知能指数の愛動に関ナる統計的考察

(
5
5
.
0
)
知能指数の愛動に関ナる統計的考察
労働科学研究所・労働心選学研究室
大 須 賀 哲 夫
A STATISTICALSTUDYONTHEFLUCTUATION
OFINTELLIGENCE-QUOTIENT
BY
OSUGA,
T
e
t
s
u
o
(
L
a
b
o
r
a
t
o
r
yo
fLab
o
rP
s
y
c
h
o
l
o
g
y
,I
n
s
t
i
t
u
t
ef
o
rS
c
i
e
n
c
eo
fL
a
b
o
r
)
.Q
.
s,as
t
u
d
ywasmadea
b
o
u
tt
h
ef
r
e
q
u
e
n
c
y
Upont
h
ep
r
o
b
l
e
mo
fc
o
n
s
t
a
n
c
yI
.Q
.
sandt
h
e
i
r
f
i
u
c
t
u
a
t
i
o
n
.
d
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
no
fI
1
l
i
g
e
n
c
et
e
s
t
sa
r
er
e
t
白
.
t
ed i
ns
h
o
r
ti
n
t
e
r
v
a
l
,t
h
ef
r
e
q
u
e
n
c
y
Whent
h
ei
n
t
e
d
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
n
so
fi
n
f
i
u
c
t
u
a
t
i
o
no
fI
.Q
.
sf
o
l
l
o
wt
o POISSON-DISTRIBUTION
,but
r
v
'
a
lt
h
e
yn
o
tf
o
l
l
o
w
. (
T
a
.3
,T
a
.4
) Thesef
a
c
t
sshowtheI
.Q
.i
sn
o
t
i
nl
o
:
gi
n
t
e
I
l
s
t
a
n
ti
nl
o
n
gt
i
m
e
.
alwayscO
G
e
n
e
r
a
l
l
ys
p
e
a
k
i
n
gt
h
ed
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
n
so
fI
.Q
.
sh
a
v
eb
e
e
ns
u
p
p
o
s
e
dt
of
o
l
1
ow
u
ti
nf
a
c
ts
t
a
t
i
s
t
i
c
a
l
l
yt
h
e
ya
r
ef
o
u
n
dt
on
o
t
.
t
o NORMAL DISTRIBUTION,b
(
T
a
.1
) l
fd
i
v
i
d
et
h
ed
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
no
fI
.
Q
.
si
np
l
u
sand minus d
i
r
e
c
t
i
o
n by t
h
e
勤f
f
i
A
N,s
u
c
hf
a
c
t
sa
r
ef
o
u
n
da
sf
o
l
l
o
w
s
;
1)l
np
l
u
sd
i
r
e
c
t
i
o
n,t
h
ed
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
ni
sf
o
u
n
dt
of
o
l
l
o
wt
oPOLYA-EGGENBERGERDISTRIBUTION(
T
a
.勾.
2
)I
nminusd
i
r
e
c
t
i
o
n
:
;i
ti
ss
u
p
p
o
s
e
dt
of
o
l
l
o
wt
oPOLYA
主 GGENBERGER
a
c
tt
h
a
tt
h
ed
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
no
fI
.Q
.
si
s
o
rBIASSEDDISTRIBUTION(
F
i
g
.勾. The f
foUowingtoPOLYA-EGGENBERGERDISTRIBUTIONmays
h
o
w
't
h
eh
e
r
e
d
i
t
a
r
y
t
e
n
d
e
n
c
yi
ng
e
n
e
r
a
li
n
t
e
l
l
i
g
e
r
i
c
e
.
3
)S
a
m
p
l
i
n
gt
h
ec
h
i
l
dg
r
o
u
p
'w
h
i
c
h
i
n
t
e
l
l
i
g
e
n
:
c
ean
:
de
c
o
n
o
m
i
c
a
le
n
v
i
r
o
n
r
r
i
e
n
t
h
ed
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
l
li
np
l
u
sd
i
r
e
c
t
i
o
ni
ss
u
p
p
o
s
e
dt
of
o
l
l
o
w
'toBIASSEDa
r
es
u
p
e
r
i
o
r,t
,a
r
i
di
ni
n
:inusdirectionPOISSON~DISTRIBUTION C
T
a
.5
)
.
DISTRIBUTION
,t
h
ed
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
ni
r
ir
r
i
i
n
u
s
'
4
)S
a
m
p
l
i
n
gt
h
eg
r
o
u
p whicht
h
e
ya
r
ei
n
f
e
r
i
o
r
d
i
r
e
c
t
i
o
nt
e
n
d
st
oa
p
p
r
o
x
i
m
a
t
et
oBIASSEDcDISTRIBUTION;andinp
l
u
sd
i
i
e
c
t
i
o
nt
oPOISSON-DISTRIBUTION(
F
i
g
.3
)
.
Thesefactsshowt
h
et
e
n
d
e
n
c
yo
fg
r
a
d
u
a
Ji
n
c
r
e
a
s
eo
fI
.
Q
.
sw
i
t
h
i
nt
h
ef
o
r
,andthetendencyo
fg
r
a
d
u
a
ldeαeasew
i
t
h
i
nt
h
el
a
t
t
e
rg
r
o
u
p
.
merg
r
o
u
p
Thea
u
t
h
e
rs
u
m
m
e
r
i
z
e
sthatthe I
n
t
e
l
I
i
g
e
n
c
e
‘Q
r
i
o
t
i
e
n
tc
a
n bec
h
a
n
g
e
d
'by
t
h
ee
n
v
i
r
o
n
m
e
n
t,andt
h
ep
r
o
p
e
r
t
i
邸 o
fg
r
o
u
p
sa
b
o
u
tI
.
Q
.
sc
a
nbed
i
s
t
i
n
g
u
i
s
h
e
dby
t
h
i
sp
r
o
c
e
s
s
.
(
;
:
;
;
:
;
1
)
I
ま L
>
>
tき
知能の本体については今日未だ論議の余地があるが,精神測定の発達の結果知能の測定が現
実の問題にも臆用しうる事は今日既に常識である。
i
n
e
t,A. 以後精神年齢, Terman,L
.M.以後知能指数(I.Q.)が
知能を表わす尺度として B
第 1表鈴木・びね一式I.
Q. の正規分布の検定
I
.
Q
.
実測値
理論値
3
0
.
.
.
.
.
. 40- 50- 6
0
.
.
.
.
.
. 70- 80- 90- 1
0
0
.
.
.
.
.
.110-1
2
0
.
.
.
.
.
.130-140-150-1604
1
9
7
0 2
2
6 6
4
6 1764 2
8
5
6 2
9
8
7 1929 751 225
58
9
2
0
.
5 5
.
3
4
2 2
2
1 7531772 2
7
0
3 2
8
4
41
9
4
3
' 916 2
8
1
.
0
1
但 n=11546
Pく 0
5
7 8
.
0 0.8
一般に用いられ,知能検査の普及に伴いテストの信額性,安当性の問題の進展につれて, I
.Q.
の恒常性が強調される一方叉I.Q. の変動に関する研究も少くなし、。特に Iowa大学における
一連の実験研究1)は注目に債いするが,
本論では従来の研究者によって発表された資料に基
.Q. の変動についての考察を行う。
き
, I
.Q. の分布構造に関して統計的に検討し, I
第 1図労研式知能検査の知能偏差値分布
一般知能検査については,知能の優れた
者,劣った者に対して同ーの弁別力をもっ事
が望ましく従って,
phJ
ば目的は建せられる。
AU
時には得点分布が L字型に近いテストを作れ
PD
績が土位の者のみについて弁別カを有せたい
P紋
I字型分布になり Z
J
,逆に成
一切
D'
く
人員紋
うに構成される。例えば「日本人の読み書き
能力」テストでは大字の者が満点に近い成績
をとるいわゆる
n
u
n
u
であるから,目的に趨った得点分布を得るよ、
布値・湾、
号一畏
刀論争如何
テストは会である目的を以って行われるの
g
I 知能指数分布の正規性の検定
4
0
0
3
0
0
2
0
.0
r
知能率の分布形態は統
1
0
0
計的に蓋然曲繰を画かねばならぬJ3>とされ
従来のム般知能テストの多くは略土この僚件
を満すよラに作製されているが,念のため統一
計的に吟味してみる。
na
知長偏差値 f
f
i
~ ~ # ~ $ M
変動日~(Il .
4 3 2 1.
0 0 1 2 3
、ーー--ー、,ーーーーーー~
+
我園で最も信麗し与るテストの一つである
鈴木・ひ。ね戸法標準化の基準となった略主 1万余名の無選択児童のI.Q.分布を X2 検定にか
けてみると第 1表の通りで E規分布は棄却される(危除率 1%
以下〉。同様に田中・びねー式
のI.Q,分布。も累積度数を確率紙にプーロットーしてみれば一見して E規分布とは認めがたし、。
ではI.Q. は如何なる分布法則に従うだろうか。こ
L では分布の中心からの偏傍に着目して
次のように考える。分布の子均(叉は最頻)~直からへだたりを,一例えば I.Q.20 を車位として
(M:
t20), (M士 40), (M主60)・・・ょとし此を:それぞれ中心か広の変動 0,土 1,土2・・・・聞と考
えるなら,この分布は三項分布に従うことが予想される。
(
5
5
2
)
そこで正負別にポアソン分布を当はめてみると田中・びねー式では,正方向(I.Q.)が平均よ
り高い群〉では良く適合 (P=0.65)するが,負方向ではポアソン分布は棄却される (P=0.02)。
成人用圏体検査である活研式知能検査の(被桧者 1635名)についても,知能偏差値を 6点 草
第 2表五負別にみたI.
Q
.の分布(鈴木・びね一式)
2
ndAP
5
9
6
1
エルF
2
9
8
7
1
9
2
9
7
5
1
2
2
5
5
8
・ベ布
ヤシ分
リゲ戸
ボヅガ
O
1
2
3
4
5
6
E
T
-
1
0
0
.
.
.
.
.
1
0
9
1
1
0
.
.
.
.
.
1
1
9
120-129
1
3
0
.
.
.
.
.
.
.
1
3
9
140-149
150-159
160-169
+X
I
.
Q
.
2975
1
9
5
0
7
4
7
2
1
9
54
12
4
5
9
6
1
2
.
5
0
;
'
6
5
I
.Q
.
90-9
9
80-89
70-79
60-69
50-59
40-49
3
0
'
3
9
n
2
x
P
-x
f
1
2
3
4
5
6
2856
1
7
6
4
6
4
6
2
2
6
7
0
1
9
4
。
ヅゲシベル
ガ 分布F
F
2865
1
7
3
]
682
2
2
1
64
17
6
5586
5
5
8
5
4
.
3
0
.
3
5
侶L. fは実測値で F は理論値を示す
位で正負別にとると第 1図の如え負方向の場合はポアソン分布は棄却される。従ってI.Q
.の
幅を相当大きくとるならば, I
.Q.の中心からの変動に関しては正方向の場合には,各人のI.Q.
が何れの段階に落るかは全く偶然の諸原因に依存するけれども,負方向にあってはそのような
第 2図 I ;Q. の疋負別分布(問中・びね一式)
ゑl
l
偶然的諸事情を破る如き原因を想
定するととができる。
←→イ扇情分布
P
=
O
.
7
5
I
(
K
リ
ヤ
・
工
ツ
ゲ
ノ
吋I
V
ガ一分布
P=
0
.
3
5
)
x一一哨;f.リヤ・工ツゲJ1JV力r~符布
P=0.45
(ポアソン分布 P<0
.
01)
〈ポアソン分布 P
=O
.
l5
J
I
I
.知能指数に関する分布法見J
I
前と同じ方法でI.Q.の幅(変動
の皐位と考える)を 10にとって正
負別に分布を検定してみると,鈴
木・びね{式の場合には第 2表の
200
通り何れもポリヤ・ヱッグンベル
ガ{の分布に極めて良く一致し,
ポアソン分布は何れも棄却される
〔正負とも危除率 1%以下)。
従ってこの場合I.Q
. の分布構
造に関してはホ・アヅン分布と
P
e
a
s
o
nの第 3型分布との複合が
考えちれ,三つの異なった母集圏
+
を想定しなければならぬ。'この点
に関して二つの解釈が考えられ
る。一つはテスト自体の問題で,
I
.Q. の極めて高い,叉は近い者に対して一般の者ど同ーの一尺度を遁用しうるかと云う点であ
る。第こには,サンプルに問題がないとすればI.Q. の分布は弱傍播確率事象に従うと考九る
事である。この場合われわれは直ちに,天才家系の存在やみ知能の遺俸といラ事情を想起するこ
(
5
5
3
)
とができる。
田中・びねー式の場合にも第 2図の如く,略主閉じ傾向であるが唯負方向の場合ポ Hヤ,エ
?ヂンベルガ{の分布よりもむしろ偏侍分布に良く適合する。
前節においてI.Q. が負方向の変動の場合にはポアソン分布が当はまらぬ事を見,本節の鈴
木・ひやね{式においても負方向の場合にはポリヤ・ヱッヂンぺルガ{分布の適合度が正方向の場
合より低い事等と考え併せるなら,負方向の変動の場合には偏傍分布ヘの接近傾向が認められ
第 3表 各学年聞のI.
Q.の変動量分布
I
.Q.の変動量
6 -土 1
0
土 11士1
5
土 16土2
0
土 21-土2
5
土26-土3
0
土 31土3
5
AUτiQLqod告 EUP
口
o- 土 5
土
F
f
I→ 1
I
X
f
[
!
-I
I
I
歩
6
0 3
5
.
7
40 5
5
.
3
24 4
2
.
8
17 2
2
.
1
16
8.6
9
2
.
7
20.8
F
9
7 91
.1
5
0 5
6
.
8
1
6 1
7
.
7
4
3
.
7
30.7
f
I
I
I
ぽv
F
f
I
¥
'
→v
_ F
- .fv→ vt
106 1
0
3
.
4
50 5
4
.
4
15 1
4
.
3
4
2
.
9
F
1
1
5 1
1
8
.
2 1
2
9 1
3
0
.
4
.7 -.6ο_ 56.4
58 51
9.11.3. 10 12.2
0
1
1
1
2.0
1
.8
1
1
1
1
1
6
8
n
XZ
P
M
但い数浮のロ
F
1
7
2
175
1
8
3
2
0
1
>20
3
.
0
0
.
9
1
.7
0.6
く0
.
0
1
0
.
2
0
0
.
6
5
0.45
0.70
1
.55
0
.
6
2
0
.
5
3
0.44
0.43
マ字は学年を示L-, F ~土ポアツシ分布磁命値 M は分布の~均債を示す。
.の逓減してゆく者が含
るように思う。もしそうであれば知能が平均以下の群にあってはI.Q
まれると考えてい
L。
だがそのためには,まづ同 個人のI.Q. の変動について吟味する必要がある。
J
I
I
I 同一個人における知能指数の変動
従来,同一個l
人に再テストを行った場合のI.Q. の恒常性はテストの信頼度を示す重要な尺
度の一つにあげられている。縫って再テストによるI.Q. の変動の平均値や範囲,或はI.Q.
第 4表
I
.Q.の変動│ 0-5
f
F
1
4
2
ターマ V の再テストによるI.Q. の変動量の分布
{6
-11
1.
.
.
.
.
. │0--5
6-10 11-15 16-20 2
-10 "
"
'
1
5
82
4
.
1
128.2 9
x
日.4.
28
3
4
.
5
10
7
sTτ.8
P=0.02
1
1
7
55
14
2
.
1 1
7
.
4
1
1
0
.
7 6
x
:
日
.
5
16- -21-20
2
6
3
.
3
¥一ー、¥/一一'
~,
0.5
p=同
但
, fは実際額数, Fはポアソシ分布理論値を示す。(+;ーを合せた場合は金<0.01)
の相関による。この種研究6) も少くなく,結果も大体においてI.Q. の恒常性を支持する方向
にあるが,例えばアンダーソンの如くその反対の場合もいくつか報告されている。
こ1.~では主に,当研究所の狩野が学童について入学時から卒業までの知能を逐年的に測定し
た資料7
)によってI.
Q.の変動分布を検討する。使用されたテストは鈴木・びねー式である。
I
.Q. の変動:t:5以内のものを変動 O回
, :
1
:
:6-+10のものを 1
,土 1
1
-土 1
5を 変 動 2回・・
として,各学年間の変動をみると第 3表の通りで,第 1学年から第 2学年へかけての場合を除
く他は全てポア Pン分布に適合し,而も変動の平均値が低学年より高学年へ進むにつれて減少
(
5
5
4
)
し安定してくる傾向がある。
叉 6年聞を通じてI.Q.が:::!:1O以上の変動を示した者についてその回数分布をとってみても
P=0.75)から,変動の量,回数ともに偶撚以外の特殊な原因を考え
ポアソン分布に当はまる (
る事ができない。この意味でI.Q. の恒常性を支持しうるであろう。
所が何年間かを通じてのI.Q.の最高と最小の変動をみると 4年間以上になるとポアソン分布
0年間にわたって得られた再テストによるI.Q
.の変動量の分布
は全て棄却される。鈴木の時主 1
についても, Terman
,L
.M.の資料8) についても何れもポアソン分布とは認めがたい(第 4表〕。
.
Q
. の恒常性は支持しうるが,期間がある程度以上に
従って再テスト期間が短い場合には I
長くなると恒常性は表われる傾向があると考えられ,この事は次の方法によっても明らかにし
うる。
第 1学年と第 2学年時とのI.Q. の相関係数を r12 として表わすと,狩野の資料によれば,
r
1
2
=
0
.
7
9
品 =
0.90
r
r
2
3=0.83
r
s
6=0.98
f3
4=0.89
f1
6=0.58
である。相関理論に従えば, rI2'r~3'r34 ・ r45 ・ rS6 =r16 となるはずである。計算してみると
rl~'r23 ・ r34 ・ r45 ・ rs6 =0.52
となり実測値 r
16
=0.58にかなり近似した有意義を認めがたし、。従ってこの理論を臨用すれば
第 5表
I
.Q
.
寸τ
偏僑分布
f
1
1
0
84
37
16
4
1
0
8
.
1
4
84.
41
.6
1
3
.
6
3
.
3
2
5
1
1
.1
0
.
8
0
ー
-x
110-119
100-109
90 99
8
0
8
!
)
70-79
角ザ
ndp
ndp
2
5
1
I
.
Q
.ア
一
一
01234
01234
110-119
120--129
1
3
0
1
3
9
1
4
0
"
"
'
1
4
9
150--159
+x
府立中学校生徒のI.
Q.分布
f
110
7
9
3
3
7
0
229
110;9
80.4
29.2
8.5
2
2
9
0
.
8
0.70
ある時点と将来の時立との頼関値を予測しうるわけで、,仮 t
己
♂ r
3
6=0.83(狩野資料〉をとれば,
小 学 校 3年時と 15歳の時のI.Q
.相関相関係数は 0
.
6
9となり, 18歳
, 21歳 時 と の 相 関 は そ
れぞれ 0
.
5
7
,0
.
4
8と漸次減少する。以上の理論は身長に関しては現笑と良く一致する事が立
証されているが, I
.
Q
. に関しても略主妥当するものと思われるの
1
0
)
。
上越の諸点から,従来主張されたI.Q. の恒常性は上回掛句短期間の場合には当はまるが,期
間が長くなるど恒常性を乱すような変化が表れてくると考えてよいと思う。
IV 集圏内における知能指数の偏侍
I
.Q.が必ずしも常に恒常でないとすれば,それでは如何なる場合に如何なる変動を示すであ
・ろうか。再び集圏のI.Q. 分布についてこの点にふれてみよう。
.
Q
.の分布(鈴木資料〉を I
Iと同じ方法で検
京都府立中学校に入学した生徒の小学在校時の I
定してみると第 5衰のように負方向ではポアソン分布に正方向では偏傍分布によく一致する。
3/..;柄原によって得られた幼稚関保育をうけなかった児童のI.Q.
lO (久保・びねー法)によるに
(
5
5
5
)
ついてみると第 3図の通札前と逆に負方向で偏侍分布に適合する。
こ L に偏侍分布は
IN
-S ,
S ¥n N
F(x)=(一一一+一一)一一
¥ N 'N ノ S
但し, q2=n{N-n+Cn
ーl)S
l
/
N2
x=l,2,3
.
.
.
.
k
に従う理論分布で二項分布の形であるから,
Mが非常に小さく偏侍がなければポアン分布に
二近似すべきであるが,変動が一定方向への偏侍
第 3図幼稚園保育を受けなかった
を示す場合に適用される。
児童の I
.
Q
.分布
従って前者は資質,環境ともに嘉まれた集圏、
としてI.Q; が逓増する気配があり,後者は資
ム
悉
LY -偏侍分布
1
6
"0ト
P=0
.
4
5
質,環境ともに好ましからざる集圏としてI.Q;
逓減の傾向を示す事例として示唆する所がある
1
2
0
ように思う。
最近の調査によって得られた母子の知能差 12)
〈ムで示し母子のI.Q.の子均水準を同一にす
,とする)
るため,ム=子のI.Q.ー母のI.Q.+I0
0
0
0円以下の貧困唐と 4
0
0
0
の分布を,生活費 4
t
円以上の中流唐とに分けて検定すると第 6表の
通り貧困唐では(ーム)の分布は偏侍分布によく
適合し他はポアゾン分布に従う。従って貧困世
.相対
帯にあっては,母から子t
ζ かけてがI.Q
8
0
4
0
.
9.
Q
.
x
的に著しく低下してゆく傾向があると考えられる。
勿論以上は測定尺度の問題とも関聯するが,発育期の児童のI.Q.が
, その主体的僚件と環
第 6表貧富別にみた母子の知能差(ム)の分布
ム
1-10
1
1
-20
2
1
.
.
.
.
.
.
.
3
0
31.
.
.
.
40
中
f
1
9
14
12
3
。
P
1
8
.
0
1
7
.
0
8
.
6
3
.
7
F
20.
17
19
16
8
2
1
9
.
4
1
6
.
3
6
.
9
4
2.
0
.
8
5
J
F
2
2
.
4
2L7
1
0
.
5
4
6.
10
4
0
.
3
0
P
--9
1
0
.
.
.
.
.
.
.
1
9
-20--ー29
3
0
.
.
.
.
.
.
.
3
9
4
0
.
.
.
.
.
.
.
4
9
流 唐 │ 貧 困 層
f. j ボアソシ
偏侍
J
Fポアソシ
0
.
3
0
20
12
13
0.08
1
7
.
6
1
7
.
3
8
.
5
20.6
1
4
.
7
8
.
5
3
.
6
3
.
2
0
.
2
0
ニ境保件との交互作用によって一定の仕方で変動すると云う面も考えなければならなし、。而して
この間の事情が I
I
Iに於て述べた同一個人におけるI.Q. の変動と結びつくことは容易に推察
(
5
5
6
)
されるであろう。
従って従来I.Q. の恒常性に関して種々論議されて来たが,
このように特殊な集圏内には
I
.Q.の一定方向への変動(偏傍〉を示す個人が含まれていると云う事,従ってI.Q. も保件によっ、
ては上昇若くは下降せしめうると云うことは認めてい与と思う。この点は IOWA学 涯 の 孤 児
や養子に関する研究や CHICAGO大学の双生児についての実験結果と相遇じるものである。
む す び
いくつかのI.Q
.及びその変動の分布構造を検討して次の結果をえた。
1
. 従来の代表的な知能検査による I
.
Q
.の分布は,統計的な意味では正規分布に従わない。
2
. I
.Q. の分布の中心を O と Lて中心からの変動の分布を正負の方向別にみると
a
.1E方向ではI.Q
.2
0段階ではポアソン分布に従い, 1
0段階ではポリヤ・コミツゲ、ンベルガ
ーの分布に趨合する。
b
.負方向ではI.Q.20段階の場合ポアソン分布に従わず, 1
0段階ではポリヤ・ヱツゲ、ンペ
ルガ{か叉は偏侍分布に適合する。
3
. 同一個人の再検査によるI.Q
.の変動量の分布について,期間が短い場合にはホ。ア只ン
分布に適合し, I. Q. の恒常性を認めうるが,期間が長くなるとポアソン分布は棄却されI.Q~
の恒常陸は認めがたくなる。この点は相関理論からも云いうる。
4
. 資質・環境ともに恵まれた児童群ではI.Q
.分布は正方向で偏傍分布を,負方向でポア
ソン分布を示し. I
.Q.逓増の傾向がさらり, しからざる児童群では建の傾向を認めちるよう
である。
以上はわれわれにI.Q
. の遺俸傾向と与もに,環境保件によってもI.Q.が変化しうること
を示唆しこの方法によって集圏のI.Q. に関する特性を推測しうることを教えている。
絵りに校閲,御指導をいたどいた桐原所長,狩野主任先輩誇兄に厚く御礼申し上げる。
参考文献
1
) 田中正吾:知能の心理と教育, 131-137,金子書房,昭 2
8
.
2
) 読み書き能力調査委員会: 日本人の読み書き能力,東犬出版部, 1
9
5
1
.
3
) 鈴木治太郎: 笑蜘句個別的知能浪院法, 24,東洋図書,昭 1
4
.
4
) 田中寛一: 問中・びねー式知能検査法, 303-305,世界最士,昭 2
2
.
5
) 労研資料:軽金属工業労働に関する労働科学的研究第ー報告, 9
.昭 2
7
.
,F
.N.: Mental+
,
田t
s
,343-345,HoughtonMi飼i
nC
o
.,1
9
2
6
.
6
) Freeman
7
) 狩野広之: 児童の知能発蓬の逐年的研究, 31-45,東洋書館, 1
9
5
2
.
8
)鈴木治太郎: 知能測定尺度の客観的根拠,東洋図書,昭 1
1
.
9
) 吉岡久二:鹿際医学, 2
2
(
5,7
),昭 1
7
.
8
),2
0
1
5,昭 1
3
.
1
0
) 村山午朔: 十全会雑誌, 43(
1
1
) 桐原謀見,. 児童研究所記要, 10,8
7
1,昭 2,
1
2
) 未発表資料.
(受付:1953年 6月初日)