鋼製円筒容器構造物の 炭素繊維強化樹脂による 補強技術 豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 建築・都市システム学専攻 准教授 松本幸大 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 1 新技術の概要【背景】 • 近年発生した兵庫県南部地震や東北地方 太平洋沖地震等の大規模地震時において, 屋外で液体を貯蔵する鋼製タンクの座屈損 傷が多数報告 • 構造物の耐震性の観点のみでなく,設備構 造物である鋼製タンクの継続運用(BCP)の 観点からも極めて重大な社会的課題 • 薄肉円筒構造の研究は以前より多くの実 験・解析研究がなされてきている • NASA,Donnell L. H. • 八巻昇先生,秋山宏先生 • 日本建築学会 容器構造設計指針 • 近年の新材料発展により,効果的かつ簡単 に補強を施すことのできる可能性が広がっ ている • 炭素繊維強化材 • 接着剤 阪神・淡路大震災調査報告編集委員会:阪神・淡路大震災調査報告 建築編-3 容器構造,日本建築学会,1997.10 消防庁消防大学校:平成23年(2011年)東北地⽅太平洋沖地震の被害及 び消防活動に関する調査報告書(第1報),消防研究技術資料 第82号, 2011 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 2 新技術の概要【概要】 • 鋼製タンクに対するCFRP補強 鋼製円筒の周方向にCFシート を巻き立てた補強 本講演での内容 技術の基礎情報 基礎実験データ 補強前 面外変形の拘 束による耐⼒ 上昇効果 補強後 試験体写真 補強効果のイメージ 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 3 新技術の概要【従来との比較】 • 鋼製タンクに対する補強 鋼板の取り換え 大規模工事 溶接等による断面増 ライニング等への影響 熱による変形・応力 内容物への配慮 • 軽量高強度材料の接着工法を用い ることで解決 施工手順イメージ 1. サンドペーパー等を用いて,鋼 管表面の接着面を目粗し 2. 鋼管表面にプライマーを塗布 一晩養生 3. パテを塗布 一晩養生 4. 含浸接着樹脂を下塗り 5. CFシートを鋼管周囲に巻き⽴て た後に含浸・脱泡 6. 含浸樹脂を上塗り 一晩養生 7. 仕上げ 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 4 技術の基礎情報 炭素繊維シートの物性値 CFシートの種類 中弾性型 ⾼強度型 品番(東レ) UM46-30G UT70-30G 目付量(g/m2) 300 300 シート厚(mm) 0.167 0.163 引張強度(MPa) 3619 4636 弾性率(GPa) 458 253 樹脂含浸後のCFRP (Vf=20%)では,厚0.8mm, 弾性率が1/5程度 CFRP補修部 GFRP含浸確認部 試験体写真 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 5 技術の基礎実験データ 補強効果確認のため,基礎試験を実施 試験変数 外径262mm 試験体名称 5mm 190mm 5mm 殻厚t=2mm R/t=65 試験体は STKM13A, φ267.4x8より削 り出して製作 補強形態 CF補強量 CF方向 無補強 - - Blank-1 Blank-2 CFRP Blank-3 UM-1 面外変形の拘束による耐⼒上昇効果 を狙っているので接着不要!? UM-2 UM-3 UM46-30G 1層 周⽅向 UT70-30G 1層 周⽅向 UM46-30G (絶縁) 1層 周⽅向 UM-4 UT-1 UT-2 NB-1 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 6 技術の基礎実験データ 補強効果確認のため,基礎試験を実施 ■;周⽅向1軸歪ゲージ ■;軸⽅向1軸歪ゲージ ●;軸・周⽅向歪ゲージ 試験⽅法・状況 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 7 技術の基礎実験データ 補強効果確認のため,基礎試験を実施 800 軸⼒[kN] CF破断 700 600 線形性を 維持したまま 荷重増加 (約15%) 500 400 300 200 100 0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 ━;無補強 軸変形[mm] ━;高弾性UM-2 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 8 技術の基礎実験データ 補強効果確認のため,基礎試験を実施 800 軸⼒[kN] CF破断 (UM-2と同 じ変形) 700 600 線形性を 維持したまま 荷重増加 (約10%) 500 400 300 200 100 0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 ━;無補強 ━;高弾性UM-2 豊橋技術科学大学 新技術説明会 軸変形[mm] ---;高弾性絶縁NB-1 2014.7.15 9 技術の基礎実験データ 補強効果確認のため,基礎試験を実施 800 CF破断 (高弾性より 変形に追従) 軸⼒[kN] 700 線形性を 維持したまま 荷重増加 (約15%) その後は緩や かに荷重低下 600 500 400 300 200 100 0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 ━;無補強 ━;高弾性UM-2 豊橋技術科学大学 新技術説明会 軸変形[mm] ━;高強度UT-1 2014.7.15 10 技術の基礎実験データ 補強効果の基礎式 鋼材のみの場合の周⽅向面内剛性 σ θ = Es ε θ 補強前後での周⽅向ひずみをεθ1,εθ2とすると, εθ 2 = Es t s ε θ 1 = αε θ 1 Es ts + Ecf tcf UM46-30Gではα=0.854,UT70-30Gではα=0.915 円筒座標系における応⼒とひずみの関係は, εθ = 1 σ θ − ν (σ z + σ r ) ) ( E であり,補強のない場合は,σθ =σr =0として 1 E εθ 1 = − νσ z 補強を⾏った場合は,CFシートによる等価な周⽅向ひずみを拘束する応⼒をσθとして, εθ 2 = 1 (σ θ −νσ z ) E 補強の前後では周⽅向ひずみが低減されることを踏まえるとσθは, 鋼材の1軸試験によって得られ る降伏応⼒度に対して, UM46-30Gでは2.2%, UT70-30Gでは1.3%の弾性 耐⼒の上昇が期待できる σ θ = νσ z (1 − α ) とおける。これをMisesの降伏条件に代入すると, σz = 1 1 −ν (1 − α ) + ν 2 (1 − α ) 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2 σY 2014.7.15 11 技術の基礎実験データ 補強効果の基礎式 本試験形状では,9.468×10-5 [mm/(N/mm)]の面外変形 その単位⻑さあたりの付加曲げモーメントは,単位周⽅向⻑さあ たりの圧縮⼒をpとおくと,9.468×10-5×p2 軸圧縮⼒が降伏応⼒度331MPaに達するときの面外変位は,補強 のない場合0.063mmで,UM46-30Gで補強した場合0.054mmに低 減 面外変形の低減 =付加曲げの低減 付加曲げモーメントによる縁応⼒度は62.0MPaから53.6MPaとな り約13%低減する(ただし,軸応⼒度331MPaを考慮すると断面内 の最大応⼒度の低減率は約2%となる) 複合構造化による 複合構造化による面外歪 による面外歪の 面外歪の拘束効果 拘束効果 面外変形 面外変形の 変形の拘束による 拘束による曲 による曲げ応力度の 応力度の低減効果 実験で 以上の 実験での10%以上 以上の耐力上昇は 耐力上昇は未解明 実際のタンク 実際のタンク形状 のタンク形状での 形状での効果 での効果は 効果は解析上は 解析上は確認されているが 確認されているが, されているが,本実験の 本実験の 完全な 完全な数値シミュレーションは 数値シミュレーションは到達 シミュレーションは到達できていない 到達できていない 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 12 想定される用途 • 本技術は,円筒容器構造が面外に孕み出す変形に 対する拘束効果として大きなメリットがある – 各種の円筒形鋼製容器構造物の補強 – 圧⼒管等の設備配管の補強 • 特に,対象構造物の施工条件等が厳しい場 合にも適用が可能であると考えられる – 火器の使用が制限される構造物・設備等への補強 – 円筒形構造物・設備等の軽微な損傷等への早急な補 修・補強 – 狭小な場所・重機の使用が制限される場所での施工 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 13 実用化に向けた課題 • 現在、実験室試験によって工法とその効果 を確認済み。しかし、耐⼒評価式が未解決 である。 • 今後、更に実験・解析データを充実させ、 下部の局部座屈以外の破壊モード等への適 用性を検討していく。 • 現状でほぼ実用化可能と言えるが,効果の 確認については都度の構造解析を用いる必 要がある。 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 14 企業への期待 • (薄肉)鋼構造の補修補強⽅法として新材 料の適用可能性は未知数であり,多くの可 能性を持っている • 意⾒交換等を通して,効率的な維持管理が 必要とされる分野・喫緊の社会的課題を有 する分野において,本技術が解決の一助に 結びつくことを期待している 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 15 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:鋼製中空円筒構造物の補強構造 • 出願番号 :特願2014-037136 • 出願人 :電源開発株式会社、 豊橋技術科学大学、首都大学東京、 東レ株式会社 • 発明者 :遠藤良裕、松本幸大、 中村一史、松井孝洋 お問合せ先:(株)豊橋キャンパスイノベーション(とよはし とよはしTLO) とよはしTLO) Phone: 0532 - 44 - 6975 FAX: 0532 - 44 - 6980 Mail: [email protected] 担当: 白川正知 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 16
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