【講演要旨】 ■講演1 柑橘由来ポリフェノール“糖転移ヘスペリジン”の脂質代謝改善作用とそのメカニズム 三皷仁志 ㈱林原生物化学研究所 開発センター 柑橘類由来のフラボノイド,ヘスペリジンは、多彩な生理活性を持つことが知られてい るが、その水溶性は極めて低く、これまで食品分野ではその効果を十分に活用されなかっ た。糖転移ヘスペリジンは、水に対する溶解度を従来のヘスペリジンの約10万倍に高めて おり、かつ、ヘスペリジン本来の生理活性をそのまま保持している。このような特性から、 糖転移ヘスペリジンは、食品分野を始めとした幅広い分野で用途拡大が期待されるのみな らず、学術的にもヘスペリジンの機能研究を進めるうえで強力なツールになると考えられ る。我々は、ヘスペリジン研究の一環として脂質代謝改善作用に注目し、糖転移ヘスペリ ジンを用いることによって培養細胞、動物及びヒトを対象にした試験で多くの知見を得て きた。本セミナーでは、これらの知見を中心に紹介し、ヘスペリジン研究の発展に向けて、 今後どのような課題に取組むべきなのか議論したい。 ■講演2 柑橘由来ポリフェノール“糖転移ヘスペリジン”のヒトボランティアに対する新しい効果 ~生体調節機能の是正効果~ 山下亜希子 ㈱林原生物化学研究所 開発センター 社会の24時間化に伴い、不規則な生活習慣による生体リズムの乱れやストレスの増加に より、自律神経系、内分泌系、免疫系の異常、気分・行動の変容といったさまざまな生体 反応が引き起こされ、病気とはいかないまでも体の不調、つまり愁訴を訴える人が着実に 増えている。冷え性もその愁訴の1つである。冷え性の原因は自律神経系、内分泌および循 環機能になんらかの問題がある場合が多く、その結果、末梢血流が低下し、冷えを感じる と同時に、肩こり、腰痛、倦怠感などさまざまな愁訴を伴う。また、これら愁訴が要因と なり、身体的にも精神的にも影響を及ぼすことが多い。最近、冬季を通じて、冷え性者を 対象とした試験をおこない、糖転移ヘスペリジンの長期摂取が冷えの症状や冷えを伴うさ まざまな体の不調を改善することを検証した。さらに、糖転移ヘスペリジン長期摂取が現 代人の乱れた生体調節機能を是正する可能性が見出されたので報告する。 -2- ■講演3 生体の恒常性におけるビタミンCと柑橘由来ポリフェノール“糖転移ヘスペリジン”の相互作用 松本洋介 ㈱林原生物化学研究所 開発センター ビタミンCは神経系、免疫系及び内分泌系において重要な役割を果たしており、生体の 恒常性維持に関与している。しかしながら、ビタミンCは不安定な物質であるため、種々 のストレスにより消耗される。そのため、現代社会では、ストレスや生活習慣の変化によ り、生体内ビタミンC量の減少とともに生体恒常性の破綻が懸念される。ヘスペリジンは 種々の疾患に対し予防・改善効果を発揮することが知られており、最近では、抗ストレス 作用も報告されている。このような生体調節機能に関与するビタミンCとヘスペリジンは、 共に柑橘類に多く含まれており、これらの相互作用が期待され、古くからさまざまな疾患 に対し利用されてきたが、そのメカニズムについては完全には解明されていない。そこで、 生体の恒常性におけるビタミンCとヘスペリジンの相互作用に注目し、主にビタミンC消耗 に及ぼす糖転移ヘスペリジンの影響について検討したところ、糖転移ヘスペリジンがラッ トの血清、大脳及び肝臓中ビタミンC量の減少を抑制したので、その詳細について報告する。 ■講演4 柑橘由来ポリフェノール“糖転移ヘスペリジン”の体内動態 山田未佳 ㈱林原生物化学研究所 開発センター 糖転移ヘスペリジンの体内動態とバイオアベイラビリティーを調べ、従来のヘスペリジ ンとの比較をおこなった。両試験物質をそれぞれ水に溶解あるいは懸濁して、ラットに投 与し、血中ならびに尿中の代謝物について調べた。その結果、糖転移ヘスペリジン投与後 の血清には、ヘスペリジン投与と同様に、ヘスペレチン‐グルクロン酸抱合体が検出され た。その抱合体は糖転移ヘスペリジンを投与した方が、ヘスペリジン投与より速く血中に 現われ、また、糖転移ヘスペリジン投与後の抱合体の血中濃度曲線下面積(AUC)はヘス ペリジン投与後のそれよりも有意に高かった。糖転移ヘスペリジン投与後の各組織、尿お よび糞中においてヘスペリジン投与と同じ代謝産物が検出され、それらの代謝産物量はヘ スペリジン投与よりも多かった。以上より、糖転移ヘスペリジンはヘスペリジンと同様の 体内動態を示すこと、さらに糖転移ヘスペリジンは速やかに吸収され、バイオアベイラビ リティーが高まったことが確認された。 -3-
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