平成25年電気学会電力・エネルギー部門大会 416 衝撃破壊試験に基づく変圧器コイル絶縁紙の弱点部位の考察 正員小西義則*a) 非会員加藤雅道* 正員林義一郎**正員加藤理** StudyofWeakPointPartofTransformerCoililsulationPaperBasedonlmpactStrengthTest YoshinoriKonishi"ユ),Member,MasamichiKato醤,Non-nlember,YoshiichirouHayashi"',MelnbeらOsamuKato*x.Member In出ispaper,impactstrengdhtestswereperf()㎜edtoaged曲d血gcoils.Therelationshipbetweentheayerageofpolymerizationmid rupturelinitationofh、sula口皿9Paperwass加died.Alldalsotheweakpoilltoftransfomlercoil血slllatiollpaperwasilvestigated,V)bfb田ld thatthe血sulati皿9Paperwasrupturedaroulldthepaperedgeregion, キーワード:変圧器.コイル巻線.コイル絶縁紙、衝撃試験,損傷 Keywor{ls;transfonners,coilwind血gs,i皿sulatingpaper,hllpulsetensilestrengthtest,nエptlrre 1.はじめに merwhld㎞9 油入変圧器の寿命は,変圧器の外部で短絡故障が発生し pape「 Copperwire た場合に変圧器コイル巻線に加わる電磁機械力にコイル絶 OutsidexVinding 縁紙が耐えられなくなった状態と考えられている。すなわ pape「 ち,コイル絶縁紙の機械的強度,主に引張強さの低下が変 司 圧器の寿命を左右すると考えられている。 これまでコイル絶縁紙の引張強さをワイドスパン引張試 験(JISP8113)やゼロスパン引張試験(JISP8227)により評価 してきた。しかし,銅線に巻かれた状態のコイル絶縁紙に は機械的な引張強さが平均重合度(DP)とともに低下するこ Fig.lShapeandsizeofthetestpiece. と以外に絶縁紙の重なり合う構造的または形状的なことが 要因でDP低下と見なせる弱点部が存在している可能性が 〈2.2>試験方法 ある。そこで,実変圧器のコイル巻線に対し衝撃試験を行 試験片は油漬けになった状態から取り出し,直ちに気中, い,DPとコイル絶縁紙の損傷限界を求めるとともに,コイ 室温にて3点曲げ衝撃強度試験を実施した。荷重方向はコ ル絶縁紙を観察してその形状的な弱点部を考察した。 イル巻線の半径方向とした。この試験では,前報(1・2)と同様 2.供試材および試験方法 に,試験荷重の10%∼90%の立上がり時間を10ms程度に 〈2.1>供試材 調整した。実器のように大きな曲率半径での試験に改良す 経過45年で更新した油入変圧器のコイル巻線を採取し るために,支点間距離を60mm,圧子の先端半径を40mm た。供試コイル試験片を図1に示す,この試験片は銅線が とした。試験最大荷重をパラメータとして実体顕微鏡で絶 3本で1つのコイルとなっており,中央の銅線に素線紙巻 縁紙損傷の有無を確認した。 が3枚、銅線3本を包むように共通紙巻が9枚巻かれてお り,表面からワニスが塗布されている。これを2本組の状 3.試験結果と考察 態とし,未処理のDP550,油中加熱劣化させたDP400, <3.1>衝撃曲げ試験 DP300の3水準の試料を作製し,衝撃試験に供した。 衝撃曲げ試験後に引張が作用する試験片の下面を実体顕 微鏡にて観察し,コイル絶縁紙1枚1枚の損傷の有無を評 a)CQrrespondenceto:Yoshno「iKo【rishi.E-nlail:[email protected] *ユカインダストリーズ株式会社 〒146-0083東京都大田区千鳥2-34-17 価した。共通紙巻1枚目(最表面)に塗布されたワニスは, 表面から5枚目程度まで浸透していた。ワニスが浸透され YukahldustriesCo.,LTD. 2-34-17,Chidori,Otaku,Tokyo,Japanl46-0083 *‡霞源開発株式会社 〒253-0041神奈川県茅ケ崎市茅ゲ崎1-9-88 ElectricPowerDevelopmentCo.,LTD. 9-88,Chigasakil-Chome,Chigasaki,K㎜gawa.Japan253-0041 ていたコイル絶縁紙はDPに関係なく比較的小さい荷重で 損傷していた.図2にDP550でのワニス無浸透部分の絶縁 紙損傷有無の境界での損傷破面を示す。荷重が比較的小さ 57-11 ◎20131EEJapan 平成25年電気学会電力・エネルギー部門大会 い同図(a)の257Nにおいてもワニスが浸透している1枚目 縁紙の端部付近(紙端部付近)であった、っまりコイル絶 の共通絶縁紙は損傷していた.荷重を増した同図(b)の 縁紙が複雑な巻き状の中において,絶縁紙平面部の上下 396Nにおいて,ワニスが浸透している共通絶縁紙5枚中の で紙端部が接する様な部分で破断しており,この紙端部 4枚は損傷していたが,ワニスが無浸透の共通絶縁紙は損 付近が構造的な弱点部となることがわかった。図5に共通 傷が認められなかった。さらに少し荷重を増やして同図(c) 紙巻9枚目のコイル銅線への巻かれ方と断面図(銅線の上 の408Nになると,ワニスが浸透部分5枚と無浸透部分4 側のみ)を示す。同図からわかるように,紙端部間は絶縁 枚の共通絶縁紙の損傷が認められた。2mm 紙の厚みが局所的に薄くなること,および絶縁紙が重な 「t/・』『一一 り合う部分では形状不連続となることから紙端部付近に 高い応力が発生していることが要因であると考えられる。 ㎞] 響 一.齢 蜘 ン海卿 ・r. マ 蜘 ●^ 翻 驚輪 (a)Load408N(generalview) (a)Load257N(b)Load396N(b)Load408N Fig.2T{)poftheoutsidewind血gpaper(DP550) ワニス無浸透部分のコイル絶縁紙の損傷境界での最大荷 重を損傷限界とした。図3に絶縁紙のDPと絶縁紙損傷限 界の関係を示す。図中のx印は絶縁紙の損傷あり,○印は 絶縁紙の損傷なしであることを示す。試験から得られた損 傷ありと損傷なしの荷重の境界を図中に点線で示す。図3 より,絶縁紙損傷限界はDPと共に低くなることがわかる。 (d>495N(Extended) また,DP300試験片において損傷限界でのコイル巻線は僅 Fig.4Surfaceofdamagedinsulatillgpaper.(DP550) かに塑性変形が認められた。 600 乞 ×xδ 400 ・話 憂δ○ 2 0300 三 且200 oo / / / (a) 交蒼Q)O ×rupture Onotruture 500 UpP・・p・p・・ed・eqgiレL°we「pape「edge -e「 (b) ............一............................................幽..................,.・ Copperwire 100 0 Fig.5Howtowilldtheinsulatingpaper. (a)ApPearance(b)Crosssection 0 200 400 600 4,おわりに Degreeofpol}・mrerization ワニスが浸透されていたコイル絶縁紙は平均重合度DP Fig.3Relatio"shipbetweellaveragedegreeofpol}・merization arldruptUre1血itationofinsulatingpaper. に関係なく比較的小さい荷重で損傷し,ワニスの無浸透 部分のコイル絶縁紙の損傷限界は前報と同様にDPと共 に低下することを明らかにした。また,コイル銅線に周 〈3.2>コイル絶縁紙損傷箇所の観察 回された絶縁紙は重なり合う紙の端部付近で破断し,こ ワニス無浸透部分でのコイル絶縁紙にっいて,その損傷 の部分が弱点部であることを明らかにした、 箇所を観察した、DP550での共通紙巻9枚目損傷箇所の様相 文献 を図4に示す。同図(a)のように高い荷重を作用させると大 きく塑性変形し,コイル絶縁紙の破断面は大きく引き裂か (1)林,小西;「衝撃試験による変圧器コイル絶縁紙の破断観察評価」霊気 学会全国大会5-166(2011). れているのがわかる。さらに同図(b)∼(d)などのように最 (2)林,小西:「衝撃破壊試験に基づく変圧器巻線絶縁紙の強度評価」電気 学会B部門大会344(2012). 大荷重やDPに依存せずに損傷箇所はほとんどでコイル絶 57-12 ◎20131EEJapan
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