平成 25 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会
講演番号: 29
近接最適性原理による CSD 係数 FIR フィルタ設計
A-4 CSD Coefficient FIR Filter Design Using Proximate Optimality Principle
今泉 拓也
Takuya Imaizumi
陶山 健仁
Kenji Suyama
東京電機大学 工学部 電気電子工学科
School of Engineering, Tokyo Denki University
1
まえがき
本研究では,近接最適性原理 (POP : Proximate Optimality Principle) による CSD 係数 FIR フィルタ設計
について検討する.組み合わせ最適化において,
「良解
同士は何らかの類似構造をもつ」という POP が報告さ
れている [1][2].フィルタ係数値列も同様に,与えられ
た仕様のもとでは POP が成立する例であると考えられ
る.探索途中で POP を定量的に評価して探索を制御し,
誤差の低減を狙う.本研究では,設計手法に GA を用い
POP による CSD 係数 FIR フィルタ設計について検討
する.設計例よりその有効性を示す.
2
CSD 係数 FIR フィルタ設計問題
フィルタ係数を CSD 表現した直線位相 FIR フィルタ
の振幅特性 H(ω) は次式となる.
N/2
H(ω) =
n=0
p
が許容非零桁数を超えた際に目的関数にペナルティを付
加し,制限を維持する.
5
設計例
提案手法の有効性を検証するために設計例を示す.比
較手法には POP の評価を行わない GA(normal GA) を
用いた.表 1 に設計条件を示す.GA のパラメータは,
個体数を 30,交叉率を 0.9,突然変異率を 0.03 とした.
探索回数は 1000 回とした.POP の評価において,R は
5 とし,β はパラメータ検証により β = 10−10 とした.
表 2 に 100 回の試行によって得られた最良の最大誤差
δmin ,平均の最大誤差 δmean ,最悪の最大誤差 δmax ,係
数全体の非零桁数 λ を示す.
表1
Ex.1 Ex.2 Ex.3
bn,m 2−m
cos nω
次数 N
100 160 210
通過域端正規化周波数 fp 0.220 0.300 0.300
阻止域端正規化周波数 fs 0.240 0.315 0.312
語長 p
16
16
16
許容非零桁数 Λ
153 243 318
(1)
m=1
ここで N は次数,p は語長,bn,m ∈ {1, 0, ¯
1 = −1} であ
る.近似基準にミニマックス基準を用いると,設計問題
は所望特性 D(ω) と振幅特性 H(ω) の最大誤差 δ を最小
にする bn,m の組み合わせを決定する組み合わせ最適化
問題となる.
表2
method
3
提案手法
最適な CSD 係数値は sinc 関数の形状を維持するため,
フィルタ係数値がほぼ変化しない係数が存在することが
考えられる.そこで,解探索中に係数値の統計を取り,
係数値がほぼ変化しない係数に対して非零桁の変動を制
限する.
係数値の統計は群最良個体を R 回更新したときに行
う.群最良個体を更新した際にその係数値を dn,r として
保存し,R 回群最良解を更新したとき,dn,r の分散 σn2
を算出する.σn2 に対し閾値 β を設け,σn2 < β の係数に
対してはほぼ係数値が変化しないものとみなす.σn2 < β
の係数に対しては,交叉率は 0,突然変異を通常の探索
時の 1/3 とし,効率的な探索を狙う.
4
CSD 表現に関する制約
本設計問題における制約は,CSD 制約と許容非零桁
数の制約である.CSD 制約に対しては,非零桁が隣接
した場合,50% の確率でどちらか一方の非零桁を強制的
に 0 にし CSD 表現を維持する.許容非零桁数の制約に
対してはペナルティ関数を用いる.係数全体の非零桁数
設計条件
提案手法
normal GA
Ex.2 提案手法
normal GA
Ex.3 提案手法
normal GA
Ex.1
設計結果
δmin δmean δmax
1.013
1.031
0.524
0.554
0.522
0.543
1.130
1.139
0.730
0.738
0.811
0.805
1.214
1.221
0.874
0.879
0.912
0.926
λ
153
153
243
241
318
318
表 2 より,提案手法は比較手法と比較して,最大誤差
を低減可能であることが確認できた.
6
まとめ
本研究では,近接最適性原理による CSD 係数 FIR フィ
ルタ設計について検討した.設計例より,提案手法は比
較手法より最大誤差を低減可能であることを示した.
参考文献
[1] 電学論 C, Vol.133, No.6, pp.1218–1228, 2013.
[2] 計測と制御, vol.47, pp.453–458, 2008.
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