先日、商品「文房具」について登録商標Bを所有するK社から、当社の商標

藤本昇特許事務所 白井 里央子◇弁理士
先日、商品「文房具」について登録商標Bを所有するK社から、当社の商標AとK社の商標
Bは類似するため、当社に対して商標Aを付したボールペンの製造販売の中止を求める通知
を受けました。当社は3年前、商標Aについて正式に商標登録を受けていますが、商標Aの
使用を今すぐ中止すべきでしょうか?
1.問題の所在
(群馬県 K.T)
中止の必要性を検討してみましょう。
商標権者は、指定商品または
指定役務について登録商標を使用する
権利を専有する旨が規定されています
(25条)
。そのため、他人から類似商
標を使用したことを理由に差止請求さ
商標登録が無効にされるべきものと認
められる場合、その商標権の行使は制
2.検討事項
(1)商標の類否について
商標AとBが非類似であれば、商標
権侵害の問題は生じません。
限される旨が規定されています(いわ
ゆる無効の抗弁)
。よって、貴社はK
社に対して、K社の登録商標Bは無効
理由を有するため、その権利行使は制
れた場合でも、自身の商標権の専用権
したがって、まずは貴社が使用する
限されるべきものであることから、今
の範囲内であれば、その指定商品に登
商標AがK社の商標Bと類似するかど
回の権利行使の通知は不当である旨を
録商標を使用できるのが原則です。
うか検討してください。もし商標が非
回答できます。また、無効審判の請求
類似の場合、商標が類似しないため商
も有効な対抗手段となるでしょう。
ここで、貴社は商品「ボールペン」
についてAを商標登録しており、貴社
標権侵害に該当しない旨をK社に文書
による商標Aの使用は、貴社商標権の
で回答すべきです。
専用権の範囲内の使用に該当するた
め、継続できるとも考えられます。
商標AとBが類似と判断できる場合
は、
下記について検討を進めましょう。
しかし、
貴社の商標Aの出願(以下、
(3)出願Aが出願Bの後願である場合
前述のとおり、出願Aが出願Bの後
願である場合、貴社商標Aは無効理由
を有するおそれがあり、このように無効
(2)出願Aが出願Bの先願である場合
とされるべき登録商標について権利主
出願B)より後願である場合、商標A
貴社は自身の登録商標を専用権の範
張することは権利の濫用として認めら
とBが類似するとすれば、出願Aは本
囲内で正当に使用しているため、K社
れない可能性が高く、登録商標使用の
来4条1項11号でその登録を拒絶さ
の商標Bの商標権の効力は及ばない旨
抗弁は主張できません。そして、貴社
れるべきものが過誤登録されたものと
を主張することができます(いわゆる
行為は、K社の商標権の侵害に該当す
考えられるため、Aの商標登録は無効
登録商標使用の抗弁)
。
るおそれがあるため、原則として商標
出願A)がK社の商標Bの出願(以下、
理由を有することになります。そうす
また、出願Aが出願Bの先願であれ
ると、たとえ貴社が自らの商標権にお
ば、たとえ商標AとBが類似する場合
ける専用権の範囲内で商標Aを使用し
であっても、出願Bは4条1項11号
また、商標Aの使用を継続されたい
ていても、貴社行為がK社の商標権の
に違反して過誤登録されたものであ
場合は、K社の商標Bについて無効も
侵害となり、商標Aの使用を継続でき
り、商標Bの登録は無効理由(47条
しくは取消理由の有無の検討、あるい
ない事態になることも想定できます。
1項)を有すると考えられます。
はK社と商標Aの使用継続についての
以上の事実を前提に、商標Aの使用
ここで、
39条(準特104条の3)では、
Aの使用を中止するのが望ましいで
しょう。
交渉等を検討してください。
2014 No.11 The lnvention 61