水前寺海苔 (Aphanothece sacrum) 多糖体Sacranの

水前寺海苔
(Aphanothece sacrum)
多糖体Sacranの皮膚への効果
物理的特性を中心に
東京工科大学応用生物学部
先端化粧品コース
佐川由葵、水谷多恵子、岡野由利、正木 仁
福岡県朝倉市甘木地区黄金川の養殖場
背 景
OSO3H
HN
O
O H
H
O
H
H
HO
OH
HO
H H
H
H HO
HO
H
O
H
H
O
HO
H
H
OH H
H HO
H
H
O
OH
H HHO
HO
H
O
H
H
•
O
OH
•
OH
O
•
O
OH
Sacran(サクラン)
OH
R’
OSO3H
H
H
OSO3H
HO
R
HOOC
HO
HOOC
COOH
水前寺海苔の細胞外マトリックスに含まれる
硫酸化多糖
平均分子量は2.9x 107
分子鎖長 10 µm 以上
分子構造の特異性から多量の水分を構造内に
保持することが考えられるが、ヒト皮膚に対す
る効果についての知見はさほど多くはない。
R’’
予備的検討結果
目 的
① Sacranは被膜形成能があること
② Sacranはポリオールとの併用により強固なゲル状シート
が形成されること
仮説
皮膚に塗布すると被膜を形成し、
水分蒸散を抑制し、外部刺激か
ら皮膚を保護する。
本研究ではSacranとポリオー
ルとの併用により形成される
ゲル状シートの物理的特性を
明らかにすることにより皮膚
への有用性について議論する
ことを目的とした。
実 験
①
ヒト皮膚に塗布したときのSacranの作用
②
Sacran/ポリオールのゲル状シート形成
領域
③
外部からの化学物質の侵入に対する
Sacranの効果
④
皮膚内部からの水分蒸散に対するSacran
の効果
ヒト皮膚に塗布したときのSacranの作用
0.5% Sacran水溶液のヒト皮膚への塗布後の水分量とTEWL
~方法~
・前腕屈側部に0.5% Sacran水溶液を、50μlを3×3cmの面積に塗布した。(n=10)
・Sacran塗布部近傍の無塗布部をControlとした。
・10分後に皮膚表面水分量とTEWLの測定をした。
~結果~
8.0
60.0
7.0
TEWL(g/m²/h)
皮膚表面水分量(AU)
50.0
40.0
30.0
20.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
10.0
1.0
0.0
0.0
無塗布
Sacran塗布
Sacran塗布後
p<0.10
無塗布
Sacran塗布後
Sacran塗布
Sacran/ポリオールのゲル状シート
形成領域
~方法~
0.15 GS GS GS GS
G
G
G
0.10 GS GS GS GS
G
G
G
0.05 GS GS
1
3
5
7
9
Sacran (%)
0.20 GS GS GS GS GS GS GS
0
0.20 GS
G
0.10 GS GS GS GS
G
G
G
0.05 GS GS GS
G
G
G
G
5
7
9
10
0
1
3
G
G
G
G
G
G
1
3
5
7
9
10
Glycerin (%)
0.20 GS GS GS GS GS GS GS
0.15 GS GS GS GS GS GS GS
0.10 GS GS GS GS GS GS GS
0.05 GS GS GS
0
butylene glycol (%)
(1,3-butanediol)
GS:ゲル状シート形成
G
0.05 GS
0
Sacran (%)
0.15 GS GS GS GS GS GS GS
G
0.10 GS
10
0.20 GS GS GS GS GS GS GS
G
0.15 GS
propylene glycol (%)
(1,2-propanediol)
Sacran (%)
~結果~
Sacran (%)
シートは、1,2-propanediol、glycerin、1,3-butanediol (1,3-BG)、
1,2-pentanediolを添加したSacran水溶液を50℃で一晩乾燥させ調製した。
Sacranの濃度;0.05~0.2% ポリオールの濃度;0~10%
1
3
G
G
G
G
5
7
9
10
pentylene glycol (%)
(1,2-pentanediol)
G:ゲル形成
Sacran/1,3-BGのゲル状シート
0.5% Sacran+20% 1,3-BG
外部からの化学物質の侵入に対する
Sacranの効果
~方法~
ケラチンフィルム
0.5% Sacran水溶液
0.5 % Sacran+20 %
1,3-BG水溶液
プラスチックの筒の底面に
ケラチンフィルムを接着剤
にて貼付
1 mMカルセイン水溶液を300μl添加
PBSを添加したwellに装着
カルセインの透過をwell内のPBSの蛍光強度
(Ex/Em:495/520nm)を測定
※蛍光強度を10min間隔で60minまで測定
外部からの化学物質の侵入に対する
Sacranの効果
Fluorescence intensity /min
カルセインのSacranゲル状シート透過プロフィール
~結果~
600.0
500.0
400.0
300.0
200.0
100.0
0.0
0
Control
10
20
30
40
50
60
測定時間 (min)
0.5% Sacran+20%
0.5% Sacran
1,3-BG
皮膚内部からの水分蒸散に対する
Sacranの効果
~方法~
湿度計(TR-72Ui)を
改良した湿度センサー
プラスチック板
ゲル状シート
0.5% Sacran水溶液,
0.5% Sacran+20% 1,3-BG
水溶液から調製したゲル状シート
PC
37˚Cの温水
を循環
湿度計を改良した湿度センサーを用いてセンサー内
の湿度変化を測定し、水分蒸散量の指標とした。
皮膚内部からの水分蒸散に対する
Sacranの効果
~結果~
90
80
相対温度(%)
70
60
50
初期水分蒸散速度
40
Control
30
0.5% Sakuran
Sacran
20
Sacran
0.5% Sakuran+
10
20% 1,3-BG
0
0
5
10
15
測定時間(min)
20
Water evaporation
rate (%/min)
Control
1.24 ± 0.02
0.5% Sacran
1.04 ± 0.06 ***
0.5% Sacran+20% 1,3-BG 0.17 ± 0.05 ***
*** p<0.001
まとめ
①
②
③
Sacranは、TEWL を低下させる傾向が見出された。
Sacranは、水に不溶のゲル状シートを形成し、ポリオー
ルと共存させることによりゲル状シートの構造が強くなる
ことが確認された
そのゲル状シートは、カルセイン透過および、水分蒸散を
抑制することが確認された。
Sacranは、皮膚の上に膜を形成し、外部からの化学物質
の皮膚への侵入と、内部からの水分蒸散を抑制する効果が
期待される。
また、その効果はポリオールと併用することにより高くな
ることが示唆される。
ご清聴ありがとうございました。
謝辞: 本研究において使用したSacranをご提
供頂いた大東化成工業株式会社に感謝致しま
す。