現代ファイナンス論 - 宿題 No.3 (解答例) 蛭川雅之 2014 年 12 月 22 日 問題1 社債の利率を r% とし、国債と社債に 1 円ずつ投資することを考える。国債に投資する場合、 1年後に元利合計 1.025 円を確実に受取ることができる。一方、社債の投資する場合、99.9% の確率で1年後に元利合計 (1 + r) 円を受け取ることができ、0.1% の確率で受取額 0 円にな る。従って、無裁定条件から、r に関する方程式 1.025 = (0.999) (1 + r) + (0.001) (0) = (0.999) (1 + r) が得られ、社債の利率は r= 1.025 − 1 = 0.02602 . . . ≈ 2.60% 0.999 となる。 問題2 (1) 1∼5 年物スポット・レートは以下のようになる。 期 間(年) スポット・レート (2) 1 1.266% 2 2.329% 3 2.818% 4 3.101% 5 3.243% 期間を横軸、スポット・レートを縦軸にとり、(1) の結果をプロットすると下図のよう になる。 1 図1:イールド・カーブ (3)(4) 社債の新規発行時点の価格および利回りをそれぞれ発行価額および応募者利回りと 呼ぶことに注意すると、結果は以下のようになる。発行価額を確認することにより、社債 A はオーバーパー発行、一方、社債 B はアンダーパー発行となることもわかる。 社 債 表面利率 期 間 発行価額 応募者利回り: 単 利 複 利 A 2.90% 3年 100.30 円 B 3.15% 5年 99.74 円 2.791% 2.794% 3.210% 3.207% 問題3 (1) まず、XYZ の FCF を計算するのに必要な実効税率は、 (法人税) = 40% (税引前当期利益) である。なお、この数値は 2015 年および 2016 年に共通である。次に、XYZ の運転資本増減 額は 2 と計算される。EBIT(= 営業利益)および減価償却費を XYZ の予想損益計算書から、また、 設備投資額を問題文から取り出し、最終的に以下のような FCF を得る。 (2) CAPM の公式から、XYZ のレバード株主資本コストは rE = rf + β {E (rm ) − rf } = 5% + (1.8) (8%) = 19.40% となる。さらに、(rD , t, D/E) = (8%, 40%, 1) を WACC の計算式に代入することにより、XYZ の WACC は ( ) ( ) E D W ACC = rE + rD (1 − t) D+E D+E ) ( ) ( D/E 1 = rE + rD (1 − t) D/E + 1 D/E + 1 ( ) ( ) 1 1 (19.40%) + (8%) (1 − 0.40) = 2 2 = 9.70% + 2.40% = 12.10% と求められる。 (3) 2017 年以降の FCF は年率 3% で成長することから、(2) の結果および成長永続価値の 公式を利用すると、2017 年以降の FCF の 2016 年末時点での価値は (1 年当たり支払額) (2016 年の FCF) × {1 + (成長率)} (630) (1.03) = = ≈ 7, 130.8 (千ドル) (割引率) − (成長率) (WACC) − (成長率) 0.121 − 0.03 3 となる。従って、DCF 法に基づく XYZ の企業価値は 300 630 + 7, 130.8 ≈ 6, 443 (千ドル) + 1.121 (1.121)2 となる。さらに、D/E = 1 から、株式時価総額は企業価値の 50% 相当額、即ち、3,222 千ド ルとなり、これを発行予定株式数 1,000 株で除して、理論株価$3,222 を得る。 (4) XYZ のアンレバード β は { } { } 1 1 βU = βL = (1.80) = 1.125 1 + (1 − t) D/E 1 + (1 − 0.40) (1) となる。さらに、CAPM の公式から、XYZ のアンレバード株主資本コストは rU = rf + βU {E (rm ) − rf } = 5% + (1.125) (8%) = 14.00% と求められる。 (5) APV 法に基づく XYZ の企業価値は (100% 株式調達を仮定した場合の企業価値) + (負債調達による税金控除額の現在価値合計) である。まず前者を求める。2017 年以降の FCF の 2016 年末時点での価値が (2016 年の FCF) × {1 + (成長率)} (630) (1.03) = ≈ 5, 899.1 (千ドル) (アンレバード株主資本コスト) − (成長率) 0.14 − 0.03 となるため、100% 株式調達を仮定した場合の XYZ の企業価値は 300 630 + 5, 899.1 ≈ 5, 287.1 (千ドル) + 1.14 (1.14)2 となる。次に、後者を求める。支払利息および実効税率は 2015 年から 300 千ドルおよび 40% を維持するため、税金控除額の現在価値合計は 1 年当たり支払額を 300 × 40% = 120 千ドルと する永続年金の現在価値に等しくなる。さらに、XYZ の負債調達による税金控除額の市場リ スクが FCF と同程度であることから、割引率としてアンレバード株主資本コストを使用し、 負債調達による税金控除額の現在価値合計 (1 年当たり支払額) 120 = ≈ 857.1 (千ドル) (割引率) 0.14 を得る。従って、APV 法に基づく XYZ の企業価値は 5, 287.1 + 857.1 ≈ 6, 144 (千ドル) となる。(3) と同様の理由から、XYZ の株式時価総額は 3,072 千ドルとなり、これを発行予定 株式数 1,000 株で除して、理論株価$3,072 を得る。 4
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