Kwansei Gakuin University Repository

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Title
TiCl₄-amine 反応剤を用いるα-ホルミルチオエステルの合成とαヘテロ原子置換エステルの aldol 型付加反応
Author(s)
伊藤, 佑太朗
Citation
関西学院大学
Issue Date
URL
http://hdl.handle.net/10236/12345
Right
http://kgur.kawansei.ac.jp/dspace
2013 年度
修士論文要旨
TiCl4-amine 反応剤を用いるα-ホルミルチオエステルの合成と
α-ヘテロ原子置換エステルの aldol 型付加反応
関西学院大学大学院理工学研究科
化学専攻 田辺研究室 伊藤 佑太朗
Ti-Claisen 縮合を用いる -ホルミルチオエステル合成
Claisen 縮合は有機合成上基本的かつ重要な C-C 結合形成反応である。しかし,-水素
を有する異なる二つのエステル間の Claisen 縮合は,目的の交差縮合に加え,自己縮合も併
発するため,一般性の高い交差型 Claisen 縮合は極めて限られている。ところで,ギ酸エス
テルは -水素を欠くため,これを求電子剤として用いる交差型 Claisen 縮合は,一炭素増炭
反応として有望である。しかし,塩基を用いる方法は,基質一般性が劣る。
当研究室では TiCl4-amine 反応剤を用いた -ホルミルエステルの基質一般性の高い効率
的合成法を見い出している。さらなる展開としてチオエステルを求核剤として用いたところ,
目的の -ホルミル化が温和な条件下,
HCO2Me (3.0 eq.),
CHO
TiCl4 (2.0 eq.), iPr2NEt (2.4 eq.)
短時間,高収率で反応が進行すること 1
1
R
COSR2
COSR2
R
/ CH2Cl2, 0  5 oC, 1 h
を見出した。
7 examples; 52 - 84%
次に,TsCl と N-メチルイミダゾー
ルから形成される高活性なスルホニルアンモニウム塩中間体を利用する,-ホルミルチオエ
ステルの (E)-,(Z)-立体補完的エノールトシル化を見出した。-ホルミルチオエステルに
TsCl-NMI-Et3N を作用させると高 (E)-選択的に,TsCl-NMI-LiOH を作用させると高
(Z)-選択的にエノールトシル化が進行する。
1.
TsCl (1.2 eq.), NMI (1.2 eq.), Et3N (1.2 eq.)
/ Toluene, 0 - 5 oC, 1 h
OHC
n
COS- Oct
TsCl (1.2 eq.), NMI (1.2 eq.), LiOH (1.2 eq.)
COS-nOct
TsO
76 % E / Z = >99 : 1
OTs
COS-nOct
/ Toluene, 0 - 5 oC, 1 h
70 % E / Z = 13 : 87
また,,-二置換チオエステルを基質として同様の反応を行ったところ,目的の -ホ
ルミル化体は得られず,一旦得られた -ホルミル化体にもう一分子のチオエステルが求核
攻撃をしたと考えられる化合物が主生成物として得られた。これは,中間体である -ホル
ミル化体の反応性が高く,さらにチオエステルエノラートと反応がタンデム型に進行したた
めと考えられる.ところで,この型のタンデム反応は対応するエステルの場合は全く進行せ
ず,チオエステルに特有な新規反応の一つである点で興味深い.
R
HCO2Me (3.0 eq.),
TiCl4 (2.0 eq.), Et3N (2.4 eq.)
R
R
n
COS- Oct
/ CH2Cl2, 0  5 oC, 1 h
OHC
R
COS-nOct
R
R
COS-nOct
OH
n
Oct-SOC
COS-nOct
R RR R
4 examples; 47 - 99 %
-ヘテロ原子置換エステルの Ti-aldol 型付加反応
aldol 付加反応は有機合成上,基本的かつ重
LDA
O
PhCHO
O CO Me
要な C – C 結合形成反応である。エステルの
CO2Me
2
X
CO2Me
Ph
Ph
-位に脱離基を有するエステルを基質とする
X
と,従来の塩基法では,Darzens 反応が進行し,
中間体である aldol 付加体を得ることは困難である。
そこで,TiCl4-amine 反応剤を用いる ヘテロ原子置換エステルの aldol 型反応を試みたところ,目的の aldol 体が高収率で得られ
ることを見い出した。
2.
また,得られた aldol 型付加体の水酸基をメシル化し,次いで DBU や tBuOK などの塩
基を作用させて脱離反応を行うと,予期に反し,syn-, anti-付加体両方とも (Z)-三置換 , 不飽和エステルを立体選択的に与えることを見い出した。単純な立体特異的な脱離反応では
ないと考えられる。
この反応で得られた -ヘテロ置換 ,-不飽和エステルは近年進歩が著しいクロスカッ
プリング反応のパートナーとしての利用,すなわち多置換 ,-不飽和エステルの新規合成
法として期待できる。