政策税 税制の効果 果分析とその のディスク クロージャーに関する る研究 Studdy on disc closure annd analysis of Tax Expendituures BBI 研究所 兼務研究員、 、経営学部教 教授 古田美 美保*1) 1. 研 研究の目的 本研 研究の目的は は,租税制度 度のみならず ず社会制度に においても重 重要性を増大 大させている る租税 支出効 効果の評価・分析のため めの枠組みを を検討し,も もって租税支 支出項目の統 統廃合を含め めた改 善の可 可能性につい いて明らかに にするために に,その評価 価と報告書の の体系のあり り方について て会計 学の観 観点から検討 討を行うことにある。経 経済その他の の政策目的の の達成手段と として,課税 税の優 遇(軽 軽課)あるい いは重課とい いった正負の の租税支出は はごく一般的 的に用いられ れるが,その のディ スクロージャー, ,そして評価 価・分析の枠 枠組みについ いての先行研 研究の成果は はごく限られ れてい 本研究は,そ その評価・分 分析について て会計学理論 論を用いるこ ことにより, 新たな理論 論的枠 る。本 組み構 構築に資する ることを目的 的とするもの のである。 研究の背景と とその必要性 性 2. 研 研究 究課題として て取り上げる るべき学術的 的背景につい いては次の 4 点を指摘す することができる。 (1)租税支出項 項目の重要性 性の増加 税支出,すな なわち租税制 制度を通じた た経済政策目 目的の達成を を意図した優 優遇や抑止は は,近 租税 年その の規模を拡大 大させている る。租税支出 出の実質的な な効果は補助 助金等と同様 様の資源配分 分であ り,適 適用を受ける側にとって ては実質的な な減税措置あ あるいは増税 税措置と同様 様になる。合 合理的 な経済 済主体であれ れば,自らに に適用される る全租税支出 出を考慮し,行動を決定 定すると考え えられ る(鈴 鈴木一水『税 税務会計分析 析』森山書店 店,2013 年) 項目はその制 制度構 。すなわち,租税支出項 築にあたり,本来 来,経済主体 体の租税回避 避行動の程度 度や規模につ ついての詳細 細な検討を必 必要と 。また,租税 税支出項目は は理論的税収 収を変動させ せるため,税 税収確保の観 観点から改廃 廃や整 する。 理統合 合の要請もな なされる。い いずれにせよ よ,租税支出 出規模につい いての検証と と推定の枠組 組みが 必要で であり,同時 時に租税支出 出概念の整理 理とその意義 義・限界につ ついての検討 討が必要である。 項目に関するディスクロ ージャー体制 制の不足 (2)租税支出項 のように租税 税支出項目の の重要性と実 実施額はとも もに増加して ているにも関 関わらず,そ そのデ この ィス クロージャ ーに関する合意された た理論的枠組 組みは諸外国 国においても も未だ存在し しない -Shedding Light Li on Goveernment Speending (Briix, Valenduuc and Swift ed, Tax Exppendituresthrouugh the Taxx System, the t World B ank, 2004) 。また,諸外 。 外国の事例を を参照しても も,予 算策定 定時の補助資 資料として個 個別の租税支 支出の推定額 額が列挙され れるのみであ あり,その有 有用性 に疑問 問がもたれる る。日本にお おける租税支 支出項目のデ ディスクロー ージャーはさ らに遅れており, 租税特 特別措置透明 明化法に基づ づく適用実態 態調査も法人 人対象の軽課 課措置のみの の限定された た内容 となっている。す すなわち,どれだけの租 租税支出が実 実施されてい いるのかにつ ついて把握・ ・分析 1 手段が現状存 存在しない。 する手 の評価・分析 析枠組み構築 の必要性 (3)租税支出の 来,その効果 果分析をふま まえた上で特 特別措置たる る租税支出が が措置される るべきである るが, 本来 諸外国 国においても も租税支出額 額の測定・表 表示・報告形式 式についての の理論は確立 立されておら らず, その評 評価・分析や や租税支出レ レポートの活 活用についても限定的なものとなって ている(OECD D, Tax Expennditures inn OECD Counntries, 201 0)。また,その理論的 的枠組みに関 関する先行研 研究は 専ら財 財政学的観点 点からのもの のであり,会 会計学的視座 座に基づくデ ディスクロー ージャーのあ あり方 につい いては先行研 研究がない。 。業績表示や や効果分析に に優れた会計 計理論の応用 用可能性が検 検討さ れてしかるべきで である。特に に,公会計に おける総コス スト計算とい いう点での公 公会計学的検 検討, び,営利企業 業における税 税務計画に関 関連して税務 務会計学的検 検討が不可欠 欠であると考 考えら および れる。 。 租税支出をふ ふまえた実質 質的公的支援の規模の推定 定の重要性 (4)組織体の租 年,営利組織 織体において てはその法律 律上の租税負 負担割合であ ある法定実効 効税率の国際 際的有 近年 利性を根拠とした た法人税率引 引下げが税制 制改正論議の の俎上にあが がる。しかし し,租税支出 出項目 利法人向けの の優遇措置だ だけでも 12 0 項目ある現 現状において て,かつ,合 合理的な経済 済主体 が営利 であれ れば租税支出 出を含めた総 総合的な租税 税負担を考慮 慮するであろ ろうことを考 考えれば,そ その実 質的な な租税負担割 割合,すなわ わちしかるべ べき租税支出 出の法定実効 効税率への影 影響を検討す するこ とにより,実質的 的な支援の規 規模を推定す することが重 重要となる(古 古田美保「法 法人関連政策 策税制 する租税支出 出レポートの の意義と必要 要性」甲南大 大学経営学会 会編『経営学 学の伝統と革 革新』 に関す 千倉書 書房,2011 年,237−254 4 頁)。この 検討により, ,実質的な租 租税負担に基 基づく国際的 的有利 性比較 較の基礎を得 得ることにつ つながり,ま また,営利法 法人経営の効 効率性判断に に活用しうる ると考 えられ れる。 研究の意義お および期待さ される知見 3. 研 租税 税支出のディ ィスクロージ ジャーに関す する合意され れた理論的体 体系が不在で である現状を を鑑み れば, ,租税支出に について有用 用なディスク クロージャー ー体系および びその効果分 分析の枠組み みのた めに, ,規範的かつ つ実証的な会 会計学的研究 究が必要とな なる。特に,総額主義の の採用や,加 加算可 能な租 租税支出項目のリストに による純額の の考察等の会 会計学的検討 討により,租 租税特別措置 置を含 む各種 種政策税制の の有効性評価 価が可能とな なり,公会計 計システムに に新しい視点 点を導入しう うるこ とが考 考えられるほ ほか,財務会 会計分野にお おいては営利 利・非営利組 組織体におけ ける業績報告 告内容 の改善 善,税務会計 計分野におい いては税務計 計画等企業行 行動分析の基 基礎の提供等 等,種々の租 租税支 出レポ ポートの活用 用の方向性が が提示可能と となると考え えられる。 2003 年 3 月青山学院大学 学大学院経営 営学研究科博 博士後期課程 程単位取得退 退学,同年 4 月よ *1) 2 2 南大学経営学 学部専任講師 師に着任。2 2012 年 4 月より現職。専門は税務 務会計,法人税法。 り甲南 最近の の研究業績と としては, 「欠損繰越控 「 び法人税率改 改正の欠損計 計上法人への の影響」 除規定および 『産業 業経理』第 72 巻第 1 号(2012 号 年 4 月),76〜87 頁, 「法人 人企業におけ けるイノベー ーショ ン支援 援の政策税制 制の日韓比較 較」ビジネス ス・イノベー ーション研究 究所編『ビジ ジネス・イノベー ションのプラットフォーム』 』同文舘(第 第 8 章所収) , 「欠損金に に係る課題—事 事業再生の観 観点か 『税務会計研 研究』第 24 号(2013 号 年 9 月),33〜 〜50 頁,等。 。 ら」『 3
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