報告書Part5 - 秋田大学医学部

発表資料・礒部 威
-がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン(文部科学省大学改革推進事業)-
地域におけるがん医療の特性
“絆”の構築
㻌 㻌 㻌 人の循環とICTによる
㻌 㻌 㻌 人材ネットワークの整備
島根大学
松江赤十字病院
島根県の
がん診療連携
拠点病院
㻌㻌㻌㻌
島根県立中央病院
島根大学病院
松江市立病院
岩手医科大学
鳥取大学
地域がん
診療拠点
地域力
「がん医療創成フロンティア」
山陰がん医療人養成コンソーシアム
「がん医療イノベーション」
岩手がん医療コンソーシアム
浜田医療センター
国際化
拠点
患者の
息子の嫁
順天堂大学
東京理科大学
国立がん研究センター
東大農学部
理化学研究所
片道:
自家用車:3時間
公共交通機関:半日以上
がん研究
開発拠点
先導的がん医療の
開発研究拠点
(理工・薬学連携)
患者
高速道路
Key person:
配偶者△
子供△、子供の配偶者○
明治薬科大学
立教大学
山陰がん認定医療スタッフ育成コース
(インテンシブコース)
地域がんプロフェッショナル養成部門と地域病院をつなぐ
がん医療維新プログラム
島根大学病院
拠点病院
目的:
• 山陰全域の日常的がん治療水準向上
• 共通基盤となる臨床腫瘍学の知識・ 基本技術に㻌
習熟し、医療倫理に基づいたがん治療を 実践する
優れた医師及びメディカルスタッフの養成と 認定
順天堂大学
済生会江津病院㻌
非拠点病院㻌
• がん プロフェッショナル養成基盤推進 プランを核と
した地域 がん診療ネットワークの強化と 山陰全域
のがん診療の均てん化
岩手医科大学
• 腫瘍内科外来開始
• 外来化学療法室整備
• テレビ会議システムの導入
医師
看護師
薬剤師
東京理科大学
立教大学
短期研修
ICTで繋ぐ
国立がんセンター
高速道路
トーマスジェファー
ソン大学
まめネット:しまね医療情報ネットワーク協会
今、求められる地域連携
画像連携も可能
シームレス( Seamless)診療連携
がん拠点病院
明治薬科大学
学び
実践的なカリキュラムが必要ᴾ
診断
治療方針決定
鳥取大学
地域のがん患者
通院治療が
実施可能となる
化学療法の導入
がん診療電子手帳
化学療法の
副作用対策
併存疾患の
管理
かかり
つけ医
地域基幹
病院
化学療法の
継続・維持
島根県の医療連携ITシステム構築支援事業「しまね医療情報ネットワーク」HPより引用
テレビ会議システムによる地域ネットワークの構築
プログラム実施の問題点
○遠隔講演
○e-learning
㻌 ・コンテンツの作成
○テレビ会議
地域の医療人
±ゼロの人事交流
インセンティブ
中央の医療人
身分保障
島根大学
医学部
院内の理解と
支援
やる気の維持
マンパワー
不足
医療格差を
埋める
地域の理解と
支援
島根県内の配信先
31施設
地域における
ニーズ
顔の見える連携を!
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パネリスト発表
大分県
白尾 国昭
大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座 教授
では次に、白尾国昭先生からご講演をいただきたいと思います。ご略歴を紹介させていただきます。
1983年に日本医科大学を卒業されております。2013年からは大分大学医学部腫瘍・血液内科学講座の教授になられ、大分大
学医学部附属病院腫瘍・血液内科長、腫瘍センター長を兼任されております。よろしくお願いします。
発表要旨
大分地域がん医療の取り組み
外の医療者側の理解をさらに深め、患者さんにパスの存在
「他医療施設とのかかわり」という観点から、がん診療連
とそれに関する正しい情報を伝えてゆくことが必要と考え
携拠点病院の活動の中のクリティカルパス、九州がんプロ
ています。また、最終的には「患者さんから見たパスその
フェショナル養成基盤推進プランの活動の中からインテン
ものの評価」を是非行う必要があると思います。
シブ地域がん医療専門医療人養成コースおよびチーム医療
九州がんプロフェショナル養成基盤推進プランに関して、
ワークショップについてご報告させて頂きました。
大分大学ではいくつかのコースを作っていますが、本会で
当大学では肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん
はその中の職業人を対象とした「地域がん医療専門医療人
の5つの領域のがんの手術後の患者さんを対象に平成24年11
養成コース」を紹介しました。対象は看護師、薬剤師、医
月から地域医療機関とのがんクリティカルパスを開始して
師などであり、地域病院だけでなく、地域全体のがん医療
います。対象となる患者さんはがんの告知が行われている
の質を向上させることができる医療人を育成することが目
こと、直近の検査で異常がなく(術後の合併症がないこと)
、
標です。特徴は大分大学病院の職員だけでなく、地域病院
状態が安定していることとしています。すなわち、比較的
の職員が参加できることです。現在約20人の大学病院外の
連携を取りやすいと思われる状態の安定した患者さんをま
医療人が参加しています。このコースの活動の一つである
ずは対象として開始してゆこうということです。パスを安
「チーム医療ワークショップ」では、各地域病院から看護師、
全に、効果的に運用してゆくためには地域病院と大学病院
薬剤師、医師、医療ソーシャルワーカーなどが集まって実
の間の緊密な関係が重要だと思われますが、この点に関し
践的チーム医療を学びます。実際には、病院単位でチーム
ては開始して2年近くたった今でも苦労しているところで
を作り、与えられた課題を解決する(各種条件の違う症例
す。登録された患者さんには、大学での診療情報(手術概
の治療方針を決定する)という方法をとっていますが、事
要を含む)、診療計画、日常生活の留意点、各連携病院での
前の打ち合わせなどを含めみんな熱心に討議しているのが
診療記録、他の連携病院連絡先リストなどが記載された「大
印象的です。このワークショップはチーム医療を学ぶため
分医療連携ノート」を携行するようにしてもらっています。
に良い方法である思われますが、本会の趣旨である「他医
これにより抜けのない医療情報の各医療機関での共有を目
療施設とのかかわり」という点から見ても、非常に有効な
指しています。現在のところ、パスを開始してから計53人
方法と思われます。
の患者さんが登録され、現在47名が継続中です。最近やっ
以上、大分大学ではがんクリティカルパスおよびがんプ
と増加の傾向が見られてきました。スクリーニングを行っ
ロフェショナル養成基盤推進プランなどを通して他医療施
て条件に合致すると判断された患者さんのだいたい20%ほ
設と関わってきました。未だ不十分なところもありますが、
どが実際に登録されています。登録できなかった理由は様々
今後はさらに臨床研究などを通して地域医療機関と関わっ
(説明そのものを行わなかったなど)でしたが、患者さんの
てゆきたいと考えています。
拒否というのはありませんでした。今後は、院内および院
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発表全文
ご紹介ありがとうございます。大分大学の白尾と申しま
ます。結局、思ったほど伸びてないんですね。そんなこと
す。よろしくお願いいたします。
で1年半経ってもまだ53人の患者さんしかやっていないと
北海道からだんだん南の方におりてきた訳ですけれども、
いうことになります。
大分県は九州の少し東側にあります、瀬戸内海に近い所で
そもそも、パスというのは意義があるものかどうかを再
す。ここが大分市ですが、大学は赤印、こっち側です。実
検討するために、このような分析をしています。現段階で
際別府市とか、湯布院の方が有名ですけれども、大学は大
はこのような疑問について、答えが出ているわけではない
分市と由布市の境にあります。九州で一つだけの発表とい
のですが、今後そういった所に踏み込んでいきたいと考え
うことですけれども、九州を代表しているわけではありま
ています。
せん。ご了承ください。
次は九州がんプロフェッショナル養成基盤推進プランで
私は今日のこの会の趣旨を他の施設との関わりというふ
す。まず全体像です。九州の地図が書いてありますけども、
うに理解をしました。うちの大学で何をしているか。ある
九州13大学が一緒になって、行っています。一期目の目標
いは、うちの大学とその他の施設の人たちとどういう活動
は専門家を養成するという話だったのですが、二期目となっ
をしているかという観点で話をさせていただきたいと思い
て、指導者、リーダーを作る、養成することになっていま
ます。
す。大きく分けると教育改革、それから地域貢献コース、
2つに分けまして、がん診療連携拠点病院の話と九州が
研究者養成コース、があるのですが、我々の大学ではイン
んプロフェッショナル養成基盤推進プラン、この2つで話
テンシブコースとして、3つコースを作りました。ちなみ
をしていきたいと思います。
に大学院には2つのコースを作っています。今回の他の病
まず、拠点病院の方ですが、要件はいろいろありますけ
院との関連という意味で、インテンシブコースの地域医療
れども、クリティカルパスの話をしたいと思います。実際、
養成コースを紹介します。これは看護師、医師、薬剤師が
これがうまくいっているという例ではありません。あまり
対象になっていますが、大学の人たちだけではなくて、外
うまくいっていませんが、今日少しお話しようと思います。
の病院の人たちも対象となります。これは全地域全体を見
このうちのホームページを見ていただくとわかると思い
ることができる人たちを育成しようというコースです。大
ますが、連携パスの対象者の条件です。非常に簡単なんで
学以外の人たちですから、どういうふうに教育していくか、
すけども、告知がされていること、初期の検査で異常がな
どういった形で養成するか非常に難しいところであります。
く、状態が落ち着いていること、これは手術の合併症とか
実際には、先程から出ているe-learningを使用しながらとい
なくて、状態が落ちついているという意味であります。具
うことになっております。実際、去年の4月の時点で、地
体的には五大がんの術後の患者さんが対象となります。こ
域がんコース27人で、ほとんど院外の人達です。薬剤師、
ういった対象の人たちをもし登録しようとすると大分医療
看護師、医師を含めていろいろな職種の人が入っています。
連携ノートというのを使って、他の病院と連携をしながら
こちらは医師用のカリキュラムとポートフォリオです。
やっていくことになります。これを作ること自体が非常に
最後になりますけども、チーム医療のワークショップと
大変だったんですけども、現在、コーディネーター(ナース)
いうのをやっています。この前第4回目が行われました。
が一人いまして、その人を中心に運用しています。
ファシリテータとしていろんな先生に来てもらっています。
運用が始まったのが一年半前です。スライドに示すよう
こちらを見ていただくとわかると思いますが、いろんな施
に一年半前からここまで53人います。いろんながんがあり
設からの人たちが参加しています。
ますけども、肺がんが40人となっています。この中から6
このワークショップは、よくあるワークショップと同じ
人ぐらいの人が再発などの理由で中止となっています。
ですが、まず小さい細かいブースに分かれて、それぞれの
少し小さくて見えないんですけども、行った先の病院が
施設ごとに検討会をして、最後に、ここでまとめた意見を
ここに書いてあります。契約している施設は250施設ほど
全体の会議でみんなに評価してもらうという形です。当日
あったと思います。ブルーがカルテ上で検索した全対象者、
だけではなく、事前に各施設でいろいろ検討してもらって
赤がいろいろな条件を満たした適応患者さんの数というこ
います。最後に集まって、半日で作り上げるのですが、そ
とになっています。24年の12月、1月、2月、3月。平成
のプロセスがすごくためになるものと思います。
25年、26年、月別になっています。一番下が実際に登録さ
これは、そこへ出てくる課題です。症例が紹介されて、
れた患者さんの数であります。最近の話(5月)でいきますと、
こういう症例に対してどういう対応をしていけばいいだろ
36人がスクリーニングされて、ほんとに適応だと思われた
うかということをみんなで検討していく訳です。
人が2人でした。でも最終的に運用されたのは0でした。
この会に出席した職種の割合が出ています。医師、
薬剤師、
最終的に登録されなかった理由は、紹介したんだけどそ
看護師、その他MSWです。1回では終わらないので、2回
この病院に行きたくないとおっしゃったとか、紹介しよう
目をやって、それぞれの施設が出した結論が、ちゃんとそ
とした矢先に再発してしまったとか、いろんな理由があり
の病院で活かされているか確認をすることになっています。
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以上、拠点の話とがんプロに分けて、自分たちの病院、
りで来る人も含めて、治療を受けておられるという感じで
それ以外の病院とのかかわりということで話をさせていた
しょうか。
だきました。どうもありがとうございました。
▼白尾:そうですね、全域から来ることはできるんですけ
ども、ただここに示しましたように大学は由布市なもので
▼横山:白尾先生、ありがとうございました。それではフ
すから、大分市内の大きい病院の方に集まるという傾向が
ロアの方から何かご質問とかがあれば、よろしくお願いし
あります。
ます。
▼柴田:ありがとうございました。
▼柴田:ありがとうございました。大分県のがん拠点病院
▼横山:他に何か、ご質問とかあれば。私の方から、クリ
のトップは大分大学なのでしょうか。
ティカルパスの話ですが、病院が変わって、主治医が変わっ
▼白尾:はい、そうです。
ても患者さんの情報がわかりやすいというのは、合併症の
▼柴田:県内の移動は大分県は比較的なんか良さそうに思
ない人が結構適応になるのではないかと書いてありました。
うのですが。
私の勤務する病院で考えると合併症のない人はほとんどい
▼白尾:先程、いろんな先生方がおっしゃったよりは、い
なくて、合併症がないというのは難しいと思いましたが、
いかなあと思います。一応、大分大学が比較的真ん中あた
その辺はいかがでしょうか。
りなのですが、端っこに行くのに1時間半ぐらいでいくか
▼白尾:少し言い方が悪かったんですが、術後合併症と言
なと思います。
いますか、急性期の合併症を指しています。症状が取れれ
▼柴田:県内医療を大分大学がカバーしているというふう
ば対象となり得るということですね。また、基礎疾患とし
にみてよろしいですか。
ていろんな病気を持っておられる人がおられると思います
▼白尾:そこまで信頼をおいていただいてるかどうかは別
が、そのような人は適応ということになります。
として、一応距離的にはカバーできるのではないかと思い
▼柴田:それでは、行政の方からご報告いただきたいと思
ます。
います。座長は秋田大学がんプロ大学院生の小棚木君にお
▼柴田:大分大学には県内全域から患者さんがきて、日帰
願いします。
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