(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部 第47回(平成26年度)研究発表会 論集 プレゼンテーション発表アブストラクト №102 高架橋を支える RC 橋脚の耐震性能評価 (株)修成建設コンサルタント 山田 駿也 5,000 1. まえがき 36×125=4,500 軸方向鉄筋D29 あらゆる地震動に対して耐震基準の限界となる地震動荷 軸方向鉄筋D29 重や,それ以上の地震力が作用した場合の橋脚の挙動を予め 2,200 把握しておくことは極めて重要である.そこで,本研究では, 上述のことを明らかにする前に,RC 橋脚の耐震性能をより正 確に評価する.そのため,プッシュオーバー解析により RC 橋脚の弾塑性挙動を明らかにし,橋脚の強度と変形性能を検 (a)model 1 討した. 5,000 36×125=4,500 2. 解析モデルとプッシュオーバー解析 軸方向鉄筋D32 2.1 解析対象の RC 橋脚 軸方向鉄筋D32 地震動が作用した場合の RC 橋脚の耐震性能を明らかにす 2,200 るため,弾塑性プッシュオーバー解析を行う.対象とする単 柱式 T 型 RC 橋脚は上部構造の重量を 6.9MN,橋脚の高さを 10m に設定する.この条件下で以下に示す 3 パターンの RC 橋脚についてプッシュオーバー解析を行い,その強度と変形 (b) model 2 性能の影響を明らかにする. 4,000 (a) 昭和 55 年版道路橋示方書 1)に準拠して設計された橋脚 28×125=3,500 軸方向鉄筋D32 (以下 model 1 と称する) 軸方向鉄筋D32 (b) 平成 14 年版道路橋示方書 2)に準拠して設計された橋脚 (以下 model 2 と称する) 2,000 (c) 平成 24 年版道路橋示方書 3)に準拠して設計された橋脚 (以下 model 3 と称する) model 1 の正面図および側面図を図-1 に,各モデルの断面図 (c) model 3 を図-2 に示す. 図-2 RC 橋脚の断面図 12,000 6,000 6,000 6,000 2.2 プッシュオーバー解析モデルの分割 RC 橋脚の強度と変形の関係を得るため,ファイバーモデル によるプッシュオーバー解析を行う.ここに,ファイバーモ 12,200 デルとは,断面における平面保持の仮定の下,RC 橋脚を弾塑 性解析する構造モデルである.ファイバーモデルの分割は, 橋脚高を 50 分割,横断面を水平荷重の作用方向に 1,000 層 としている. 8,500 8,500 図-1 RC 橋脚の正面図と側面図 3.数値解析結果とその考察 3.1 RC 橋脚の水平荷重と水平変位の関係 RC 橋脚の強度と変形性能を明らかにするために,model 1 から model 3 に対してプッシュオーバー解析を行った結果, 図-3 に示す RC 橋脚の水平荷重-水平変位関係を得た. - 1 - (一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部 第47回(平成26年度)研究発表会 論集 プレゼンテーション発表アブストラクト №102 図-3 によれば,model 1 と model 2 の RC 橋脚において, できる. model 2 の RC 橋脚の方が,剛性が大きく,耐力が向上してい (2) 鉄筋の間隔を狭めると保有水平耐力は飛躍的に上昇す る.これは,軸方向鉄筋の本数が増えたことで変形しにくく ることがわかった.耐力の上昇に着目すれば,鉄筋をよ なり,耐力と剛性が大きくなったからである. り密に配置することが有効である.ただし耐震設計では, つぎに,model 2 と model 3 を比較する.model 3 は,model 強度と変形性能のバランスが重要で,最もバランスの良 2 ほどの強度は保有しないが,その分,変形性能に優れてい い配筋をする必要がある. ることが分かる.かつてはできるだけ構造物が壊れないよう に堅くするという思想であった.それに対し,近年ではある 参考文献 程度の変形を許容し,エネルギーの吸収により,耐震性能を 1) 日本道路協会編:道路橋示方書・同解説 V 耐震設計編, 丸善,1980. 確保するという思想に変化しつつある.すなわち近年の設計 2) 日本道路協会編:道路橋示方書・同解説 V 耐震設計編, では保有する耐力を多少引き下げても,水平変位の限界を大 丸善,2002. きくするという考え方が広がりつつある.この結果も,そう 3) 日本道路協会編:道路橋示方書・同解説 V 耐震設計編, いった思想の変化が表れている. 3.2 鉄筋比を変化させた場合の RC 橋脚の性能 丸善,2012. つぎに,断面の剛性の違いが RC 橋脚の強度と変形性能に 及ぼす影響を明らかにするために,model 3 の鉄筋比を種々 変化させて解析した.鉄筋比は,鉄筋の総断面積をコンクリ model 2 nA p s bd ・・・・・ 式(1) ここに,p:鉄筋比,n:鉄筋の本数,As:鉄筋の断面積,b: 橋軸直角方向のコンクリート幅,d:橋軸方向のコンクリー 水平荷重P(MN) ートの断面積で除したもので,式(1)により表される。 model 3 model 1 ト幅である.鉄筋比の変化は鉄筋間隔の変化と同意であり, ここでは,鉄筋間隔を 125mm から 95mm まで 5mm ピッチで間 隔を狭め解析した.鉄筋間隔を狭めることは鉄筋本数が増大 水平変位δ(㎜) することを意味する.鉄筋間隔を変化させた場合の model 3 図-3 RC 橋脚の水平荷重-水平変位関係 に関する水平荷重と水平変位関係を描けば図-4 を得る. 図-4 によれば,鉄筋の間隔を狭めると保有水平耐力は飛躍 的に大きくなる.これは,鉄筋本数の増加に伴う断面の剛性 125mm のモデルと 95mm のモデルを比較する.保有水平耐力に 着目すれば,およそ 1MN の荷重差が生じ,95mm モデルの方が 高い耐荷性状を有する.一方,水平限界は 125mm モデルの方 水平荷重P(MN) の上昇に起因している.しかし,剛性が上昇するため,限界 に至るまでの水平変位は小さくなる.ここで,鉄筋間隔が 100mm 105mm 110mm 115mm 基準モデル 125mm 120mm 7 6 5 4 3 2 が優れており,その差は 15mm であった.つまり,トレード 1 オフの関係にある.耐力の上昇のみに注目するのであれば, 0 鉄筋の幅をより狭くする設計は有効であるが,耐震設計では, 強度と変形性能のバランスが重要なため,最もバランスの良 い配筋をする必要がある. 95mm 0 50 100 150 200 水平変位 (mm) 水平変位δ(㎜) 図-4 鉄筋比を変化させた場合の RC 橋脚の 水平荷重-水平変位曲線 4. あとがき 本研究で得られた成果をまとめれば以下のようである. (1) RC 橋脚の鉄筋の配置を 1 段から 2 段とすれば,強度特性 および変形性能ともに上昇し,高水準の耐震性能を確保 - 2 - 250
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