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平成26年度
卒業証書授与式
式辞
「命を大切にできる人に」
小平市立小平第十四小学校
校長
村松
守夫
ものみな躍動の春を迎えたよき日、小平市立小平第十四小学校、平成26年度 第45
回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、小平市教育委員会指導主事:志村 安(し
むら やすし)様をはじめ、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜り、高いところから誠に失
礼ですが、心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。
卒業生74名のみなさん、ご卒業おめでとうございます。今、皆さんにお渡した卒業証
書は、小学校の全ての学習を修了したという証(あかし)であります。胸を張って、中学
校生活に羽ばたいてください。
さて、小学校最後の授業でもあるこの卒業式では、ある日本人の生き方について話しま
しょう。
みなさんは5年生のときの学習発表会で、命のビザで有名な杉原 千畝(すぎはら ち
うね)について発表しましたね。覚えていますか。杉原さんは、日本の外交官としてヨー
ロッパのリトアニアという国にいました。そのときに、ナチスに追われるユダヤ人たちに、
日本を通過するビザを発行しました。日本の国には無断でしたが、人の命を優先して発行
したのです。そして6000人ものユダヤ人たちの命を助けることができたのです。
ところで、杉原さんからもらったビザで日本に来たユダヤ人たちは、その後どうなった
と思いますか。ユダヤ人たちがもらったビザは通過ビザといって、日本を通過することだ
けを認めたビザなのです。日本を通過するだけですから、日本に居られる日数は最高で1
0日間でした。ユダヤ人たちはその10日間で、次に行く国を決め、その国と自分で交渉
し認めてもらわなければなりません。10日を過ぎると、強制的に自分の国に送り返され
てしまいます。送り返されるということは、ナチスによって命を奪われる、死が待ってい
るということです。
ユダヤ人たちのほとんどは、日本ははじめてです。10日で次に行く国を決めることは
絶対に不可能でした。
そのときに、困っているユダヤ人たちを助けた日本人がいます。
その人の名は「小辻 節三」(こつじ せつぞう)。彼は、ユダヤ人
が使うヘブライ語の学者でした。日本に来たユダヤ人たちから相談さ
れて、ビザの延長に尽力します。彼は、困っているユダヤ人たちをど
うしても助けたかったのです。彼らの命を守りたかったのです。
小辻はユダヤ人に代わって、ビザの延長を役所に申し出ました。し
かしすべて拒否されます。困った小辻は、知り合いである当時の外務
大臣:松岡洋右に相談に行きます。松岡は外務大臣という立場でも無
理なことを伝えます。ただ小辻に一つだけいい方法を教えました。そ
れは「ユダヤ人たちが集まっている神戸の警察署に権限があるので、
そこが許可すれば外務省は見て見ぬふりをする、友人として約束する」と言ってくれたの
です。
彼はどうしたらいいかを考えました。まず、延長の権限がある神戸の警察署の偉い人た
ちを毎日食事に誘い、仲良くなろうとしたのです。食事場所は神戸で一番高級なところで
す。食事費用は彼が借金をして用意したもので、すべて小辻が払いました。仲良くなった
3回目の食事の時に、彼はユダヤ人たちが困っていることを話し、ビザの延長をお願いし
ました。何度も何度も頭を下げました。
警察の幹部は小辻の要望を受け入れ、15日間のビザ延長を認めま
した。また何度も申請すればさらに延長できるようになったのです。
小辻の活躍はそれだけではありません。ユダヤ人たちが次の国に行
けるよう、船の手配のために横浜の港や神戸の港へ何度も何度も行き、
船便を確保しました。そうして、6000人ほぼ全員が、アメリカ、
カナダ、中国の上海に行くことができたのです。
杉原千畝が発行した命のビザをつないだ日本人、小辻節三。ユダヤ
人の命を守るために、自分の苦労も顧みず行動した小辻節三。
みなさんも、小辻節三のような日本人がいたことを誇りに思い、人のために行動できる、
そして命を守る、命を大切にできる人になっていってください。
最後になりましたが、保護者の皆様にお慶びを申し上げます。
本日はまことにおめでとうございます。これからお子さんは思春期という人生において
最も多感な時期に入ります。楽しみの多い反面、保護者として悩むことも多いかと思いま
す。しかし、私たち大人が一生懸命に生きる姿が、必ずお子さんを勇気づけ、良い方向に
向けていきます。お子さんががんばる姿を、どうぞ温かく見守り導いてください。そして、
私たち大人は、いつまでも「子供たちがお手本とする存在」でいましょう。これまでいた
だきましたご厚情に深く感謝すると共に、今後ともよろしくお願い申し上げます。
では、卒業生のみなさん。羽ばたきの時です。胸を張って、晴れやかに中学校に進んで
ください。ご卒業おめでとう、以上で私の式辞といたします。
平成27年
3月25日
小平市立小平第十四小学校
校長
村松
守夫