IRUNIV2014/08/04 「ネオジム磁石特許切れで変貌する磁石市場 その①」 その①」 今年 7 月、ネオジム磁石の基本特許のうち米がもっていた通称 651 特許(正方晶特許)の有効期限 が切れた。従前から指摘されているようにこの 7 月以降はネオジム磁石市場は⾃由化となり、基本的 には特許に縛られることはない。しかしネオジム磁石の特許をもっている⽇⽴⾦属からすれば、⽇本 だけでも 181 件の特許をもっており必ずどこかに抵触する。基本スタンスとしてネオジム磁石は⽇⽴ ⾦属の許可なしには製造できない、という強硬姿勢は変わらない。 しかし⽇本で出している 181 件のうち 60 件はすでに特許が切れており、 専門家筋にいわせると他の特許はどれもこれも弱い。 ゆえに「今後も引き続き信越化学と TDK が高額のランニングロイヤリティを ⽇⽴⾦属に⽀払続けていくのか」がポイントだという。 また 中国では磁石メーカー7 社が 15 億円を調達し、米の弁護士を雇ったという。 そのことと関係しているのか、先ごろ東京ビッグサイトで⾏われた⼩型モーター技術展にこのうちの 1 社が出展しており、カ タログには「特許問題は大丈夫です。全く問題ありません」と明記していたという。 これは今までにない大胆なアプローチである。バックに米の辣腕弁護士を従えているからこその強気姿勢だと専門家筋はみて いる。 MQI社のMQ粉が使われ続けている背景 ネオジム磁石でも焼結とボンドの2つに大別される。 ボンド磁石メーカーおよびエンドユーザーはこれも特許絡みで MQI(マグネクエンチ社 親会社はモリコープ)の MQ 粉を使 い続けてきたのだが、7 月以降は他の安価な粉を使うこともできる。MQI もなかば覚悟していたフシはある。 というのも MQI はこれまで毎月、⼩型モーターメーカー等に組みたてたモーターを 3 個、MQI シンガポールに提出させていた。これに よって MQI がきちんと MQI の材料を使っているかをX線分析により判別するという、一種の検閲、風紀検査にも似た検査を 1 ⾏っていた。これは「モーターテストプログラム契約」というものでモーターメーカーは強制的に作ったモーターを MQ 社に 提出しなければならなかった。 しかし 7 月からMQI はモーターの提出は不要です、との通知を各社に出す。 これによってモーターメーカー、ボンド磁石メーカーもMQI は特許を盾に MQ 粉を押し付けることはない、との⾒方に変わ ったのだが、現在、HDD の主軸モーターを生産している⽇本電産やミネベアはいまだ MQ 粉を使い続けているばかりか、噂 によると⽇本電産とミネベアは大同電子、上海エプソン、成都銀河のボンド磁石 3 社に対し、MQ 粉以外は使わない、という 誓約書にサインを求めたという。 ちなみに HDD の主軸モーターを生産しているのは日本電産、ミネベア以外には三星(サムソン)しか存在しない。 ちなみにボンド磁石市場で HDD 向けは全体の 3 割を占めている。2 割は DVD、CD-ROM など光系の磁石、3 割が FAX、コ ピー機などに使われるステッピングモーター向け。 MQ 粉は確かに性能高く、品質も安定しているが価格も高い。市場には MQ 粉に近いレベルでのボンド磁石用粉は出回ってい る。業界筋は驚いている「あれほどケチな会社(⽇本電産のことと思われる)がいまだに MQ 粉を使っているとは信じがたい」 と。 従って、MQI と⽇本電産、ミネベアとはどうも契約は成⽴しているらしい。しかし三星とは未定。しかし三星に近い筋の話で は「間違いなく他の粉をテストしている」という。 先の 2 社がすんなり MQ との契約を結び、磁石メーカーにも使用義務を課していることに対し、三星のほうは静観している。 再び業界筋の話では 「三星はかつて会⻑が不正蓄財事件で逮捕されたあと、不正取引は不可という⽂化ができ、客先と一緒に食事をとることもし なくなった」という。これがヒントとなるかどうかはわからないが、MQ と先の 2 社とでは別のアンダーテーブルな契約が交 わされたのではないか、という邪推も広がっている。 また HDD の 2 大メーカーといえば米シーゲート社かウエスタンデジタル社だが、この 2 社はそもそも原料を変えることを承 認しない。このこともあり、HDD 向けのボンド磁石は当面、MQ粉から変わることはない、とみられている。しかし比較的 低性能でも OK なステッピングモーター向けのボンド磁石はすでに MQ 粉以外の安価な磁石に変わりつつあり、MQI もこの部 門では大幅な値下げを打ち出してきているという。 2 (次回に続く) (IRUNIV Yuji Tanamachi) 3
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