AM-715のin vitro変異原性試験

CHEMOT
938
HERAPY
AM-715のin
入
DEC.1981
vitro変
倉
異 原 性 試験
勉 ・細 見
次郎
杏 林 製 薬 株 式 会社 中央 研 究所
抗 菌 剤AM-715のin
vitroで の微 生 物 に対 す る変 異 原 性 と哺 乳動 物 細胞 の染 色 体 に対 す る影響 を調
べ,次 の 結 果 を 得 た。
1)
修 復 試験(rec-Assay):Bacillus
subtilisの組 換 え修 復 能 欠損 株(Rec-)と
AM-715の62.5,125,250μg/mlで
500,1000μg/mlで
2)
の 発育 阻 止 帯 の差 は約5mmで
の10mmに
正常 株(Rec+)に
対する
あ り,対 照 のnalidixic acidの
比 べて 小 さか っ た。
復 帰 変異 誘 発 試 験(AMES
test):Salmonella
0.001∼0.1μg/プ レー トのAM-715で
typhimurium
TA系
列 やE.cotiの
検定菌株 を
処 理 して も復 帰 変 異数 の 増加 は み られ なか った。 また,ラ
ット
肝 ミク ロゾー ム分 画(S-9)を 用 い た代 謝 活 性 化法 にお い て も影 響 はみ られ な か った。
3)
チ ャイ ニ ー ズ ・ハ ム ス ター 肺線 維 芽 細 胞(CHL細
して,AM-715の100μg/ml添
の 抑制,同
胞)で の 細胞 毒性 試 験:CHL細
加,24時 間 培 養 で は抑 制 はな く,300μg/ml添
じ く48時 間培 養 で75%の
抑 制 が み られ た。
増殖 抑 制 の み られ た300μg/ml添
加,48時 間 培 養 で も,顕 微 鏡 観 察 に お け る形態 的 な細胞 の異常 は
認 め られ なか っ た。
4) CHL細
胞 での 染 色体 異 常 誘 発試 験:直 接 法,代
200μg/ml,48時
5)姉
謝 活性 化 法 の いず れ に お いて も,AM-715を
間接 触 させ て も染色 体 異 常 出現 頻 度 の 増 加 は み られ な か っ た。
妹 染色 分 体 交換(SCE)誘
させ て もSCEの
ト血 液 細 胞 に対 し,AM-715を25μg/ml,24時
間接 触
増 加 は み られ なか った。 チ ャイ ニ ー ズ ・ハ ム ス タ ー線 維 芽 細胞(Don細
胞)で も同
様 に,50μg/ml,24時
発 試 験:ヒ
間 接触 させ て もSCEの
増 加 は み られ な か った 。
以 上 よ り,AM-715は
感 受性 菌 で あ るB.subtilisのrec-Assayで
E.coliで の 復 帰 変異 を増 加 させ る こ とは な か っ た。 さ らにCHL細
度 で増 殖 阻害 を示 した が,こ
ま た,ヒ
胞 の増 殖 に対
加,24時 間 培養 で25%
ト血 液 細胞 のSCEを
のCHL細
弱 陽 性 を 示 した が,S.typhimurium,
胞 に対 して は300μg/ml以 上 の濃
胞 の形 態 あ るい は 染色 体 に異常 を もた らす こ とは な か った。
増 加 させ な い こ とか ら,こ れ ら哺 乳 動物 細 胞 にお い て突 然 変異 原性 を
示 す こ とは な い もの と考 え られ た。
緒
AM-715は
え られ る。
一 方 ,化 学 物 質 の 発 癌 性 の ス ク リー ニ ン グ試験 と して
言
杏 林 製 薬 で 開発 中 の 抗菌 剤 で あ っ てnali。
dixicacid(NA)と
類 似 の構 造 を有 し,グ
らび に グ ラ ム陰 性 菌 に対 して,in
ラ ム陽性 菌 な
vitroで 高 い 抗 菌 活 性
知 られ る 修復 試 験(rec-Assay)6)や
復帰 変 異 誘 発試 験
(AMEstest)7)で 用 い るB.subtilis,S.typhimurium,E.coli
は,い
ずれ もAM-715に
対 し高 い感 受 性 を示 す 菌 で あ
を有 す る こ とが 知 られ てい る1)。 そ の作 用 は 感受 性 菌 の
り,し か も上記 の ご と く,そ の作用 がDNAの
DNA生
合 成 を 阻 害す る も の で あ り2),NAと
対 す る もの で あ る こ とか ら,こ れ らの感 受性 菌 を用 いた
DNAの
高 次 構 造 の形 成 に関 与す るDNAgyraseに
同様 に
対す
る もの で あ る こ と も明 らか に な りつ つ あ る3)。さ らにE
coli等 に対 す る強 い抗 菌 作 用 は,DNA生
合 成 に対 す る
阻 害 効果 お よび 菌体 内へ の 薬物 の高 い透 過性 に よ る こ と
が 明 らか に され て い る2)。
他 方,AM-715の
一 般 毒 性 試験 で は哺 乳 動 物 で の安 全
変 異 原 性 試験 に おい ては,AM-715の
生 合成 に
濃 度 に よ って は陽
性 を示 す 可 能 性 も考 え られ る。
そ こ で,今
回AM。715に
つ い て,こ れ ら感 受性菌 を
用 い たin vitroで の変 異 原 性 試験 と哺 乳動 物細 胞 を用 い
た細 胞 毒 性 試 験,染 色 体 異 常誘 発試 験 な らび に姉妹 染色
分 体 交 換(SCE)誘
発 試 験 を行 ない,in
vitroでの選択 毒
性 は高 く4,5),こ の こ とか ら哺 乳動 物 細 胞 に対 す る 毒 性
性 お よび 変 異 原性 につ いて 検 討 したの で,そ の結果 を報
は低 い もの と推 察 され た。 この高 い選 択 毒性 は本 薬 物 の
告 す る。
細 胞 内へ の 透 過 性 の差 に起 因 して い るの で は な い か と考
939
CHEMOTHERAPY
VOL.29 S-4
培養 した。 細 胞 の 増殖 試 験 につ い て は,新 鮮 な 上 記 の培
I. 実 験 材 料 お よ び 方 法
地 を2ml入
1. 検 体
れ た培 養試 験 管 に4×104個
播 種 して培 養 を開 始 し、2日
AM-715は
塩 酸 塩 を 滅 菌 蒸 留 水 に 溶 か し,NAは0.1N
40μlを 加 え た(AM-715の
2. 修 復 試 験(rec-Assay)
KADAら6)に
添 加 後24時 間 日,48時
よ っ て 確 立 さ れ たrec-Assayを
す な わ ち,B.subtitisの
るH17株(Rec+)と
2 broth(肉
行 な った。
一種 で組 換 え修 復 能 が 正常 で あ
そ れ が 欠 損 し たM45株(Rec-)をB-
汁,ポ
リペ プ トン 各1%,NaCl
それ ぞ れ 移 植 し,36℃
で17時
じめ用 意 したbroth寒
に
間振 盪 培 養 した。 あ らか
用 い両 株 の培 養 液 を 塗 布 し,そ
目に種 々 の濃 度 の 検 体溶 液
らに培 養 を続 け,検 体溶 液
間 図にtrypsinを
用 い て細 胞 を
剥 が し,細 胞 浮遊 液 と した。 死 細 胞 の 判 定 に は0.4%
erythrosine B溶 液 を等 量 加 え,顕 微 鏡 下 で染 色 細 胞 数
を計 測 し,同 時 に非 染 色性 の生 細 胞 の 数 を計測 した。
0.5%)中
天 培 地 に,0.1mlメ
胞を
最 終 濃 度:50,100,200,300
μg/ml)。よ く混 和 した後,さ
水酸 化 ナ ト リ ウ ム に 溶 か し て 試 験 に 用 い た 。
のCHL細
ス ピ ペ ッ トを
の頂 点 をお お うよ うに検
細 胞 の 形態 観 察 試 験 で は,8チ
ャ ンバ ー ・ス ライ ドグ
ラ ス(ラ ブ テ ッ ク)の 各 穴 に培 地0.3mlを
0.6×104個 のCHL細
入 れ,こ
れに
胞 を播 種 して培 養 した。2日
目に
種 々の 濃 度 の検 体 溶 液10∼20μlを
加 え(AM-715の
最
体溶液 を浸み込 ませ た 円型 濾 紙 を置 い た。 検 出感 度 を高
終 濃 度:50,100,200,300μg/ml),よ
め る た め に,4℃
ら に培 養 した。 検体 溶 液 添 加 後24時 間 目お よび48時 間 目
で 培 養 後,さ
ら に37℃
で 一夜 培 養 し
く混 和 して か らさ
た 。濾 紙 端 を起 点 と し て 生 育 阻 止 帯 の 長 さ を測 定 し,両
に中性 ホ ル マ リンで 固定 し,GIEMSA染
菌株での阻止帯 の 長 さを比較 した。
鏡 下 で細 胞 の形 態 異 常 の有 無 を観 察 した。
3. 復 帰 変 異 誘 発 試 験(AMES
test)
ラ ッ ト肝 ミ ク ロ ゾ ー ム 分 画(S-9)は
た 。体 重 約120gのSD系
60mg/kg,4日
5. C肌
次 の よ うに し て 得
雄 ラ ッ トにphenobarbitalを
間 腹 腔 内 注 射 し,同
naphthoflavoneを80mg/kg腹
genateし,そ
量 の0.15
M
KClを
用 い てhomo-
MgClを
よび
加 え た も の をS-9mix(S-9を16.5%含
有)と
し
た。
AMEstestは
矢 作8)の 方 法 に 準 じ て 行 な っ た 。 す な わ
TA系
列 の テ ス ト菌 株(histidme
1538)とE.eoli
一 夜培 養 し た
WP2uvr
A-を
mlを 加 え て36℃
栄 養broth(Difco)中
間 振 盪 培 養 し た(前
に よる 代 謝 活 性 化 法 の 場 合 は,リ
0.5mに
で
ン酸 緩
よ び あ ら か じめ 培 養 し た 菌 液0.1
で20分
培 養)。S-9
ン酸 緩 衝 液 をS-9mix
histidineお
ル セ ミ ド(0.2μg/ml)で 約2時 間 処 理
細 胞 を剥 が し,細 胞浮 遊液 を遠 心
した(1000rpm,5分)。
よ び0.05mM
最 小 培 地Eの
biotinを
寒 天 平 板 上 に 流 し込 み ,37℃
2日 間 培 養 し た 。 出 現 し たhistidine非
異 体)の
コ ロニー数 を計 測 した。
の細胞 毒 性試 験
胞 は,10%仔
培 地 に播 種 し,CO2(5%)イ
られ た 細胞 浮 遊 液 を清 浄 な ス ライ ドグ ラス上 に
倍)で 中期 分 裂 像200個
色 を施 した。 顕 微 鏡 下(400
を観 察 し,染 色 体 異 常 の 出 現頻
度 を計 測 した。
5-2)代
謝活性化法
前 述 のS-9を 用 い,S-9を30%含
を加 え,37℃
帰変
牛 血 清 を 含 む イ ー グ ルMEM
ン キ ュベ ー タ ー(37℃)で
液で
タ ノー ル ・酢 酸 混 液(3:1)を
用 い て静 か に固定 した。 つ い で上 記 の混 液 で細 胞 を3回
度:50,100,200μg/ml)お
で
要 求 株(復
4. チ ャ イ ニ ー ズ ・ハ ム ス タ ー 肺 線 維 芽 細 胞(CHL細
CHL細
沈 査 細 胞 を7.5mMKCl溶
間処 理 後,メ
有 す るS-9mixを
つ小 試 験 管 に入 れ,
これ に種 々 の濃 度 の検 体 溶 液100μl(AM-715の
含 む ソ フ トァ ガ ー を 加 え て す ば や く 混 和 し,VOGELBONNERの
最 終 濃 度:50,100,
後,0.25%trypsinで
調 製 した。 そのS-9mixを0.5mlず
代 え て同様 に前 培養 した。
そ の 後,0.05mM
加 え(AM-715の
目に種 々 の 濃 度
く混 和 して か らさ らに培 養 した。 検 体 溶
滴 下 し,風 乾 後GIEMSA染
。 小 試 験 管 に 検 体 希 釈 液0.1ml,リ
衝液(pH7.4)0.5m1お
シ ャ レー に2×104個
た。 す な わ ち,コ
洗 い,得
要 求性 変 異 株,TA98,TA100,TA1535,TA1537,TA
胞)で
200μg/ml),よ
37℃,15分
ち,ま ずS.typhimurium
入 れ た直 径6cmの
胞 を播種 して培 養 した。3日
液 添加後24時 間 目お よび48時 間 目に染 色体 標 本 を作 製 し
間 遠 心 し た 上 清 をS-9
とした。S-9にNADPH,NADH,G-6-P,KClお
のCHL細
の検 体 溶 液100μgを
ッ トを 屠 殺 し,肝 を 摘 出 し
の9,000×g,10分
細 胞 で の染 色体 異 常誘 発 試験9)
5-1)直 接 法
培 地5mlを
目 に β-
腔 内 注 射 し た 。phenob-
arbitalの 最 終 投 与 の 翌 日,ラ
て 一 定量 を取 り,3倍
時 に3日
色 を施 し,顕 微
よ び6×105個
最終濃
のCHL細
胞
で ゆ るや か に振 猛 しな が ら培 養 した。 培
養1時 間 後 に,新 鮮 な 培 地 に て細 胞 を2回 洗 浄 し,検 体
を含 ま な い培 地 に浮 遊 させ,直
さ らに37℃
径6cmの
シ ャ レー に て
で17時 間培 養 した 。 そ の 後5-1)の
方法 で
染 色体 標 本 を作 製 し,顕 微鏡 下 で染 色 体 異 常 の 出現 頻 度
を計 測 した。
6. 姉 妹 染 色 分体 交 換(SCE)誘
発試験
ヒ ト血液 細 胞 お よび チ ャイ ニ ー ズ ・ハ ム ス ター線 維 芽
CHEMOTHERAPY
940
細 胞(Don細
胞)を
6-1)ヒ
用 い て,SCE誘
発 試験 を行 な った。
Fig.
1
1981
rec- Assay of AM- 715 and nalidixic
acid
ト血 液 細 胞 で の 試 験
10%仔
牛 血 滴 を 含 む イ ー グ ルMEM培
度 の 検 体 溶 液(AM-715の
地 に各 種 の 濃
最 終 濃 度:25,125,25μg/ml)
と5-bromo-2'-deoxyulidine(BUdR,2μg/ml)を
小 バ イ ア ル 瓶 に5mlず
よ びphytohemagglutinin0.1
無 菌 的 に 加 え,密
そ の 後5-1)の
加 え,
つ 入 れ た。 これ に成 人 男 子 か ら
採 血 し た 静 脈 血0.1mlお
mlを
DEC.
栓 し て37℃
で72時 問 培 養 し た 。
方 法 で 染 色 体 標 本 を 作 製 し,GOTOら10)の
方 法 に 準 じ てSCEの
分 別 染 色 を 施 した 。 す な わ ち,染
色 体 標 本 をHoechst33258水
溶 液(5μg/ml)に
分 間 浸 し た 。 軽 く水 洗 し た 後,染
ラ イ ド グ ラ ス 上 にMcIlvaint緩
ー グ ラス を か け
,BLBラ
室 温 で15
色 体 標 本 の 付 着 した ス
衝 液 を 数 滴 落 した 。 カ バ
ン プ(東 芝FL20E)を
約10cm
上 方 か ら30分 間 照 射 し た 。 再 び 水 洗 し て か らGIEMSA染
色 を施 し,顕
微 鏡 下 で 血 液 細 胞 の 全 核 数 に つ い てSCE
の 出 現頻 度 を計 測 した。
6-2)Don細
10%牛
M45-H17------
胞 での 試 験
胎 児 血 清 を含 む ハ ムF12培
養 試 験 管 に3×104個
日 目 にthymidineを
のDon細
含 ま ぬ ハ ムF12培
同 時 にBUdR(5μg/ml)お
え(AM-715の
地 を3ml入
れた培
胞 を 播 種 し て 培 養 し,2
よび各 種 濃 度 の検 体 溶 液 を加
で
方 法 でSCEの
下 でNo.1染
色 体 に つ い てSCEの
方 法 で染 色 体 標本 を作
製 し,6-1)の
は,500,1000μg/mlの
濃 度 でH17株
AM-715は
検 定 菌 に対 して致 死 効果 が 強 く,62.5,125,
各 濃 度 にお い て 生 じた発 育阻 止帯 の 両 株 の
差 は い ずれ も約5mmで
あ っ た。
2. 復 帰 変異 誘 発 試 験(AMES test)
AM-715を0.5μg/プ
分 別 染色 を施 した。 顕 微鏡
出 現 頻 度 を 計 測 した 。
とM45株
あ った。
250μg/mの
地 に 切 り換 え た 。
最 終 濃 度:5,10,25,50μg/ml),37℃
24時 間 培 養 した 。 そ の 後5-1)の
NAで
の 発 育 阻止 帯 の 差 が 共 に約10mmで
レー ト以 上 添加 す る と,各 検定
菌 は い ずれ も著 しく発育 が阻 害 され,試 験 出来 な かった。
そ こで0.001∼0.1μg/プ レー トの各 濃 度 にお け る各 検 定
II. 実 験 結 果
菌 の 復 帰 変異 数 を測 定 した。 測定 結 果 はTable 1に 示 し
1. 修 復 試 験(rec-Assay)
H17株(Rec+)お
AM-715お
よ びNAの
た 。S.typhimurium
よ びM45株(Rec-)の
発育阻 止 帯 と
濃 度 と の 関 係 をFig.1に
Table
1
Revertant
示 した。
mutation
a) indicates
列 の いず れの 検定 菌株 にお い
検 定 菌株 にお い て も,AM-715に
よ る と考 え られ る復 帰 変異 数 の 増加 は認 め られ な かった。
of AM- 715
metabolic
TA系
て も,ま たEcoliの
in S. typhimurium
activation
by
S- 9 mix.
and E. coli
VOL.
29
また,S-9
5-4
CHEMO
THE
mixを 添加 す る代謝 活 性 化 法 に お い て も,
RAPY
Fig. 2
復帰変異 数 の増 加 は み られ な か っ た。
3,CHL細
941
Cytotoxicity
of AM-715
in Chinese
hamster cells (CHL cells)
胞 での 細 胞毒 性 試 験
培地 中にAM-715を50,100,200お
よび300μg/mlの
各濃度 にな る よ うに添 加 してCHL細
胞 を24時 間,48時
間培養 した時 の生 存 細 胞 数 を溶 媒 対 照 で の それ と対 比 し
てFig. 2に 示 した。
AM-715の
濃 度 が高 い 場 合,あ るい は添 加 後 の 培養 時
間が長 くな る と,生 存細 胞 数 が 減 少 し,増 殖 抑 制 がみ ら
れた。す なわ ち,100μg/mlの24時
間培 養 で は溶 媒 対 照
と差が なか った が,同 濃 度 で48時 間培 養 す る と,明 らか
に生存細胞 数 が減 少 した。300μg/mlの48時
間培 養 では
75%の 増殖抑 制 が み られ た。
また,チ ャ ンバ ー ・ス ラ イ ドグ ラス を用 い て培 養 した
後のCHL細
胞 の形 態 的 な変 化 は,各 濃 度 の い ず れ の培
養時間 にお いて も,ほ とん どみ られ なか った。 す なわ ち,
生存細胞数 を顕 著 に減 少 させ たAM-715の300μg/ml,
48時間培 養 にお いて も,形 態 的 な変 化 は 認 め られ なか っ
た。
4.CHL細
胞 での染 色 体 異 常膀 発 試 験
培地 中にAM-715を50,100お
度 にな るよ う添 加 してCHL細
よび200μg/mlの
胞 を24時 間,48時
各濃
間培 養
した時の染 色体 を観 察 し た(直 接 法)。 結 果 はTable
2
ま た,S-9mixを
に示 した。
AM-715の
意 な差 はな か った(Photo
各 濃度 のい ずれ の培 養 時 間 にお い て も,染
色体異常 の 出現頻 度 は 非常 に低 く,溶 媒 対 照 と比 べ て有
1)。
添 加 す る代 謝 活性 化 法 にお い て も,
染 色体 異 常 の 出現 頻 度 の 増 加 はみ られ な か った 。
5.姉
妹 染 色 分体 交 換(SCE)誘
培 地 中 にAM-715を
あ る い はDon細
発試験
一 定濃 度 添 加 し て ヒ ト血液 細 胞
胞 を培 養 した時 のSCEの
測定 結 果 を
Table 3に 示 した 。
ヒ ト血液 細 胞 では,AM-715の2.5,
いず れ の濃 度 にお い て も,溶
12.5, 25μg/mlの
媒対 照 に比 べSCEの
出現
に差 はみ られ な か った。
また,Don細
胞 で も,AM-715の5,
のい ず れ の濃 度 に お い て も,No.1染
10, 25, 50μg/ml
色 体 のSCE数
が溶
媒対 照 に比 べ て 有意 に増 加 す る こ と は な か っ た(Photo
2,3)。
III.考
AMES
察
ら7)が 微 生物 の 突然 変 異 を利用 し,化 学 物 質 の
変異 原 性 を検 索す る方 法 を確 立 して 以 来,多
くの 化 合 物
の変 異 原 性 が試 験 され,発 癌 物 質 と して知 られ る もの の
多 くが 変 異原 性 物 質 で あ る こ とが 明 らか に され た 。 そ し
て化 学 物 質 の発 癌 性 の 短期 ス ク リー ニ ン グ試 験 と して の
変 異 原性 試 験 が重 要 視 され る に至 り,各 種 の試 験 法 が 開
発 され た。
Photo 1
そ こで,AM-715の
変異 原 性 を検 索 す る試 験 の 一 環 と
942
CHEMOTHERAPY
Table
2
1) Human
3
して,rec-Assay,AMES
metabolic
Sister chromatid
Chinese hamster
blood
by S- 9 mix . for
exchanges of AM- 715 in human
cells (Don cells)
1 hour
blood
cells and
2) Don cells
胞 で の 細 胞 毒 性,
染 色 体 異 常 の 誘 発 能,ヒ
ト血 液 細 胞 やDon細
SCEの
vitroで 検 討 し た 。
AM-715は
activation
cells
test,CHL細
誘 発 能 に つ い てin
1981
Chromosomal
aberration
test of AM- 715 in
Chinese hamster cells (CHL cells)
* indicates
Table
DEC.
哺 乳 動 物 に 対 す る 毒 性 が 低 く,感
胞 で の
受性 菌 に
予想 され た。 しか しこの こ とが変 異原 性 と直接結 びつ く
もの では な い と考 え られ る。
一方
,AMES
testで もAM-715に
を用 い るた めMIC値
感受 性 を示 す検定 菌
以 下 の極 め て低 い濃 度 で の検討 を
対 し て 選 択 的 に 抗 菌 作 用 を 示 す と い う特 徴 を 有 す る 抗 菌
行 な った。 そ の結 果,い ずれ の 検定 菌 株 にお い て も復帰
剤 で あ り,そ
変 異 数 の 増加 はみ られ な か った。
害 で2),そ
の 抗 菌 作 用 の 作 用 機 構 はDNAの
の 作 用 点 はDNA
gyraseに
と考 え ら れ て い る3)。 ま た,AM-715類
生合 成 阻
対 す る もの で あ る
似 の 構 造 を 有 し,
以 上 の結 果 か ら,感 受 性 菌 を用 いた試 験 におい てAM715の 変 異 原 性 を検 索す る こ とよ り,む しろ哺乳動 物細
同 様 な 作 用 機 構 に よ り抗 菌 作 用 を 示 すNAはKADAら6)
胞 にお け る細 胞 毒 性 作用 あ るい は 染色 体 に対 す る作 用 を
に よ りrec-Assayに
検 討 す る こ とに重 点 を 置 くべ きで あ る と考 え,以 後の試
お い て陽 性 で あ る こ とが報 告 され て
い る 。 本 実 験 で も,NAの500μg/mlお
よ び1000μg/ml
に お い て はH17株(Rec+)とM45株(Rec-)と
10mmの
発 育 阻 止 帯 の 差 が 生 じ,明
と認 め られ た が,AM-715の62.5∼250μg/mlに
は む し ろ 両 株 の 阻 止 帯 の 差 は 約5mmと
rec-Assayは,本
来 被 検 物 質 のDNA障
索 す る 試 験 で あ る 。NAやAM-715の
に 対 しDNAの
の 間 に約
らか に陽 性 で あ る
おいて
小 さか っ た。
害誘 発能 を検
よ うな 感受 性 菌
生 合 成 阻 害 作 用 を 有 す る も の に お い て は,
感 受 性 菌 を 用 い たrec-Assayで
は 陽性 を示 す こ とが 充分
験 を実 施 した。
そ の結 果,AM-715は
てCHL細
微 生物 に対 す る抗菌 作用 に比べ
胞 に対 す る毒 性 が低 く,300μg/mlで48時
間
培 養 して もそ の増 殖 は抑 制 した が,細 胞 の形 態的 な異常
を起 さな か った 。CHL細
胞 は 染色 体 数 が25本 の安定 し
た核 型 を示 し,自然 発 生的 な染 色体 異 常 の 出現率 が0.9%
と低 い11)。この 細胞 を用 い,AM-715を200μg/ml添
加
して培 養 した が,直 接 法 に お いて も代 謝 活性 化 法 にお い
て も染 色 体 異常 の出 現 を誘 発 す る作用 はみ られ なか った。
VOL.
Photo
29
CHEMOTHERAPY
8-4
Photo
2
また,ヒ
943
ト血液 細 胞 やDon細
試験 におい て もAM-715の
試験にお けるSCEの
胞 を用 い たSCE誘
発
activity
影 響 を検 討 した 。SCE誘
発
Antimicr.
出現 は染 色体 に対 す る障 害 の 強 さ
2)
照で6.1で あ り,LATT
胞 当 りのSCE数
これに対 しAM-715の25μg/mlを24時
SCEの 増加 はみ られ ず,ま た,Don細
間接 触 させ て も
胞 で も50μg/ml
接触 させ て も全 く影 響 が な か った 。
す なわ ち,AM-715は
感 受 性 菌 に対 しての み 選択 的 に
ITO,
Mode
H.
SHUNGU,
E.
FISCH
of
L.
BLAND,
J.
R.
B.
HUBER:
absorbed
synthetic
compound
bacterial
infections.
The
4) 入 倉
12th
相島
博,
AM-715の
5) 入 倉
勉,
杉本
KADA,
T.;
K.
土屋
勉,
剛,
chemical
賀田
Italy,
July
杉本
勉,
棚瀬裕
マ ウスお よ
dye
7)
mutagens
detected.
AMES,
B.
proved
N.;
Natl.
F.
test
of
Acad.
Sci.
SADAIE:
procedures
phloxine,
Res.
LEE
&
system
mutagens
USA
土屋
剛:
E.
for
and
70:
for
1981
vitro
and
screening
a mutagenic
16:
W.
In
782•`786,
165•`174,
DURSTON:
the
detection
carcinogens.
red
1972
A
imand
Proc.
1973
環 境 中 の発 癌 物 質 を微 生 物 を使 って ス
ク リ ー ニ ン グ す る 実 験 法 に つ い て 。 蛋 白 質,
酵 素20:
AM-
ラ ッ トに お け る 慢 性
29 (S-4): 829∼848,
and
D.
博,
& Y.
Mutation
bacterial
29 (S-4): 766∼784,
相島
rec-assay
8) 矢 作 多 貴 江:
1) ITO,A.; K . HIRAI, M. INOUE,H. KoGA, S. Suzue,
T. IPIKURA& S. MITSUHASHI:
In vitro antibacterial
of
Con-
第1報,
第4報,
TUTIKAWA
host-mediated
献
orally-
treatment
International
毒 性 学 的 研 究,
毒 性 学 的 研 究,
classification
文
the
PELAK,
new
Florence,
毒 性 試 験 。Chemotherapy
長 尾博 士,国 立 衛 生 試 験 所
CELOZZI,
び ラ ッ トに お け る 急 性 毒 性 な らび に ラ ッ トに お け る
6)
石館博 士に深甚 の謝 意 を表 明 します 。
&
B.
a
for
Chemotherapy,
勉,
文:
ような作用 はな い もの と考 え られ た。
博士,国 立 ガ ンセ ン ター
a
Agents
1981
715の
検定菌,培 養細 胞 を分 与 頂 い た 国立 遺 伝研 究 所
INOUE
AM-715,
E.
MK-0366,
1981
辞
of
KOUPAL,
亜 急 性 毒 性 試 験 。Chemotherapy
謝
action
WEISSBERGER,
おいて も変異原 性 を示す よ うな結 果 は 得 られ てお らず,
は哺 乳 動 物細 胞 にお い て突 然 変 異原 性 を示す
1980
M.
Antimicr.
殖試験,骨 髄細 胞 で の染 色体 試 験 な どin vivoの 試 験 に
AM-715に
analog.
103•`108,
IRIKURA,
analog.
H.;
J.
&
of
acid
17:
preparation
GADEBUSCH,
D.
nalidixic
S. SUZUE,T.
acid
in
new
Chemoth.
MITSUHASHI:
19-24,
また,動 物 を用 い た優 性 致死 試 験,催 奇 形性 試 験,繁
a
&
nalidixic
gress
毒性が強 く,哺 乳 動物 細 胞 に対 して は低 毒 性 で しか も変
異原性 を示唆 す る よ うな作 用 を 示す こ とは な か っ た。
A.
Chemoth.
3)
AM-715,
Agents
K.;
S.
new
が溶 媒対
12)の報 告 とよ く一 致 して い た。
of
HIRAI,
&
の指標 とな る もので あ る と考 え られ て い る。 ヒ ト血 液 細
胞での本試 験 にお いて は,細
3
1178∼1189,
1975
核 酸,
CHEMOTHERAPY
944
9) 石 館
基:
原 と毒
性4:
10)
GOTO,
K.;
Factors
sister
359,
11)
染色 体 異常 に よ る変 異 原 の検 出 法。 変 異
64∼73,
S.
chromatids.
in
vitro-
1978
MAEDA,
involved
Y.
KANO&
T.
differential
Giemsa-
Chromosoma
(Berl.)
SUGIYAMA:
staining
66:
12)
of
351•`
Res.
LATT,
of
with
compounds
ODASHIMA:
on
Chinese
Chromosome
tection
hamster
test
cell
in
S.
human
C.
M.& O.
A
tion
1978
ISHIDATE,
134
DEC.
1974
Proc.
screening
for
48:
337•`354,
A.:
Sister
chemical
fluorescence
Natl.
Acad.
Muta-
1977
chromatid
chromosome
by
carcinogens.
1981
exchanges,
damage
and
Sci.
and
induction
USA
by
71:
indices
repair.
mitomycin
3162•`4166,
De-
VOL.29
CHEMOTHERAPY
S-4
THE
MUTAGENICITY
945
OF
AM- 715 IN VITRO
TSUTOMUIR1KURAand Jmo HosoMI
Central Research Laboratories, Kyorin Pharmaceutical Co., Ltd.
The
Assay,
1.
was
mutagenicity
AMES
test
rec-
Assay:
weaker
2.
than
AMES
or presence
3.
4.
of AM5.
ificant
on
the
with
Sister
increase
Therefore
AM-
715
mI
of
cells
Chromosomal
715
nalidixic
it
of
SCE
was
AM-
715
no
Chinese
715
of which
exchange
suggested
not
was
tested
of cultured
in
vitro
mammalian
preferentially
to
demonstrable
in
various
short-term
assays,
i. e.,
rec-
cells.
inhibit
hamster
24
the
cells
hours,
growth
on
48
mutagenicity
(S- 9) derived
for
test
S- 9 for
was
drug,
test
the
growth
for
S.
of
DNA-
repair-
deficient
bacteria
acid.
exhibited
AM-
without
chromatid
antibacterial
aberration
aberration
or
in
a new
preparation
against
100 ƒÊg/
observed
ability
of
microsomal
Cytotoxicity
at
The
that
the
715,
chromosomal
test:
of
treatment
was
of AMand
hours
was
in
on
both
that
715
had
AM-
cells):
was
not
no
growth
at
treatment
at
mutagenicity
ml.
and
of
300 ƒÊg/
and
with
Chinese
AM-
in
from
ml
for
of the
those
hamster
715.
mammalian
the
Whereas,
aberrations
different
cells
treated
inhibition
300 ƒÊg/
chromosomal
significantly
blood
cells
The
by
typhimurium
E.
coil
in
the
absence
livers.
observed
The
human
observed
rat
inhibited
cells:
were
(SCE)
(CHL
but
CHL
from
cells.
of
cells
cells
was
not
no
morphological
48
hours.
cells
untreated
(Don
treated
observed
in
change
at
200 ƒÊg/
ml
cells.
cells):
The
signi-