科学技術小委員会 - 一般社団法人 日本航空宇宙工業会

平成26年9月 第729号
国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)科学技術小委員会
「宇宙活動の長期的持続可能性」に関する議論について
外務省総合外交政策局宇宙室 岸人 弘幸
平成26年6月11日から20日、オーストリアのウィーンで国連宇宙空間平和利用委員会
(COPUOS)第57会期が開催された。本会期中に行われたCOPUOS科学技術小委員会に
おける議題「宇宙活動の長期的持続可能性」に関する議論の概要を報告する。
1.国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)
国、国際組織や非政府団体のためのボランタ
について
リーなガイドラインの作成を目的とし、その
国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS:
ため2011年6月のCOPUOS第54会期で開催さ
Committee on the Peaceful Uses of Outer Space)
れたWGにおいて、以下の4つの専門家会合
は、1959年の国連総会で採択された「宇宙空
間の平和利用に関する国際協力」と題する決
議によって、国連の常設委員会として設置さ
れた。COPUOSは、宇宙空間の研究に対する
援助、情報の交換、宇宙空間の平和利用のた
(EG)が設置された。
・EG-A:地上における持続可能な開発の
ための持続可能な宇宙利用
・EG-B:宇宙デブリ、宇宙運用及び宇宙状
況監視
めの実際的方法及び法律問題の検討を行い、
・EG-C:宇宙天気
これらの活動を国連総会に報告することを任
・EG-D:規制体系及び新規参入者に対す
務としている。現在の構成国は76ヵ国である。
るガイドライン
COPUOSの下には、宇宙活動に係る諸問題に
我が国は、将来的な宇宙活動に大きく影響
ついて科学技術的側面から検討を行う科学技
する本件議論を重要視しており、小原隆博東
術小委員会(科技小委)と、宇宙活動により生
北大学教授をEG-C共同議長として擁立すると
ずる法律問題について検討を行う法律小委員
ともに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や
会(法小委)が設置されており、COPUOS本委
産業界の専門家を全てのEGに登録している。
員会と2つの小委員会は、それぞれ年1回ウィー
そして、我が国から法的・技術的観点から本
ン(オーストリア)において開催される。
議 題 に 資 す る 情 報 を 提 供 す る(A/AC.105/
C.1/2012/CRP.15)ほか、2013年の科技小委第
2.宇宙活動の長期的持続可能性について
50会期において開催された「宇宙活動の長期
「宇宙活動の長期的持続可能性」は、2010
的持続可能性ワークショップ」において我が
年の科技小委第47会期から4年間の多年度議
国からも産業界を代表して日本航空宇宙工業
題として議題化され、南アフリカのピーター・
会(SJAC)が講演を行う等、積極的に議論に
マルチネス氏(南アフリカ天文台宇宙科学技
貢献してきた。本年2月の科技小委第51会期
術部長)を議長とする作業部会(WG)が設
では、EG-A、C及びDの報告書が完成し、各
置された。本WGは、宇宙活動の長期的持続
EGにおける議論の結果であるガイドライン案
可能性に関する報告書および宇宙活動を行う
をもとにマルチネスWG議長が作成した報告
5
トピックス
書案(A/AC.105/C.1/L.339)が議論された。
年2月の科技小委においてWG報告書を完成
し、COPUOS第57会期において作業を終了す
3.COPUOS第57会期の結果概要
る予定であった。しかし、本年2月の科技小
本年6月11日から20日にかけて開催された
委では、地球近傍の宇宙監視に関する情報を
COPUOS第57会期では、本年の科技小委第51
統合するセンターを国連の下に設立すること
会期及び法小委第53会期の報告に関する議論
等がロシアから新たに提案されたほか、マル
等が行われた。会期冒頭には、第55会期(2012
チネスWG議長から、現行のガイドライン案
年)から2年間のCOPUOS議長職の任期を終
は分量が多く重複が多いとの観点から統合化
えた堀川康JAXA技術参与が、アルジェリア
することが提案されていた。
のアズディン・ウセディク氏(アルジェリア
宇宙庁長官)に議長職を引き継いだ。
COPUOS第57会期では、EG-Bの公式会合が
開催されEG-Bの報告書が完成されたほか、
我が国からは、COPUOSに対する基本的認
WGではマルチネスWG議長が2月の科技小委
識、宇宙活動の状況(アジア初の国際宇宙ス
第での議論をふまえて作成したガイドライン
テーション(ISS)船長となった若田宇宙飛
統合案(A/AC.105/2014/CRP.5)が審議された。
行士の長期滞在、イプシロンロケット試験機、
各国からは、新規に提案されたガイドライン
惑 星 分 光 観 測 衛 星「ひ さ き」(SPRINT-A)、
への検討にさらなる時間が必要であること、
陸域観測技術衛星2号「だいち2号」
(ALOS-2)
新興国や発展途上国の関心が十分に反映され
及び全球降水観測計画「GPM」主衛星の打上
るべきであること、小型衛星やその運用者に
げ等)や宇宙活動に関する国際協力(宇宙教
関連するガイドラインを盛り込むべきである
育活動、アジア・太平洋地域宇宙機関会議
こと等の意見が出された。また、作業計画の
(APRSAF)に関する活動への貢献等)等につ
延長について審議され、現行の作業計画を2
いて報告した。
科技小委における「宇宙活動の長期的持続
可能性」については、当初の作業計画では本
COPUOS議長交代の様子
(左側より、土井宇宙応用課長、ディピッポ国連宇宙部長、
ウセディクCOPUOS議長、堀川前COPUOS議長、ヘッド
マン政策・法務・委員会課長)
6
年間延長し、2016年の本委員会においてガイ
ドライン案の採択を目指すことが合意され
た。
会期初日に開催した日本主催レセプション