平成26年度 研究成果発表会 平成 26 年度 研究成果発表会 アルミニウム合金スクラップの迅速種別判定方法の検討 ○ 湯 川 泰 之 *1)、 山 田 健 太 郎 *1)、 上 本 道 久 *1) 1. は じ め に アルミニウム合金のリサイクルでは、高級材である展伸材をそのまま再利用することが 望まれているが、異種規格材が混在することで、次第に品質が低下するため、鋳物・ダイ カスト合金として利用されている。従来のスクラップヤードでの可搬型蛍光エックス線分 析 装 置( HXRF)を 用 い た 分 析 に お い て 、1000 系 合 金( 純 Al 系 )を 純 Al に 近 い 6000 系 合 金( Al-Si-Mg 系 )と し て 誤 識 別 す る 例 が 見 受 け ら れ 、そ の 原 因 と し て 試 料 の 表 面 状 態 の 影 響 が 懸 念 さ れ て い た 〔 1 〕。本 研 究 で は 、ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 の 現 場 分 析 に お け る パ フ ォ ー マ ン ス を 向 上 さ せ る た め 、 試 料 の 表 面 状 態 ( 皮 膜 の 有 無 、 表 面 粗 さ 、 不 整 形 状 ) が HXRF に よ る合金識別に及ぼす影響について調べた。さらに、可搬型反発式硬度計によるアルミニウ ム 合 金 の 硬 さ 評 価 を 行 い 、 HXRF に よ る 分 析 と 組 み 合 わ せ る こ と で 合 金 種 の 識 別 能 力 の 向 上について検討した。 (2)結果及び考察 Ra の 異 な る 1100 及 び 6061 合 金 板 を 用 い て 測 定 し た HXRF に よ る 識 別 率 を 図 1 に 示 す 。 6061 で は Ra が 変 化 し て も 識 別 率 は 変 化 せ ず 、 1100 で は Ra が 大 き く な る と 識 別 率 が 低 下 し た 。 こ れ は 、 Ra の 増 大 に よ り 、 試 料 表 面 で X 線 が 散 乱 さ れ 、 分 析 値 が 変 動 す る た め と 考 え ら れ る 。 1050 及 び 6061 合 金 の 厚 さ を 一 定 と し て 質 量 を 変 化 さ せ た 場 合 の 硬 さ 測 定 結 果 を 図 2 に 示 す 。 1050 と 6061 の リ ー ブ 硬 さ に は 顕 著 な 差 が 見 ら れ 、 HXRF に 加 え て リ ー ブ 硬 さ を 補 助 的に用いることで合金識別が可能なことが分かった。 ●1100 □6061 10 0 識 別 率 (%) 80 60 40 20 0 0 2 4 6 8 10 粗 さ , R a / μm 図 1. 表面粗さと識別率の関係 ●1050 □6061 45 0 40 0 35 0 リーブ硬 さ,HDL 2. 研 究 内 容 (1)実験方法 1000 系 と 6000 系 合 金 に つ い て 、試 料 表 面 の 表 面 処 理( 塗 装、陽極酸化)の有無、不整形状(曲率半径)及び表面粗 さ ( Ra) の 異 な る 試 験 片 を 作 製 し 、 こ れ ら の パ ラ メ ー タ ー が HXRF に よ る 識 別 に 及 ぼ す 影 響 を 調 べ た 。 試料の硬さ(リーブ硬さ)評価には、可搬型の反発式硬 度計を用いた。反発式硬度計は、試料の質量及び弾性係数 に依存して測定値が変動しやすいため、試料の厚さと質量 を変化させた試験片を用いて、硬さによる合金識別の可能 性を検討した。 30 0 25 0 20 0 15 0 10 0 50 0 0 1 2 3 4 5 質 量 ,m/kg 図 2. 反発式硬度計による 硬さ測定結果 3. 今 後 の 展 開 アルミニウム合金の識別に関する技術相談への成果活用のほか、リサイクル企業との共 同研究への展開を検討していく。 参考文献 〔 1〕 上 本 道 久 , ア ル ミ ニ ウ ム の 水 平 リ サ イ ク ル に 向 け た 現 場 計 測 技 術 の 開 発 , 第 26 回 環 境 工 学 連 合 講 演 会 講 演 論 文 集 , pp.29-34( 2013) *1)城 南 支 所 H23.10~ H24.9【 基 盤 研 究 】 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 ス ク ラ ッ プ の 種 別 判 定 に 向 け た 現 場 分 析 の 最 適 化 | 81 | 6
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