GVHD を惹起し、B 細胞がそれを維持することを示唆する結果が得られた。さらに移植後 100 日以内の H-Y
抗原特異的 T 細胞の反応と慢性 GVHD の発症の関係を解析したところ、DDX3Y にコードされる H-Y 抗原
特異的 T 細胞と慢性 GVHD の発症の間に有意な関連を認めた。本講演では、このように F->M HCT 後の
T 細胞・B 細胞の反応に関する免疫学的解析の現状を紹介するとともに、演者がこれまでに行ってきた造血
幹細胞移植に関わる研究成果を紹介したい。
連絡先:広島大学原爆放射線医科学研究所
血液・腫瘍内科研究分野(内線 5861)
広島大学霞地区運営支援部
総務グループ (原医研主担当)
(内線 5802)