【2014/11/22 西東京臨床糖尿病研究会・講演資料】(PDF - K-net

西東京臨床糖尿病研究会
生活習慣病と睡眠障害
不眠症の新治療ガイドラインの紹介
名古屋市立大学大学院薬学研究科
神経薬理学分野
粂 和彦
2014/11/22
利害相反の開示
• オムロンヘルスケア社
睡眠計開発・睡眠の疫学の共同研究
• スライドの一部は、武田薬品、MSDから
提供されたものです。
2
自己紹介
• 1987年︓立川相互病院初期研修
阪大大学院→東大生化学→留学ボストン
熊本大学発生研→睡眠障害外来開始
昨年から、名古屋市立大学・薬学部
• 基礎医学研究者︓分子生物学・神経科学
• 医師︓内科・小児科
睡眠医療認定医→不登校専門︖
• Weekend philosopher ?
脳神経倫理学・心の哲学
3
睡眠障害相談室
http:// sleepclinic.jp
2000年12月開設
アクセス120万回
相談件数︓
2000件以上
Google 検索
睡眠で1位でした
4
概日周期と睡眠制御
講談社現代新書
時間の分子生物学
第35回
講談社出版文化賞
科学出版賞受賞
5
睡眠障害の臨床
ちくま新書
眠りの悩み相談室
2007年6月発売
23人の典型的な悩みを
持つ方を紹介
6
脳神経倫理学
ニューロエシックス
(2002年にできた学問分野)
応用倫理学の一つ
脳神経科学の
倫理を考える
世界で最初の教科書
文学部・高橋教授と共同監訳
06年原書 08年訳書出版
(21人の専門家=哲学、
倫理学、法律家、社会学、
教育学、神経科学、医学、
などが執筆)
7
ここから本題
資料は、k-net.org に
本日のアウトライン
背景︓睡眠障害とその診療の現状
新ガイドラインの位置づけ
認知行動療法の紹介
睡眠薬治療のポイント
GABAA受容体作動薬(Bz, 非Bz)
メラトニン受容体作動薬
オレキシン受容体拮抗薬
(睡眠制御の基礎知識︓量と位相)
•
•
•
•
9
背景
睡眠障害、特に不眠症診療
背景
1
• 不眠症状は非常にありふれた症状で、苦痛度も
高い。しかし「不眠症では死なない」と言われ
るように、臨床的には軽視されがち
• 睡眠時無呼吸症候群は、日本人にも頻度が高く
(中高年男性の10%︖)、高血圧・糖尿病の
悪化要因で、単独でも死亡率を増加させる
• 普通の不眠症も、生活習慣病悪化因子になり、
逆に、生活習慣病症状としての不眠も重要
• 不眠症は専門家も少なく、一般医が治療するが
他の疾患より、意外に治療上の留意点が多い
11
背景
2
• ベンゾジアゼピン (Bz)類、つまりBz系睡眠薬
や、非ベンゾジアゼピン (非Bz)系睡眠薬は、
GABAA受容体(別名ベンゾジアゼピン受容体)の
作動薬として働き、安全な睡眠薬として頻用
• Bz類は、その薬理作用・安全性ゆえに、「眠る
目的」で使用すると効果不十分になりやすく、
次第に過量になる
• 長期間過量処方が続くと、反跳性不眠や持越し
性の不眠などにより、断薬が難しい
• そのため、欧米では依存性が高い薬品として、
麻薬に準ずる扱いをされている。
12
背景
3
• 日本では、精神科領域の薬の多剤多量処方が、
問題とされているが、Bz類の慢性過量処方も、
問題視されはじめた(睡眠薬3剤制限など)
• 不眠症治療は、不眠症の成因や自然経過をよく
理解し、可能な限り、睡眠衛生指導や認知行動
療法(CBT)などの、非薬物療法を行う。
• 薬物療法を行う場合、ゴール(=出口)を見据え
た上で治療を開始し、漫然と長期間にわたり、
睡眠薬を続けるべきではない。
• そのためのガイドラインが発表された。
13
生活習慣病と睡眠障害
MSD社から頂いたスライド
14
不眠症による睡眠時間の不足と
高血圧症有病率との関連性 <海外データ>
6
正常
5
*:1を含まない95%信頼区間
*
横断的有病率
不眠症:8%
睡眠不足:22%
睡眠不足
不眠症
オッズ比
4
*
3
*
*
2
1
0
All
<5
5-6
>6
(h)
総睡眠時間
対象:無作為に抽出されたペンシルバニア中部の20歳以上の男女1,741人
方法:対象者全員に不眠症の有無(1年以上にわたり入眠障害、睡眠維持困難、早朝覚醒がある)、PSG検査による睡眠時間、血圧を測定し、不眠症及び睡眠不足が高血圧リス
クに影響するかを横断的に調査した
15
Vgontzas AN et al. Sleep 2009;32(4):491-497.より改変
生活習慣病に見られる不眠のタイプ
高血圧(n=263)
(%)
100
80
76.0%
65.0%
58.2%
60
40
20
0
100
80
脂質異常症(n=170)
75.9%
59.4%
55.9%
60
40
20
0
100
80
46.4%
45.9%
糖尿病(n=145)
78.6%
62.1%
64.1%
入眠障害
中途覚醒
60
40
20
0
熟眠障害
50.3%
早朝覚醒
対象:身体疾患で通院しており、かつ不眠症状を抱えている患者707例
方法:2004年5月にインターネットによるアンケートから、患者背景(性別、年齢、身体疾患の種類、通院期間)、睡眠障害の症状(不眠以外を含む)、医師からの睡眠状態に関する
問診、患者自らの医師への睡眠に関する訴えの有無、生活環境を調査した
大川 匡子. 内科 2013;111(2):199-202.
内村直尚他. Pharma Medica 2005;23(7):105-108.
16
不眠や睡眠不足と糖尿病との関係
不眠や睡眠不足
交感神経活性亢進↑
夜間コルチゾール上昇↑
夜間GH分泌上昇
オレキシン上昇↑
レプチン低下↓
グレリン上昇↑
摂食時間延長↑
インスリン抵抗性↑
耐糖能↓
食欲 ↑
摂食量 ↑
糖尿病
肥満
エネルギー消費の
低下?
17
Knutson KL et al. Ann N Y Acad Sci 2008;1129:287-304.より改変
2型糖尿病患者の4割以上に
不眠が認められる <海外データ>
2型糖尿病の有無別における睡眠症状の合併率
対照群 (n=48)
レストレスレッグス症候群 (%)
不眠症(%)
日中の過度の眠気 (%)
日中の眠気指数(ESSa)
ESS >12 (%)
睡眠薬の使用 (%)
昼寝 (%)
睡眠中の無呼吸(%)
いびき (%)
aEpworth
Sleepiness Score ‒ 平均 (標準偏差)
12.5
31.3
37.5
5.1 (3.8)
2.1
6.0
16.7
16.7
64.6
糖尿病
2型糖尿病患者
(n=58)
p値
24.1
50.0
55.0
5.6 (4.6)
15.5
25.9
25.9
10.34
53.4
0.10
0.04
0.15
0.27
0.02
0.02
0.19
0.17
0.17
χ2検定
対象・方法:2型糖尿病患者58名と、年齢・性別でマッチングさせた非糖尿病患者48名(カナダ・セントボニフェス総合病院外来患者)に対し、睡眠に関するアンケート及び神経障
害・臨床検査を実施。睡眠症状の合併率を比較した
18
Skomro RP et al. Sleep Med 2001;2(5):417-422.
睡眠障害と糖尿病発症リスクの相関
<海外データ>
睡眠維持困難または5時間以下の短時間睡眠の男性では、
糖尿病の発症リスクが増加する。(女性では有意差なし)
糖尿病
多変数モデル(入眠障害、睡眠維持困難含む)†
2.4 (0.7-8.6)
入眠困難
Relative Risk(95%CI)
4.8 (1.9-12.5)
睡眠維持困難
0
2
4
6
‡
8
10
12
14
7
8
多変数モデル(短時間睡眠、長時間睡眠含む)†
短時間睡眠
(5時間以下)
0
1
2
2.8 (1.1-7.3)
‡
3
4
5
6
† 年齢、高血圧、肥満、喫煙、飲酒、いびき、うつ病で補正
‡ Significant (p<0.05) RRs risks、多重ロジスティック回帰分析
対象・方法:45-65歳のスウェーデン人2,663名に対し、睡眠、医療条件、うつ病等の質問について郵便にて1983年にアンケートを実施し、12年後の1995年に再度アンケートを実
施、ベースライン時での各変数/症状ごとの新たな糖尿病発症のリスクを調べた
19
Mallon L et al. Diabetes Care 2005;28(11):2762-2767.
不眠症患者では、他疾患の有病率が高い
<海外データ>
(%)
60
不眠症あり
不眠症なし
n=538
50.4
50
43.1
40
33.6
30
24.8
20
21.9
19.7
18.2
18.7
13.1
10
9.5
9.2
5.7
5.0
8.8
7.3
9.5
4.2
1.2
0
胃腸障害
慢性疼痛
糖尿病
腎障害
呼吸障害
神経疾患
高血圧
悪性腫瘍
心疾患
対象・方法:米国テネシー州、シェルビー郡の20歳以上の男女772名(男性381名、女性391名)を対象とし、睡眠障害、疾患の有無(心疾患、悪性腫瘍、
高血圧、神経系疾患、呼吸器系疾患、泌尿器系疾患、糖尿病、慢性疼痛、胃腸障害など)の有無について、自己申告方式での調査を行った
20
Taylor DJ et al. Sleep 2007;30(2):213-218. より作図
睡眠時無呼吸症候群に関連する
交通事故のリスク
運転中の眠気と居眠り
(%)
50
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
p<0.01
対照群
45(40.9)
40
p<0.01
31(28.2)
30
20
10
15(9.8)
3(5.3)
0
運転中の眠気
居眠り運転
数字は体験した人数、カッコ内は各群に占める割合(%)を示す
対象:1990年以降に鳥取大学医学部附属病院精神科と国立療養所鳥取病院を受診し、1年以上にわたって経過を観察し得た無呼吸̶低呼吸指数5以上のSAS症例165名
方法:初診時点での運転中の眠気の有無、初診前5年間での居眠り運転の有無、普段の運転習慣、眠気の生じた状況及びその時の対処方法についての調査票を対象者に郵送
し、回答を得た
井上雄一他. 臨精医 1998;27:137-147.
21
不眠は高血圧の発症と関連する
高血圧
入眠困難もしくは中途覚醒有無別の高血圧発症頻度とオッズ比
高血圧
発症率
(%)
OR
95%CI
入眠困難
なし
あり
30.6
40.1
1.00
1.96
中途覚醒
なし
あり
30.7
42.3
1.00
1.88
0
1
2
3
対象・方法:日本の電話会社の職域データ。1994年の健康診断から1998年まで前向きに追跡調査。血圧が正常な人を対象に、入眠障害の影響では4,794人、中途覚醒の影響で
は4,443人で高血圧発症率を検討した。
22
Suka MJ et al. Occup Health 2003;45(6):344-350.
睡眠時間による脂質の変動 〔女性〕
脂質異常
中性脂肪(TG)
HDLコレステロール
Scrum HDL cholesterol level mg/dL
Sceum triglyceride level mg/dL
160
150
140
130
120
110
100
<5
5 to <6 6 to <7 7 to <8
睡眠時間, hours
≥8
68
64
60
56
<5
5 to <6 6 to <7 7 to <8
≥8
睡眠時間, hours
対象・方法:厚生労働省が2003年11月に実施した国民健康・栄養調査データから解析。20歳以上。女性2,329名(男性1,666名)。
23
Kaneita Y et al. Sleep 2008;31(5):645-652.
心血管疾患、冠動脈疾患と睡眠時間、
睡眠の質との関連 <海外データ>
CVD
2.5
2.5
2.0
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
1.5
1.0
0.5
≤6
7
8
Hours
≥9
Good Sleep Quality
# at risk
# cases
CHD
(95% CI)
Hazard Ratios
Hazard Ratios
(95% CI)
539
59
1797
131
1750
166
246
28
≤6
7
8
Hours
≥9
0.0
Poor Sleep Quality
543
72
872
67
716
45
220
20
≤6
7
8
Hours
≥9
Good Sleep Quality
# at risk
# cases
539
37
1797
86
1750
98
246
16
≤6
7
8
Hours
≥9
Poor Sleep Quality
543
49
872
84
716
45
220
12
Hazard ratios(95% CI) of incident CVD and CHD by sleep duration and sleep quality, adjusted for age, sex, smoking, alcohol, coffee, subjective health and educational level;
the MORGEN Study, 1993 and 1994.
対象・方法:心血管疾患の既往がない20歳∼65歳までの男女20,432名を対象とし、睡眠時間と睡眠の質については自己記入式質問票を用いた調査から、罹患率、生命状態およ
び死因についてはいくつかのナショナルレジストリから情報を得た。ハザード比はCox比例ハザードモデルを用いて検出した。
24
Hoevenaar-Blom MP et al. Sleep 2011;34(11):1487-1492.
ガイドラインの位置づけ
不眠症治療の特徴
医師の専門性
睡眠障害専門医は、ごくわずか(500名)
生命にかかわらないため、重視されない
睡眠は、日中の積極的な活動と異なり、
受動的な状態で、心理面を始めとする、
様々な環境要因による影響を受けやすい
• 患者をトータルで診る・知る必要がある
• 睡眠薬は、飲みかたが非常に重要
→不眠症治療は、服薬指導が主役︕
•
•
•
•
26
不眠症治療について強調したいこと
• 睡眠薬治療では、服薬指導が非常に重要
理由は・・・
1. 不眠症の疫学的特徴
2. 不眠症治療の特徴
3. 睡眠薬処方法の特徴
4. 睡眠薬そのものの特徴
27
睡眠薬の特徴
•
•
•
•
Bz類は、麻酔のように眠る薬ではない︕
Bz類では、めったに死ねない。
眠るために飲み続けると、必ず過量に。
不眠症治療は、睡眠衛生指導が主役で、
薬物治療は、あくまで補助的・急性期の
みの一時的なものであるべき。
→慢性疾患主治医に期待される
28
厚労科研・睡眠学会ワーキンググループ
29
このガイドラインの特徴
• ごく簡単に、睡眠の概論 (10p)、診断
(15p)、治療(15p)をまとめた上で、
クリニカルクエスチョン40問(120p)に、
答える形で、わかりやすく説明している
• →内容は、是非、読んで下さい︕
30
参考資料
• 月刊「薬事」2014年4月号 (¥2000)
特集「不眠症の薬物療法管理」企画・粂
• 睡眠薬の適正な使用と休薬のためのガイドライン
「出口を見据えた不眠医療マニュアル」
日本睡眠学会 2013年6月,10月 (無料)
http://www.jssr.jp/data/guideline.html
• 睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン
三島和夫編・じほう (¥2500)
31
32
睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン
33
不眠症の疫学的特徴
• 全年齢に存在するが、加齢とともに増加
• 睡眠薬処方率は、加齢とともに急増
• 主訴としてより、他疾患の診療時に、不
定愁訴の一つとして、治療されるケース
が多い。高齢になると、他の生活習慣病
で受診するケースも増えるし、生活習慣
病、そのものの随伴症状としての不眠も
存在する。
34
9:00
世界の国の睡眠時間
8:45
8:30
8:15
8:00
7:45
7:30
7:15
7:00
OECD ‒ Society at a Glance (2009)
35
社会生活基本調査(男, H18年)
36
社会生活基本調査(女, H18年)
37
年代別
20.0
男性
18.0
38
睡眠薬処方率 (%)
女性
16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
0-
10-
20-
30-
40-
50-
60-
70-
三島和夫先生(国立精神神経センター)による
睡眠障害の診断と治療
睡眠障害の症状によるアプローチ
1.眠れない
2.眠たい
3.眠る時間がずれる問題
4.眠っている間の問題
5.睡眠についての症状はないが、
睡眠不足などの問題がある場合
40
1.眠れない
「眠れない」のいろいろ
1.眠る時間が足りなくて、眠れない
2.眠りたい時に、眠れない
3.眠れないけど、日中は元気
4.眠れなくて、日中に障害がある
→ 4.だけが「不眠症」
2.は「眠りたい病」
41
2.眠い、朝起きられない
過眠症状のチェックポイントは睡眠時間
→睡眠時間が足りない→睡眠衛生チェック
→睡眠は取れている→睡眠時無呼吸症候群、
ナルコレプシー、PLMD,RLS,などチェック
小学生の授業中の居眠りは要注意
→ナルコレプシーは小中学生が好発年齢
42
3.眠る時間がずれる問題
寝付きの悪さ+寝起きの悪さ
→ ほとんどは、夜型+睡眠不足
(睡眠衛生の指導
=>詳細は後述)
稀に、器質的な DSPS, non24 など
→ 基本は、睡眠記録による判定
43
4.眠っている間の問題
1.睡眠時遊行症
2.夜驚症
3.夜尿症
4.寝言
5.寝返り・寝相の悪さ
6.歯ぎしり
7.いびき
8.睡眠関連食行動障害
44
5.睡眠の症状がない場合
1.睡眠時無呼吸症候群
→ 昼間の落ち着きがないなどが、
唯一の症状の場合あり
2.不適切な睡眠衛生・睡眠不足症候群
→ 睡眠の問題という自覚がない
3.その他、元気がないなどの非特異的な
症状のみの場合
45
専門医にご紹介頂きたい睡眠障害
眠っているはずなのに、日中眠い
→睡眠時無呼吸症候群 (SAS)
周期性四肢運動障害 (PLMS)
ナルコレプシー
寝つきが悪く、元気が無い。学校・会社を休む
→うつ病、睡眠相後退症候群 (DSPS)
むずむず脚症候群 (RLS)
寝ている間に異常がある、ねぼけがひどい
→レム睡眠運動障害 (RBD)
46
むずむず脚症候群(下肢静止不能症候群)
最近、特に注目されている(新薬が、続々)
原因不明→A11のドーパミン作用不足
ドーパミン受容体アゴニスト= 特にD3受容体に
高い親和性を持つものが有効
プラミペキソール(ビ・シフロールTM)
ロチゴチン(ニュープロTM)
クロナゼパム︓ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬
ガバペンチン エナカルビル(レグナイトTM)
ガバペンチン(リリカTM)のプロドラッグ
GABA誘導体、Caチャネルα2δリガンド、
→鎮痛剤として開発
むずむず脚症候群の成因
視床下部
背側後側核 A11
(ドーパミン神経)
脊髄上行路
背側縫線核
(セロトニン神経)
脊髄下行路
脊髄反射反射弓
Clemens, S., Rye, D.,
& Hochman, S. (2006)
Neurology 67, 125–30
不眠症に戻って
1.眠れない
「眠れない」のいろいろ
1.眠る時間が足りなくて、眠れない
2.眠りたい時に、眠れない
3.眠れないけど、日中は元気
4.眠れなくて、日中に障害がある
→ 4.だけが「不眠症」
2.は「眠りたい病」
50
1.眠れない
眠れない症状にも4種類
→ 寝つきが悪い
入眠困難
→ 途中で目が覚める
中途覚醒
→ 朝早く目が覚める
早朝覚醒
→ ぐっすり眠れない
熟眠障害
51
眠りたい病の「廃止」
2005年、不眠症の定義が変更
これまでの不眠症
=夜、眠れなければ、何でも不眠症
新しい不眠症
=夜、眠れない+昼、調子が悪い病気
52
不眠症の定義変更の影響
単に夜眠れないだけでは、不眠症ではない。
昼間が調子悪い。
→ 症状の把握が昼間中心に
→ 治療の目的・効果判定も昼間に
→ まず、睡眠衛生のチェックが最重要
→ 不眠症には、認知行動療法が最初
→ 本来的には、薬は最後
53
不眠症の認知行動療法
というと、難しそうですが…
自己学習書
自分でできる
不眠克服ワークブック
∼短期睡眠行動療法
自習帳 (2011)
1300円 創元社
55
不眠症の認知⾏動療法のテキスト
患者さん向けにも
医師・専⾨家向け
59
不眠症の認知行動療法(CBT-I)
• 睡眠の基礎知識を学ぶ
• 自分の睡眠の状態を知る→睡眠記録
• 適切な睡眠時間の目標を立てる
→睡眠制御法(睡眠短縮法)
• 睡眠に良い種々の工夫を学ぶ
→刺激制御法
• リラックス法・運動など
→筋弛緩法、自律訓練法
• 睡眠の状態を再評価→必要なら薬物治療
56
睡眠時間の記録
睡眠日誌 :名前
(
記録日時
平成 年
夕方
4 5 6 7 8 9
)
ベッド/ふとんに入っていた時間
夜
深夜
朝
10 11 12
1 2 3 4 5 6 7 8 9
昼
10 11 12
1 2 3
寝付く
までの
時間
中途
目覚め
服薬
睡眠時間
覚醒
の良さ
飲酒
回数
熟睡感など
月 日( )
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
分
時間 分
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
月 日( )
58
アクチグラフ
59
アクチグラフを使った睡眠記録
60
睡眠不足症候群
17歳
火
水
水
木
木
金
金
土
土
日
日
月
月
火
火
水
水
木
木
金
金
土
土
日
日
月
月
火
61
長時間睡眠者(起床困難)
18︓00
0︓00
6︓00
12︓00
62
18︓00
非24時間型睡眠覚醒障害1(18歳男性)
63
非接触型
睡眠モニター
オムロン睡眠計
HSL-101: 市販品
HSL-102m: 医療用
64
非接触型睡眠計の計測技術
マイクロ波の電波(10.5GHz)を用い、非接触・非拘束で、
体動と呼吸に伴う胸郭の動きから睡眠/覚醒を判定する
電波センサ
Respiration
睡眠/覚醒を判定
WWWSWSSSSSWS
Activity
災害時救助活動用装置と類似技術で、
体動検出(寝具などに左右されない)
65
Setting and Specification
 Radio frequency sensor 10.525GHz (original 5.8GHz)
 64Hz sampling rate
Top view
Setting
Area
pillow
50cm – 100cm Bed
Side view
Contactless sleep monitor
<0.2 m
Bed
66
男女別の全睡眠時間の分布
TST(min)
Ave
SD
Male
358.7
74.9
Female
370.7
73.7
9
Frequency(%)
8
7
Male
6
Female
5
4
3
2
1
0
180-
240300360420Total Sleep Time (min)
480-
54067
年代別の就床時間
10's(40)
20's(369)
30's(867)
40's(1191)
50's(878)
60's(355)
70's(127)
80-(38)
22:00
0:00
2:00
4:00
6:00
Time(HH:MM)
8:00
10:00
68
曜日による睡眠時間のズレ
Monday(3451)
Tuesday(3451)
Wednesday(3440)
Thursday(3408)
Friday(3402)
Saturday(3423)
Sunday(3446)
23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00
Time(HH:MM)
69
不眠に対する認知
不眠症の認知の歪み
1.実際には、ある程度眠れているのに、眠れて
いないと思う
2.睡眠が浅く・短いことが、悪いことだと思う
3.体調の悪さを、不眠のせいだと思う
4.辛いことが、眠れば解決すると思う
5.眠れないと思うと、焦ってしまって、ますま
す眠れなくなる
71
不眠症の問診・診療のコツ
1.ラポールは、最重要
→眠れないことは、主観的にはとても辛い
2.睡眠そのものの質問は、最低限にする
3.日中の活動・気分をしっかり尋ねる。
4.睡眠以外の治療目標を立てる
→眠れることを、目的にはしない
5.睡眠記録をつける
6.あまりにも主観評価が悪い場合は、
客観的な検査を行う
72
睡眠衛生改善ポイント(非高齢者)
1.睡眠不足
平均的な睡眠時間が短い
2.不規則睡眠
毎日の睡眠量が一定ではない
3.睡眠相後退
夜型化(入眠障害と起床困難)
→ ところが、高齢者は全く逆の問題が︕
73
睡眠衛生改善のコツ(高齢者に)
1.夜は明るく、朝は暗く(遮光カーテン)
2.夜更し、深夜TVを推奨(不良老人の勧め)
→若い人と、正反対の対応
3.お昼寝を推奨
→朝から深夜までは、体力が続かない
4.夕食前後のうたた寝を禁止
5.夕陽の散歩、夕食後の体操を推奨
6.睡眠薬は、内服時刻を注意する
74
睡眠力が落ちた高齢者の不眠は必然
10's(40)
20's(369)
30's(867)
40's(1191)
50's(878)
60's(355)
70's(127)
80-(38)
22:00
0:00
2:00
4:00
6:00
Time(HH:MM)
8:00
10:00
75
睡眠制御法
睡眠時間制限法
睡眠短縮法
76
高齢者の不眠は「必然」
24:00
若い人
眠っている時間
22:00
高齢者
7:00
24:00
5:00
眠っている時間
入眠困難 中途覚醒
早朝覚醒
77
睡眠短縮法1︓入眠困難
22:00
24:00
5:00
寝つきが悪いと
悩んでいる時間
23:30
5:00
78
睡眠短縮法2︓中途覚醒
22:00
24:00
5:00
目が覚めて眠れないと
悩んでいる時間
23:30
5:00
79
睡眠短縮法3︓早朝覚醒
22:00
24:00
2:00
5:00
朝早く目が覚めて
悩んでいる時間
23:30
5:00
80
眠気の変化の波(リズム)
眠気の強さ
深夜
夜の眠気の谷
=眠れない時間
午前
午後
夜
深夜
午前
81
睡眠の原理を知って、良く眠る
1.眠くなるためには、起きていること
2.眠気の波(リズム)を利用する
3.脳の仕組みを利用する
→ 脳の温度が下がると眠くなる
82
元気な人の1日
日中、しっかり活動
夜は深く眠る
83
元気ではない人の1日
日中、なんだか、
ぼーっとしている
夜も、眠りが浅くて、
よく目が覚める
84
不眠症の認知状態と行動変容の可能性
いつ病気になるかわからない。
将来が不安だ。
不安が続いて、夜、眠れない
昨日は全く眠れなかった
眠れなくて、身体がきつい。
動く気にならない
夜、眠れないと思うと、
不安になる。
どんな病気になるのか︖
その病気の対処法は︖
不安内容の
具体化・具象化
将来、何がしたいのか︖
方向転換
なぜ夜は不安になるか︖
生物学的理解
知識の付与
本当に眠れていないのか︖
(アクチグラフなどで検査)
現状誤認の
是正
眠れないことで不調なのか︖
認知の是非
本当に動いてみたのか︖
激励
夜眠ることが目的なのか︖
思考の転換
85
睡眠薬治療のポイント
86
不眠症治療の経過
1 2
難治性(慢性)不眠症
重要度
不眠症
3
臨床徴候
再評価
6
正常
未治療期
初期治療期
寛解
反跳性不眠
再発
再燃
ゴール設定
不眠症状
治療期間
5
4
減薬
休薬
7
休薬・フォロー
アップ期
維持療法期
回復
87
睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン.三島和夫 編 じほう,2014
睡眠薬の種類
1
古いもの︓バルビツール酸系睡眠薬
依存性・耐性形成がある
呼吸抑制が強い・安全域が狭く危険
現在︓ベンゾジアゼピン受容体に働くもの
いわゆる精神安定剤から進化した
依存性なく安全、いろいろな作用時間
薬局で買える︓抗ヒスタミン剤
風邪薬の成分
眠気よりボッーとする作用
短期間・軽症のもののみ
88
睡眠薬の種類
2
現在︓ベンゾジアゼピン受容体に働くもの
基本的には、作用時間の長さで選択
超短時間作用型︓(3∼4時間)
ルネスタ、マイスリー、アモバン、ハルシオン
短時間作用型︓(7∼10時間)
レンドルミン、エバミール、デパスなど
中時間作用型︓(15∼20時間)
ロヒプノール、ベンザリン、ユーロジンなど
長時間作用型︓(24時間∼ ) ドラールなど
89
睡眠薬の種類
3
新規作用機序︓
メラトニン受容体アゴニスト︓
ラメルテオン(ロゼレム、武田)
オレキシン受容体アンタゴニスト︓
スボレキサント(ベルソムラ、MSD)
90
睡眠薬開発の歴史
1882
1962
1980
1996
フルラゼパム
H3C
N
H3C
O
H
N
H3C
H3C
CI
ラメルテオン
O
CH3
O
N
バルビタール
O
H
HCI
H3C
ベンゾジアゼピン系
HO2C
O
H3C
O
H OH
CH3
N
N
CH3
CH3
スボレキサント
N
NH
バルビツール酸系
N
H
ゾルピデム
N
F
O
2014
O
CO2H
Cl
N
H OH
N
N N
H3C
2
非ベンゾジアゼピン系
N
CH3
H
N O
メラトニン
受容体作動薬
オレキシン
受容体拮抗薬
稲田健 他. 薬局 2011︔62(10)︓3338-3342.より作図
91
Bz, 非Bzの注意点
•
•
•
•
•
基本的には、全て同じ受容体に働く
作用は、受容体占有率90%程度で頭打ち
2∼3錠以上、100錠飲んでも、作用同じ
そのため、安全だが、「眠れない」
自然な眠気を、増強する作用
(ゼロは、何倍してもゼロ)
92
BzA の作用機構
GABAA受容体の
ベンゾジアゼピン
結合部位に結合し、
作用する。
松田一己先生監修︓スズケンDIアワーより
http://medical.radionikkei.jp/suzuken/
93
睡眠中枢と覚醒中枢の概略
眠る脳
(大脳皮質)
A. 視床下部視索前野 (POA)
G
A HB
B. 視床下部視索結節乳頭核 (TMN)
C. 中脳腹側腹側被蓋野(VTA)
D. 延髄青斑核(LC)
E. 中脳背側縫線核(DR)
C
E
F
D
眠らせる脳
(起こす脳)
(脳幹)
F. 橋網様体、背外側被蓋核・脚橋被蓋核
(PRF,LDT, PPT)
G. 視床下部外側部(Lateral hypothalamus)
H. 視床下部視交叉上核(SCN)
94
睡眠と覚醒の伝達物質
A. 視床下部視索前野 (POA: preoptic area)
睡眠中枢(GABA, ガラニン)
B. 視床下部視索結節乳頭核 (TMN, Tubulomamilary nucreus)覚醒(ヒスタミン)
C. 中脳腹側被蓋野(VTA, venrtral tectam area)
覚醒(ドーパミン)
D. 延髄青斑核(LC, Locus ceruleus)
覚醒(ノルアドレナリン)
E. 中脳縫線核(RN, raphe nucleus)
覚醒(セロトニン)
F. 橋網様体=中脳背外側被蓋核・脚橋被蓋核(PRF, LDT, Lateral dorsal tectam, PPT,
pedunculopontine tegmental nucleus)
覚醒・レム(アセチルコリン)
G. 視床下部外側部(Lateral hypothalamus)
覚醒(オレキシン)
H. 視床下部視交叉上核(SCN, suprachiasmatic nucleus) 概日周期(AVP, VIP, GABA)
G
A H B
モノアミン系︓
ヒスタミン、ドーパミン
ノルアド、セロトニン
E
A
H
C
F
D
95
GABAA/Bz受容体の構造
第2膜貫通部位を中心に向け5量体形成
α1-6 β1-3 γ1-3 δ ε θ π ρ1-3 (19種類)
BzR-ω1(α1β1γ2,high aff.,大脳皮質/脳幹
/小脳),ω2(α2,3,5を含みlow/辺縁系脊髄)
19の5乗=
247万種︖
96
結合サイトがいろいろ
97
GABAA受容体作動薬
• 一部の麻酔薬、アルコール、バルビツ
レート類、Bz系、非Bz系など多数
• 受容体への結合部位
• 機能の違い
→開口時間延長と、開口確率増加
98
GABA 受容体に対する作用の違い
99
単一チャンネルに対する作用
GABA︓少ない
BZ
バルビツレート
GABA︓中
GABA︓多い
100
お酒と睡眠薬が併用禁忌の理由
同じGABAA(Bz)受容体に働くが、
作用機序が異なるため、相乗作用により、
薬効が極端に強くなる危険性があるから
101
用量反応曲線
Bz
Barbiturate
97回国試問題
http://square.umin.ac.jp/
Licence-Exam/No97-Exam/
102
作用機序の違い
• BzとGABA, バルビツレートの違い
• GABAに対する用量反応曲線(DoseResponse Curve)が異なる
• Bzは、有効濃度を低くする
→最大効果は変わらない
→BZをいくら飲んでも基本は死なない
• バルビツレートは、最大効力を高める
→GABA作用が高まり呼吸が止まる
103
反跳性不眠︓睡眠薬性不眠1
•
•
•
•
超短∼短時間作用型のBZを内服
内服中止した夜の睡眠潜時延長
通常は1∼3日で元に戻る
長い場合、1週間程度続く
• 元に戻っても、そもそも内服前に入眠困
難があった場合、その状態に戻る
→よくなってしまうわけではない
104
持越し効果︓睡眠薬性不眠2
• 中∼長時間作用型のBZを内服
• 午前中に眠気が残ることで、寝坊、午前
中の活動度の低下 →夜間の眠気減少
• 翌日の入眠時にも、血中に一定量残存
• その状態が「起点」になるため、そこ
に、さらにBZが来ても、上乗せ効果が弱
まる
105
メラトニン受容体アゴニスト
ロゼレム(スボレキサント)
106
メラトニン受容体アゴニスト
処方せん医薬品
ラメルテオン錠
107
睡眠の2つのメカニズム
睡 眠
恒常性維持機構
疲労や睡眠不足による
睡眠物質の蓄積から
誘導されるメカニズム
体内時計(概日リズム)機構
規則正しい睡眠−覚醒リズム
=サーカディアンリズム
により誘導される睡眠
「疲れたから眠くなる」
「夜になったので眠くなる」
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
ラメルテオン
108
宮崎総一郎(滋賀医科大学)ほか︓医薬ジャーナル,46,313-318, 2010.
ロゼレムの作用機序
監修
内山真(日本大学医学部精神医学系
109
教授)︓ロゼレム印刷物(1-1-8101),2010年4月作成
ロゼレムの適応と効果・注意点
• 副作用が少ない︓抑制なく、転倒少ない
→メラトニン︓男性の無精子症の報告
• メラトニン分泌の減少
←加齢、昼の光︓少ない、夜の光︓多い
• 良い適応︓高齢者、夜型(昼夜逆転)
• 注意点︓抑制なく、自覚的眠気感少な
い。容量がやや多く、遅い時間の内服に
注意。
110
オレキシン受容体拮抗薬
スボレキサント(ベルソムラ)
オレキシンによる覚醒と睡眠の制御
オレキシン
覚醒システム
睡眠システム
睡眠状態
睡眠システム
活性化
覚醒システム
覚醒状態
櫻井 武 Brain and nerve 2012;64:629-637.より改変
112
GABAとオレキシンの役割
GABA
 広範囲に分布
 150∼200億神経細胞1),2)
オレキシン
 限局的に分布3)
 10万神経細胞以下4),5)
中枢神経系に
おける分布状況
鎮静作用6)
睡眠および
抗不安作用6)
覚醒に対する作用
筋弛緩作用6)
覚醒状態の維持作用7)
覚醒状態の安定化作用7)
1) van Spronsen M et al. Curr Neurol Neurosci Rep. 2010;10:207–214.
2) Mignot E. Science. 2013;340:36-38.
3) Sakurai T. Nat Rev Neurosci. 2007;8:171-181.
4) Thannickal TC et al. Sleep. 2009;32:993–998.
5) Mieda M et al. CNS Drugs. 2013;27:83-90.
6) Rudolph U et al. Nature. 1999;401:796-800.
113
7) Scammell TE and Winrow CJ. Annu Rev Pharmacol Toxicol. 2011;51:243–266.
睡眠中枢と覚醒中枢の概略
眠る脳
(大脳皮質)
A. 視床下部視索前野 (POA)
G
A HB
B. 視床下部視索結節乳頭核 (TMN)
C. 中脳腹側腹側被蓋野(VTA)
D. 延髄青斑核(LC)
E. 中脳背側縫線核(DR)
C
E
F
D
眠らせる脳
(起こす脳)
(脳幹)
F. 橋網様体、背外側被蓋核・脚橋被蓋核
(PRF,LDT, PPT)
G. 視床下部外側部(Lateral hypothalamus)
H. 視床下部視交叉上核(SCN)
114
オレキシン産生神経系の模式図
視床下部
オレキシン
腹側被蓋野a
外背側被蓋核b
橋脚被蓋核b
結節乳頭体核a
青斑核a
縫線核a
橋
●OX1受容体
●OX1受容体およびOX2受容体
●OX2受容体
a︓モノアミン作動性システム :
ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、ドーパミンを産生
b︓コリン作動性システム ︓ アセチルコリンを産生
延髄
櫻井 武. 蛋白質 核酸 酵素 2007;52:1840-1848より改変
115
入眠効果(主観的) ― 高齢者/非高齢者での比較
<国際共同試験/海外試験>
(分)
0
入眠効果
入眠効果
(高齢者:65歳以上)
(非高齢者:65歳未満)
1週時
1ヵ月時
3ヵ月時
(n=307)(n=198)
(n=297)(n=191)
(n=276)(n=182)
睡眠潜時︵主観的︶の
ベースラインからの変化量
睡眠潜時︵主観的︶の
ベースラインからの変化量
-5
-10
-15
-7.5
-12.4
-30
-15
-14.0
-16.0
-17.5
スボレキサント群†
プラセボ群
LS Mean
1週時
1ヵ月時
3ヵ月時
(n=433)(n=281)
(n=418)(n=272)
(n=388)(n=243)
-5
-10
-20
-25
(分)
0
-8.8
-14.6
-13.5
-20
-24.1
-25
-30
-20.5
スボレキサント群†
プラセボ群
LS Mean
-20.0
-25.5
†:15mg/20mg
116
主観的睡眠潜時平均(mTSOm)
主観的中途覚醒時間平均(mWASOm)
治療期間(月)
治療前
治療前
主観的総睡眠時間平均(mTSTm)
治療法
治療前平均
スボレキサント
プラセボ
スボレキサント
プラセボ
スボレキサント
プラセボ
治療前
治療期間(月)
117
ベルソムラの適応と効果・注意点
• 副作用が少ない︓抑制なく、転倒少ない
• 認知機能障害・前向性健忘はない
• 悪夢などレム睡眠関連症状は増える可能
性がある(人工的なナルコレプシー)
• 良い適応︓過覚醒型︖中途覚醒︖
• 注意点︓半減期が長い→持越し眠気
新薬なので、その他も未知数
118
不眠症治療のポイント
1. 安易に睡眠薬治療を開始しない
2. 睡眠記録をつけ、睡眠(床上)時間を短縮
3. 生活リズムを整える
4. 日中に注目して、睡眠を目標としない
5. 薬物治療では、目標を決める
6. 高齢者には、ロゼレムを試す価値あり
7. BZ・非BZは、2種・3錠以上は無意味
8. 睡眠薬性の不眠に注意
9. ベルソムラは、有望かもしれない
119