中国でのChina Mobile 4G-TD-LTE SIMの使用(PDF)

ChinaMobile4GTD-LTE.doc
中国における第 3.9 世代携帯電話システムの展開状況
2014.9.1
柴田
@koji_sibata
2014 年 8 月 23 日(土)~8 月 30 日(土)までの間、香港から中国の広州市、深圳(シンセン)
市と移動し、国際会議における自身の研究成果発表のついでに 2013 年 12 月からサービスが開始さ
れている中国移動通信、China Mobile Communications Corporation(CMCC)の第 4 世代携帯電
話システム(4G)TD-LTE を体感する機会に恵まれたので参考のため報告しておく。
今回の渡航にあたり、当初は 3 月の渡航時と同様に中国本土では TD-SCDMA, EDGE, GPRS,GSM
にてローミングで接続可能な CMHK(中国移動香港)のデュアルナンバープリベイド SIM と
W-CDMA にてインターネットにローミング接続可能な CHINA
UNICOM
HK の中国聯通香港
中港 7 日上網卡(1 週間 1GB で HKD150)を使用し、予備として 1 日 HKD98 にて W-CDMA で接
続可能な 3HK 国際ローミングプリベイド SIM の利用を想定していたが、渡航の数週間前に
@yoshiqwe さんに 9 月まで月 1GB 流量で利用可能な CMCC の 4G プリベイド SIM をお譲り頂く絶
好の機会を得たので、今回はこの SIM を 4G 接続利用な端末を用い、中国国内にて接続状況の調査
を行った。この中国移動の4G プリベイド SIM は中国語さえ堪能であれば最寄りの中国移動のショ
ップにて契約可能であるのだが [1]、当方にはそのようなスキルはとても無く、また深圳の華強北の
店で他者が転売したものを購入することも可能ではあるが [2]、法律上?なこともあり、さらに今回
の渡航では本来業務の都合上シンセンへはほぼ最終日にしか行くことが出来なかったため、頂いた
SIM を有意義に使用させて頂いた次第である。
8 月 23 日(土)は終日香港内に滞在していたので、実際にこの SIM の利用を始めたのは 8 月 24
日(日)の昼ごろからである。今回、香港から中国には用務の関係で 1 週間近く広東省広州市に滞在
することから、香港から直接広州市に行ける香港九龍-中国広州直通電車を利用した。この電車を利
用することにより、乗車する紅磡站(ホンハム駅)で出国手続きを済ませて中国の各都市では入国手
続きのみで越境できる。図 1 は紅磡站の風景であり、当日は中国へ向かう多くの乗客が見られた。こ
の電車に乗り込み京九線を進んでいくと、図 2 のような車窓となり 40 分程で深圳駅に到着する。深
圳は言わずと知れた中国との国境となる都市であり、ここからは香港の SIM での通信は出来ない。
図1
図2
そこで、CMCC の 4G プリベイド SIM を TD-LTE 対応ルータである Huawei の E5375 に挿入する
と、APN 等のセッティング等の必要は無く早速、自動的に認識して CMCC の TD-LTE に接続でき
た。よって電車で深センから広州へ移動中も E5375 の接続状況を確認したのだが、ほとんど 2G に
落ちることも無く 4G の TD-LTE にてインターネットに接続が可能であった。余談ではあるが、
E5375
は仕様には記載されていないものの、FDD-LTE の Band1(2GHz 帯)も掴むことが出来ると思われ
る有用なルータである。そこで、広州市に到着してもしばらくは4G プリベイド SIM には E5375 に
挿して運用を行っていた。しかし E5375 では接続しているバンド(周波数帯)が確認できないのと、
別途運用していた CMHK デュアルナンバープリベイド SIM を挿入していた Infocus IN810 のロー
ミング接続の処理が悪さをしているのか、チョイチョイ切れて頻繁に圏外になるため、この後は数日
間、CMCC の4G プリベイド SIM を Infocus IN810 に挿して接続状況の確認を行った。図 3 は広州
市の崗頂站の近くにあるカフェにて IN810 の Engineering Mode にて接続の確認を行った様子であ
り、TD-LTE Band38(2.6GHz 帯)にて接続がされており、受信電力も-80dBm とかなり大きいこ
とが分かる。この場所にて Band38 へ接続された状態で通信速度の測定を行った結果は図 4 の通り
であり、15Mbps となかなかの速度が記録されていることが分かる。これは計測時に中国内での各種
規制回避の為の VPN を通してないのと、接続している速度測定用のサーバが広州市(Guangzhou)
と近いことが大きいと思われる。
図3
図4
この広州市地下鉄の崗頂站から石碑橋站にかけ秋葉原のような電気街となっており、深センには劣
るものの、多くの電気製品や関連の部品を扱うビルが連なっている。その中でも中国内では有名な百
脳匯の内部の中古携帯屋界隈は図 5 の通りであり、修理屋もあって深センに似ている。ただここでも
Galaxy 押しの店が多い。そこで、店内でも IN810 で接続状況を確認したところ今度は図 6 の通り
Band40(2.3GHz 帯)でのインターネットへの接続が確認できた。また、室内にもかかわらず-71dBm
と非常に大きな受信電力である。
図5
図6
さらに広州市滞在中の石碑橋站近くのホテル内にて図 7 の通り、CMCC の 4G ポストペイド SIM を
差した Infocus IN810 の Engineering Mode にて TD-LTE Band39(1.9GHz 帯)を確認した。そこ
で Band39 への接続状態で通信速度の測定を行った結果は図 8 に示す。これより TD-LTE であるた
め上りと下りが非対称であるものの、27.6Mbps もの高速で通信できていることが分かる。結局この
付近では Band38, Band39, Band40 を捕捉可能であり、2014 年 8 月時点で CMCC に許可されてい
るほぼ全ての LTE に接続できていることになる。なお、このような良い電波環境に恵まれた理由と
して、宿泊した場所の近くである石碑橋站近くの天河路と天河东 路との交差点に中国移動通信のオ
フィスや基地局とアンテナがあったような気がするので、これが影響しているのではと邪知している。
この様に、2014 年 8 月の時点で広州市などの都市部では、すでに非常に快適に4G にてモバイル・
インターネットが使用可能であることが確認できた。但しご存知の通り、中国国内では国境に設置さ
れたファイアウォールの関係で一部のインターネットサービスが利用できない場合があり、これを回
避するためアンドロイドアプリの SuperVPN を併用している。また、その他に使用上若干の問題も
ある。それは TD-LTE(4G)に接続した状態の Infocus IN810 はバッテリーの消費が非常に激しく、
たとえば朝の 7 時過ぎに運用を開始して、ほとんど待ち受けの状態でも午後の 3 時過ぎには電池の
残りが 30%を切るような状態であった。これでは予備のバッテリー等を持参しないと、とてもでは
ないが実用には耐えられない。なお、IN810 の使う通信方式を 2G に固定すれば電池持ちは大幅に改
善されるのであるが、それでは 4G 特有の高速かつ低遅延での通信が享受出来ない。よって4G の運
用にあたり、電池持ちの重要さを再認識したのであった。
以上のことから、広州市に滞在している 8 月 28 日(木)の午前までは、CMCC の4G プリベイド
SIM と VPN サービスを併用して Infocus IN810 にてバッテリーの問題はあるものの、快適にインタ
ーネットに接続が出来ていた。
図7
図8
広州市での用務を終え、8 月 28 日(木)の午後に香港までの復路の途中で電子産業で有名な深圳
市に立ち寄った。その手段として、今回は広州市と深セン市とを結んでいる広深線(广深铁 路)の
新幹線(CRH)を利用した。図 9 は広州東駅での様子であり、ここから 1 時間半弱で深圳駅にたど
り着く。また、乗車中における Infocus IN810 の様子は図 10 に示す通り、CMCC の4G プリペイ
ド SIM を入れた IN810 はたまに TD-SCDMA や EDGE に落ちるものの、Band38 と Band39 のハ
ンドオーバーにてかなりの時間 TD-LTE を維持し、インターネットの使用状況はいたって快適であ
った。
図9
図 10
シンセンの華強北(华 強北)では、自身の研究用のための部材調達とともに、スマートフォンや
モバイルルータなどの市場調査をして回った。たとえば賽格電子廣場では LTE や 3G のモバイルル
ータや SIM を売る店は 3 階と 6 階に集中している。また、3階から見た 2 階の風景は図 11 の通り
であり、多くの小さな電子部品屋が連なっている。このビルはモバイルルータや SIM の販売店で有
名であり、図 12 の通り駅前の大通りである振华 路に面した華強電子世界の斜め前にあるので、比較
的に分かりやすいと思われる。
図 11
図 12
また、シンセンの老街に一泊後は 8 月 29 日(金)に良く知られる図 13 の羅湖口岸から香港に戻
った。その際、中国側のイミグレ前にて IN810 にて最後の接続の確認を行った結果は図 14 の通りで
あり、越境の直前まで 4G での接続が出来たのであった。
なお、よく知られている通り、中国では Twitter や Facebook など SNS サービスなどがブロック
されているので、これらのサービスを利用する場合には別途 VPN 等の利用が必要となるので注意が
必要である。
当方、このようなもの書きで記事を売り生計を立てているプロブロガーやフリーライターではない
ので時間の制約もあり、記事執筆のためにわざわざ渡航し現地で端末や SIM を買う余裕も無く、本
来業務のついでである趣味の一環としての報告はこのくらいとしたいが、今回の香港から中国への渡
航によって中国内の特に都市部での中国移動(China Mobile)の4G TD-LTE の普及状況を確認で
き、非常に有意義な出張となった。
最後に今回、このような貴重な経験のきっかけを作ってくださった CMCC の4G プリベイド SIM
をご提供いただきました@yoshiqwe さんに深く感謝する次第であります。
図 13
図 14
[1] 山根康宏, “海外プリペイド SIM 導入マニュアル――「中国 TD-LTE 2014 年」編”
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1404/28/news015.html
[2] 島田純, “中国・深センの 4G LTE を体験”
http://k-tai.impress.co.jp/docs/column/minna/20140512_647134.html