Power to Gas技術の動向

情 報 報 告
ウィーン
Power to Gas 技術の動向/風力発電タービンの火災リスク
BVA Bielefelder Verlag 社(ドイツ)が発行する『SUN &WIND ENERGY』の 2014 年 2 月
号から、再生可能エネルギーからの電力を貯蔵する“Power to Gas”技術の動向と風力発
電タービンの火災リスクについて紹介する。
1.Power to Gas 技術の動向
1.1 はじめに
再生可能エネルギーからの電力を貯蔵するための方法として Power to Gas(以下、PtG)
が試みられている。いくつかの現地でのパイロットプロジェクトと並行して、国際的な共
同事業が、そのコンセプト全体の評価を目指して行われている。
再生可能エネルギーの分野において、最も急を要する責務の 1 つが、太陽や風力のよう
な変動するエネルギー資源から得られた電力の貯蔵に関する問題を解消することである。
PtG 技術のコンセプトは、非常に前途有望な取り組みとして発展してきた。
世界中に多数のプロジェクトがあり、それらのいくつかはパイロット段階を終了し、商
業運転へと向かっている。PtG 技術の原理は極めて単純であり、再生可能エネルギーから
の電力は、電気的に水を水素と酸素に分解するために使用される。そして、得られた水素
は、電気に変えることも燃料として直接使用することもできる。電力の水素への転換には、
ある程度のエネルギー損失があるが、1 つの目的のためには有効である。再生可能エネルギ
ーからの電力をエネルギーの豊富な水素として貯蔵できることであり、必要に応じて炭素
によってメタンガスを得ることも可能である。ある程度まで、この“風力由来ガス”の輸
送と貯蔵には、既存のガスインフラが利用可能である。
1.2
PtG の無いエネルギーの変遷は無い
風力発電の余剰電力に対する貯蔵手段としての PtG 技術を使用する取り組みは、昨年、
業界をリードする欧州の 11 社が、PtG 技術のコンセプトを前進させるために集まった
「North Sea Power to Gas Platform」の形成という結果をもたらした。このプラットホー
ムは、エネルギーコンサルティング、試験および認証サービス企業の DNV KEMA 社(オラ
ンダ)が主導している。そのパートナーには、Fluxys Brlgium 社や Hydrogrnics 社(以上、
ベルギー)、Energinet.dk や Maersk Oil 社(以上、デンマーク)、Alliander 社、Gasunie 社
と TenneT 社(以上、オランダ)、ITM Power 社と National Grid 社(以上、英国)、そして
Open Grid Europe 社(ドイツ)がいる。
このような取り組みが北海で開始されたことは単なる偶然ではない。北海地域は、既存
のガスインフラが陸上および洋上におけるガスネットワークの開発を極めて容易にしてく
れるので、特にこの技術に適している。このプラットホームの提案者は、発電の設備容量
が 2030 年までに累計で約 100 ギガワット(GW)に到達する可能性があると見積ると同時に、
太陽光(PV)発電の累積設備容量が 2020 年までに 60GW に達することを見込んでいる。し
かし、これらの数値は非常に危険を持ち合せている。最近、ドイツの Sigmar Gabriel 経済・
エネルギー相によって設定されたエネルギー転換政策のポイントが示しめすように、洋上
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風力発電を取り巻く政策的枠組みは、非常に不安定なままである。
しかし、低い数値の開発目標であるとしても、経済的に実行可能な貯蔵のソリューショ
ンは明らかに必要である。この点に関して、北海の PtG 技術のプラットホームは、欧州全
体のソリューションとして、大規模化に向けたスタート地点に立っているだけである。こ
のプラットホームの提案者は、「目的は、北海周辺の全ての国に PtG 技術のコンセプトを展
開 す る こ と で あ る 。 こ の プ ラ ッ ト ホ ー ム で は 、 欧 州 ガ ス 調 査 グ ル ー プ (GERG) 、
Mediterranean Power 2 Gas Platform、海運企業、NGO、エネルギー供給業者、エネルギ
ー技術のプロパイダー、そしてグリッド事業者(オペレーター)と一緒に事業を行っている」
と説明している。
1.3 リードする Audi 社
上記のような大規模な PtG プロジェクトが日の目を見るまで、個々のプロジェクトにお
ける調査が行われている。世界で最も大きな 6 メガワット(MW)の最大生産能力を持つメタ
ン化施設は、ドイツ北部の Werlte において 2013 年中旬から運転に入った。この施設では、
自動車メーカーの Audi 社が、水ではなく年間 11 万トンのスラリーと食品廃棄物をメタン
に転換することを支援している。メタン化プロセスに必要なエネルギーには、北海の洋上
風力発電所で発生する過剰電力が使用される。
「生産を開始し、試験結果は非常に期待され
るものである」と Audi 社の広報は強調する。
電気分解
再生可能エネルギー由来の電力によって作動する
電力供給設備
再生可能エネルギー由来の電力が Audi e-gas
3 つの電気分解装置が水を酸素と水素に分解する
メタン化装置
水素はメタン化装置内で CO2 と反応し、
のためのベース製品である
合成メタンが作られる
天然ガスの供給
e-gas はここから公共の天然ガス
ネットワークを経由して CNG
スタンドに送られる
見学者ホール
見学者向けの説明場所
アミンスクラバー
e-gas 施設用の原料として
CO2 を除去
出典:SUN &WIND ENERGY 2014 年 2 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 1-1 Power to Gas 施設(Audi 社)の仕組み
Audi 社は、バイオガス施設によって生成されるガス中成分の二酸化炭素(CO2)をメタン
に変える施設を建設している。このバイオガス施設自体は地域のユーティリティ企業であ
る EWE 社の施設であり、およそ 10 年前に建設されたものである。「原材料は、半径 150km
から得られる」と、Deter Jansen 運転マネージャーは説明する。この施設では、有機物を
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約 3 分の 2 のメタンと 3 分の 1 の CO2 から構成されるバイオガスに転換する。それから、
複雑なプロセスを経て得られたバイオガスから CO2 を吸着する活性炭中を通過させて CO2
が除去される。次の段階では、CO2 は低い圧力で脱着(vacuumed off)され、メタン化施設に
送られる。そして、“CO2+4H2 →
CH4(メタン)+2H2O(水)”のプロセスが得られる。
Audi 社は、DKV のガソリンスタンドを介してこのメタンの販売を予定しているので、
自社の A3 モデルを天然ガスで走るようにも変更している。エンジンの変更はないが、ガソ
リンおよび天然ガスの両方を燃焼させることができる。電子制御の部分だけが異なり、着
火システムのいくつかの設定に手を加えることによって、ガスによる走行が可能となる。
この動きは、Audi 社にエコ・メタン(eco-methan)利用の全体像を与えている。
1.4 大きなコスト低減の可能性
その規模と複雑さによって、Werlte の施設は PtG 技術にとってのモデルプロジェクトで
ある。ドイツ水道技術科学協会(DVGW)では、ドイツで行われている 18 件のプロジェクト
をリスト化しており、そのうちの 4 件がすでに運転されているが、この貯蔵技術について
の経済的な実現可能性に向けた大きな疑問は、いまだに残されたままである。ドイツのニ
ュース雑誌『Der Spiegel』では、コンサルタント会社の A.T.Kearney 社の発言を引用し、
「kWh あたりのガス価格は、製造コストをカバーするために約 80 ユーロセント必要であ
る。この価格は現在の卸売り価格の 3 倍に相当する」と伝えている。
しかし、この指摘の問題は限定的である。なぜなら、PtG 技術はそのほとんどがテスト
段階にある新しい貯蔵技術であるため、他の全ての新しい技術のように、大きなコスト低
減の可能性が期待できる。そして、いくつかの技術面では確認すべきことが残っており、
特に、水素の割合の増加に伴う既存のインフラに対する適合性の確認は重要である。ある
値以上の割合の水素環境にさらされるとき、鋼管はもろくなる。それに加えて、水素は酸
素と激しく反応する。そのため、ドイツの太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)の PtG
プロジェクトリーダーである Ulrich Zuberbühler 氏は、「現在、水素用のネットワークが無
い一方で、メタンはどこにもでも供給が可能である」と説明し、メタン化を強く支持する。
2013 年の秋に、水素の固体貯蔵システムでフランスを代表するメーカーの McPhy
Energy 社によるドイツの企業の Enertrag Hytec 社との合併が示すように、水素用インフ
ラの改善に向けた動きは進行している。Enertrag 社の子会社は、大規模な電気分解装置の
開発と製造によってその知名度を上げた。McPhy Energy 社は、合併のために彼らのコア・
コンピタンスである水酸化マグネシウムのような固形物内に水素を貯蔵する技術を持って
きた。
「我々は、HyTec 社の事業活動を我々の販売力と技術のシナジー効果を使いながら発
展させ、革新的なアルカリ性電気分解技術への Hytec 社の取組みを加速させる」と、McPhy
Energy Group 社の役員兼 McPhy Energy Deutschland 社の社長である Roland Käppner
氏は話した。
(参考資料)
・SUN &WIND ENERGY 2014 年 2 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
・gwf Gas Erdgas 、Audi weiht erste industrielle PtG-Anlage mit 6 MW ein、
(https://www.di-verlag.de/de/GWF-Gas-Erdgas/news/Audi-weiht-erste-industrielle-PtG-Anlage-mit-6-MW-ein1)
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2.無視されてきたリスク
2.1 はじめに
風力発電の反対者は多くの場合、「炎上する風力発電タービンを消火することは不可能
であり、結果的にその周辺にも被害を与える」ということを理由として使う。残念ながら、
この証拠の無い主張は正しかもしれない。なぜなら、消火システムを設置している風力発
電タービンの数があまりにも少ないからである。
2010 年大晦日の夜の出来事をオランダ・ドイツの北海沿岸にある Frisia にある Norden
の小さな町の消防隊はすぐに忘れることはできないだろう。消防隊の新年を祝うお祭りは、
夜の 11 時をちょうど過ぎた頃に急に中断された。風力発電タービンのナセルが炎上し、約
70m の高さから火の粉を振り落としていた。しかし、多くの消防隊員と救急隊員が火災現
場に到着したが、実際には何もできなかった。進行した火災の場合、直接の消火活動はも
はや行うことができない。火炎が発生した直後だとしても、標準的なハシゴ車は 30m の長
さ(高さは車高とハシゴの角度から約 32m)なので、消防隊員は何もできないだろう。ナセル
の内部で消火活動をする必要があったとしても、全ての消防隊員が燃えている残骸からの
怪我と物質的被害を防ぐ以外に何もできない。救急隊員は傍観者になるだけである。
さらなる悲劇は、人々がナセル内で火炎に巻き込まれるような状況である。例えば、2013
年 10 月に、オランダの Oolgensplaat にある風力発電タービンが火事になったとき、火炎
が 2 人の技術者の懸垂下降用ハッチ(abseil hatch)への進路を防いでしまった。技術者の 1
人はタワーから落下し、残りの 1 人はナセルの中で火傷を負った。
このような火災の面では、消火システムが設置されている風力発電タービンの数は少な
く、実際の数も不明である。Minimax 社の消火設備の専門家である Axel Wörner 氏の見込
みでは、現在、設置されている風力発電タービンの 3%しか、消火設備が設置されていない。
出典:SUN &WIND ENERGY 2014 年 2 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 2-1 炎上する風力発電タービン
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2.1 火災の場所
信頼性が高く、技術的に高度な検知システムは、貴重な資産またはその寿命さえも保護
する可能性を高め、その設置場所に適した消火システムが選定されている。
最新式の消火技術では 4 つのコンセプトが良く知られている。熱感知器は温度上昇を所
定の時間内の温度差から計測する。しかしながら、火炎はある一定の時系列で現れる。は
じめに、煙が発生し、それから、燃えやすい物体が燃え始める。火炎周辺の温度の上昇は、
発煙と火炎が進展する速さよりもかなり遅い。
第二番目の検知器のコンセプトとして、火炎検知器は熱感知器が作動する前に警報を発
する。Wörner 氏は、「火炎検知器は発信機と受信機間の空気の不透明さに反応する」と説
明する。風力発電タービンの場合、追加の煙吸引装置は、火炎検知器の信頼性を向上させ
てくれる。
第三番目の検知器は、一酸化炭素(CO)のような燃焼ガスへの反応である。通常の空気が
燃焼ガスによって置換され、2 つの電極間が電気的につながるとき、イオン化検出器は警報
を発する。火炎検知器は火炎が見えるようになった際、火炎からの赤外線と紫外線に反応
する。
一般的に、風力発電タービン内の火炎は、2 つのシナリオのどちらかである。タービンが
運転中であるとき、火炎は通常、ナセル内の自動消火装置によって消火される。これは、
ノズルが 10 バール(1bar≒0.1MPa)の低圧システムでも、100bar の高圧システムでも可能
である。火災予防装置を備えた風力発電タービンの 90%が高圧システムである。
2.3 火災の停止
火災発生時、熱感知器または燃焼ガス検知器は、高圧噴霧スプレーシステムを起動させ、
脱塩水の非常に微細なミストを散布する。その水滴のサイズは、数十ミクロンメートル
(μm)である。つまり、ミストの大きな比表面積が燃焼に必要な火炎の熱を奪い、酸素を置
換するような窒息効果を生み出す。貯水槽は霜の期間でさえも、運転準備を確実にするた
めに加熱されている。このシステムは電池で運転されるが、風力発電タービン自身または
グリッドからの電力によって給電される 230V の充電器が、常に消火システムの運転準備を
確実にしている。
微細スプレー技術は、他の有効な方法であり Minimax 社の競合メーカーの Protec Fire
社やその他からも販売されている。これらのシステムでは、より大粒の水滴を使用してい
る。なぜなら水の微細噴霧は全ての場所に適していないからである。内部の空気に動きが
あれば、微小な水滴の運動エネルギーは常に火炎源に到達するには不十分だからである。
Protec Fire 社の消火システムでは、消火機能は熱感知器によって起動する。Protec Fire
社の火災防止用流体は、マイナス 30℃まで低下しても使用可能な事前に混合された消火剤
である。水のように、消火剤は火炎を冷却して覆う。それは、グリースや潤滑油のように、
可燃性の炭化水素の上にフィルムを形成し、燃える可能性のある表面を覆う。
Protect Fire 社では、作動温度に応じて個々に調整可能な様々な熱感知器を使用し、各々
は風力発電タービンの別々の部分を制御する。これらの熱感知器は、通常、タービンの監
視部分の最大運転温度に対して約 30℃高い温度で作動するように設定されている。それら
は、消火機能も制御する。
「火があれば、消火装置は単純に起動させられるだけ」と、Michael
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Zolck セールスマネージャーは話す。
2 メガワット(MW)から 3MW クラスの風力発電タービンにおける消火システム装置は、
800 リットルの消火剤(水または泡)を持つ。スイッチキャビネットも水または泡で覆われる
という事実から除外される方法は無い。「運転事業者は、全てが回収不可能になるかもしれ
ないことを受け入れている」と Wörner 氏は説明する。経済性の判断は、比較的簡単である。
スイッチキャビネットを犠牲にすることは、全体的にはタービンを救うことになる。
2.4 火災からの避難
第二のシナリオは、メンテナンスまたは修理のために運転を停止している風力発電ター
ビンのときである。サービスエンジニアは、地上またはナセルの中にいる。あまり通常の
状況ではないが、エンジニアが地上にいるときは簡単である。消火装置、ブランケットま
たはその他手段と一緒に火を消すために風力タービンを登っていくことが無意味なことは
言うまでも無い。
しかしながら、アイドリング状態のタービンの多くの場合で、火炎が発生するとき、エ
ンジニアはナセルの中にいる。一般的に火災発生後、直ちにナセルから避難するべきであ
る。すなわち、初期の消火作業が上手く行かないからである。大規模火災のすべてが小さ
な火から始まるので、簡易型の消火装置によって初期段階で消火する必要がある。このこ
とは、消火装置が正しく使用されれば、最小限の作業で最大限の成果を得ることができる
ということである。「火が自然状態になる前に、火を消す必要がある。しかし、そのために
は、火災発生時にどのように対処すべきかについて、メンテナンスエンジニアが訓練され
ていることが前提になる」と、Wörner 氏は説明する。この説明の要点は、ドイツの
Schleswig-Holstein 州の Böbs で起きた風力発電タービン内の火災の状況を用いてイラスト
にされている。「2 人の人が消火装置の使い方を知らなかったので負傷した。消火作業の基
本と消火装置の使用方法に関する知識について、一度は訓練を受けるべきである」と
Wörner 氏は話す。
出典:SUN &WIND ENERGY 2014 年 2 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 2-2 初期段階での消火作業
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(左図が誤り、右図が正解)
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しかし、訓練を受けたとしても成功は保証されていない。消火への試みが実を結ばない
ことが分かれば、直ぐにでもナセルから避難するしかない。風力発電タービンメーカーと
安全装置業界は、ナセルから避難するための様々な方法を提供している。最もよく知られ
た救出装置の 1 つとして、SKYLOTEC 社の“MILAN 2.0”がある。この装置は非公式の
標準品であり、競合メーカーも類似の製品を提供している。
・遠心制御ブレーキが降下中の速度を一定に保つ
・アルミニウム製ケースで、2 つのベアリング式のブレーキ軸を有する
・DNV GL.のような認定機関による国際基準に従って認定されている
・基本バージョンからの拡張はホイスト機能で得られる
出典:SUN &WIND ENERGY 2014 年 2 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 2-3 炎上する風力発電タービンと救急隊員
2.5 多ければ多いほどよい
船上の火災は海事の中で最も恐ろしいシナリオの 1 つであるので、洋上風力発電タービ
ンにおける火災は特に危険な状況となる。火災から避難することができたとしても、海と
いう他の恐ろしい環境に入り込むことになる。もしも避難に失敗したら、生存するための
格闘が始まることになる。このような状況を除けば、洋上風力発電タービンは陸上風力タ
ービンと同じシナリオを当てはめることができる。
誰も人がいなければ、洋上風力発電タービンの火災による運転員に対する生死の問題は
ないが、大規模な変圧器のプラットホーム上の火災は大惨事となる。発電所は数ヶ月間運
転が不可能となるので、その結果、資金面で大きな損失が発生する。このような莫大な損
失が発生する可能性が、運転事業者に変圧器のプラットホームに対して専用の防火システ
ムを装備させる動機になっている。
そして、この場合の設計はすべての使用可能な技術が利用される。Wagner Group 社の
Werner Wagner 代表は、
「1 つのシステムだけでは不十分である。我々は、包括的な防火シ
ステムを計画する契約を請け負っている。1 つのシステムに依存する代わりに、設計チーム
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が異なる技術の組合せを使用する。その結果、煙感知器、防火装置、ガス消火技術、スプ
リンクラー、泡消火システムならびに火災リスクマネジメントから構成される複雑なシス
テムとなる」と説明する。
2.6 酸素が無ければ火も無い
最高の自動消火システムはガスを使用する消火である。窒素(N2)ガスは酸素の燃焼を抑制
する。可燃性の材料と熱の存在に加えて、酸素は火災にとって 3 つ目の必要不可欠なもの
である。酸素が無ければ燃焼しない。ガス消火システムでは、6 本から 8 本のシリンダーが
必要となり、一般的にタワーの足元に設置されている。
Minimax 社の Wörner 氏は、「地球上で異なる気候条件を持つ地域に対して、シリンダー
にはそれぞれ異なる圧力が使用されているので、温度パラメーターに関してもそれぞれ調
整されている。一般的な気候では、平均温度は 15℃で、ガス圧力は 200bar が使用されて
いる。熱帯地域では圧力は 208bar に達する。そして、極寒の場所では 200bar を下回る。
これは様々な場所で異なる調整が必要ということである。我々独自のシステムのセールス
ポイントとして、パイプやバルブの応答性を決定していることが挙げられる」と説明する。
Wörner 氏は、ガス消火システムの優位性の 1 つとして、ランニングコストの安さを説明す
るための資料も持っている。ガス消火システムには約 100,000 ユーロの投資が必要となる
が、それは水消火システムの 2.5 倍に相当する。しかし、ガス消火システムは、実質的に使
用後の清掃が不要である。対照的に、水消火システムの使用後の清掃には、約 170,000 ユ
ーロが必要になると Wörner 氏は説明する。
しかしながら、数ヶ月に渡るかもしれない全体的な損失額と比較すると、その額はわず
かなものである。したがって、専門家は「長期運転するには、消火システムが必要である」
という 1 つの結論に達する。この問題の 1 つの興味深い面には、周辺地域へのリスクより、
風力発電タービンに生じる損害の可能性についてほとんど関心が持たれていないというこ
とである。保険業界は物質的な支援を提供している。保険会社大手の Axa 社では、消火シ
ステムを装備しているタービン事業者に年間で最大 10%の割引をしている。このような動
きは、消火システムに関する問題を風力発電業界に意識させるものである。
消火システムを装備することに対する決められた規則や基準は今のところないが、メー
カーは最新技術を保証する必要がある。この要求は実際に被害が発生したときに、問題と
なるだけである。
(参考資料)
・SUN &WIND ENERGY 2014 年 2 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
・NOS Nieuws、Dode bij brand in windmolen、
(http://nos.nl/artikel/568511-dode-bij-brand-in-windmolen.html)
・Windbyte、WIND TURBINE SAFETY、 (http://www.windbyte.co.uk/safety.html)
・ SKYLOTEC 社、MILAN 2.0、(http://www.skylotec.com/nam_en_us/milan-2-0-hub.html)
・WAGNER Impulse 2013 年 1 月号、
(http://www.wagner-uk.com/uploads/tx_wwdownloads/2013-1-WAGNER_Impulse-en.pdf#search)
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