IEEE 802.11規格に準拠した無線LANデバイスのテスト

IEEE 802.11規格に準拠した
無線LANデバイスのテスト
Application Note
はじめに
無線LAN機能は、
スマートフォン、
デジタル・カメラ、
プリンタ、
タブレット、HDTV、
ブルーレイ・プレーヤなど、多くの製品に組
み込まれています。このため、家庭、学校、企業のあらゆるネットワークで同時接続がますます増加しています。個々の接続
では高速データ・レートが必要でなくても、需要が累積すれば全体のデータ・スループットに対する要求は高くなります。
このような状況に対して、新世代のIEEE 802.11規格(802.11a/b/g/n/ac)は高いスループットと広い帯域幅を実現し
て、
データ容量の増大に対応しています。規格が進化しても、基本的な要件として過去の規格に対する互換性は残ります。
例えば、DSSSやFHSSなど従来の規格で使用されていた変調方式は、OFDMやMIMOなどの新しい規格に引き継がれて
います。
進化し続ける802.11規格と製品は、研究開発からデザイン検証、製造まで、無線LANおよびWiFi用のトランスミッタ/レ
シーバ/トランシーバのテストに重要な影響を及ぼします。レシーバとトランシーバのテストには、802.11無線接続規格
で採用されているI/Q変調方式の信号を出力できるベクトル信号発生器を使用する必要があります。Keysight Signal
Studioなどのソフトウェアを使用すれば、テスト信号の作成だけでなく劣化も追加でき、その波形をベクトル信号発生器に
ダウンロードできます。
トランスミッタとトランシーバのテストには、十分な周波数レンジと解析帯域幅を備えたシグナル・アナライザが必要です。
Keysight N/W9077A無線LAN測定アプリケーションはKeysight Xシリーズ シグナル・アナライザ上で動作し、規格に準
拠した測定/解析が行えます。この測定アプリケーションでは、合否判定付きのワンボタン測定が可能です。
このアプリケーション・ノートでは、802.11a/b/g/n/acを中心にトランスミッタ/レシーバのテスト要件を幅広く解説して
います。また無線LANテスト用のKeysightのテスト機器、
ソフトウェア、測定アプリケーションの概要についても紹介してい
ます。
目次
802.11の進化 ........................................................................................ 3
周波数チャネルとフレーム構造 ................................................................ 4
フレーム構造:802.11a ................................................................... 4
フレーム構造:802.11b ................................................................... 5
フレーム構造:802.11g ................................................................... 6
フレーム構造:802.11n ................................................................... 7
フレーム構造:802.11ac ................................................................. 8
トランスミッタ・テスト............................................................................... 9
レシーバ・テスト ..................................................................................... 11
まとめ .................................................................................................. 12
関連情報 .............................................................................................. 12
2
IEEE 802.11の進化
1997年に802.11の初期バージョンがリリースされて以来、新しいアプリケーションに対応
するために、
また、最高のデータ・レートの要求に応えるために、規格は進化を続けてきまし
た。進化に伴って修正が継続的に行われ、物理層の定義も変更されてきました
(表1)。
表1. 802.11規格の進化の概要
IEEE規格
リリースされた年
注記
802.11
1997
周波数ホッピング・スペクトラム拡散( FHSS )方式または直接シー
ケンス・スペクトラム拡散(DSSS)方式を採用して、2.4GHzバンドで
1Mbps/2Mbpsの伝送を実現
802.11a
1999
5GHzバンドで周波数分割多重化(OFDM)方式を採用して、54Mbpsの
高速接続を実現
802.11b
1999
2.4GHzバンドでDSSS方式を採用して、11Mbpsの高速接続を実現。
信号強度によって5.5/2/1Mbpsにフォールバックが可能
802.11g
2003
2.4GHzバンドでOFDM方式を採用して、54Mbps接続を実現
802.11n
2009
さまざまな機能拡張により、無線LANの距離、信頼性、
スループットが
向上。物理層は、例えば、マルチ入力マルチ出力
(MIMO)
、20/40MHz
の帯域幅に対応。2.4/5GHzバンドで動作し、最高600Mbpsのデータ・
レートを実現。HT LAN
(High Throughput LAN)
とも呼ばれます。
802.11ac
2012(ドラフト版)
5GHzバンドで1Gbpsの超高スループット(VHT)のデータ・レート(期待
値)
。最高160MHzのRF帯域幅、256QAMなどの高次変調、最大8個の
MIMO空間ストリームを使用可能。
802.11gが策定されると802.11aや802.11bよりも使用されるようになり、この規格はコン
シューマ向けとビジネス向けの両方の用途に広く採用されました。802.11aと802.11gは
同じOFDM変調方式を使用していますが異なる周波数バンドで動作します。動作周波数は、
802.11aが5 GHz、802.11gが2.4 GHzです。802.11gには従来の規格に対する互換性も
要求されています。後に802.11n規格が策定されると、WiFiネットワークを使用して、
より
高速に、
より広いエリアで、多くの通信ができるようになり、飛躍的に進歩しました。IEEEは
802.11nの物理層に3つのモードを定義し、後に802.11a/b/gはレガシー・テクノロジーと定
められ、802.11nはこれらに対する互換性を要求されています。
これらも注目に価します:
規格には3つの次期バージョンがあり、
̶ 802.11pは車載アプリケーション向けにデザインされています
̶ 802.11adは60 GHz周波数バンドのVHT向けです
̶ 802.11afは、
テレビ信号がアナログからデジタルに移行した後に使用される周波数バンド
での無線LAN動作をサポートします
3
変調方式について
各 802.11 規格では以下の変調方式
が使用されています。
直接シーケンス・スペクトラム拡散
(DSSS)
:
データ・ビットにBarkerキーという特殊
なビット・パターンを乗算して、単一の
キャリアを広いスペクトラムに拡散し
ます。通常、
このキーは11ビットのパ
ターンですが、802.11bでは11MHz
のチップ・レートで8ビットのキーを使用
しています。このため、狭帯域の信号
による干渉が減少します。
相補コード・キーイング
(CCK)
:
Barkerコードを補完するために使用
されます。CCKでも2Mbpsのデータ・
レートを実現できますが、伝送距離を
短くして狭帯域の干渉に対する耐性
を上げる必要があります。
パケット・バイナリ・コンボリューショナル・
コーディング
(PBCC)
:
フォワード・エラー訂正を使用して、不
要なノイズがある場合でもリンク性
能を向上させます。スクランブルさ
れたデータがコンボーショナル・エン
コーダに入力されます。エンコーダは
6ステージのメモリとタップから構成
され、それらが組み合わされて2つの
信号が出力されます。組み合わせ可
能な4つの出力ステート
(00、01、10、
11)が1対のQPSKステート(QPSK)
にマッピングされます。コードワード
によって、時間ごとに選択されるス
テートの入れ替わりが制御されます。
直交周波数分割多重化方式
(OFDM)
:
1つの高速レートのデータ・ストリーム
を複数の低速レートのストリームに分
割して、複数のサブキャリアで同時に
伝送します。複数のサブキャリアで並
列に低データ・レート伝送を行うので、
シンボル持続時間が長くなり、
マルチ
パスの伝搬で生じる相対的な遅延の
ばらつき(時間分散)が減少します。
連続したOFDMシンボル間にガード・
インターバルが挿入されるので、符
号間干渉(ISI)
がほとんど影響のない
レベルまで減少します。
周波数チャネルとフレーム構造
802.11 規格は各バージョンで明確にチャネル・セットとチャネル帯域幅を定義しています
(図1)。無線LANは、
タイム・
ドメインで長さと間隔が通常数百µs∼1秒のレンジで変化する
バーストまたはフレームで伝送されます。
802.11b(DSSS)
2.4 GHz
2.5 GHz
チャネル幅=22 MHz
チャネル 1
チャネル 6
チャネル 11
チャネル 14
2.412 GHz
2.437 GHz
2.462 GHz
2.484 GHz
802.11g/n(OFDM)
2.4 GHz
2.5 GHz
チャネル幅=20 MHz
チャネル 1
チャネル 5
チャネル 9
チャネル 13
2.412 GHz
2.432 GHz
2.452 GHz
2.472 GHz
802.11b(DSSS)
2.4 GHz
2.5 GHz
チャネル幅=22 MHz
チャネル 3
チャネル 11
2.422 GHz
2.462 GHz
図1. 2.4GHz バンドでは、802.11b/g/n 規格は、オーバラップのないさまざまな周波数
チャネルを使用しています。
フレーム構造:802.11a
802.11aはOFDMを使用した最初の無線LAN規格で、より狭い帯域でより高いデータ伝
送レートを実現しました。OFDMは312.5kHz 間隔の 52 本のサブキャリアを使用します。
データは48 本のサブキャリア上で同時に送信され、残りの 4 本はパイロットとして使用さ
れます。
2.4GHzの産業科学医療用(ISM)バンドの使用が急増したため、802.11aによって5GHz
の U-NII( Unlicensed National Information Infrastructure )バンドの運用が定義
されました。U-NII バンドは不連続で、2 つのバンドから構成されています。1 つのバンド
は 5.15GHz ∼ 5.35GHz 、もう1 つのバンドは 5.725GHz ∼ 5.825GHz です。両方とも、
20MHz間隔のオーバラップしたキャリアに分割されています。
トレーニン
図2は、802.11aで使用されているOFDMのフレーム構造です。各フレームは、
グ・シーケンス(プリアンブル)で始まり、その後に、SIGNALフィールド、ユーザ・データが
続きます。
トレーニング・シーケンスと24ビットの SIGNALフィールドは6Mbps のレートで
送信されます。ヘッダ( SIGNALフィールド)がレシーバに対して送信レートと長さを通知
し、データを保証します。ヘッダは、サブキャリアが使用している変調方式(BPSK、QPSK、
16QAM、64QAM)も間接的に決定します。
プリアンブル
ヘッダ
6 Mbps BPSK、ハーフレート
10のショート・
2つのロング・
トレーニング
4キャリア毎
トレーニング
キャリアごと
16 µs
(フラグメント化された)
ユーザ・データ
BPSK
“SIGNAL”“Service”
レート
[4] +MAC
予約[1]
ヘッダ
長さ
[12] ユーザ・
パリティ
[1] データの
テイル[6] 開始
4 µs
4 µs
ユーザ・
データ
ユーザ・
データ
ユーザ・
データ
4 µs
最後の
ユーザ・
データ
+パッド・
ビット
+FCS
4 µs
図2. 802.11aのOFDM伝送で使用しているフレーム構造。
4
フレーム構造:802.11b
図 3は、802.11bで使用しているDSSS のフレーム構造です。802.11b の初期バージョン
では、
プリアンプルとヘッダは、規格の伝送速度とは別に、DBPSK変調を使用して1Mbps
で伝送されていました。ユーザ・データは、DBPSK 、1Mbps 、または、DQPSK 、2Mbpsで
伝送されています。
規格が正式にリリースされたときには、相補コード・キーイング
(CCK)規格も含まれていま
した。CCKは5.5Mbps/11Mbpsのデータ伝送に使用されていました。
この規格では、128ビットのロング・プリアンブルの他に56ビットのショート・プリアンブル
も選択できます。ショート・プリアンプルを使用したモードは、SYNCとSFD のフィールドを
1Mbpsで伝送します。残りのヘッダは2Mbps( DQPSK )で送信され、データ・ペイロード
は2Mbps(DQPSK)
または5.5Mbps/11Mbps(CCK)で送信されます。
プリアンブル
ヘッダ
1 Mbps DBPSK
1 Mbps DBPSK
フレーム
開始
デリミタ
(SFD)
(16ビット)
SYNC(128ビット) スクランブルされた1
PSDU-(フラグメント化された)ユーザ・データ
シグナル(8ビット)
サービス
(8ビット)
長さ
(16ビット)
ヘッダのCRC
(16ビット)
可変長
192 µs
ショート・プリアンブル
1 Mbps DBPSK
ヘッダ
2 Mbps
DQPSK
シグナル
(8ビット)
SYNC
サービス
SFD
(56ビット)
(8ビット)
(16ビット)
長さ
スクランブル
reversed (16ビット)
された0
ヘッダのCRC
(16ビット)
PSDU-(フラグメント化された)ユーザ・データ
可変長
FCS
CRC
96 µs
図3. 802.11b、DSSS伝送のフレーム構造(ロング/ショート・プリアンブル)
5
FCS
CRC
フレーム構造:802.11g
過去の規格にも対応できるように、802.11gはOFDMとDSSSの両方を採用しています。
両方の変調方式に対応できる機能は、4 層の物理層によって実現されています。規格で、
これらの層はERP( Extended-Rate Physical)
と定義されていて、
フレーム交換時に共
存します。
トランスミッタとレシーバの両方がこれをサポートしていれば、4 層のどの層で
も選択/使用できます。4層のうち2層は必須で、残りの2層はオプションです:
̶ ERP-DSSS/CCK:必須
802.11bの物理層。データ・レートは1/2/5.5/11Mbps。
̶ ERP-DSSS/PBCC:オプション
802.11b の物理層の一部。パケット・バイナリ・コンボリューショナル・コーディング
(PBCC)でDSSSを使用。データ・レートは22/33 Mbps。
̶ ERP-OFDM:必須
802.11gの新しい物理層。データ・レートは6/9/12/18/24/36/48/54Mbps(2.4GHz
バンド)
̶ DSSS-OFDM:オプション
802.11gの新しい物理層。DSSSでプリアンブルを伝送しOFDMでペイロードを伝送。
データ・レートはERP-OFDMと同じ。
図 4は802.11g のフレーム構造の例です。この例では、DSSS-OFDMでロング・プリアン
ブル・フォーマットを使用しています。
SYNC
長さ
シグナル サービス
SFD
(128ビット、
(16ビット) (8ビット)
(8ビット) (16ビット)
スクランブルされた1)
PLCP
プリアンブル
(144ビット)
OFDM
OFDM
OFDM SYNC
OFDM
シグナル・
シグナル・エクス
CRC
(ロングSYNC、
データ・
(16ビット)
フィールド
テンション
シンボル
8 µs)
(4 µs)
(6 µs)
PLCPヘッダ
(48ビット)
PSDU
(データ変調)
PPDU
図4. 802.11g、DSSS-OFDM伝送のフレーム構造(ロング・プリアンブル、PPDUフォーマット)
6
フレーム構造:802.11n
ハイ・スループット物理層(HT PHY)
が定義され、物理層とMAC層に新しい特性が追加され
ています。重要な変更として、新しいパケット・フォーマット、20/40MHzの伝送帯域幅、新し
い変調/コード化方式(MCS)、MAC層のフレーム・アグレゲーション、MIMOテクノロジー
があります。これらの変更による主な成果は、600Mbpsの高速データ・レートです。
レガシー・モード、
ミックスド・
図5は、802.11n規格がサポートしている3つのフレーム構造、
モード、
グリーンフィールド・モードです。
レガシー・モード
(non-HT)では、802.11a/g OFDMフォーマットを使用してフレームを伝
送します。従来の無線LANシステム
(レガシー・システム)
と新しい802.11n MIMO-OFDM
システムは共存できます。802.11nシステムがMIMO伝送を行う場合でも使用する送信ア
ンテナは1本のみで、
システムはSISOレガシー・システムとして動作します。
したがって、
この
モードにおける送受信は標準的な802.11として動作し、既存の規格に対して互換性をもつ
ことが必須になっています。
ミックスド・モードのパケットは、802.11a/gと互換性のあるプリアンブルを伴って伝送され
ます。ショート・
トレーニング・シーケンス
(L-STF)、
ロング・
トレーニング・シーケンス
(L-LTF)、
シグナル
(L-SIG)の項目には、802.11a/gデバイスが信号をデコードできるようにレガシー
信号を伝送する必要性が記載されています。残りのパケットには、MIMOトレーニング・シー
ケンス・フォーマットが含まれます。このモードでは、802.11n MIMO-OFDMシステムとレガ
シー・システムが共存します。802.11n MIMOシステムには、
レガシー・システム向けにレガ
シー・パケットを、MIMO-OFDMシステム向けに高速パケットを、出力できる機能が必要で
す。
したがって、
このバースト構造はレガシー・システムでデコードでき、MIMOシステムでも
高い性能を実現できるようになっています。
グリーンフィールド・モードはレガシー・システムとの互換性を考慮せずにHTパケットを伝送
します。従来のレガシー・レシーバが存在する場合でも、802.11n MIMO-OFDMシステム間
でのみ伝送が行われます。
non-HT PPDU
Data(LDPCではない場合のみ)
サービス スクランブル テイル・ パッド・
ビット
L-STF
L-LTF
L-SIG (16ビット)されたPSDU ビット
8 µs
8 µs
4 µs
HTミックスド・フォーマットPPDU
L-STF
L-LTF
L-SIG
HT-SIG
HTSTF
HTLTF
8 µs
8 µs
4 µs
8 µs
4 µs
…
HTLTF
データHT-LTF
1LTF=4 µs
HTグリーンフィールド・フォーマットPPDU
HT-GF-STF HT-LTF-1
8 µs
8 µs
HT-SIG
8 µs
HTLTF
…
HTLTF
データHT-LTF
1LTF=4 µs
HTLTF
…
HTLTF
…
Data(LDPCではない場合のみ)
HT- サービス スクランブル テイル・ パッド・
LTF (16ビット)されたPSDU ビット ビット
エクステンションHT-LTF
1LTF=4 µs
Data(LDPCではない場合のみ)
HT- サービス スクランブル テイル・ パッド・
LTF (16ビット)されたPSDU ビット ビット
エクステンションHT-LTF
1LTF=4 µs
図5. 802.11nで使用している3つのフレーム構造。
7
フレーム構造:802.11ac
最新の規格で、1Gbpsという超高スループット
(VHT)
を実現し、5GHzバンドでのみ動作し
ます。高速データ・レートをサポートするために、広帯域チャネル、高次変調、空間ストリーム
数とアンテナ数の増加、
マルチユーザMIMOという4つの特長があります。
̶ チャネル帯域幅:20/40/80MHzは必須、
160MHz/80+80MHzはオプション。
̶ 変調方式:BPSK/QPSK/16QAM/64QAMは必須、256QAMはオプション。
̶ 空間ストリームとアンテナ : 1ストリームは必須、2∼8ストリームの使用はオプション。
送信ビームフォーミングと空間-時間ブロック・コード化(STBC)
はオプション。
ダウンリンクのシステム
̶ マルチユーザMIMO:複数のユーザへの同時送信ができるため、
効率が向上。
以上の特長により、最大データ・レートは6.9Gbpsに達します。
しかし、80MHzチャネル、4本
の送信アンテナ、256QAM変調を使用する一般的な場合では、1.5Gbpsが現実的なレート
です。
図6は、
VHT PPDU伝送のフレーム構造です。プリアンブルとトレーニング・フィールドにより、
レシーバは使用されている物理層規格を自動検出できます。最初のレガシー・ショート・
トレー
ニング・フィールド
(L-STF)
とレガシー・ロング・
トレーニング・フィールド
(L-LTF)
は802.11a/b/
(シンボル6と7)
でフレームが
gで使用されているフィールドに似ています。4番目のフィールド
802.11nなのか802.11acなのかを検出します。
VHT PPDU
L-STF
L-LTF
2シンボル
2シンボル
L-SIG
VHT-SIG-A
VHTSTF
VHT-LTFs
VHTSIG-B
1シンボル、 1シンボル、 1シンボル 1シンボル/LTF、 1シンボル
最大8つのLTF
BPSK
BPSK
1シンボル、
QBPSK
図6. 802.11acで使用されているVHT PPDUフレーム構造
8
VHT Data
トランスミッタ・テスト
無線LANトランスミッタ/レシーバのテスト要件は、
IEEE 802.11シリーズの規格で定義され
ています。表2は、
802.11a/b/g/n/ac準拠のトランスミッタ向けRFテストの要件リストです。
表の各セルに記載されている章に各テストと要件が記載されています。
表 2. IEEE 802.11規格のトランスミッタ・テストのリファレンス番号
トランスミッタ測定
802.11a1999
802.11b1999
802.11g2003
802.11n2009
802.11ac(D5.0)
送信パワー
17.3.9.1
18.4.7.1
19.4.7.1 /
18.4.7.1
20.3.21.3
̶
送信パワー
̶
18.4.7.2
̶
̶
̶
スペクトラム・マスク
17.3.9.2
18.4.7.3
17.3.9.2
20.3.21.1
22.3.18.1
送信スプリアス
17.3.9.3
18.4.6.8
17.3.9.3
̶
̶
中心周波数許容範囲
17.3.9.4
18.4.7.4
19.4.7.2
20.3.21.4
22.3.18.3
シンボル(チップ)
クロック周波数
許容範囲
17.3.9.5
18.4.7.5
19.4.7.3
20.3.21.6
22.3.18.3
中心周波数リーケージ
17.3.9.6.1
̶
17.3.9.6.1
20.3.21.7.2
22.3.18.4.2
パワーの立ち上がり/立ち下がり
̶
18.4.7.6
̶
̶
̶
RF搬送波抑圧
̶
18.4.7.7
̶
̶
̶
スペクトラム・フラットネス
17.3.9.6.2
̶
17.3.9.6.2
20.3.21.2
22.3.18.2
変調精度
17.3.9.7
18.4.7.8
17.3.9.6.3
20.3.21.7.4
22.3.18.4.3
17.3.9.6.3
̶
17.3.9.7
20.3.21.7.3
22.3.18.4.4
コンスタレーション・エラー
(EVM rms)
テストのリファレンス番号が17で始まるものは802.11a、18で始まるものは802.11b、19で
始まるものは802.11gと802.11a/bの一部の項目に適用されます。下位互換性要件に基づ
いて、20、22で始まるリファレンス番号は802.11n/acのシングル・チャネルのみに適用され
ます。
Keysight PXA/MXA Xシリーズ アナライザで使用されるN9077A無線LAN測定アプリケー
ションは、
アナライザ上で動作する無線LANトランスミッタ・テスト測定向けの優れたソリュー
ションです。N9077A無線LAN測定アプリケーションは802.11a/b/g/n/ac規格をサポー
トし、
すべての変調方式で、20/40MHzの802.11n信号と20/40/80/80+80/160MHzの
802.11ac信号に対応しています。1
以下は、
N9077A無線LAN測定アプリケーションで実現できるさまざまな測定、表示、結果の
画面イメージです。
1. N9030A PXA の解析帯域幅は 25/40/85/
160MHz で構成できます。N9020A MXA の
解析帯域幅は25/40/85/125/160MHzで構成
できます。
図8. 送信スペクトラム・マスク測定。
テスト信号は802.11b DSSS、11 Mbps。
図7. トランスミッタ・パワー・レベルのチャネル・パワー測定。
テスト信号は802.11a OFDM、54 Mbps。
9
図9. スプリアス・エミッション測定。
テスト信号は802.11b DSSS、11 Mbps。
図10. 送信中心周波数エラー測定。
テスト信号は802.11b DSSS、11 Mbps。
図11. 変調解析の数値トレースに表示されたシンボル・クロック周波数許容範囲。
テスト信号は802.11a ODFM、54 Mbps。
図12. パワー対時間測定から得られたパワー・アップ/パワー・ダウン測定結果。
テスト信号は802.11b DSSS、11 Mbps。
図13. 802.11a信号のスペクトラム・フラットネス測定。
図14. 802.11a OFDM信号のEVMトレースと結果。
10
レシーバ・テスト
表3は、
802.11a/b/g/n/acに準拠したレシーバ向けRFテストの要件リストです。表の各セル
に記載されている章に各テストと要件が記載されています。
表3. 802.11規格のレシーバ・テストのリファレンス番号
レシーバ測定
802.11a1999
802.11b1999
802.11g2003
802.11n2009
802.11ac(D5.0)
レシーバ最小入力
レベル感度
17.3.10.1
18.4.8.1
19.5.1
19.6.1
20.3.22.1
22.3.19.1
隣接チャネル除去比
17.3.10.2
18.4.8.3
19.5.2
19.6.2
20.3.22.2
22.3.19.2
非隣接チャネル除去比
17.3.10.3
̶
̶
20.3.22.3
22.3.19.3
レシーバ最大入力レベル
17.3.10.4
18.4.8.2
19.5.3
20.3.22.4
22.3.19.4
クリア・チャネル評価(CCA)感度
17.3.10.5
18.4.8.4
̶
20.3.22.5
22.3.19.5
レシーバ・チャネル・
パワー・インジケータ
(RCPI)
̶
̶
̶
20.3.22.6
̶
RSSI
̶
̶
̶
̶
22.3.19.6
縮小フレーム間隔(RIFS)
̶
̶
̶
20.3.22.7
̶
デバイスはさまざまな入力信号の条件に対応しなければならず、
また、
多くの条件は予測が非
常に難しいため、
レシーバのデザインは非常に困難です。802.11規格に記載されている8個
の主要な仕様は、理想的でない信号に対するレシーバの性能特性評価を行うものです。表4
は各テストの目的をまとめたものです。
表4. 主なレシーバ・テストと目的
レシーバ測定
目的
レシーバ最小入力レベル感度
定義された最小レベル、最大パケット・エラー・レート
(PER)でアンテナ・
ポートにおいて無線LANデバイスを測定し、データを受信できることの
確認
隣接チャネル除去/
非隣接チャネル除去
他のチャネルが他のユーザに占有されていても、レシーバが接続を
確立/維持できることの確認
レシーバ最大入力レベル
トランスミッタとレシーバの距離が近接している場合でも、無線LANカー
ドが接続/送信のセットアップをできることの確認。定義された最小レベ
ル、最大パケット・エラー・レート
(PER)
でアンテナ・ポートにおいて被試験レ
シーバを測定し、
データを受信できることの確認
クリア・チャネル評価(CCA)感度
使用予定の伝送チャネルが空いているのか、他の無線LAN接続によって
使用されているのかを、CCAによって検出
レシーバ・チャネル・パワー・
インジケータ
(RCPI)
RSSI
802.11n 規格。選択したチャネルでRCPI 値を使用して受信 RFパワーを
測定。アンテナ・ポートにおける測定
802.11ac規格。RSSIをプリアンブル中に測定し、それが単調であること
を確認。結果はレシーバのMACプロセッサにのみレポートされる。信号
トランスミッタにはレポートされない
11
レシーバとトランシーバのテストには、802.11無線接続規格で使用されているI/Q変調方式
の信号を出力できる測定器
(例えば、
Keysight N5182B MXGベクトル信号発生器など)が必
要です。無線LAN用のKeysight Signal Studio
(N7617B)
などのソフトウェアを使用すれば、
テスト信号の作成だけでなく劣化も追加でき、
その波形をベクトル信号発生器にダウンロード
できます。
まとめ
すべての新世代のIEEE 802.11規格は、高速化と帯域幅の拡張によってデータ容量の増大
に対応しています。進化し続ける802.11規格とそれに準拠する製品は、研究開発、
デザイン
検証、製造における無線LANおよびWiFi用のトランスミッタ/レシーバ/トランシーバの
テストにさまざまな問題をもたらします。測定器からソフトウェアまでKeysightが提供する
テスト・ソリューションは、今日だけでなく将来の新しい規格にも対応できるようにデザイン
されています。
関連カタログ
Application Note 1509, Keysight MIMO無線LAN物理層の測定、
カタログ番号5989-3443JAJP
Testing New-generation Wireless LAN、
カタログ番号5990-8856EN
Creating and Optimizing 802.11ac Signals and Measurements、
カタログ番号5991-0574EN
Web
www.keysight.co.jp/find/WLAN
www.keysight.co.jp/find/X-Series_sg
www.keysight.co.jp/find/X-Series
www.keysight.co.jp/find/n7617b
www.keysight.co.jp/find/n9077a
myKeysight
www.keysight.co.jp/find/mykeysight
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www.lxistandard.org
LAN eXtensions for Instruments puts the power of Ethernet and the
Web inside your test systems. Keysight is a founding member of the LXI
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Published in Japan, January 15, 2015
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