データベースと連携するホワイトスペース車車間無線通信システムを開発

データベースと連携するホワイトスペース車車間無線通信システムを開発
株式会社
トヨタ IT 開発センター
2014 年 6 月 1 日
株式会社トヨタ IT 開発センター(東京都港区、代表取締役社長:橋本雅人)は、ホワイト
スペースデータベースと連携して車車間通信を実現する無線通信システムを開発し、それ
らを用いてテレビ放送帯のホワイトスペースによる走行状態での車車間通信の実証に世界
で初めて成功しました。開発した無線通信システムは、将来、自動運転が導入される時代
において車同士の協調動作に必要となる車車間の大容量通信技術として、安全、安心に寄
与することが期待されます。
なお、本成果は、5 月 28 日~30 日に東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレス・テク
ノロジー・パーク(WTP)2014」で展示しました。
背景
700MHz の周波数帯は、車と車(車車間)、道路に設置された通信装置と車の間(路車間)
の通信により、安全支援や円滑な走行のための情報のやりとりをする高度道路交通システ
ム(ITS)に割り当てられ、その普及が始まろうとしています。また、車の自動運転は国内外
の車メーカが試みを始めており、2020 年代には本格的に広まる可能性が高まってきました。
しかし、車の自動運転には車同士の協調動作のために情報交換が必要であり、その情報量
は 700MHz 帯の割り当て時の想定より大幅に超過すると予想され、新たな無線通信手段の
確保が必要になると考えられます。
無線通信の周波数帯は、本来は特定用途での利用に割り当てられますが、地理的条件や時
間的条件によっては他の目的にも利用できる場合があります。これをホワイトスペースと
呼び、テレビ放送帯においても他の目的への有効利用の制度化検討も始まっています。米
国ではすでに周波数を登録するホワイトスペースデータベース(DB)の運用が始まってお
り、移動体で利用する場合においては、利用可能な周波数リストの 100m 移動毎の取得が
必要となっています。しかしながら移動体が車である場合は移動速度が速いため、DB との
アクセスが頻繁になり、その輻輳をいかに抑えるかが課題となってきます。
今回の成果
同一方向に走る車同士で車群を形成し、その中の代表車両が広めの区域で利用可能な周波
数の情報をホワイトスペース DB から取得し、車群の走行経路を考慮して必要な DB 情報
だけを車群内の車両に配布することにより、DB とのアクセス回数を減らし、かつ DB の情
報を配布する無線資源も節約する技術を開発しました。さらには移動により利用可能な周
波数が変化するため周波数切り替えが必要で、その際の通信が途切れる回数を減らすため、
通信継続時間の長い周波数を選択するアルゴリズムを加えた無線通信システムを開発しま
した。
開発した無線通信システムを用いて宮崎県美郷町で実証実験を行い、実際に車が走行した
状態で速度 2Mbps の安定した通信を実証しました。本実験は 3 台の車両で車群を形成し、
独立行政法人情報通信研究機構殿が開発したテレビ放送帯に対応したホワイトスペース
DB に接続して、先頭車両と 2 台目の車両、2 台目の車両と最後尾車両の順にデータを転送
するマルチホップの形態で実施しました。さらに、DB から取得した情報から、使用してい
る周波数が利用できない領域に車群が接近すると、自動的に利用可能な空き周波数に切り
替えを行うことも確認しました。テレビ放送帯のホワイトスペースを使って、データベー
スを参照しながら周波数を切り替える車車間通信の実証は世界で初めての試みです。
なお、本実証実験に当たり、情報通信研究機構殿にはホワイトスペースのデータベースに
接続させていただき、宮崎県美郷町には実証実験の環境整備にご協力いただくなど、多大
なご協力を賜りました。
*
本成果は、総務省の「平成 24 年度補正予算による電波資源拡大のための研究開発」に
より得られたものです。
周波数情報を
各車両へ
配布する範囲
各車両が
必要な
利用可能
周波数
ホワイト
スペース
DB
先頭車両の
前方映像を
3台目で受信
試作した
無線機
(各車両に搭載)
図1 実証実験の概要
用語解説等
ホワイトスペース
ホワイトスペースは、放送等の目的で割当てが行われている周波数帯のうち、その周波数
の利用がない場合や本来のシステムに与える影響が十分に小さい場合に、他のシステムが
放送や通信の目的で二次的に使用することを対象とした周波数帯を指す。
ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2014
http://www.wt-park.com/outline.html
本件に関する問い合わせ先
株式会社トヨタ IT 開発センター
総務部
TEL:03-5561-8200
Email: