関する研究

加エト マトに、関する.研究
トマトの疫病抵抗性晶種間差異について
寺 田 俊 郎
Toshiro
(付属農場).
TERADA
Ssud.ies on the Tomato for Processing
D1fferences between Stra1ns and Var1et1es m the
Resistance to Late−B1ignt
緒 言
実験材料およぴ方法
トマト疫病の抵抗性晶種の育成は,年々増加しっっあ
この実験は/%3年ア月∼8月島根農科大学で行なっ
る加工原料用トマトの栽培を一層容易にするとともに,
た。
機械カの導入等による省力栽培を可能にし,トマトの生
1.供試品種
産を安定化させるための基礎となる事項である.また自
疫病抵抗性野生種West V1rgmla a㏄ess1on700,
由化対策の一環でもあるので早急に解決しなければなら
ない重要な問題である.しかしながらジャガイモの疫病
36,イタリー系晶種SM1,SM2,SM3,ASM,イタリ
(4)
ーCコ,Lanpadma−3,Lanpadma一ア,および無支柱用品
に関する研究は山本等多くの研究者によ?て明らかにさ
種Rom.a,みのり,Ear1y・Pack,ES−24,ace,Campbeu−
れているが,トマトに関しては比較的少ない.最近トマ
135,兼用晶種赤福3号,マゼステイ,生食用晶種福寿
(工)
ト疫病に関する研究が岸らによって研究亭れつつある一
て2)
2号,あさひ,ならびに抵抗性晶種a㏄essionと交配種
/91/年疫病低抗性晶種の探索で,Reedはchrry−
Fコ,SM2xWVACア00,逆交配種F,WV700×SM。,
Tomatoが強い抵抗性を有すると報告し,またB0NDは
などの21晶種および系統を用いた.
多数の栽培品種について接種試験の結果これ等の中には
2.栽培条件
特に強い抵抗性のものはなかったと報告している。
(3)
栽培条件を同一にする目的で,鉢植えとし,小型簡易
1952年WALTER and C0N0vERらも低抗性晶種に関
ハウス内で栽培を行なった.(高温時だぽ換気)
する研究を行ない,a㏄ession P−1およびa㏄ession
播種 3月2目踏込温床に播種
P−3が強い低抗性を有することを発見し,またこれらの
定植 5月9日数多くの苗の中からできるだけ均一な
a㏄ess1onがもつ低抗性因子は一つのmam factorと1
ものを選択して,直径30cmの素焼鉢に一本ず
個以上のmOdiying faCtOrによって構成されることを
つ定植し,各晶種2本定植した.
明らかにしているが,未だ現在実用栽培晶種中で本病に’
土壌 水田壌土を/週問風乾させ,川砂を6:4の割
対する抵抗性の晶種は確立されていない。そこで,実用
合で混合調製し,酸度も中性とした.
的な加工原料ト÷トの抵抗性品種の育成の基礎的な資料
肥料 /鉢当り成分量でN19:P19:K/9:と
を得る目的で現在栽培,保有している多数の晶種につい
し,追肥も同量を2回に分けて施用した。
て接種試験を行ない,その抵抗性について調査を行なっ
なお灌水量も各鉢とも同量に施した.栽培管理も均一
たのでその結果を報告する.
に行なうように努力を払った.
なお本研究を行なうに当たり,御指導を賜わった本学
3.供試苗
園芸学研究室の高馬進博士ならびに疫病菌の分与を受
ジャガイモ疫病菌Race O型を用いた。接種に供した
け,実験の御指導御協力を願った本学植物病学研究室の
疫病菌はインゲン煎汁寒天に20.Cにおいて約/0日問培
山本昌木博士および達山和紀氏らに深謝の意を表する.
養したものについて胞子懸濁液をつくり,1Z∼/3o Cに
(1)
おいて約2時問放置し充分遊走子を山させたのち使用し
た。
一70一
寺田俊郎:加エトマトに関する研究
4 葉片接種と観察方法
一71一
葉片接種後7日間を経過したものの病斑を肉眼観察と
同時にカラーフィルムに写し,実物大の葉片と病斑をト
葉片を同一晶種で上葉と下葉とに区別し,上から四垂
目,下から四葉目と各品種同部位のものを切り取り,良
レーンングベーパーに複写し,葉面積と病斑面積を精密
く洗浄し,殺菌したペトリ皿内の湿ろ紙上に置き,その
化学天秤で秤量して面破に換算し,㎜m2単位で記録し
葉片水滴を除去し,ガラス毛細管ピペットを用い遊走子
た。この3同の調査結果の平均値を算山し,上葉と下葉
浮遊液を同量ずつ毛茸ならびに表皮に傷をづけないよう
の病斑面積について総合灼な抵抗性の強弱を知るために
にして中肋表面上に適置し,20oC定温室に入れて一週
問後葉片の病斑の観察を行なった.なお3回の接種試験
上葉の平均値を縦に,下葉の平均値を横に取り,直角三
(4)
角形を描き,その三角形の大小を比較する山本法で,そ
の期日はつぎのとおりである.
れぞれの品種の疫病に対する抵抗性の強弱判定を行なっ
第1回接種 7月1日∼7月7日
第2回接種 7月8日∼7月/4目
た.
案験結果および考察
第3回接種 7月9日∼7月!5日
疫病抵抗性の検定
葉片接種を3回実施した緒果は第/表の葉片接種試験
第/表 葉 片一接 種試 験調 査表
試験回数
回
区\\
2
回
回
分\ 上葉1下葉 上葉1下葉 上
No.
/
2
3
W.V.AC700
W.V.AC36
Ear1y pack
葉面積(a)
病斑面積(b)
a
葉
下 葉
平 均
上葉1下葉
m㎡2 n〕=m岬
m㎡ mm2
mm2 m㎡
m㎡
m㎡
4/0
1.115
1,090
1.202
1.400
930
0
590
0
76号.。!1・331.。1
0
590
・0
0
螂
0
0
891.。ド・041.。!1・061.。179言.。
b
ガ1・011.。!1・3多呈.。一1・0男.。ド・0雰.1!
1.3
0
1.093
1.48
5袈.。ド・6嬰.118莞.。 1.337
69三工
・1・・一・・
書1
・!・・1
ガ1・1窒.。
g零.。〕1・9袈.。1
/,430
8袈.。;1・3袈.。1
1・3チ1.。ド唱.。一
4書呈.。ド・/蓼.。17裏.。ド・4…蕎.。
8碧.。い・92易./11・1髪.。11・7男.。
60.1
・1・・血1・・
書11・1号ε。11・乱/儒。!1慨.。1
8901
9霧./11・1需.。11・3髪.。
8襲.。1g霧.。「・3嬰.。
14./ヨ
7
8
9
Ro肌a
10
SM2
みのり
SlMコ
l1lイタ1一・1
ガ
筒.。1
g袈.。1
6葺1.。1/・2碧.。16葦葦.。「・/姦.。
8程.。1
9001
820
8501
6ろ5
/,280
820
29.9 28.1
ピ・02;一2・3亨呈。1
Lll
ド唱.。I2・2§身.。一
7351
39.5
言1/・o嬰.。j2・o袈.11
仰.0
8界.。い・笥.11
SM3
a
1・06呉.一1・3男.。一1・90呈.。i2・7袈./
L−P−3
ガ1・6脊.1
/3
/6
8袈.11
1・35星.112・9§1.。;/・03易.。
A S M
15
溜.。ド・飛.。
a
12
/4
ガ/・2;1.。i1・6多呈.。
L−P−7
14−01
b
b
/・9塞.。1
1・1…星./18需.。11・4智.。
8.1
g嬰.111・0堺.。 1.327
8ア.3
50.0
鴉.1ド・鴇.。
8雇.。1/・5第.。
51呈.。ド・甥.。
98g.。F・/訟.。
90呈.1ド・6窒.。ド・28旨.。
/,920
27.8
/・7駕.。!/・0㌍.。1/・3零.。1
940
ム4嬰.。岬.。「唱.1
/9./
書ド代.。11・9嬰.。1/・/7量./ド備.。1
5601
5.8
ガ/・40星.。12・611.。1
93星.。1/7・篭.。!
600
945
/・06星.。11・5停.。
/2.8
/・2詔.。ド7套.。「喋.。
3.1
17
01−14
書1
18
福寿2号
ガ1・0袈.。12・濯.11
/9
あさひ
言ド・需旨.。
/・6;昌.1!1・濡.。ド・/碧.。
留.。;/・0袈.。ド・1髭.。1/・2案.。
・・!赤福・号
ポ1・7窒.。
2喋./ド■乱・!!P霧.。1
311.。い・0おを/喋.。
・1トゼスティー
暮ド・6套1.。!2・0震.。1
890
/,485
971.。j1・081.。1701.。 /・651.。185書.。き 1.405
0亨7
0.8 0.7
9嬰.。;2・0繋.。1
6男.11/・儒.。ド第.。i/・管.。
8701/,0/511./00
87,5 59,2 66.5
/・7男.。い・2累.一1・5墓.。
一72二
島根農科大学研究報告
第12号A農学(1%3)
調査表に示したとおりであった螂第1表の調査結果を上
異はあったが,ほぼ同様の傾向を示し,抵抗性の晶種間
葉,下葉と棒グラフで示したものが第1図である。
差異に一層の精密度を高めたものと考えられた。
全品種ともに3回の試験結果に示すとおり,多少の差
上葉と下葉の病斑のひろがりは多少の例外はあるが,
川o
病
捧
〆
2葦岬
)・鯉川
’23 /■J 〃3 ノη /η 。。3 ノη /・3 ・η ・μ /。3
為1迦
80
紅
紬
?牌
葦二 、
回’エヨ軍 !2サ /3) /z3 /{3 /コ3 ’2J /2ダ ノ∼3 !23 /z3 / 3 /23 /五多 /13 /23 /1.言 ’ 23 ∼
品種狐撒綿μ榊脇㎞夕約槻初グ肋雌〃州柵∠片・∠〃〃・1ノ〃為継榊鵜場棚一
第/図 晶種別葉片接種による病斑の発現
おおむね下葉の方が上菓よりも大であった。 方で育成された品種である関係から,疫病の抵抗性につ
病斑の発現について第/表,第1図に示すようにwest−
いてある程度考慮された品種ではないかと考察された.
Virginia a㏄ession700,および36,ともに強い抵抗性
ES−24みのりについてはRo皿a∼Cam./35の中位程度
を示し,とくにW.V.AC700,の方が36,よりも強く,
接睡点のこんせきも生じなかったのに比し,W.V.AC
36,は接衝点のみ僅か/.2∼1.3mmコ程度のこんせき
の抵抗性と考えられた.
このことからRomaは現在無支柱省力栽培用品種とし
て普及されつつあるので,とくにこの晶種が疫病に対す
を残した程度で,いずれもトマト疫病の抵抗性に強いこ
る抵抗性に弱い点を認識して,栽培管理すべきであると
とが認められた。
考えられる。
次いで無支柱用晶種については第/図に示したように
イタリー系晶種SMコ,SM2,ASM,SM3,Cコ,LP−3,
抵抗性の強いものは認められなかったが,第2図により
Ro㎜a,Ear1y pack,aceときわめて抵抗性は弱かった
LP−7についてはSM2およびイタリーC1とは同系統の
ものであり弱く発現されていたほかSM3,SMユ,ASM
の順で比較的抵抗性が強く発現された.SM2について
が,Cam135は前3品種よりも比較的強い抵抗性を示し
はイタリー系トマトの自然交雑により選抜が行なわれた
た.この品種は米国東部海岸地帯の比較的雨量の多い地
関係上,他のイタリー系トマトよりも抵抗性は弱くなっ
それぞれの抵抗性を上記の方法により比較して見ると,
たものと考えられる。イタリーCiについても同様であ
る。
兼用品種ならびに生食用晶種については,第1図,第
2図に示すように,いずれの晶種についても僅かの差異
はあるが,福寿2号,あさひ,赤福3号,マゼスティー
の四晶種問には低抗性についての有意差は認められなか
った.
抵抗性晶種W.V.AC700とイタリー系罹病性の品娃と
の正逆交配によるFエについての抵抗性について,抵抗
性品種SM2x W.V.700(/4−0/)および逆交配W.V.700
×SM2(01−14)の抵抗性の発現にろいて第1図および
第2図で明らかなように,母系に抵抗性晶種を使用した
協鮒州㈹工阿舳洲止pづ^州
7 蒐
第2図耐病性強弱比較
方が強い抵抗性を示すことが認められた。
すなわちW.V.700を母系に使用したFiは3回の接
種試験で,そのほとんどが接種点のみ僅かに病斑が認め
寺田俊郎:加エトマトに関する研究
一73一
られるか認められない程度であったが,母系に罹病性の
福寿2号。あさひ,ならびに抵抗性晶種との交配による
晶種SM2を使用したFコの抵抗性の発現は争平均51mm2
Fコ,SM2x W.V.ア00,W.V.ア00X SM2,等21晶種を
∼121mm2ぐらいの病斑が認められた.このことから,
用いた.
疫病の低抗性品種の育成には低抗性品種を母系に使用し
(3)結果W.V.700,W.γ36,ともに強い抵抗性を示
た方が効果的であることが考えられた.以上トマトの21
したが,W・V・700の方がW・W36,よりも抵抗性は強か
晶種間の疫病の抵抗性の差異を明らかにすることにより
った.実用罹病晶種SM2とW.W700との交配種F1で茅
晶種育成への予備的かつ基礎的な資料の一部として報告
正逆交配ともにいずれも強い抵抗性を示したが,低抗性
した.
晶種を母系にしたすなわちW.V.700×SM2がSM2X
今陵も低抗性の強弱比較については本報と同様な方法
W・V.700よりも強い低抗性を示した.無支柱用品種で
で調査を進める計画である.
摘 要
はCampbe11135,ES−24,みのりの順でやや強かった
が,Ear1y pack,ace,Romaは弱かった.イタリー系
ではL−P−7,レP−3,SM3,ASM,と比較的強い抵抗
く11疫病に強い加工用トマト晶種育成の基礎資料を得る
性を示したが,SM2および同系のC1は弱かった.
目的で,人工接種により耐病性の品種問差異を明らかに
兼用種および主食用晶種 福寿2号,あさひ,赤福3
した.人工接種にはジキガイモ疫病菌Race O型を培養
号,テゼスティー等四品種ともに抵抗性を示さず,疫病一
し,同一条件下で栽培した.上かち四葉,下から四葉官
に対する抵抗性の晶種間差異は認められなかった.
と同部位の葉を各品種とも取り,葉片接種をそれぞれ3
(4)
回にわたって実施し,山本法で抵抗性の強弱検定を行な
った.
引 用 文 献
1.岸 国平:園試報 B1:142∼160,1%2
12)洪試品種 疫病抵抗野生種West V1rgm1a a㏄e・
ssionア00,36,イタリー系品種1SM1,SM2,A馳,㌔
192. 1911
2.REED H S.V1rgm1a Agr Exp Sta Bu11
Lampad㎜e−3,La㎜padma−7,および舘支柱用晶種
3.WALTER,工M.and R.ムC0N0vER:Phy1opa
Ro㎜a,みのり,Early pack,ES−24,ac1,Campbe11
tho1ogy 42(4):197−199. 1952
/35,兼用種,赤福3号,マゼステイー,生食用晶種,
4、山本昌木:島根農大植病研特報1:/∼151,1%工
S㎜㎜㎜鮒y
(1) In order to obta1n the fundam,enta1 aspects on the breed1ng of d1sease−res1stant
tomatoes for processmg,the var1eta1dユfference was mvest1gated,for res1stance to 1ateb119ht
through mocu1at1on exper1ments
p危γなoア加乃07α ゴψεsωπ8 (potato race O)was inocu1ated on the upper and.lower leaves
(the4th pos1t1on1eaves from top and.the1owest1eaves)of tomatoes grown on the same
cu1t1vatea cond1t1ons Inocu1at1ons were91マen three t1mes m each exper1ment.
(2) Twenty・one var1et1es and strams of tomatoes were usea as test p1ant such as
w1ld strams−West▽1r91ma A㏄ess1on700an吐36・Ita11an breed1ng1me for process1ng−
SM1,SM2.C1,SM3・ASM,LP−3・LP−7・determmate var1et1es−Roma,Mmor1,Eary pack,
Ace,ES−24Campbel1/35,var1et1es for both as ed・1b1es狐d processm9−Akafuku No5官
Ma】esty,ed1b1e var1et1es−Fuku工u No・2,Asah1,and−F1hybr1ds between commercla1var1etles
ana w1ld strams and1ts rec1proca1cross(SM2 W.V700)
(3)邑 From the resu1ts of1㎜ocu1at1㎝s・both W・V・700and WV 36showed the strong
rcs1stancetoPけ仰〃乃07いψ就㎝8,andWV700wasmoreres1stantthanWV36
F1hybr1ds between SM2・狐d WV700showed res1stance to1ate−b11ght fmgus and−
strongerres1stancewasprovedwhenWV700wasusedas㎜o砒erp1ant
Among determmate var1et1es,the res1stance decreased as the fo11owmg order Campbe11>
ES−2∠>Mmor1,but Ear1y pack,Ace and Roma were remamea as suscept1b1e var1et1es
Among Ita11an brcedm911nes LP−3,LP−7,SM評,ASM were res1stance but SMo.ana
C1were susceptib1e.
Varlet1es for ed1bles and both as cd1b1es and−p1ocessmg were pro▽ed to besusceptlb1e to
1ate・b1ight.
ひ皇
N.OZ
旧.oZ
寸.oZ
ω皇
刈.OZ
N.oZ
00.oZ
︵旧刈隼︶ 朴 幽 く 血−s鞍
如翌山い崖‘琳シ︶終幽尊竈
F.oZ
1寸卜
?AElf・-- *
)+,-L
75
N0.1 1
NO. 1 2
No. 1 6
No. 1 4
No. 1 5
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No. 4
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Ace
SM2
No. 7
NO' 1 1
Carripbell 155.
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