新化合物探索の醍醐味 - 化合物新磁性材料専門研究会

新化合物探索の醍醐味
熊田 伸弘
山梨大学大学院医学工学総合研究部
附属クリスタル科学研究センター
The real attraction of preparation of new inorganic compounds
Nobuhiro Kumada
Center for Crystal Science and Technology, University of Yamanashi
これまでに水熱反応、固相反応およびソフト化学的手法などを用いて新しい無機化合物の探索
を行ってきた。新しい無機化合物の定義は ICSD(Inorganic Crystal Structure Database)に登録さ
れていないことであるが、演者の興味の中心は通常の合成法では合成できない無機化合物(例え
ば異常原子価を持つ酸化物)の合成と結晶構造解析である。これまでに合成した無機化合物は①
リン酸塩、②ビスマス酸化物、③遷移金属酸化物などに分類されるが、本講演ではビスマス酸化
物の研究結果を中心に紹介する。
ビスマス酸化物は出発物質に NaBiO 3 ∙nH2 O を用いて
蒸留水を溶媒として水熱反応によって合成した。単結晶
が得られた場合には単結晶 X 線回折データにより、粉末
試 料 の 場 合 に は 放 射 光 粉 末 X 線 回 折
(SPring-8,BL02B2) あ る い は 粉 末 中 性 子 線 回 折
(JAEA,JRR-3)の回折データを用いて結晶構造の精密化
を行った。
NaBiO 3 ∙nH2 O を用いた水熱反応では、通常の固相反
応では合成が困難な Bi5+ を含む化合物(Bi2 O 4 、LiBiO 3 、
ABi2 O 6 (A=Mg, Zn, Sr, Ba, Pb) および AgBiO 3 などを合成
できた 1) 。新しいビスマス酸化物の中で興味深い物性を
示す Bi3 Mn4 O 12 (NO 3 )およびダブルペロブスカイト型構造
を持つ (Na0.25 K0.45 )(Ba1.00 )3 (Bi1.00 )4 O 12 について紹介する。
Bi3 Mn4 O 12 (NO 3 )の結晶構造は PbSb2 O 6 型に類似した Bi
と MnO 6 八面体からなる層が NO 3 - によって結び付けられ
た層状構造を形成している 2)。この化合物は磁化率と比
Fig. 1 Temperature dependence of the
熱の測定から、少なくとも 0.4K まで、長距離秩序を持た
magnetic susceptibility (open
circles)
and the inverse susceptibility (solid line)
ない興味深い二次元性の磁性を持っていた。(Fig. 1)
(a) of Bi3 Mn4 O 12 (NO 3 ). Total specific heat
divided
by
temperature
(b)
of
また、同じ出発物質を Ba(OH)2 ∙8H 2 O および KOH を用
Bi3 Mn 4 O12 (NO 3 ) solidified at 6 GPa. Inset
shows the network of Mn spins.
いて水熱反応を行うことで、 Tc = 27 K の超伝導体であ
る ダ ブ ル ペ ロ ブ ス カ イ ト 型 構 造 を 持 つ
(Na0.25 K0.45 )(Ba1.00 )3 (Bi1.00 )4 O 12 を合成することができた 3)。
出発物質における Ba/Bi 比によって生成物の化学組成
および Tc が変化し、Ba/Bi 比が 2 以上では超伝導性は
消失した。(Fig. 2) 酸化ビスマス系の超伝導体では、単
純ペロブスカイト型構造を持つ(Ba,K)BiO 3 ( Tc = 31 K)が
有名であるが、その Tc を超えるビスマス酸化物は合成
できていない。
参 考 文 献 : 1) J. Ceram. Soc.Jpn, 2013, 121,
135-141, 2) J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, Fig. 2 Temperature-dependence of DC
magnetic
susceptibility
curves
of
8313-8317,3)Angew.Chem.Int.Ed.,,2014,53, superconducting samples prepared at
different Ba/Bi molar ratio in an appliied
3599-3603.
external field of 10 Oe in ZFC mode.