Future Management

LCA日本フォーラム 第10回LCA日本フォーラム表彰記念講演会
用役分野における
MFCAを活用した工場の省エネルギー
武田薬品工業株式会社
製薬本部 EHS推進部 春堂 卓嗣
2014.1.23
ご紹介内容
1.弊社の環境への取り組み
2.光工場におけるMFCAの適用
3.用役分野へのMFCA適用の考え方
4.光工場の用役における適用結果
-2-
1.弊社の環境への取り組み
-3-
(1)会社概要
武田薬品工業株式会社( タケダ )は、
230周年を超える長い歴史に培われた普遍の価値観である
タケダイズム(誠実:公正・正直・不屈)を根幹に、
「優れた医薬品の創出を通じて
人々の健康と医療の未来に貢献する」
というミッションの
実現に向けて邁進しています。
-4-
(2)会社データ
-5-
2013年9月末
会社名
武田薬品工業株式会社
創業
1781年(天明元年)6月12日
代表者
代表取締役 長谷川 閑史
資本金
636億円
従業員数
6,663名(単体)、31,507名(連結)
事業内容
医薬品等の研究開発・製造・販売・輸出入
研究開発拠点
東京都、大阪市、藤沢市、パロアルト、サンディエゴ、ディアフィー
ルド、ケンブリッジ、ボーズマン、フォート・コリンズ(以上米国)、サ
ン・ジェロニモ(ブラジル)、ケンブリッジ、ロンドン(以上英国)、ロ
スキレ(デンマーク)、コンスタンツ(ドイツ)、広東、上海(以上中
国)、シンガポール
生産拠点
日本(大阪市、光市)、イタリア、アイルランド、ドイツ、オーストリア、
デンマーク、ロシア、中国、インドネシア、ブラジル等18カ国
関係会社
連結グループは当社と連結子会社148社、持分法適用関連会社
16社を合わせた165社
(3)主力製品
-6-
糖尿病治療剤
アクトス
高血圧症治療剤
ブロプレス
消化性潰瘍治療剤
タケプロン
前立腺がん・子宮内膜症治療剤
リュープリン
2型糖尿病治療剤
ネシーナ
多発性骨髄腫治療剤
ベルケイド
(4)弊社の環境活動
武田薬品グループ環境自主行動計画に基づいて、年度方針を制
定し、環境防災に関する活動の充実を図っていきます。
2012年度 武田薬品グループ環境自主行動計画 進捗状況 (一部記載)
テーマ
目標
2012年度実績
地球温暖化対策 エネルギー起源のCO2排
出量を、2015年度に2005
年度比で18%削減する。
再生可能エネルギーの利
用を推進する。
廃棄物削減
2012年度の武田グループの排出量は43
万トンで、2005年度比22%減であった。
大阪工場、光工場などに太陽光発電設備
を設置した。
2015年度の廃棄物最終処 2012年度の国内グループ会社の廃棄物
分量を2010年度レベル以 最終処分寮は518トンで、2010年度比1%
下に抑制する。
減であった。
3R(Reduce, Reuse,
分別の徹底によるリサイクル推進、廃棄物
Recycle)活動を推進する。 の再資源化、有価物化などの取り組みを
実施した。
-7-
2.光工場におけるMFCAの適用
-8-
(1)MFCAを活用した省資源、省エネ活動の概要
•
活動目的:原材料とエネルギーの生産性向上とコスト低減
医薬品特性、従来の取り組みから見た活動の制約条件、課題
1)薬事法規制により製造プロセス変更のハードルが高い
2)見え易い原材料ロスは3R活動で実施済み(リサイクル/有価売却)
3)省エネ診断等により、設備の省エネ課題はある程度は把握
•
MFCA導入の狙い:
• 未知の原材料ロスの発見(盲点ロス、無管理ロス)と改善(低減)
• 廃棄物・廃液の“発生~適正処理”の間の処理方法の改善
• 用役の“供給~利用”全体を通した用役のロス改善(低減)
-9-
本日のご報告
対象箇所
(2)MFCAを導入した光工場の概要
所在地
山口県光市
開設
1946年(昭和21年)5月
2012年度実績
敷地面積 969,644㎡
主要製品 医薬品原薬
医薬品製剤
生物学的製剤
総エネルギー投入量
2,053百万MJ
[主なエネルギー源]
購入電力
61,798MWh
CO2排出量
106,208 t
重油
3,397kL
廃棄物発生量
9,841t
都市ガス
28,690千m3
廃棄物排出量
5,407t
水使用量
2,945千m3
廃棄物最終処分量
0t
- 10 -
(3)活動の推進体制と期間
活動事項と役割分担
導入対象部門 技術部門
EHS推進部
◎
MFCA分析の1次情報収集
JMAC/FMIC
〇
MFCA分析の情報整理、1次加工
◎
〇
MFCA分析のツール開発、計算
〇
◎
合同検討会で分析を実施
MFCA分析実施、詳細分析
改善検討(可能性、方策、効果)
MFCA導入対象
原薬製造
2011年度
モデルのMFCA導入
合同検討会で改善検討を実施
2012年度
別製品へ展開
製剤製造
モデルのMFCA導入
用役利用
利用段階の用役ロス分析
用役供給
MFCA適用法開発
供給段階の用役ロス分析
廃棄物、廃液処理
MFCA適用法開発
廃液処理の省エネ分析
- 11 -
2013年度
発掘した
改善課題の
改善実施
(自主活動)
3.用役分野へのMFCA適用の考え方
(1)用役(ユーティリティー)とは
(2)用役設備と基本的なマテリアルフロー
(3)材料のMFCAと用役のMFCAの違い
(4)用役のMFCA適用の考え方
- 12 -
(1)用役(ユーティリティー)とは
•
ユーティリティーは用役と訳され、プロセスプラントの運転に必要な電気、水、空気や
燃料で、人間の生活に無くてはならないライフラインと同義です。これらのユーティリ
ティーを供給する設備を用役設備(Utility facility)と呼んでいます。
この用役設備には、スチームや電力などを扱う設備が含まれ、原料や副原料と同様
にプラント運転に必要なもので、日常生活ではライフラインとも呼ばれています。
•
このユーティリティーには以下のようなものが含まれます。
電力、工業用水、冷却水や冷水などの冷媒、純水(プラント水やボイラ供給水)、プラ
ント空気や計装空気、窒素、燃料(燃料ガス、重油など)、スチームや温水、熱媒油
などの熱媒
「プロセスエンジニアのためのウェブサイトより引用」
- 13 -
http://comtecquest.com/Utility/utility1.html
(2)用役設備と基本的なマテリアルフロー
水
燃料
用役供給
上水・工水
ボイラー
自家発電
(コジェネ)
水
蒸気
電力
電力
用役利用
純水、冷水、温水製造
原材料
製造プロセス(A)
製品
補助材料
製造プロセス(B)
製品
資材等
製造プロセス(C)
製品
廃棄物
廃棄物
処理
- 14 -
排水、廃液
排水・廃液処理
下水、排水
廃棄物処理
廃棄物処理委託、売却
(3)材料のMFCAと用役のMFCA違い
• MFCA分析の基本原理は
• 最初にロスの総量を把握し、その上でロスを4つに層別
⇒今まで、気づいていなかったロスに気づくことができる
良品量
=製品になった
マテリアルの物量
Input総量
ロス総量
管理ロス:不良や仕損等によるロス
容認ロス:標準に従うと、必ず発生する原材料のロス
盲点ロス:既存の管理システムから抜けているロス
無管理ロス:マテリアルの使用方法、ロスの定義や管理規定がない
• 用役には製品になるものがない(Input総量=ロス総量)
• 原材料と同じく物質(水等)がフローし、エネルギー価値が変化する
- 15 -
(詳しくは、環境管理 2013年11月号 「MFCA 10年の進化を振り返る」 を参照してください。)
(4)用役のMFCA適用の考え方
•
用役供給(エネルギー管理):設備改善と運用改善の両面から課題設定
•
用役利用(各棟):用役利用モデル分析から改善施策の検討、展開
燃料
電気
上水
工水
用役供給設備
電気
蒸気
(各棟内)
各棟の受入
価値を生む仕事
原材料
各棟の受入
発電機
ボイラー
等
用役の
再変換
加 工
製品(良品)
各棟の受入
Energy変換ロス
Energy
投入量
(J)
Energy供給ロス
Energy
変換量(J)
(=送出量)
用役供給のロス
(測定可能)
- 16 -
供給された蒸
気・電気量 (J)
(=受取量)
Energy変換ロス
消費ロス、仕事ロス
別の用役に変換
(純水、冷水、温水)
有効な仕事、価値を生
む仕事に利用した用役
用役利用のロス
(測定難しい)
(詳しくは、環境管理 2012年5月号 「省エネのMFCAー用役のエネルギーロスを見える化」 を参照してください。)
4.用役分野のMFCA適用結果(見えたこと)
(1)MFCA適用結果
(2)発見した用役の省エネ改善課題一覧
(3)改善事例:製造の用役利用/純水ライン夜間停止
(4)省エネの取り組みに用役のMFCAがもたらすもの
(5)今後の取り組み
- 17 -
(1)MFCA適用結果-1 (用役供給のマテリアルフロー)
• マテリアルバランス、エネルギーバランスを測定し、蒸気、電力を需要部門の建屋、
施設に送るまでのロスを熱量とコストで見える化
コージェネレーションシステム(注)
燃料
ガスタービン
排熱
水
(エネルギー変換ロス)
燃料
水
- 18 -
蒸気タービン
排熱ボイラー
熱損失
購入
電力
電力
蒸気
熱損失
熱損失
ボイラー
電力
蒸気
ヘッダー
蒸気
需要部門
熱損失
需給ギャップ、配管ロス
(エネルギー変換ロス)
(蒸気の供給ロス)
コージェネレーションシステムとは、天然ガス等を燃料として、エンジン、タービン等の方式により
発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステムのこと。
(1) MFCA適用結果-2 (用役供給のエネルギーバランス)
• 1か月単位で用役供給の変換ロス、供給ロスを熱量(Joule)で算出
• エネルギーの需要量(供給量)、及び変換ロス/供給ロスは、環境条件・運用条件と
設備仕様によってかなり大きく変動する
蒸気供給ロス(送出量⇒受取量)
ボイラー変換ロス(燃料熱量⇒蒸気の熱量)
コジェネ変換ロス(燃料熱量⇒電力・蒸気の熱量)
(MFCA計算のData Master)
項目
CO2排出
原単位
熱量換算
係数
都市ガス
0.0425
(13A)
t-CO2/m3
GJ/m
0.0036
0.00049
電気
0.00218
3
GJ/kWh
1MPa蒸気
(全熱)
- 19 -
購入
単価
2.7807
GJ/ton
t-CO2/kWh
円/m3
円/kWh
(1) MFCA適用結果-3 (用役利用のMFCA計算結果)
• 用役の利用段階は、建屋単位の総消費量しか測定できない
• それ以上の消費量分析、用役の消費ロスの分析は手間がかかる。
Input
Output
マテリアルの投入量と材料費
マテリアル
量
金額
正の製品
量
金額
負の製品
量
金額
原材料
用役消費量と配賦金額
区分
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使用量
電力
7,xxx MWh
蒸気
1x,xxx ton
正の製品
金額
金額
負の製品
金額
(2)発見した用役の省エネ改善課題一覧
•
年間13,707GJの省エネになる“用役”改善課題を発掘
対象
発見した省エネ課題
純水ラインの夜間停止(1/2系統中)
蒸発缶の断熱性向上
用役利用
コンプレッサーのエア吐出圧を下げる
空調設定温度制御変更(一般系エリア)
用役供給 供給蒸気の圧力を下げる
環境管理 停止期の海水ポンプ停止
(廃棄物
処理)
昇温/降温回数の削減
注:この効果見積では、電力の換算係数を9.76GJ/千kWh(省エネ法の係数)で算定
- 21 -
改善効果見積(エネルギー量に換算)
(3)改善事例:製造の用役利用/純水ライン夜間停止
• ロス着眼:製造ライン停止時も純水製造、供給、循環で用役消費
• ロス要因:純水品質維持のため、24時間、純水の循環が必要
• 問題点:製造ライン夜間停止時も、純水ラインは2つとも独立して稼働
• 改善方向:製造ライン停止時は、純水ラインの1つで純水を循環
純水ライン:2ライン
上
水
純水
製造装置
蒸留水
製造装置
クリーン蒸気
製造装置
製造:2ライン
製造 夜間 製造ライン 夜間
ライン 停止 稼働(昼間) 停止
純水
ライン
稼働
ロス
- 22 -
ロス
(4)省エネの取り組みに用役のMFCAがもたらすもの
• 用役供給、利用:省エネ設備への置き換え以外の課題把握が不十分
• MFCA:見えていない課題発見にメリット
見て
いる
課題
継続的測定が可能(メーター有)
継続的測定が不可能(メーター無)
• 用役供給設備(発電機、ボイラー)
の変換ロス⇒省エネ設備への更新
• 用役配管部材(断熱材、バルブ等)の
劣化によるロス⇒劣化部材の更新
見えて • 用役利用建屋までの供給ロス
いない
特に、蒸気製造量と蒸気需要量の
課題
ギャップによる放蒸(余剰蒸気の放
出)
- 23 -
• 用役利用設備(空調機、ポンプ等)の
変換ロス⇒インバータ化等、省エネ機
器への更新
• 稼働していない設備・空間・時間での
用役消費ロス
• 経時的な品質劣化(例:冷水⇒温度
上昇)による用役のエネルギーロス
(5)今後の取り組み
• クリーンルーム内での製造の多い大阪工場へMFCA展開
• 用役フロー分析、稼働状態と関連した用役消費分析、コスト評価の
より簡易的なMFCA適用方法の開発
• より広範囲な製造現場で用役消費の改善
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参考文献
① 用役へのMFCA適用に関する参考文献
•
環境管理 2012年5月号 「省エネのMFCAー用役のエネルギーロスを見える化」
著者:下垣 彰 (株式会社FMIC チーフコンサルタント) 発行:一般社団法人産業環境管理協会
② 材料のMFCAのロスの区分に関する参考文献
•
環境管理 2013年11月号 「MFCA 10年の進化を振り返る」
著者:下垣 彰 (株式会社FMIC チーフコンサルタント) 発行:一般社団法人産業環境管理協会
③ MFCAの実践についての参考文献
•
単行本 『マテリアル・エネルギーのロスを見える化するISO14051 図説MFCA』
著者:安城 泰雄, 下垣 彰
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発行:JIPMソリューション (2011/11/1)
謝辞
株式会社日本能率協会コンサルティング
株式会社FMIC
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ご清聴ありがとうございました。