平成 26 年度のアオコ発生について

平成26年12月26日
茨城県霞ケ浦環境科学センター
平成 26 年度のアオコ発生について
1
調査の概要
6月4日から9月9日までに計 12 回,湖内のア
山王川沖
高浜沖
オコの発生状況や栄養塩等の水質調査を実施した。
そして,それらの結果と気象予報を元に「アオコ情
安塚沖
土浦港
武田川沖
土浦沖
報」を 10 報発信した。
湖心
昨年度からの変更点としては,調査地点を「武井
釜谷沖
沖」から「武田川沖」にした(武田川河口はアオコ
の発生がほかの地点より早いこと,昨年度までの調
査で武井沖は釜谷沖と同じ傾向があることがわか
り,変更することとした。
)。
湖水は水面から 20 cm を鉛直採水した。水質測
図1 調査地点
定項目は,フィコシアニン濃度(藍藻類に含まれ
る色素)
,クロロフィルa,窒素(TN, NO3-N, NO2-N, NH4-N)
,リン(TP, PO4-P)である。
2
アオコの発生状況
(1) フィコシアニン濃度の推移(図2)
西浦では山王川沖と高浜沖で,北浦では武田川沖でフィコシアニン濃度が高くなった。どちらも6
月中旬が高く,山王川沖と高浜沖では 400 g/L 程度(アオコレベル2~3程度),武田川沖では
1200g/L 程度(アオコレベル3程度)であった。また,水温が高い8月にはフィコシアニン濃度は低
く,300g/L 程度(アオコレベル2程度)で推移する地点が多かった。
例年,濃度が高くなる土浦港では最大 116 g/L であり,昨年度より大幅に低かった(昨年度:最大
1590 g/L,H25.8.16)
。
フィコシアニン濃度 (g/L)
500
1200
土浦港
安塚沖
土浦沖
400
武田川沖
900
湖心
釜谷沖
山王川沖
300
高浜沖
600
200
300
100
0
6月1日
0
7月1日
8月1日
9月1日
6月1日
7月1日
図2 フィコシアニン濃度の推移(左:西浦,右:北浦)
-1-
8月1日
9月1日
(2) 植物プランクトンの組成
図3にフィコシアニンを持つ藍藻類の組成を示す。平成 25 年度と比べると,26 年度の発生細胞数
は藍藻類自体少なく,アオコの原因となる Microcystis や Anabaena の割合も小さかった。
平成 26 年度
平成 25 年度
(H26.8.12 土浦港)
Aphanocapsa,
720
その他, 840
(H25.8.16 土浦沖)
Aphanocapsa,
1360
Microcystis,
1140
その他, 228
Anabaena, 1200
Microcystis,
9000
Pseudanabaena,
14700
Anabaena,
15020
Pseudanabaena,
7380
(cells/mL)
(cells/mL)
図3 平成 26 年度(左図)と 25 年度(右図)の藍藻類の組成
3
気象条件及び水質との関係
(1) 日照・降水
図4より,近年は7~8月に平年値を超える日照時間であったのに対し,26 年度は Microcystis の増
殖ピークを向かえる8月に日照時間が少なかった(これに伴い,8月の平均水温も昨年度に比べ低か
った。
)
。また,26 年度の気象の特徴としては,晴天が長く続かず,降雨の頻度が高かった。図5に,
1日に 5 mm 以上の降雨が観測された日数を示す。6~8月いずれの月も 26 年度の降雨日数が一番多
かった。
これらのことから,26 年度はアオコが発生しにくい気象条件であったと考えられる。
300
12
合計日照時間(時間)
250
H25
H24
平年値(S61-H22)
1日5mm以上の降雨日数
H23
H26
200
150
100
50
0
10
H23
H24
H25
H26
8
6
4
2
0
6月
7月
8月
6月
7月
8月
図5 1日 5mm 以上の降雨日数(土浦)
図4 6~8月の合計日照時間(土浦)
-2-
(2) 栄養塩
昨年度と比較すると,26 年度のほうが窒素,リンともに濃度が高い傾向(図6)にあり,アオコの
発生が少なかった要因としての栄養塩の影響は少ないと考えられる。
0.08
1.6
H26
H26
0.06
H25
PO4-P (mg/L)
DIN (mg/L)
1.2
0.8
0.4
0
6月1日
7月1日
8月1日
0.04
0.02
0
6月1日
9月1日
H25
7月1日
8月1日
9月1日
図6 溶存態無機窒素(DIN)とリン酸態リン(PO4-P)の 25 年度との比較
4
アオコの発生が少なかった理由
今年度のアオコの発生が少なかった要因として,8月の日照時間が短く,降雨頻度が高かったこと
から,気象条件がアオコの原因となる植物プランクトンの増殖に最適ではなかったと考えられる。
ただし,晴れが続いた期間もあり,増殖に適した時期もあったことから,ほかにも要因がある可能
性がある。例えば,アオコの原因となる Microcystis は底泥に沈んで越冬するが,昨年度もアオコの発
生が少なかったことから,底泥中の Microcystis の現存量が少ない可能性がある。来年度からは,当セ
ンターで底泥中における藻類の研究を行い,季節変動や地点間の分布について調査する。
-3-