平成26年度物理学概論中間試験解説 2014.6.11 *《選択肢問題》* 【問題1】m(メートル)は距離の,s(秒)は時間の,kg(キログラム)は質量の単位であり, これらの基本単位をもとに他の物理量の単位が定義される。以下で間違っている記述はどれか。 1. 物体の速度は物体の位置の時間的変化率であり,その単位はms-1である。 2, 物体の加速度は物体の速度の時間的変化率であり,その単位はms-2である。 3. 力の単位N(ニュートン)は,運動方程式により,kgms-2と等しい。 4. 運動エネルギーの単位J(ジュール)はkg2m2s-2と等しい。 <答>4のみに○印または×印. 【問題2】運動の法則に関する以下の記述で間違っているものはいずれか。 1. 物体が速度0の状態を保つとき,物体に力がかかっていないか,または,物体にかかる力の合 力は0である。 2. 物体が力を受けることにより物体に生じる速度の変化は,物体の質量が大きいほど大きい。 3. 運動する物体が力を受けないと,物体は同じ方向で同じ向きに同じ速度で運動を続ける。 4. 物体Aが物体Bから力を受けるとき,同時にBもAから力を受けている。これらの2つの力は 同じ方向で向きは逆であり,等しい大きさである。 <答>2のみに○印または×印. 【問題3】物体にかかる力に基づき,運動する物体の位置の時間的変化を求める方程式が運動方程式 である。運動方程式に関する以下の記述で間違っているものはいずれか。 1. 物体の瞬間的な加速度が,その瞬間に物体にかかる力に比例し,物体の質量に反比例すること を表している。 2. 物体の瞬間的な加速度が物体の位置の2階の時間微分で表されることから,物体の位置として 方程式が与える解は2個の未定定数を含む。このことは,方程式が任意の初期条件(初期位置, 初速度)に対応できることを意味する。 3. 各瞬間における物体の速度は,位置を時間微分して求めることができる。 4. 物体が力を受けないとき,物体は一定の加速度を保って運動する。 <答>4のみに○印または×印. 【問題4】空中で支えを静かに外された物体がたどる運動を自由落下という。自由落下する物体に関 する以下の記述で間違いを含むものはいずれか。空気の抵抗は無視する。 1. 最初,支えられた物体が静止しているのは,地球の重力による下向きの力と支えによる上向き の力が正確に釣り合って打ち消しあい,物体に力がかからない状態が保持されるからである。 2. 静止の状態にあった物体が支えを外された後下向きの運動を行うのは,物体が下向きの力を受 け,このことにより下向きの加速度をもつからである。 3, 支えを外された物体の速度は下向きに加速するが,この加速の割合が重力加速度である。支え を外されて2秒経過後の物体の速度の大きさは支えを外されて1秒経過したときの2倍になる。 -1- 4. 自由落下を開始した地点からの落下距離は,落下開始後に経過した時間に比例して増加する。 <答>4のみに○印または×印. 【問題5】水平な床の上に横たえられ,左端が壁に固定されたバネの右端に物体が固定されている。 物体を平衡の位置から水平にずらし,離すと,物体は左右を行き来する単振動を行う。バネと床,物 体と床との摩擦は無視する。この運動に関する以下の記述で間違っているのはどれか。 1. 物体の単振動はバネの復元力を受けることによる。 2. 運動方程式に基づき,この周期的な運動は三角関数の周期性により記述される。三角関数の周 期性は,半径1の円周上を回転する点の回転に結びつけられていることから,単振動の周期は, 角度が2πだけすすむ時間に対応させて定義される。πは円周率。 3. バネ定数を物体の質量で割ったものの平方根はこの単振動の角速度を表す。 4, 平衡の位置と物体を離した位置との距離はこの単振動の振幅の半分に等しい。 <答>4のみに○印または×印. 【問題6】上記問題5の単振動において,物体はバネの復元力により正または負の仕事を受ける。下 図で,平衡の位置をC,物体を離した位置をA,Cを基準としてAと正反対の位置をBとする。この 運動における力学的エネルギーは物体の運動エネルギーと物体の位置エネルギーの和として定義され るが,後者は実体としては物体の位置エネルギーというよりはバネの弾性エネルギーである。従って, 力学的エネルギーは物体(運動エネルギー)とバネ(弾性エネルギー)という2つの部分の間で往き 来する。力学的エネルギーの移行と物体がバネの復元力から受ける仕事に関する記述として間違って いるのはどれか。 1, 物体がバネの復元力の向きに移動するとき物体は正の仕事を受け,復元力と逆向きに移動する とき負の仕事を受ける。 2. 物体がBからCに移動する過程では物体は正の仕事を受け,C→Aでは負の仕事を受ける。こ の結果,B→C→Aの過程では物体はCの位置で運動エネルギーが最小値をとる。 3. バネの弾性エネルギーは変形によりバネが不安定な状態にあることに起因する。バネは物体が Cの位置にあるとき最小の弾性エネルギーをもつが,これは,このときバネが最も安定な状態に あるからである。 4. 物体がA,Bの位置にある瞬間力学的エネルギーは完全にバネ(弾性エネルギー)に移行し, Cでは完全に物体(運動エネルギー)に移行している。 <答>2のみに○印または×印. *《計算問題》* 【問題7】時間tの関数f(t)=cos(ωt)の時間微分を求めよ。ωは定数である。 <答> f’(t)=-ωsin(ωt) -2- 【問題8】2つの角度α,βの和α+βの余弦を与える加法定理を示せ。すなわち,α,βそれぞれ の正弦,余弦を用いた式で表すこと。 <答> cos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβ 【問題9】地上15mの高さから小石を鉛直方向上向きに10ms-1の速度で投げ上げた。小石は投 げ上げられた後,最高点に達し,その後地面に落下した。小石が投げ上げられた瞬間を時間の原点t =0とする。また,鉛直方向に上向きを正として位置座標yをとり,地面の位置を原点y=0とする。 計算を簡単にするため重力加速度を g =10ms-2とする。 (1)小石の速度vyを時刻tの関数として表す式を書け。重力加速度 g,初速度v0を単位をつけて式 の中に含めること。すなわち, <答>vy=v0 - g t すなわち, vy=10ms-1-10ms-2t (2)小石が最高点に達する時刻を求めよ。 <答>最高点に達する前後で小石の速度は正(上向き)のから負(下向き)に切り替わる。 すなわち,最高点に達した瞬間の小石の速度は0。 よって,最高点に達する時刻はvy=0を満たす時刻tとして求まる。 10ms-1-10ms-2t=0 よって, 10ms-2(s-t)=0 よって, s-t=0 すなわち, t=s =1s 投げ上げられてから1秒後。 (3)小石の位置yを時刻tの関数として表す式を書け。重力加速度 g,初期位置y0,初速度v0も単 位をつけて式の中に含めること。 <答>y=y0+v0t-(1/2)× g t2 すなわち, y=15m+10ms-1t-(1/2)×10ms-2t2 =15m+10ms-1t-5ms-2t2 (4)小石が地面に衝突する時刻を求めよ。 <答>この時刻はy=0を満たす時刻tとして求まる。 15m+10ms-1t-(1/2)×10ms-2t2=0 よって, 15m+10ms-1t-5ms-2t2=0 -3- よって, 5ms-2(3s2+2st-t2)=0 5ms-2(3s-t)(s+t)=0 3s-t=0 t=3s または または s+t=0 t=-1s 前者が求める時刻。投げ上げられてから3秒後。 【問題10】水平で滑らかな床の上に横たえられ左端が壁に固定されたバネの右端に質量がm=0.1 kgのおもりを固定し,右に0.1mの距離だけ引いて離した。図は,この瞬間を時間の原点t=0 としておもりの位置の時間的変化を示したものである。 (1)おもりが行う運動の 名称を記せ。 <答>単振動 (2)その振幅Aを求めよ。 <答>0.1m (3)その周期Tを求めよ。 <答>0.2s (4)その角速度ωを求めよ。ただし,計算を簡単にするため円周率を3と近似する。 <答>周期の意味から ωT=2π よって,ω=2π/T =6/0.2s =30s-1 (5)バネのバネ定数kを求めよ。 <答>単振動の角速度はおもりの質量m,バネ定数kと ω2=k/m の関係を持つ。 k=mω2 =0.1kg×(30s-1)2 =90kgs-2 または =90kgms-2m-1 -4- =90Nm-1 (復元力-kxの単位はNなので,kの単位はNm-1。) 【問題11】水平な面上に横に置かれたバネ定数10 5Nm-1のじょうぶなバネがある。その左端を固定 し,右端に,質量10 3kgの台車を右からまっすぐに衝突させたところ,台車はバネを最大0.4m 縮ませた後バネによって押し戻され,等速度運動に移行した。バネと面,台車と面の間の摩擦,及び バネの質量は無視する。 (1)台車が左向きから右向きに運動の向きを変える瞬間にバネが蓄える弾性エネルギーを求めよ。 <答> 台車の運動が左向き(バネを縮める)から右向き(バネに押される)に切り替わる瞬間はバ ネが最も縮められているときである。このとき,バネは自然の長さから0.4m縮んでいるので,バネの弾性 エネルギーは (1/2)×10 5Nm-1×0.4m×0.4m=8000Nm =8000J (2)最後に等速度運動に移行したときの台車の速度を求めよ。 <答>台車の速度が左向きから右向きに切り替わる瞬間台車の運動エネルギーは0になっているので,力 学的エネルギー保存の法則から,最初に台車が持っていた運動エネルギーは,完全に,バネの弾性エネ ルギーに移行している。この弾性エネルギーは,台車がバネを離れた後には,再び,台車の運動エネルギ ーに完全に移行する。台車がバネを離れた後の台車の速度をvとすると, (1/2)×10 5Nm-1×0.4m×0.4m=(1/2)×10 3kg×v×v 即ち, v=4ms-1 を得る。 台車がバネを離れた後の速度は4ms-1(右向き)。 -5-
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