KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 脳機能改善薬indeloxazineの行動薬理学的作用および神経 化学的作用機序に関する研究( Abstract_要旨 ) 山口, 孝志 Kyoto University (京都大学) 1999-01-25 http://hdl.handle.net/2433/182488 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 氏 名 やま ぐち たか し 山 口 孝 志 ( 薬 学) 学位 ( 専攻分野) 博 士 学 位 記 番 号 論 薬 博 第 602 号 学 位 授 与 の 日付 平 成 1 1年 1 月 25 日 学位授 与 の要件 学 位 規 則 第 4 条 第 2項 該 当 学 位 論 文 題 目 脳 機 能 改 善薬 i ndel oxa z i neの行 動 薬 理 学 的 作 用 お よび神 経 化 学 的 作 用機 序 に関す る研 究 ( 主査) 論 文 調 査 委 員 教 授 佐 藤 公 道 論 文 教 授 赤 池 昭 紀 内 容 の 要 教 授 佐 治 英 郎 旨 脳血管障害後 に生 じる自発性低下や情緒障害な どの精神症状 は患者 の リハ ビリテーシ ョンを妨 げる要因の一つ となってお り,神経症状 の回復 を図 り知的機能の低 下を防 ぐ うえで も,その治療 は重要である。現在,様 々な脳機能改善薬 が使用 され てい るが,必ず しも満足 ゆ く臨床効果 は得 られていない。 よ り有効性 の高い治療薬 を創製す るためには,十分 な検討 がな さ れているとは言い難 い脳機能改善薬 の薬理学的性質や作用機序 をよ り明確 にす ることが有用 と考 え られ る。I nde l o xaz i neは セ ロ トニン ( 5HT)お よび ノルエ ピネ フ リン ( NE)の取 り込み阻害薬 として創製 され たが,他 の抗 うつ薬 と異 な り脳機 nde l o xaz i neの行動薬理学的作用お よ 能賦活作用 を有す ることを説 明できる十分な知見は得 られていない。 そ こで著者 は,i び神経化学的作用機序 に関す る検討 を行 った。 1.抗 うつ薬評価モデル にお けるi nde l o xaz i neの作用 5HT神経系作用薬 に対す る感受性 が低いマ ウス強制水泳試験 において,i nde l o xaz i neはami t r i pt yl i neの約 1/ 2の抗 う つ様活性 を示 した。一方, 5HT神経系作用薬 に感受性 の高い縫線核破壊 ラ ッ トを用いたム リサイ ド試験 において,i nde l o・ Ⅹaz i neはami t r i pt yl i neよ り約 3倍強い抗 うつ様活性 を示 した。 これ らの行動薬理学的デー タは,i nde l o xaz i neがami t r i pt yl i - HT神経系 に作用す ることを示唆 してい る。 neよ りも強 く 52.モ ノア ミン神経系 に対す るi nde l o xaz i neの神経化学的作用 I nvi voマイ クロダイア リシス法で測定 したラ ッ ト前頭皮質の細胞外 NEレベル に対 して,i nde l o xaz i neはami t r i pt yl i neと HTレベル に対 して,i nde l o xaz i neはami t r i pt yl i ncよ り約 1 0倍 の効力 かつ最 ほぼ同等の上昇作用 を示 したo一方,細胞外 5nv ivoにおいてi nde l o xaz i neはami t r i pt yl i ne 大効果 も大 きい顕著な上昇作用 を示 した。これ らの神経化学的データか らも,i よ りも強 く 5l HT神経系に作用す ることが確認 された。 nde l o xaz i neは,NE取 り込み部位-の [ 3 H]ni s o xe t i ne 結合 をami t r i ラッ ト脳 シナプス膜標本 を用いた結合実験 においてi pt yl i neとほぼ同等 に抑制 したが, 5HT取 り込み部位- の [ 3 H]c i t al opr am結合 をami t r i pt yl i neよ り約 2 . 6 倍 強力 に抑制 し 3 H]5l HTの 自発 的遊離 に対 しては,i nde l o xaz i neのみが顕著 た。一方, ラ ッ ト大脳皮質 シナプ トソー ムに取 り込 ませ た [ な増強作用 を示 した。 これ らの結果か らi nde l o xaz i neは, 5HTお よびNEの取 り込み阻害作用 だけでな く, 5・ HT遊離 に対 n vi voにおいてami t r i pt yl i neよ りも強い 5HT神経系 に対す る作用 を発現す るもの す る増強作用 を併せ持つ ことによ り,i と考 え られ る。 3.頭部外傷モデル にお ける受動回避反応障害に対す るi de l o xaz i neの作用 dpe r c us s i o n頭部外傷モデル にお ける受動回避反応 の障害は,i nde l o xaz i neに よって改善 された。頭部外傷モ ラッ トnui デル において前頭皮質 のアセチル コ リン ( ACh)遊離量が減少す ること,お よびi nde l o xaz i neは前頭皮質のACh遊離量 を増 大 させ るこ とが報告 され てい るこ とか ら,頭部外傷モデル にお ける受動 回避反応 の障害お よびi nde l o xaz i neの改善作用 に AChが関与す る可能性 が推察 され る。 -1 461- 4. 5HTによる前頭皮質ACh遊離の調節機構 I nvi voマイ クロダイア リシス法で測定 したラッ ト前頭皮質の細胞外 AChレベル を,i nde l o xaz i neお よび 5HT遊離薬pc hl or o amphe t ami neは上昇 させた。 これ らの作用 は脳 内 5HT量を減少 させ る処置お よび 5HT。 括抗薬の処置によ り有意 HTIA,5HTIB,5HT2A,5HT2 C お よび 5HT3 受容体の括抗薬によっては影響 を受けなかった。 に抑制 された。 しか し, 5nde l o xaz i neお よびpc hl o r o amphe t ami neの前頭皮質ACh遊離 に対す る増強作用には,内因性 5HT これ らの結果か ら,i と 5・ HT4受容体が関与す ることが示唆 され る。 nde l o xaz i neは, 5HTお よびNEの取 り込み阻害作用だけでな く 5HT遊離に対す る増強作用 を併せ持 以上の成績 よ り,i つため,前頭皮質における細胞外 5HTレベル をami t r i pt yl i neよりも著明に上昇 させ ることが示 された。また,前頭皮質の ACh遊離は 5HT。 受容体によって促進的に調節 されてお り,細胞外 5HTレベル を上昇 させ るi nde l o xaz i neは少な くとも一 HT神経系の相互作用機序 部 この調節機構 を介 してACh遊離 を増強す ることが示 された。 これ らの知見は,ACh神経系 と 5に関す る理解 を深 め, より優れた脳血管障害後遺症治療薬の創製 に重要であると考 え られ る0 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 高齢者人 口の増加 に伴い脳血管障害な どによる脳器質性疾患が増加 し,精神 ・神経症状,知的機能低下な どの後遺症が患 者 自身やその介護者 を苦 しめている。脳血管障害後に見 られ る自発性低下や情緒障害は患者の社会復帰-の リハ ビリテーシ ョ r i t yo fLi f eを保つために重要である。 これ に用い られ る脳機能改善薬 ンを妨 げる要因 ともなるので,その治療 は高いQua は部分的には臨床効果が得 られているがまだ満足い くものではない。 1 988年か ら1 998年 にかけてこの方面で臨床応用 された i nde l o xaz i ne ( I NI ) ) については比較的多 くの研究成績が報告 されたが,薬理学的性質お よび神経化学的作用機序について の知見は未詳であった。著者 は,本薬物の行動薬理学的作用お よび神経化学的作用機序 を,一部,代表的三環系抗 うつ薬 a ml t r i pt yl i ne( AMI ) と比較 しつつ,検討す ることによ り以下の ような新知見を得た。 Ⅰ.抗 うつ薬評価モデルにおけるi nde l o xaz i neの作用 I NDの抗 うつ活性 は,セ ロ トニン (5HT)神経系作用薬 に対 して感受性が比較的低いマ ウス強制水泳試験ではAMI の約 1/ 2であったが,逆に比較的高い縫線核破壊 ラッ トを用いたム リサイ ド試験では約 3倍であ り,行動薬理学的にはI NDは AMIよ りも強 く 5-HT神経系に作用す ることを示唆 している。 Ⅱ.モ ノア ミン神経系に対す るi nde l o xaz i neの神経化学的作用 I nvi voマイクロダイア リシス法において,I NDのラッ ト前頭皮質細胞外 ノルエ ピネ フ リン ( NE)量増加作用はAMIとほ ぼ同等であったが, 5-TH量増加作用はAMI よ りも約 1 0倍強 くかつ最大効果 も大 きかった。一方,ラッ ト脳膜標本 におい NDのNE取 り込み部位-の結合活性はAMIとほぼ同等であったが, 5-HT取 り込み部位-のそれは約2. 6倍であった. て,I また, ラッ ト大脳皮質 シナプ トソームに取 り込ませ た [ 3 H]5HTの 自発遊離 に対 してはI NDのみが顕著な増強作用 を示 し NDは, 5HTお よびNE取 り込み阻害作用のみな らず, 5HT遊離増強作用 をも併 た。 これ らの神経化学的データか ら,I せ持つ ことによ り,i nv i voにおいて 5HT神経系に対 してAMIよ りも強い作用 を発現す ることが考 えられ る。 Ⅲ.頭部外傷モデル における受動回避反応障害に対す るi nde l o xaz i neの作用 I NDは, ラッ トf lui dpe r c us s i o n頭部外傷モデル にお ける受動回避反応障害を改善 した。従来の知見をも勘案す ると, こ の作用にはアセチル コリン ( ACh)神経系の関与が推察 された。 Ⅳ. 5HTによる前頭皮質ACh遊離の調節機構 I NDは,i nvi voマイ クロダイア リシス法で測定 した ラッ ト前頭皮質の細胞外ACh量 を, 5・ HT遊離薬 として知 られ るpc hl o r o amphe t ami neと同様 に増加 させ た。 さらにこれ らの作用 は,脳 内 5HT量 を減少 させ る処置お よび 5HT4 括抗薬 の HT受容体サブタイプの括抗薬 によっては影響 されなかった。 これ ら 処置によ り有意 に抑制 された。 しか し,調べた他の 5NDの前頭皮質ACh遊離増強作用には,内因性 5HTと 5HT4 受容体が関与す ることを示唆 してい る。 の結果は,I NDは, 5HTお よびNEの取 り込み阻害作用, 5HT遊離増強作用 を併せ持つために,前頭皮質にお 以上の成績 よ り,I ける細胞外 51 HTレベル をAMIよ りも強力 に上昇 させ ること,前頭皮質のACh遊離 は 5HT4 受容体によ り促進的に調節 され てお り,細胞外 5HTレベル を顕著に上昇 させ るI NDは,少 な くとも一部 この調節機構 を介 してACh遊離 を増強す ることが -1 462- 示 され た。 これ らの知見 は,ACh神経系 と 5HT神経 系の相互作用機序 の一部 を明 らかに した ものであ り, よ り優れ た脳 血 管障害後遺症治療薬創製 のために有用 である と考 え られ る。 よって,本論文 を博 士 ( 薬学) の論文 として価値 あるもの と認 める。 年 1月 5日に論文 内容 とそれ に関連 した 口頭試 問 を行 った結果 ,合格 と認 めた。 さらに,平成 11 -1 463-
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