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Future Internet
(朴研究室)
Named Data Networking研究
大規模モバイルSNSへの応用研究
現在のインターネットはTCP/IP技術が使用されています。TCP/IP技術は1975年頃から作られ始
め、1982年に仕様がほぼ決まりました。TCP/IP技術は軍事技術、計算機科学などの共同研究に利
用されていたARPANETと呼ばれる通信ネットワークがもとになっており、そのARPANETのデータ通
信を行うためにTCP/IPが研究開発されました。その後、 TCP/IP技術はUNIXやWindowsに搭載さ
れ、この技術を用いたネットワークの普及し、人々は多くの恩恵を受けてきました。その一方で、ネッ
トワークの用途が時代に合わせて変化し、現在のTCP/IP技術では、将来のインターネットの用途の
拡大を予想する時、多くの問題があります。
【TCP/IP技術の欠点】
 かつてのインターネットの用途はファイル転送などの特定の場所との情報共有が主な用途であっ
たため、端末同士で直接通信を行う通信形態が構築されてきた。しかし、現在はインターネット
を介してコンテンツを共有することが主な用途となっているため、通信形態が適さなくなっている。
 トポロジーの変化が多いモバイル端末の普及に対して、TCP/IP技術では位置アドレスに基づく
通信を行うため効果的でない。
 研究者が主に利用すると考えられていたため、セキュリティの考慮がされていなかった。
これらの問題点を解決し、さらにユーザの需要を満たすネットワークを開発する為 、Future
Internetの研究が始まりました。 朴研究室ではFuture Internetの中でも特にInformation Centric
Networking (ICN) の研究を行っています。ICNはホスト間の位置情報に基づく通信に変わり、コンテ
ンツ名に基づいた通信を可能とする全く新しいアーキテクチャの総称です。代表的なICNアーキテ
クチャとしてNamed Data Networking (NDN) 、PURSUIT、SAILなどが挙げられます。
コンテンツ
サーバー
コンテンツ
自体への
セキュリティ
: Interest Packet
: Data Packet
キャッシュを利用した
コンテンツの送受信
大規模NDNネットワーク
効率的な通信を実現する
ネーミングと転送技術
SNSに最適化された
セキュリティ
Push型通信技術
ネットワーク内
パケット統合技術
モバイル環境を前
提とした通信技術
文部科学省および日本学術振興会の科学研究費助成事業によって支援される研究プロジェクトと
して、「コンテンツ指向ネットワークにおける大規模モバイルソーシャルネットワークサービス」技術の
研究を行っています。本研究ではネットワーク技術の観点からソーシャルネットワークサービスにおけ
る通信の効率化や大規模なモバイルネットワークを支えることを目標としています。目標の達成に向
けて、私たちは以下の項目について重点的に研究を進めています。
【プロジェクトにおける主な研究項目】
① SNSに適したNaming方式の考案と効率的なパケット転送技術
② Push型通信技術
③ ネットワーク内パケット統合・分割技術
④ SNSに最適化されたネットワークセキュリティ技術
NDNにおける電車乗客へのコンテンツ先回り配信
コンテンツ
サーバ
Interest
Data
Interest
Data Interest
直接
NDNの通信イメージ
特にNDNはFuture Internetとして世界的に大きな注目を集めています。NDNの通信は2種類のパ
ケットと3種類のテーブルを持つ特殊なNDNルータにより実現されます。
【NDNパケットの種類】
 Interest Packet:ユーザがコンテンツを要求するために用いられるパケット。要求するコンテンツ
の名前を”Parklab/MovieA.mpg”のように直接指定することで通信を行うことができる。
 Data Packet:要求されたコンテンツをユーザへ送信するために用いられるパケット。
【NDNルータの構造】
 Content Store (CS):転送したData Packetを一時的にキャッシュするために用いられる。同様の
コンテンツを要求するユーザが存在する場合、サーバに代わりコンテンツを配信することができ
る。
 Pending Interest Table (PIT):転送したInterest Packetのコンテンツ名と受信したインター
フェースを記録するために用いられる。Data Packetを受信した際にPITの情報を基にユーザへ
パケットを転送する。また、Data Packet転送後にPITの情報は削除される。
 Forwarding Information Base (FIB):コンテンツソースへのインターフェースとコンテンツの名前
が記録されており、NDNにおけるルーティングテーブルの役割を果たす 。ルータがInterest
Packetを受信した場合、FIBの情報に基づいてパケットをコンテンツソースへ転送する。
これらにより実現されたNDNは下記のような特徴を持つ通信を行えます。
【NDN通信の特徴】
 IPアドレスのような物理的な位置を示す識別子を用いず、要求するコンテンツの名前を直接指
定するだけで通信を行うことができる。
 ネットワーク上の負荷が集中せず、トラフィックが分散される。
 ネットワークに流れるコンテンツを一時的にキャッシュ(保管)することで、別のユーザはサーバにア
クセスせずにコンテンツを取得できる。
 ネットワーク上にコンテンツがキャッシュされるため、パケットロスが発生した場合に再度サーバへ
要求メッセージを出す必要がなく、サーバへの負荷が軽減される。また、モバイル環境に本質的
に適している。
朴研究室では、NDNを中心としたFuture Internet技術の研究を行っており、効率的なモバイル通
信の実現、災害時のアドホックネットワーク通信、ネットワークセキュリティなどのネットワーク技術に関
する様々な課題に取り組んでいます。
現在プレ 駅A到着
イ位置
予定時刻
先回り
Data
Interest
駅C
駅B
駅A
Interest
Data
駅B到着
予定時刻
Interest
Interest
駅C到着
予定時刻
先回り
先回り
動画プレイヤーのシークバー
近年、スマートフォンやタブレット端末が普及し、ネットワークを通じて配信される高精細な動画の視
聴が増えてきました。高精細な動画はデータサイズがとても大きく、携帯電話のキャリアでは、多くの
ユーザが継続的に大容量の通信をすることが依然として困難です。
NDNではルータにコンテンツをキャッシュできる為、既存のネットワークよりもネットワークトラフィック
を減少できます。本研究ではそれを発展させ、次に到着する駅と到着予定時刻があらかじめ分かる、
という電車の特徴を利用して、効果的な場所(次の到着駅にあるルータ)に動画の一部をあらかじめ
キャッシュさせます。これを先回り配信といいます。携帯電話ネットワークの使用を減らし、効率的な
通信を実現することを目指します。
Green ICN
Green ICNではICNにおいてエネルギー効率の観点から効率化する基盤技術を研究し、構築する
ことを目的としています。ICNはスケーラブルで非常に期待されているアーキテクチャである反面、
実現に向けて多くの課題が残されています。例えばコンテンツの名前の付け方、効率的なルーティ
ング方式、セキュリティ、モバイル環境での通信などがあります。Green ICNではこれらの問題に関し
て高いスケーラビリティを持ち、エネルギー効率のよい通信を実現するために研究を行っています。
本プロジェクトでは以下のシナリオに基づいて効率的なICN基盤を構築する研究を進めています。
 地震や津波などの災害時のようにエネルギー効率が非常に重要となる場合に省エネルギーで災
害情報や非難情報を配信する
 スケーラブルかつ効率的な動画配信システム。また、災害時には上記のシナリオを実現すること
のできる基盤となる
また、Green ICNでは新規にサービスを展開できるような機能性の高いAPIを構築します。本プロ
ジェクトではICNのデザインにおいて重要な役割を持つ研究者も多く関わり、Green ICN技術の向上
や実用化、全く新しい省エネルギーICN実現に大きな期待があります。さらに、Green ICN技術の標
準化に向けて準備が進められています。
朴研究室ではGreen ICN実現に向け、NDNにおけるモバイル通信の効率化に関する研究を進め
ています。この研究では単純に端末が移動した際に高速かつ途切れない通信を維持するだけでなく、
本来のNDNの通信基盤をそのままの形で維持しつつ通信プロトコルを構築することにより余分なエネ
ルギー消費を削減する技術を研究しています。
この目標を実現するため、我々は以下の観点から研究を進めています。
 端末が移動した際のルータのオーバーヘッド削減。
 移動により生じるパケット再送回数の削減。