小篠弘子パリ個展レポート

2014.04.10
Copyright@ HIROKO KOSHINO
小篠弘子パリ個展レポート パリ左岸、約 100 軒のギャラリーが集まるサンジェルマン・デプレ地区。エコール・デ・ボザール(国
立高等美術学校)に程近い老舗画廊、ギャルリー・ニコラ・ドゥマンにて小篠弘子の個展が開催され
ています。4 月 3 日、オープニング・パーティーの前のリラックスした雰囲気の中で、今回の展覧会
やアーティストとしての思いについて語ってもらいました。 Q:パリでアートの展覧会を開催されるのは初めてですか?
小篠(以下、HK):パリで絵画の個展を開催するのは今回が 2 回目となります。一昨年はマレ地区の
ギャラリーで新作を中心に発表させて頂きました。それ以前にも建築博物館や装飾美術館で、ファッ
ションとアートのコラボレーション形式の展覧会を開催したことがあります。
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Q:やはりパリには特別な思いがあるのでしょうか?
HK:アートの発表の場にパリを選んだのは、ここで長くファッションの仕事をしてきたからです。長
年培ってきた経験から、パリのファッション界における自分の実力はある程度わかっています。でも
アートの世界は私にとって未知の分野。現在のフランスのアートシーンで、自分の力がどれだけ通用
するのだろうかと思っていました。
Q:作品の特徴や見どころは?
HK:鳥のモチーフにゴールドを多用した大きな作品は、グスタフ・クリムトへのオマージュです。他
には異次元の世界のイメージをふくらませた作品などを選びました。私の絵はひとつのテーマに押し
込めるというのではなく、描いている内にテーマがエスカレートして行きながら世界ができるのです。
また、私の作品には、かなりの数の布が使われています。何年も布に触れてきたお陰で、私はテキス
タイルの面白さや個性を知っているので、それを絵の中に取り入れています。他にも和紙や墨、金な
ど色々な素材を使って表現しています。例えば下絵の上にシルクを張り、さらにゴールドを乗せてし
まうといったように。こうした手法が使えるのもデザイナーだからでしょうか。絵の専門の方は、布
のことはわからないでしょうが、私は絵に関しては素人ですから、自分が表現したいものを考えて、
自分で表現方法を編み出しています。
Q:何か判断の基準があるのでしょうか?
HK:ファッションでもアートでも、自分が「いい」と思ったものはいい。そうした自信を持って創っ
ています。嫌いなものは創りません。嫌いというのは既に古い過去のもの。だから私のものではない
のです。また、時間をかけて仕事をするのが良いとは限りません。密度の高い集中力を持てるかどう
か、それは訓練次第です。忙しいけど、したいことも一杯ある。でも時間は限られているから、その
中でできることをする。そしてやり過ぎてもいけません。絵もそうです。ここで終わりと決めるのは
自分の感性。例えばこれはダメだなと思ったら絵の上に絵具をザーっとかけて白紙に戻すのです。す
ると表面に面白いテクスチャーが出てくる。そうした発見をするのも楽しいですね。
Q:パリの皆さんへのメッセージを!
HK:私は自分の生きざまを大切にして、ものづくりをしてきました。フランスの洋服の良さは知って
いますが、クリエーションの真似はしていません。私はこれからもこの国のアートから刺激を受け、
そこから発想したり、自分の作品を高めて行きたいと考えています。そして新しい感覚を持った日本
人として、フランスに刺激を与えられる存在になれたらいいなと思っています。この素晴らしいギャ
ラリーのオーナー、ニコラさんとも非常にいい形で仕事ができました。これもひとつの財産です。多
くの皆さんに私の絵を楽しんで頂けることを願っています。
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このインタヴューの後に開催されたオープニング・パーティーは、熱心なアートファンやコレクター
をはじめ、アーティスト、デザイナー、クリエイターなど約 150 人ものお客様で賑わいました。以下
に会場でお聞きした皆さんの感想を記しておきます。
「鳥をモチーフにした大きな作品がとても強く印象に残りました。4 枚のパネルを用いて、布を使った
巧みなアートワークに日本らしさを感じました。」 (フランソワ・ド・ルーベさん/アートコレクター)
「今回の展示で最も印象的なのは、鳥の作品です。このギャラリーを訪れる人々は、すべての作品を
見ながら空間を 1 周すべきです。白い壁に掛けられた黒い作品、このコントラストが何より素晴らし
い。作品にふさわしいナチュラルな空間です。2 年前の個展も素晴らしかったが、今回はスタイルが変
わり、より優れた作品になったと思います。」 (ジャン・ベルナール・ボスケ・ドゥニさん/弁護士)
「ファッションデザイナーとアーティスト、両方の仕事をしていることが小篠さんの強みだと思いま
す。ブランドを主催していてもアートディレクターは別にいる人って結構多いんですよ。でも彼女は
違う。全部自分で決めています。作品もどんどん進化していて凄いと思う。これからは洋服をオブジ
ェにしたり、彫刻のような作品を作りたいとおっしゃっているので、とても楽しみです。」 (舟田千秋さん/テキスタイルデザイナー)
「前回よりも随分作品が変わりましたね。ヒロコ先生は、固く気張って物事をやりたくない方。だか
ら今回はこれ、次はこれと自分のキャパシティを広げながら旅をしているような感じでアートワーク
をしているように思います。墨を主役にした作品から出発して、それが旅をして、円熟したり、変化
したり。今回の作品には、モチーフとして鳥がいたり、骸骨があったりとミステリアスです。」 (入江末男さん/IRIÉ デザイナー)
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■この展覧会は、4 月 19 日(土)まで、下記にて開催中です。
Galerie Nocolas Deman
12 rue Jacques Callot 75006 Paris
Open: 11:00~13:00、14:00~19:00
Tel: +33 (0)1 43 26 99 73
E-mail: [email protected]
Website: http://www.galerienicolasdeman.fr
■お問い合わせ先
KH ギャラリー銀座
担当:石井 中村 川井
TEL:03-5159-6877 FAX:03-5159-6878
E メール:[email protected]
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