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山間部崩壊地調査における安全対策
発注者
新庄河川事務所
施工者
奥山ボーリング株式会社
工事名
立谷沢川流域濁沢川池ノ台地区観測調査
発表者
主任技術者
山田
孝雄
〇担当技術者
佐藤
直行
担当技術者
石塚
秀
1. はじめに
当調査は、立谷沢川支流の濁沢川において、崩壊地での斜面変動調査を実施するものです。山間部
の崩壊地であり、次に示す項目が安全管理上重要なポイントになりました。
① 地すべり変動の認められる山間部での作業のため、斜面崩壊の発生が危惧された事
② 熊・スズメバチなど有害動物が生息する事
③ 資機材の人力運搬時における斜面からの転倒・滑落
④ 携帯電話の通信が困難なため、緊急事態の連絡体制確保
山間部(崩壊地)での安全管理上のポイント
圏外
④有事の際の
① 斜面崩壊
②有害動物
③資機材の人力運搬時に
おける転倒・滑落
連絡体制確保
図.1 安全管理上の想定されるポイント
2. 安全対策
計画段階においては、濁沢周辺で発生した崩壊履歴の情報収取、
「職場のあんぜんサイトホームペー
ジ」等の労働災害事例の調査により、リスクアセスメントを行いました。代表的なリスクとして、上
述の 4 項目(①~④)が挙げられました。対応については、担当者数名の考えでは十分な想定ができ
ないと考え、社内の安全衛生部からの指導を踏まえ、対応方法を決定しました。
2.1 斜面崩壊に対する対応
調査地は深層崩壊の発生個所や、活発に変動する地すべり地であり、地表面には亀裂が多数認めら
れます。調査内容は、亀裂をまたいで設置する地盤伸縮計や急斜面で実施する踏査など、ある程度、
斜面崩壊の危険性がある地域での作業は避けられません。作業前には、各種観測データを自動監視用
パソコンにより確認し地盤変動が活発化していないか把握するとともに、斜面を目視し作業実施を判
断しました。作業中も確認を継続しました。
2.2 有害動物への対応
調査地では、
平成 23 年と 25 年に熊の目撃や熊の仕業と思われる観測計器の破損などがありました。
熊に遭遇しないことを念頭に、音とにおいにより熊との距離をとれるよう対策を講じました。音につ
いては、熊鈴は当初から用いましたが、継続的改善において、それだけでは熊の「慣れ」の問題もあ
り十分では無いとの意見が出てきました。さらに、志津地区において熊の目撃情報が入ってきました。
そこで、秋季にはサイレン付きメガホンによる大音量サイレンも追加しました。また、においについ
ては、携帯型蚊取り線香を複数名で焚き、においを切らさないように対応しました。スズメバチにつ
いては、目撃箇所を避けたルートを優先的に通るとともに、スズメバチ用殺虫剤を携帯しました。
2.3 斜面からの転落・滑落への対応
崩壊斜面内における資機材の人力運搬では、急崖を通る機会が多くありました。崩壊土砂は粘土質
ですべりやすく転石も多い事から、急斜面にはロープを張り、足元はスパイク付き等すべりにくい靴
を使用、一人ずつ間隔を空けて足元に注意しながら行動しました。さらに、業務開始時は体が慣れて
いないため、疲れにより注意力が散漫していたため、運搬量を減じました。
2.4 連絡体制の確保
濁沢流域は、携帯電話の電波は届かないため、けが人や急病人が発生した場合の連絡体制確保が問
題になりました。そこで、業務上の緊急連絡手段を確保するため、衛星携帯電話を導入し担当技術者
が持参しました。また、現場内で点在する計測地点で複数グループに分かれて作業を行うため、各グ
ループとの連絡については無線機を導入しました。さらに、衛星携帯電話は、降雨の情報などの連絡
にも用い、本社から近隣の雨量観測所のデータを現地に伝えるなどの対応にも活用しました。
1
緊急連絡
各グループの無線機
衛星携帯電話(リーダー)
本社からの気象データ等の報告
2
図.2 衛星携帯電話を用いた連絡体制
3. おわりに
業務を行うにあたり、立谷沢川流域工事安全対策協議会に参加し、各関連工事会社へ地すべり変動
データの提供を行い、同じ流域での施工者間で情報を共有しました。この際、資料は現地の写真とグ
ラフやベクトル図を中心とし、見やすくわかりやすくなるように努めました。
本業務は、11 月の降雪に伴い、通信による遠隔観測体制へと移行し、無事に現地調査を終えること
ができました。現地での対応は一般的なものになりましたが、今後は、反省点や改善点について話し
合う機会を設け、同種の現場における安全管理に役立てたいと考えています。