Science report Vol.9(2013.12)

Science report Vol.9(2013.12)
Effect of astaxanthin supplementation on muscle damage and
oxidative stress markers in elite young soccer players.
Djordjevic B, Baralic I, Kotur-Stevuljevic J, Stefanovic A, Ivanisevic J, Radivojevic N, Andjelkovic M,
Dikic N.
Institute for Bromatology, University of Belgrade, Belgrade, Serbia.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22828460
今回ご紹介するのは、一流若手サッカー選手における筋障害と酸化ストレスマーカーに対
するアスタキサンチン補充の効果についての報告です。
十分な運動強度・継続期間で有酸素運動をすることは、様々な組織で活性酸素(ROS)産生の
増加をもたらします。抗酸化作用を持つアスタキサンチンが酸化ストレスバイオマーカー
を減らすことは動物モデルなどを用いた研究で既に報告されていますが、スポーツ分野で
アスタキサンチンの効果を見た報告はほとんどありません。
この研究は、筋障害の間接的なマーカーとなる筋肉中の酵素、酸化ストレスマーカーや抗
酸化反応に対するアスタキサンチン補充の効果を調べることを目的に行われました。
一流サッカー選手の男性 32 名をアスタキサンチン(Asx)群とプラセボ(P)群の 2 群に無作為
に分け、Asx 群にはアスタキサンチン補充を行いました。90 日間の介入後、選手たちには
2 時間の急な運動を行ってもらいました。介入前、介入後、そして介入後に行った運動後に
採血を行い、酸化ストレスのパラメーターであるチオバルビツール酸反応物質(TBARS)、
タンパク質過酸化物(AOPP)、スーパーオキシドアニオン(O2・―)、抗酸化能(TAS)、スルフ
ヒドリル基(SH)やスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、筋障害の間接的なマーカーである
血清クレアチニンキナーゼ(CK)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)につい
て解析しました。
その結果、TBARS と AOPP レベルには変化が見られませんでした。習慣的に行っている
トレーニングは O2・―を著しく増加させました。サッカーをした後、O2・―の合成は両群で
増えましたが、P 群のみで著しい増加が見られました。さらに、TAS は P 群のみで有意に
減少しました。
SH 含有量の増加は両群で見られ、サプリメント補充の効果もわずかに見られました。SOD
活性は介入後には両群で著しく低下しました。また、CK と AST 活性はすべての被験者で
著しく低下しました。
血清中の CK と AST 活性はサッカーをすると著しく増加しましたが、
運動後は P 群と比較して Asx 群では著しい低下が見られました。
これらの結果より、サッカーやトレーニングをすることは、抗酸化能を落とす可能性があ
るフリーラジカルや酸化ストレスの過剰産生と関連していることが示唆されました。若手
サッカー選手におけるアスタキサンチンの補充は、運動により誘発されるフリーラジカル
産生と非酵素的な抗酸化防御作用の枯渇を防ぐことがわかりました。