Muse 細胞を用いたヒト 3 次元培養皮膚が実用化へ

2014 年 12 月 11 日
各位
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人東北大学
株式会社 Clio
DS ファーマバイオメディカル株式会社
Muse 細胞を用いたヒト 3 次元培養皮膚が実用化へ
-医薬品・化粧品等のスクリーニングや製品性能検証用キットとして販売開始-
NEDOは、東北大学、(株)Clio等のグループとともに、Muse細胞から皮膚のメラニ
ン色素を産生するヒトのメラニン産生細胞を安定的に調製する方法を開発し、ヒト3
次元培養皮膚を作製する実用化可能な技術を確立しました。(株)Clioは今回確立し
た技術をDSファーマバイオメディカル(株)にライセンスし、同社がヒトMuse細胞由来
のメラニン産生細胞を組み込んだ3次元培養皮膚の安定的な製造技術を開発するこ
とで、医薬品・化粧品等の開発におけるスクリーニングや製品性能検証等用途に用
いるキットの販売開始に至りました。
これにより、医薬品や化粧品などの開発において動物実験を用いず、ヒトの皮膚
により近い培養皮膚を用いることで、医薬品や化粧品等による白斑症等の副作用や、
化粧品による美白効果の検証が可能になることが期待されます。
図1.Muse細胞からヒト3次元培養皮膚による医薬品・化粧品等の研究・開発用キット作製の流れ
1.概要
20世紀末に多能性幹細胞 ※1 の培養に成功して以後、これを用いて様々な細胞や器官を
作製し、新薬開発や移植医療などへの利用を目指す再生医療技術は、従来の医療技術で
は根本的な治療が難しい組織・臓器の損傷や機能不全等に対する革新的な治療技術開発
への取組として大きな注目を集めています。NEDOは、最先端医療技術の実用化を目指す
中で、こうした再生医療技術の開発を進めてきました。その成果の一つとして、2010年に東
北大学大学院医学系研究科出澤真理教授らのグループによって発見されたMuse細胞は、
我々の皮膚、骨髄、脂肪等に広く存在する腫瘍性を持たない多能性幹細胞であり、生体内
において傷害を受けた組織に自発的に移動し修復する働きを有していることから、こうした機
能を利用することで安全で有効性の高い再生医療が実現されるものと期待されています。
このたびNEDOは、「次世代機能代替技術の研究開発」(2010年度-2014年度)プロジェク
※2
ト において、東北大学、(株)Clio等のグループとともに、Muse細胞から皮膚のメラニン色素
を産生するヒトのメラニン産生細胞を安定的に作り出す方法を開発しました。また、そこで得
られたメラニン産生細胞を用いてヒト3次元培養皮膚を作製する実用化可能な技術を確立し
ました。
ヒトのメラニン産生細胞は皮膚において重要な役割を果たすものの、従来の技術ではこれ
を大量に培養することが難しく、メラニン産生細胞を含むヒトの3次元培養皮膚の安定的な製
造は困難でした。(株)Clioは、今回確立した技術をDSファーマバイオメディカル(株)にライセ
ンスし、同社がヒトMuse細胞由来のメラニン産生細胞を組み込んだ3次元培養皮膚の安定
的な製造技術を開発し、医薬品・化粧品等の開発におけるスクリーニングや製品性能検証
等の用途に用いるキットの販売を開始することで、本技術の実用化に至りました。
この実用化により、医薬品や化粧品等の開発において動物実験を用いず、ヒトの皮膚に
より近い培養皮膚を用いた製品機能の検証が可能になるとともに、医薬品や化粧品等によ
る白斑症等の副作用や、化粧品の美白効果も検証可能になり、安全性や効能の高い製品
の開発が促進されることが期待されます。
2.今回の成果
メラニン産生細胞の安定的な供給が可能
メラニン産生細胞は、紫外線による皮膚の障害や悪性腫瘍の発生を抑えるメラニンを産
生しますが、それ自体を大量培養することが難しい細胞であり、従来技術では安定的に得る
ことが困難でした。今回の技術は、培養したMuse細胞に分化誘導処理を施してメラニン産生
細胞とすることで、再現よく大量に製造することが可能となり、これを用いた3次元培養皮膚
の安定供給も実現しました。
図2.Muse細胞を用いて作製したヒト培養皮膚とヒト本来の皮膚の比較
3.今後の予定・計画
DSファーマバイオメディカル(株)が化粧品や製薬企業等に対してヒトMuse細胞由来のメ
ラニン産生細胞を組込んだ3次元培養皮膚の販売を2015年1月15日から開始します。
また、東北大学では、今回の3次元培養皮膚に関する成果を白斑症等の治療に用いるべ
く更なる検討を進めています。一方、Muse細胞の分化多能性を利用した技術開発について
は、皮膚以外の各種臓器細胞についても進んでおり、DSファーマバイオメディカル(株)では
Muse細胞から分化誘導した肝臓の細胞を用いた薬物代謝等に対する細胞アッセイ系として、
実用化を進める予定です。
【用語解説】
※1: Muse細胞、iPS細胞、ES細胞等のヒトの体を構成する多くの細胞への分化能を有する細胞
※2: 内閣官房健康・医療戦略室が推進する9つの各省連携施策において実施
4.本件に関するお問い合わせ
(DSファーマバイオメディカル株式会社)
ライフサイエンス部 学術企画グループ
TEL 072-636-8160
Eメール: [email protected]