L-87 - 日本大学理工学部

平成 26 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集
L-87
モーメント法による線状アンテナの電磁界解析
-分割法によるアンテナ特性Electromagnetic Analysis of Wire Antennas by using the Method of Moments
- Antenna Characteristics due to Modeling○渡部慎太郎1,久間丹2 ,大貫進一郎 3
*Shintaro Watanabe1, Akira Kuma2, Shinichiro Ohnuki3
Abstract: The method of moments is one of power tools for electromagnetic analysis. In this report, we investigate characteristics of
wire antennas using the method of moments for two types of wire modeling, and current density and input impedance of antennas
are discussed.
1. はじめに
本研究では,アンテナ設計に広く利用されるモーメ
ント法を用いて,完全導体からなる線状アンテナを解
析する.アンテナのモデリングに線分割及びパッチ分
V
割を用い,電流密度及び入力インピーダンスについて
比較検討を行う.
V
z
y
x
2. 解析手法
本報告では,Fig.1(a)に示す真空中に完全導体の線状
アンテナが配置されたモデルに対して,モーメント法
により数値解析を行う.ここで,モデルの離散化には
(a)解析形状
(c)パッチ分割
(b)線分割
Figure 1. Computational Geometry and Antenna modeling
線分割及びパッチ分割を用いる.
2.1 線分割
未知電流 I(z’)が一組の関数を用いて線形結合で表さ
れるとすると,次式となる.
I ( z' )
次に,重み関数である Wm(z)(m=1,2,…,N )を式(3)に掛け
て積分すると次式を得る.
I n J n ( z' )
(1)
n
In
n
zm
Wm ( z)
zn
J n ( z' ) ( z, z' )dz' dz
ここで,In(n=1,2,…,N)は展開係数,Jn(z’)は既知関数
zm
である.式(1)をポックリングトンの積分方程式[8]
1
j
2
V (z, z' )
z2
I ( z' )
In
n
zn
i
z
V ( z, z' ) dz E (z) 0
(2)
J n ( z ' ) ( z , z ' ) dz ' E zi ( z )
1
j
は
Z mn I n
(3)
2
V ( z,z ' )
z2
2
V ( z, z')
(4)
Vm
(6)
となる.ここで
Z mn
となる.但し,
( z, z')
Wm ( z)Ez ( z)dz
式(6)は In についての連立方程式であり,行列表現で
2
に代入し,その値を R(z)とすると
R( z)
(5)
i
Vm
zm
Wm ( z )
zm
zn
J n ( z ' ) ( z , z ' )dz ' dz
Wm ( z ) E zi ( z )dz
(7)
(8)
である.
,V(z,z’)と Ezi(z)は既知関数である.
2.2 パッチ分割
パッチ分割では,三角要素を用いる[2].この時,式(6)
の行列変変数入射ベクトルの要素 Vm は
1:日大理工・学部・電気 2:日大理工・院(前)
・電気 3:日大理工・教員・電気
1073
平成 26 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集
Vm
ρ mc
2
Εm
m
ρ mc
2
Εm
(9)
1
mn
c
m
j
m
c
m
Αmn ρ / 2 Αmn ρ / 2
Φmn Φmn
(10)
より表される.但し,
ρ cm
Α mn
rmc
v m , ρ cm
rmc
n
4
2 An
n
mn
1
4 j
gm r
e
jk
n
An
rmc
rmc
n
(11)
0.5
ρ n r g m r dS
n
2 An
vm
n
ρ n r g m r dS
gm r dS
n
An
n
gm r dS
r
r
電流密度 [a.u]
インピーダンス行列の要素 Zmn は
線状分割
線分割
(12)
パッチ分割
パッチ分割
0
00.25
(13)
(14)
真空中に置かれた完全導体の線状アンテナを仮定し,
給電点が中央に位置する場合について,線分割及びパ
ッチ分割を用いたモーメント法により解析を行う.
Fig.2 はアンテナの長さを 0.5 m に固定した際の電流
密度のグラフである.線分割及びパッチ分割の結果は
0 60
z [ m]
80
0.25
100
110
110
入力インピーダンス [Ω]
3. 解析結果
40
Figure 2. Current density
とする.式(7)の連立方程式を解くことで,線状アンテ
ナ上の未知電流 In が求まる.
20
線分割
パッチ分割
100
100
90
90
1/
1 / 200
1 / 100
図上でよく一致している.また,給電点を設定したア
分割数
1/ 20
Figure 3. Input impedance
ンテナ中央付近が最大値となっていることがわかる.
Fig.3 は線分割とパッチ分割の入力インピーダンス
を分割数ごとに比較した図となっている.分割数を増
6. 参考文献
やすことで入力インピーダンスは収束するが,2つの
[1] R. F. Harrington,: “Field Computation by Moment
分割法において収束値に僅かな差が確認できる.
Methods”, IEEE PRESS , 1992.
[2] S. N.Makarov,: “Antenna and EM Modeling with
MATLAB”,WILEY-INTERSCIENCE, 2002.
4. まとめ
本報告では,線状アンテナを異なる分割法によりモ
[3] W. C. Gibson , : “The Method of Moments in
デリングし解析を行った.その結果,電流密度は図上
Electromagnetics”, CRC Press , 2008.
でほぼ一致した結果が得られた.入力インピーダンス
[4] R. F. Harrington,: “Time Harmonic Electromagnetic
に関しては,分割数に対する収束値に僅かな差異が生
Fields”, McGRAW-HILL , 1961.
ずることを確認した.今後は,様々アンテナ形状に対
[5] W. L. Stuzman, and G. A. thiele,: “Antenna Theory and
してモデル化の詳細な検討を行う.
Design”, Copyrighted Material, 1961.
[6] A. F. Peterson, S. L. Ray and R.Mittra,: “Computational
Methods for Electromagnetics”, IEEE-PRESS , 1998.
5. 謝辞
本研究の一部は,私立大学戦略的研究基盤形成支援
[7] 渡部慎太郎,大貫進一郎,
:”無線電力伝送の送電効
率向上に向けた電磁界解析”,3-11, 2014.
事業の援助を受けて行われた.
[8] 中野久松,
:”モーメント法によるアンテナ解析入門
コース”,電子情報通信学会, 1994.
1074
1/ 10