H25 JCM 実現可能性調査(FS) 最終報告書(概要版) 「JCM 実現可能性調査(石炭火力発電所における保温施工及び 復水器洗浄の効率改善)」 (調査実施団体:関電プラント株式会社) 調査協力機関 第3火力発電所、第4火力発電所、エネルギー省、自然環境グリーン開 発省 調査対象国・地域 モンゴル・ウランバートル 対象技術分野 省エネルギー プロジェクトの概要 ニチアス㈱の特許である「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施 工は、温室効果ガスの排出削減のみならず、大気汚染対策のコベネフイ ット効果も有し、かつ、既存保温材を撤去する必要がないため、廃棄物 の削減にも貢献する。 関電プラント㈱が開発した「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工 法」導入による復水器細管洗浄を行うことにより、作業環境の改善と効率 化が期待できる。 結果として、水使用量と排水量が 50%以上の低減、作業用ポンプ消 費電力量の低減が見込まれる。更に、異物の除去率が高いため、復水 器の真空改善により復水器の性能が回復し、タービン効率低下の抑制 にも繋がることが期待できる。 本 FS 調査では、第3火力発電所(以後、CHP-3 とする)&第4火力発 電所(以後、CHP-4 とする)に対して、調査訪問を実施し、主要設備の既 設保温材の熱診断による省エネ検討、復水器細管洗浄に係る省エネ検 討及び MRV の実現可能性などを精査し、プロジェクト実現可能性を検 討した。 JC 方法論 適格性要件 ● 「増し保温」による保温施工: 要件1: プロジェクト活動は、「増し保温工法」による火力発電所の熱・電 力供給設備の表面からの放散熱量を保温施工事業であること。 要件2: プロジェクト活動の対象は、既存熱・電力供給設備に対して適 用できること。 要件3: プロジェクトの施工方法は既存保温材(アスベストなど)を撤去せ ずに施工できる工法でありプロジェクトで使用する保温材はアス ベストが含まれていない保温材であること。 要件4: プロジェクトの保温施工は、労働安全衛生法に合致しているこ と。 要件5: プロジェクト活動で使用する保温材は、-40℃~+650℃の使 用温度域で適用できること。 <1> 要件6: プロジェクト活動で使用する保温材の熱伝導率は、以下に示す 熱伝導率であること。 平均温度 F C 75 23.9 100 37.8 200 93.3 300 149 400 204 500 260 600 316 700 371 熱伝導率 Btu・in/hr・ft2・F 0.14 0.15 0.16 0.18 0.20 0.22 0.25 0.30 W/m・K 0.021 0.022 0.023 0.025 0.029 0.032 0.036 0.043 ● 「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器洗浄作業: 要件1: リファレンス活動は、タービンユニットの運転停止中における復 水器細管洗浄を高圧放水により、行っていること。 要件2: プロジェクト活動は、全復水器細管にブラシを挿入し、洗浄ガン により高圧水でブラシを打込み、洗浄作業を行うことで、復水器 細管洗浄の効率改善を図ること。 要件3: プロジェクト参加者は、「ブラシ打込み洗浄(プロジェクト活動)工 法」と、「従来方式(リファレンス活動)」による復水器細管洗浄法を 比較して、50%以上の水使用量(排水量)の低減が図れる事を示 す信頼性のある根拠を以下のいずれかの方法で Evidence により 正当化すること。 モンゴル国の発電所での、「ブラシ打込み洗浄工法」による事 前デモンストレーション活動 日本国の発電所での実証データ デフォルト値 ● 【増し保温による保温施工】: の設定 ■当該火力発電所のボイラ効率 最も保守的な値(ボイラ効率=1.0)としている。 ■石炭の CO2 排出係数 “2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventory”に記 載されている褐炭のデフォルト値(0.101tCO2/GJ)を採用。 ■消火水ポンプ及び排水ポンプのポンプ効率 最も保守的な値(ポンプ効率=0.9)を設定。 ■消火水ポンプ及び排水ポンプの使用時の三相誘導電動機効率 最も保守的な値(電動機効率=1.0)を設定。 ● 【「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄】: ■当該火力発電所のグリッド供給電力の送電端 CO2 排出係数(当該火 力発電所の所内電力の CO2 排出係数)(EFCO2,elec-ih) 発電所の送電端電力量当たりの比率石炭消費原単位(g/kWh)及び 2006 年 IPCC の国家温室効果ガスインベントリーのガイドラインによる褐 炭の CO2 排出係数のデフォルト値(0.101tCO2/GJ)から算定している。 <2> リ フ ァ レ ン ス ● 【「増し保温による保温施工】: 排出量の算 定 現在は、熱・電力供給設備とその上を覆っている既存断熱材があり、 プロジェクトでは、その上から保温材で覆うことになる(3重構造)。 ⇒増し保温による放散熱量の低減量をデフォルト化し、デフォルト値を使 用して直接、排出削減量を求める方法である。 この定量化に当たっては、これまで、発電所で計測されてきた、蒸気等 の熱量データを基に、熱バランスが確保できる場所を見出し、放散熱量 を見極めていくことを基本とした。 本調査の結果、保温材を適用する熱・電力供給設備の中で、蒸気等 の実測熱量を基に、放射熱量の算定できるのは、主蒸気配管だけであ る。 本方法論では、主蒸気配管の保温施工部位の入口/出口の熱量の差 を基に、保温効果に伴う主蒸気配管からの放散熱量の低減量を定量化 し、低減量に相当するボイラ燃料である石炭消費量削減から排出削減 量を算定することとした。 主蒸気配管以外の5設備(ボイラ、タービン、高圧・低圧給水加熱器及 びボイラ給水配管)においては、前述の通り、主蒸気配管のような、熱損 失の実測値が得られない。 そこで、赤外線サーモグラフィによる表面温度や放射率のサンプリン グ計測法を用いて放射熱量を算定し、保温効果に伴う放散熱量の低減 化を行う。 なお、主蒸気配管以外の5設備における、保温施工による低減熱量 は設備の形状、表面の形状、規模、放散状況、周辺の環境など、全く異 なる状況であり、それぞれ、分けて定量化することとした。 ● 【「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄】: リファレンス排出量は、復水器の細管洗浄作業のリファレンス電力消 費量と当該火力発電所がグリッドへ供給している送電端電力の CO2 排 出係数により、算定される。 CHP-3&CHP-4 では、「従来方式「による復水器洗浄における水使用 量やポンプの電力消費量はモニタリングされてこなかった。また、消火水 ポンプは、別作業でも同時に使用され、復水器洗浄だけで消費した電力 量を切り分けることは困難である。 そこで、タービンユニット停止期間中において、「従来方式」と「ブラシ 打込み洗浄工法」で、細管1本当りの使用水量を計測する。この使用水 量を基に、ポンプ電力消費量は電力消費量の推計式を用い、消火ポン プと排水ポンプの追加的な電力消費量を算出し、リファレンス排出量も プロジェクト排出量もそれぞれ定量化する。 モ ニ タ リ ング ●【「増し保温」による保温施工】: 1) 保温施工後、モニタリング期間毎回、モニタリングが必要なパラメータ 手法 ー: 各熱・電力供給設備毎の保温材施工面積 [m2] <3> 施工後の主蒸気配管出口の総蒸気流量 [103 ton/y] 2) 保温施工後、1回目のモニタリング期間のみ、モニタリングが必要な パラメーター。なお、本パラメーターは、2回目のモニタリング期間以降は 固定値として取扱う。: 施工後の主蒸気配管入口/出口の年間平均エンタルピー [kJ/kg] サーモグラフィのサンプリング計測による、各熱・電力供給設備毎の保 温材施工部分の平均表面温度 [K] 施工前における、各熱・電力供給設備毎の施工予定部分の平均表面 温度 [K] 施工前の、各熱・電力供給設備毎の周辺環境温度 [K] 施工前における、サーモグラフィのサンプリング計測による、導入保温 材の放射率 [Fraction] 3) 保温施工前に、モニタリングが必要なパラメーター。なお、本パラメー ターは、クレジット期間を通じて、固定値として取扱う。: 施工前の主蒸気配管入口/出口の年間平均エンタルピー [kJ/kg] サーモグラフィのサンプリング計測による、各熱・電力供給設備毎の保 温材施工部分の平均表面温度 [K] 施工後における、各熱・電力供給設備毎の施工部分の平均表面温度 [K] 施工後の、各熱・電力供給設備毎の周辺環境温度 [K] 施工後における、サーモグラフィのサンプリング計測による、各熱・電力 供給設備毎の既存表面からの放射率 [Fraction] ● 【「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄】: 1) モニタリング期間内のタービンユニット運転停止毎に、モニタリングす るパラメーター: 当該発電所のタービン i の復水器細管洗浄作業回数 2) 1回目のモニタリング期間内のタービンユニット運転停止期間中に、モ ニタリング実施するパラメーター: プロジェクトの開始後の1回目のモニタリング期間のタービンユニット運 転停止期間中における、プロジェクト方式による復水器細管洗浄(消火 水ポンプの)による、タービンiの1回の復水器細管洗浄作業で、細管1本 当たりの使用水量 GHG 排出量及び削減量 3) タービンユニッ運転ト停止期間中に、モニタリング実施するパラメータ ー: プロジェクトの開始前のタービンユニット停止期間中における、従来方 式による復水器細管洗浄(消火水ポンプの)による、タービンiの1回の復 水器細管洗浄作業で、細管1本当たりの使用水量 ☆ 「増し保温」による保温施工: ・ボイラ・タービン主蒸気配管等の保温劣化及び不良箇所に「増し保温 (エコ・エイム工法)」で、断熱効果に優れる保温材を施工することにより、 主蒸気配管等からの放散熱量を低減させ、低減熱量に相当するボイラ 燃料(石炭)の消費量減少によりCO2排出量が削減される。 なお、今回はCHP-4については未検討である。 ☆ 「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄: ・「ブラシ打込み洗浄」工法による復水器細管洗浄により、従来の細管洗 <4> 浄に比べ、洗浄回数1回当たりの洗浄水使用量が低減すると共に、細管 洗浄効果向上により、洗浄頻度も低下することから、洗浄水量は年間50% 強の削減が見込まれ、洗浄水を供給している消火水ポンプ及び排水ポ ンプの電力消費量が減少し、CO2排出量が削減できる。 なお、今回は未検討であるが、復水器の熱交換性能向上に伴うタービン 発電設備の効率改善の可能性もある。 ・2016年~2025年の合計値としては、以下の通りである。 リ ファ レ ン ス プロジェクト排 排出削減量 排 出 量 ( 推 出量(推計) (推計) 計) CHP-3 代表ユ二ットでの 「増し保温(エ コ・エイム NA NA 22,600tCO 工法)」による保温施工 2e CHP-&CHP-4 での「ブラ シ打込み洗浄」による復 50tCO2e 20tCO2e 30tCO2e 水器細管洗浄 環境影響等 当該事業・活動は、発電所の効率改善のため、石炭使用による大気 汚染の周辺・越境影響軽減といった好影響を与えるものであり、稼働時 の環境への悪影響は特にない。なお、設備改良工事は発電所のごく一 部で、足場を組むなど程度であることから、周辺環境への影響はほとん どない。そのため、悪影響の回避のための措置は特にない。 「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工は、既存保温材等を撤 去せずに、増し保温施工をする工法であるため、労働安全衛生の確保 の観点から、既存保温材(アスベスト等)からの有害物質の飛散を回避で きる。 事業計画 1. H27年度6月: GECに下記の設備補助金事業を提案。 (1) 「増し保温(エコ・エイム工法)」での保温施工による効率改善: CHP-3の10号ボイラ/高圧7号タービン&CHP-4の3号ボイラで、 ① 保温施工(CHP-3:1637㎡、CHP-4:3582㎡) ② サーモグラフィによる熱診断(施工前・後) ③ MRVシステム実施活動支援 (2) 「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法」による復水器細管洗 浄の効率改善: CHP-3の高圧タービンの代表ユニットの復水器とCHP-4の100MW クラスのタービンユニットの復水器で、 ① 「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)」製作及納入・ ② 復水器性能に係るデータ計測 ③ CHP-3&CHP-4での、「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)」 による細管洗浄実施・ ④ 省エネルギーの検証 ⑤ MRVシステム実施活動支援 <5> ● 初期投資金額:274百万円(MRV活動支援費用含む)。 増し保温(エコ・エイム工法) 180百万円 ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法 74百万円 MRV活動支援 20百万円 ● 年間維持管理費:7百万円(主に「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装 置)」の消耗品,MRV活動支援費用)。 ※ 保温施工の年間維持費については基本的に0円。 ● 現地着工開始は平成27年7月。 ● 工期(リードタイム)は概ね8ヶ月。 ● 稼動開始時期は平成28年4月。 日本技術の導入可能性 ● 「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工: エネルギー省の局長から、「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温 施工は、CHP-3&CHP-4以外の火力発電所及び熱供給会社他一般の プラントにも水平展開が望める旨の助言を受けている。 ● 「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法」による復水器細管浄: エルデネット&ダルハン火力発電所から、この「ブラシ打込み洗浄(ら くちんガン装置)」を使用すれば復水器の細管洗浄の使用水量(排水 量)が従来方式」の細管洗浄と比べ、50%以上低減でき、且つ、細管内 の異物の完全除去が証明できれば、採用したいというニーズがある。 ホスト国における持続可能な 開発への寄与 モンゴル国の既存の発電所にパイロジェル XT10mm 保温材を用いた 「増し保温(エコ・エイム工法)」よる断熱保温施工を実施することで、既存 の設備の延命効果が図られる。 発電所が所要の能力を発揮しつつ、設備が継続的に使われることは、 社会的に追加的な費用の発生が抑えられ、モンゴル国の持続可能な開 発へ貢献する。また、モンゴル国の既存の発電所に「ブラシ打込み洗浄 (らくちんガン装置)」を導入することにより、使用水量及びポンプの消費 電力が低減され、且つ、復水器細管洗浄の作業環境の大幅な改善が見 込まれる。 <6> H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 調査名:二国間クレジット制度(JCM)実現可能性調査(FS) 「石炭火力発電所における保温施工及び復水器洗浄の効率改善」 (ホスト国:モンゴル国) 調査実施団体:関電プラント株式会社 1. 調査実施体制: 関電プラント 株式会社:調査全体の統括,資金計画,GHG 排出量・削減量の定量化の技術支援等 株式会社 数理計画:環境十全性・日本の貢献・ホスト国の持続可能な開発等の評価 一般財団法人 日本品質保証機構:MRV 体制の構築及び PDD 作成支援等 有限会社 クライメート・エキスパーツ:方法論に関する調査&PDD に係る調査等 ニチアス 株式会社:第3火力発電所(以後、CHP-3 とする)&第4火力発電所(以後、CHP-4 とする)の 主要設備の保温材の熱診断による省エネポテンシャルの検討等 EEC CO.LTD:モンゴルの国情を踏まえた技術支援 2. プロジェクトの概要: (1) プロジェクトの内容: 「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工は、温室効果ガスの排出削減のみならず、大気汚染対 策のコベネフイット効果も有し、かつ、既存保温材を撤去する必要がないため、廃棄物の削減にも貢献す る。 CHP-3&CHP-4 の配管や、ボイラドラムなど各種熱・発電供給システムにおいて、「増し保温(エコ・エイ ム工法)」を実施し、サーモグラフィで保温効果を把握することで、プラント熱効率の改善により CO2排出 削減を実現する。 CHP-3&CHP-4 の復水器の洗浄は、水洗浄+長い金属製の棒を使用して行われている。「らくちんガ ン装置」は、水洗浄とエアパージを連続して1回の工程で行うことにより、作業環境の改善と効率化が期 待できる。結果として、水使用量と排水量が 50%以上の低減、作業用ポンプ消費電力量も低減される。 更に、異物の除去率が高いため、復水器の真空改善により復水器の性能が回復し、タービン効率低 下の抑制にも繋がることが期待できる。 想定される事業・活動のカウンターパート及びオーナーは、CHP-3&CHP-4 である。本 FS 調査では、 CHP-3&CHP-4 に対して訪問調査を実施し、主要設備の既設保温材の熱診断による省エネ検討、復 水器細管洗浄に係る省エネ検討及び MRV の実施可能性などを精査し、二国間オフセット・クレジット制 度の実現可能性を検討した。 (2) ホスト国の状況: モンゴル政府が国連気候変動枠条約(UNFCCC)に提出した緩和行動(NAMAs)の第5節には、 はっきりと、既存のCHP(Combined Heat Power Plants)の効率改善が国の方針として言及されてい る。 したがつて、CHP における「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工及び「ブラシ打込み洗浄 <7> H25 JCM FS 最終報告書(概要版) (らくちんガン装置))工法」による復水器細管洗浄の両プロジェクトは、省エネルギーによるプラントの 効率改善であり、モンゴルの政策との整合性を満足している。 ● 開発途上国による適切な緩和行動(NAMAs)について モンゴルはコペンハーゲン合意の署名国になっており、2010 年 1 月に自国の開発途上国による適 切な緩和行動のリストを UNFCCC 事務局に提出した。 NAMAs には GHG 緩和策の概要が含まれており、国家能力の強化、先進技術の移転および資金調 達に関する国際的支援を得て実施されることが想定されている。 ● NAMAs submitted to UNFCCC No Sectors-Action9 1 Energy supply-Increase renewable options 2 Energy supply―Improve coal quality 3 Energy supply―Improve efficiency of heating boilers 4 Energy supply-Improve household stoves and furnaces 5 Energy supply=Improve Combined Heat Power (CHP) plants 6 Energy supply-Increase 7 Building-Increase building energy efficiency 8 Industry-Increase energy efficiency in industry 9 Transport-Use more fuel efficiency vehicles 10 Agriculture-Limit quantity & increase quality of live stock 11 Forestry-Improve forest management ,reduce emissions from deforestation and forest use of electricity for local heating in cities degradation Source:UNFCCC 3. 調査の内容及び結果 (1) JCM 方法論作成に関する調査: ① 適格性要件 【「増し保温」による保温施工】 下表は、CHP-3(高圧ユニット)における記載であるが、CHP-4 にも適用可能である。 ● 「増し保温」による保温施工: 要件1: プロジェクト活動は、「増し保温工法」による火力発電所の熱・電力供給設備の表面からの放散 熱量を保温施工事業であること。 ⇒ プロジェクト活動の内容を一般的に示しただけで、特に問題はないと考える。 要件2: プロジェクト活動の対象は、既存熱・電力供給設備に対して適用できること。 ⇒ プロジェクト活動の内容を示しただけで、特に問題はないと考える。 要件3: プロジェクトの施工方法は既存保温材(アスベストなど)を撤去せずに施工できる工法であり、プ ロジェクトで使用する保温材はアスベストが含まれていない保温材であること。 ⇒ 導入予定のエコ・エイム工法の特徴を記載しただけで問題はないと考える。 要件4: プロジェクトの保温施工は、労働安全衛生法に合致していること。 ⇒ エコ・エイム工法やパイロジェルが規制に抵触することあり得ないと考えるが、一応、モンゴル <8> H25 JCM FS 最終報告書(概要版) の労働安全衛生上の規制の確認を行う。アスベストを使った断熱材は、労働安全衛生上の規 制に抵触するなどの規制があった場合、この記述を盛り込むべきと考える。 要件5: プロジェクト活動で使用する保温材は、-40℃~+650℃の使用温度域で適用できること。 ⇒ ニチアス㈱による、スペック値を記載しており、問題はないと考える。 要件6: プロジェクト活動で使用する保温材の熱伝導率は、以下に示す熱伝導率であること。 平均温度 熱伝導率 F C Btu・in/hr・ft2・F W/m・K 75 23.9 0.14 0.021 100 37.8 0.15 0.022 200 93.3 0.16 0.023 300 149 0.18 0.025 400 204 0.20 0.029 500 260 0.22 0.032 600 316 0.25 0.036 700 371 0.30 0.043 ⇒ ニチアス㈱による、スペック値を記載しており、問題はないと考える。 ● 「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器洗浄作業: 要件1: リファレンス活動は、タービンユニットの運転停止中における復水器細管洗浄を高圧放水によ り、行っていること。 ⇒ プロジェクト活動の内容を一般的に示しただけで、特に問題はないと考える。 要件2: プロジェクト活動は、全復水器細管にブラシを挿入し、洗浄ガンにより高圧水でブラシを打込 み、洗浄作業を行うことで、復水器細管洗浄の効率改善を図ること。 ⇒ 導入予定の「らくちんガン装置」の特徴を記載しただけで、特に問題はないと考える。 要件3: プロジェクト参加者は、「ブラシ打込み洗浄(プロジェクト活動)工法」と、「従来方式(リファレンス 活動)」による復水器細管洗浄法を比較して、50%以上の水使用量(排水量)の低減が図れる事を 示す信頼性のある根拠を以下のいずれかの方法で Evidence により正当化すること。 モンゴル国の発電所での、「ブラシ打込み洗浄工法」による事前デモンストレーション活動 日本国の発電所での実証データ ⇒来年度以降、「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄作業のデモンストレーション をモンゴルの発電所で実施予定である。 また、関電プラント㈱は、日本の発電所での実証データを提供できる。 ② プロジェクト開始前の設定値 「増し保温」による保温施工及び「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄共、排出削減量の定 量化の難度は非常に高く、特に、事前設定値については、方法論をオーソライズする直前まで、正当化の 理論武装の議論が必要と考える。 ● デフォルト値の設定: 【「増し保温」による保温施工】 ■当該火力発電所のボイラ効率 最も保守的な値(ボイラ効率=1.0)としているため、正当性の説明の必要はない。 ■石炭の CO2 排出係数 “2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventory”に記載されている褐炭のデフォルト値 (0.101tCO2/GJ)を採用。 ■消化水ポンプ及び排水ポンプのポンプ効率 <9> H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 火力原子力発電技術協会が発行している”火力原子力発電必携”によると、ポンプ効率が 90%を超える ことはないとされており、最も保守的な値(ポンプ効率=0.9)を設定する。 ■消化水ポンプ及び排水ポンプの使用時の三相誘導電動機効率 最も保守的な値(電動機効率=1.0)として設定のため、正当化の必要はない。 【「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄】 ■当該火力発電所のグリッド供給電力の送電端 CO2 排出係数(当該火力発電所の所内電力の CO2 排 出係数)(EFCO2,elec-ih) 現時点では、2012 年のモンゴルのエネルギー統計(エネルギー規制庁)に掲載されている、各発電所 の送電端電力量当たりの比率石炭消費原単位(g/kWh)及び 2006 年 IPCC の国家温室効果ガスインベン トリーのガイドラインによる褐炭の CO2 排出係数のデフォルト値(0.101tCO2/GJ)から算定している。 ● 事前設定値: 【「増し保温」による保温施工】 ■保温施工実施前の主蒸気配管の出入口の平均エンタルピー 保温施工前の 1 年間において、主蒸気配管の入口及び出口の蒸気流量、温度、圧力の実測値(時間 値)を基に、蒸気流量で加重平均された平均エンタルピーを算定する。 ■保温施工実施前の主蒸気配管の出入口の平均エンタルピー 保温施工前の1年間において、主蒸気配管の出入口の蒸気流量、温度、圧力の実測値(時間値)を基 に、蒸気流量で加重平均された平均エンタルピーを算定する。 ■保温材施工前における、各熱・電力供給設備の施工予定部分の平均表面温度及び放射率 これらのパラメーターは、保温施工前に 1 回、赤外線サーモグラフィと熱電対を使って、サンプリング計 測を行う。 また、放射率については、各熱・電力供給設備の既存表面の放射率はほぼ 0.9 で、変動は少ない。排 出削減量の算定における保守性を考慮し、主蒸気配管では 0.01 高く、他の熱・電力供給設備では、0.01 低く設定する。 ■保温材施工前における、各熱・電力供給設備周辺の環境温度 モンゴルは、年間を通じて外気温の差が非常に大きく、発電所内の建屋内の温度に影響が大きい。、 各熱・電力供給設備周辺の環境温度は、保温施工前の数カ月の間で数回、季節変動や外気温を考慮 して、温度計により計測を行う。(外気温は、ウランバートルの気象局データの利用を想定している) 現時点では、排出削減量の保守性を担保するため、主蒸気配管では、外気温の年平均気温時の環境 温度から 0.5℃低く見積もり、それ以外の 5 設備では、外気温の年平均気温時の環境温度から 0.5 高く見 積もることとする。 ■主蒸気配管からの対流による表面熱伝導率 熱・電力供給設備は、全て発電所の屋内にあるため、室内における値を設定する。現時点では、保守 性を考慮し、垂直配管の最大値(6.0 W/m2/K)が選定している。 【「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器洗浄】 ■タビン i の 1 回の復水器洗浄作業におけるリファレンス使用水量 プロジェクトの開始前のタービンユニット停止期間中において、「従来方式」による復水器細管洗浄(消 < 10 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 火水ポンプの)水使用量を積算流量計により、特定することにする。 当該発電所の異なるタイプのタービン毎に、少なくとも 5 本の細管の洗浄水量を積算流量計で計測を行 い、(保守性の観点から)この最小値をタービン i の 1 本当たりの使用水量として、プロジェクト開始前に事 前に固定値として設定する。 ■消化水ポンプの全揚程及び排水ポンプの全揚程 ポンプの全揚程には、吐出圧力と吸込圧力の総計である。吐出圧力に関しては、ネームプレート値が確 保できるが、吸込圧力の保守性を確保した推計が難しいため、吸込圧力は考慮しないこととし、全揚程の 事前設定値として、保守性を担保する。 ■タビン i の復水器の水室数及び復水器の 1 水室当たりの細管数 当該火力発電所の設備仕様やネームプレートで設定するパラメーターである。 ③ 排出削減量の算定(リファレンス排出量・プロジェクト排出量の算定) 【「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工】 排出削減量の算定式は以下の通りである。 ERy= ERmpd,y+ERboiler,y+ ERturbine,y y+ ERhpfwh,y+ ERlpfwh,y+ ERbfwp,y ERmsp,y=QSAVmsp,y,/boiler*EFCO2,coal QSAVmsp,y,=FSmsp-out,y*(hAVEmsp-in,BWhAVEmsp-out,BWhAVEmsp-in,AW+hAVEmsp-out,AW) ERboier,y=SHREcsvboiler*AHEboiler,y*EFCO2,coal*10-6*8760/3.6 ERturbine,y=SHREcsvturbine*AHEturbine,y /boiler*EFCO2,coal*10-6 l*10-6*8760/3.6 ERhpfwh,y=SHREcsvhpwsh*AHEhpfwh,y*EFCO2,coal*10-6*8760/3.6 ERlpfwh,y=SHREcsvlpwsh*AHElpfwh,y*EFCO2,coal*10-6*8760/3.6 ERbfwp,y=SHREcsvbfwp*AHEbfwp,y*EFCO2,coal*10-6*8760/3.6 ERy ERmsp,y ERboiler,y ERturbine,y ERhpfwh,y ERlpfwp,y ERbfwp,y QSAVmsp,y FSmsp-out,y y 年における、排出削減量 y 年における、主蒸気配管の保温強化による排出削減量 y 年における、ボイラの保温強化による排出削減量 y 年における、タービンの保温強化による排出削減量 y 年における、高圧給水加熱器の保温強化による排出削減量 y 年における、低圧給水加熱器の保温強化による排出削減量 y 年における、ボイラ給水配管の保温強化による排出削減量 y 年における、保温強化により節約される主蒸気配管中の過熱蒸気熱量 y 年における、主蒸気配管出口の過熱蒸気の総質量流量 hAVEmsp-in,AW 施工後、1 年間における、主蒸気配管入口の、過熱蒸気の(過熱蒸気流量 による)加重平均質量エンタルピー 施工後、1 年間における、主蒸気配管出口の、過熱蒸気の(過熱蒸気流量 による)加重平均質量エンタルピー 施工前、1 年間における、主蒸気配管入口の、過熱蒸気の(過熱蒸気流量 による)加重平均質量エンタルピー 施工前、1 年間における、主蒸気配管出口の、過熱蒸気の(過熱蒸気流量 による)加重平均質量エンタルピー hAVEmsp-out,AW hAVEmsp-in,BW hAVEmsp-out,BW < 11 > tCO2/y tCO2/y tCO2/y tCO2/y tCO2/y tCO2/y tCO2/y GJ/y 103 ton/y kJ/kg kJ/kg kJ/kg kJ/kg H25 JCM FS 最終報告書(概要版) SHREmesmsp SHREcsvboiler SHREcsvturbine SHREcsvhpfwh SHREcsvlpfwh SHREcsvbfwp AHEmsp,y AHEboiler,y AHEturbine,y AHEhpwsh,y AHElpwsh,y AHEbfwp,y boiler EFCO2,coal (蒸気熱量の実測ベースの)保温強化による、主蒸気配管の単位施工面積 当たりの保温効果 (保守的に算定される)保温強化による、タービンの単位施工面積当たりの 保温効果 (保守的に算定される)保温強化による、ボイラの単位施工面積当たりの保 温効果 (保守的に算定される)保温強化による、高圧給水加熱器の単位施工面積 当たりの保温効果 (保守的に算定される)保温強化による、低圧給水加熱器の単位施工面積 当たりの保温効果 (保守的に算定される)保温強化による、ボイラ給水配管の単位施工面積 当たりの保温効果 y 年における、プロジェクトによる、主蒸気配管の施工面積 y 年における、プロジェクトによる、ボイラの施工面積 y 年における、プロジェクトによる、タービンの施工面積 y 年における、プロジェクトによる、高圧給水加熱器の施工面積 y 年における、プロジェクトによる、低圧給水加熱器の施工面積 y 年における、プロジェクトによる、ボイラ給水配管の施工面積 当火力発電所のボイラ効率 石炭の CO2 排出係数 W/m2 W/m2 W/m2 W/m2 W/m2 W/m2 m2 m2 m2 m2 m2 m2 Fraction tCO2/GJ 現時点での排出削減量の推計値(CHP-3 高圧ユ二ット)2,206 tCO2/y である。 排出削減量の算定方法でベストなのは、過大評価の可能性を排した上で、できるだけ排出削減量を多 く見込める手法となる。しかしながら、本プロジェクト活動の削減効果を定量化するのは難度が非常に高く、 とりあえず、定量化の妥当性は、保守性を担保するということになってしまう。 本方法論の定量化手法では、以下のように、多くの保守性を担保する要素を取り入れており、妥当な定 量化手法と考えている。 デフォルト値としているボイラ効率では、最も保守的な 1.0 (実際は 0.9 未満)を採用。 事前設定値や 2 回目モニタリング期間以降の固定値と想定している、放射率や環境温度では、排出削減 量を低く算定されるように、平均的な値よりも保守的に設定している。 主蒸気配管における保温効果は、蒸気熱量の実測ベースで定量化している。一方、他の熱・電力供給 設備においては、推計値ではあるが、サーモグラフィによる放散熱量を表面放射のみ(対流放射を考慮し ていない)としており、大きく保守性を確保している。 【「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法」による復水器細管洗浄】 k REy= (ECRE,i *Ntci,y)*EFCO2,elec-ih*10-3 i 1 ECRE,i=ECfwpRE,i+ ECdwpRE,i ECfwpRE,i=ρw*g*QVcwRE,i*Hfwp / ηfwp /ηfwppip /3600 ECdwpRE,i=ρw*g*QVcwRE,i*Hdwp / ηdwp /ηdwppip /3600 k PEy= (ECPJ,i *Ntci,y)* EFCO2,elec-ih*10-3 i 1 ECPJ,i=ECfwpRE,i+ ECdwpRE,i ECfwpPJ,i=ρw*g*QVcwPJ,i*Hfwp / ηfwp /ηfwppip /3600 < 12 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) ECdwpPJ,i=ρw*g*QVcwRP,i*Hdwp / ηdwp /ηdwppip /3600 PEy ECPJ,i Ntci,y y 年における、プロジェクト排出量 tCO2/y y 年における、当該発電所のタービン i の復水器細管洗浄作業 1 回あた kWh/a りのプロジェクト消費電力量 turbine/time y 年における、当該発電所のタービン i の復水器細管洗浄作業回数 times/y QVcwRE,i 当該火力発電所の、グリッドへ供給する送電端電力の CO2 排出係数(当 該火力発電所の、所内電力の CO2 排出係数) 当該火力発電所のタビン i の 1 回の復水器洗浄作業による、消火水ポン プの(追加的な)プロジェクト電力消費量 当該火力発電所のタビン i の 1 回の復水器洗浄作業による、排水ポンプ の(追加的な)プロジェクト電力消費量 当該火力発電所のタビン i の 1 回の復水器洗浄作業による、排水ポンプ の(追加的な)リファレンス電力消費量 当該火力発電所のタビン i の 1 回の復水器洗浄作業による、排水ポンプ の(追加的な)プロジェクト電力消費量 タビン i の 1 回の復水器洗浄作業におけるリファレンス使用水量 QVcwPJ,i タビン i の 1 回の復水器洗浄作業におけるプロジェクト使用水量 Hfwp Hdwp ηfwp ηdwp ηfwppip ηdwppip ρw g 消火水ポンプの全揚程 排水ポンプの全揚程 消火水ポンプのポンプ効率 排水ポンプのポンプ効率 消火水ポンプ使用時の三相誘導電動機効率 排水ポンプ使用時の三相誘導電動機効率 水の密度 (=1.0) 重力加速度(=9.8) EFCO2,elec-ih ECfwpPJ,i ECdwpPJ,i ECdwpRE,i ECdwpPJ,i tCO2/MWh kWh/time kWh/time kWh/time kWh/time m3/a turbine/time m3/a turbine/time m m Fraction Fraction Fraction Fraction kg/L m/sec2 現時点での排出削減量の推計値は 3tCO2/y(リファレンス排出量:5tCO2/y、プロジェクト排出量: 2tCO2/y)である。ポンプの省電力効果だけで定量化したが、微小な排出削減量となっている。 (真空度が 1%改善した場合、およそ、有効熱落差(タービン効率)が 0.5%改善することが期待される。こ れは、CHP4 では 2012 年の発電端電力量が 3,328.5GWh/y なので、年間平均で真空度が仮に 1%向上 す れ ば 、 約 16 , 600MWh/y の 発 電 電 力 量 相 当 分 が 得 ら れ 、 こ れ は 、 CO2 排 出 削 減 量 で は 、 約 15,000tCO2/y に相当する。 復水器真空度の 1%向上に伴うタービン効率の改善率を厳密に見極めるには、復水器性能に係る 1 時 間平均値データ(復水器真空度、冷却水の出口/入口温度、復水器のドレン温度など)をタービン定格負 荷付近の時間データ解析する必要がある(タービン定格負荷から離れた状況では、有効熱落差に影響す る要因が真空度以外にもいくつかあるためである)。 しかし、CHP-4 や CHP-3 ではこれらの1時間平均値データが記録されていなく、本調査で検証できなか ったため、真空度の改善効果を解析することができず、現時点では排出削減量にカウントしていない。) 排出削減量の算定方法でベストなのは、過大評価の可能性を排した上で、できるだけ排出削減量を多 く見込める手法となる。しかしながら、モンゴルの火力発電所の情報の少なさ(必要なモニタリングがなされ ていない)では、とりあえず、定量化の妥当性は、保守性を担保するということになってしまう。 < 13 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) デフォルト値として設定している、消化水ポンプ及び排水ポンプのポンプ効率、消化水ポンプ及び排水 ポンプの使用時の三相誘導電動機効率では、最も保守的な値を設定している。また、事前設定値おいて も、消化水ポンプの全揚程及び排水ポンプの全揚程においても保守性が担保されており、とりあえずは、 妥当な定量化主違法と考えている。 (2) JCM プロジェクト設計書(PDD)の作成に関する調査: 【増し保温(エコ・エイム工法)】及び【ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法】による復水器細管洗浄】 に共通: 本 JCM プロジェクトのために、新たに導入が必要になるのは、表面温度や放射率を計測する赤外サー モグラフィとそのセットとなる熱電対、環境温度を計測する温度計及び復水器洗浄では、細管洗浄の使用 量を計測する、積算流量計である。これ以外は、火力発電所が計測してきた項目(主蒸気の流量、温度・ 圧力)である。 赤外線サーモグラフィとそのセットとなる熱電対は、現時点では、ニチアス㈱が所有している機器を使用 する予定であり、JIS の要求事項に基づいて、QA/QC を実施する。PDD でも記載しているが、導入予定の 計測機器は新しく、まだ、校正を実施されていないが、トレーサビリティ証明書や試験証明書を得ている。 ニチアスにおかれては、これらの機器の扱いや精度管理は手慣れており、JIS の要求事項に合致した QA/QC を実施する。 次に、CHP-3 及び CHP-4 で使用されている流量計・温度計・圧力計は、検定付きではないため、校正 が実施されている。CHP-4 は、規格度量衡庁から、校正機関としてのラボラトリー認証を取得しているため、 内部校正が実施されている。 一方、CHP-3 は校正機関ではないため、規格度量衡庁が毎年、CHP-3 の計測機器の校正を実施して いる。また、環境温度を計測する温度計及び復水器洗浄の使用量を計測する積算流量計の器種は、まだ 決まっていない。主蒸気の蒸気流量計・温度計・圧力計及び環境温度計測の温度計の QA/QC は、MNS の要求事項に基いて当該火力発電所が実施していくことになる。 検定証明書付きではない計測機器の場合、校正されても有効期限は得ることはできない。このように検 定付きではない計測機器で記録されたデータが正当化されるのは、当該モニタリング期間の後に実施され る校正の結果が良好だったことが証明されてからとなる。 当該モニタリング期間の最終日以降に実施される直後の校正の際、調整前における当該計測機器のず れが特定されるが、そのずれが、当該工業規格の要求するずれの許容レベル(計測機や規格により異な る)以内だった場合に、初めて、前に行われたモニタリング期間の記録データが正であると証明される。も し、このずれが許容レベルを超過した場合は、計測機器が故障していたものと同じ扱いになり、欠測になっ てしまう(本来であれば、既に取り換えておくべきだったということである)。 例えば、年に1回の校正を行っていても、事後校正の際、調整前のずれが、当該工業規格の許容レベ < 14 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) ルを超過してしまった場合は、当計測機器は故障(記録データは欠測)扱いとなり、もっと早く校正を行っ ておくべきだったか、早くに機器は取り換えるべきだった、ということである。このような状況に陥った場合、 記録データの Uncertainty が特定できず、排出削減量計算の保守的な補正もできない。 このように、常に、当該工業規格の許容レベルを順守できるような、頻度で校正を行う必要があり、計測 機器が古くなってくると、早めの校正の実施を行うか、計測機器を取り換える必要になる。 また計測機器の管理には、計測幅も重要である。つまり、計測値がどの程度、変動するかを見極めたう えで、変動幅が逸脱しないような、広めの計測幅(Measuring range)がオーソライズされた計測機器を適用 する必要がある。 計測機器のオーソライズされた計測幅(Measuring range)を逸脱するデータが出てきた場合には、当機 器メーカーは記録値を保障できないため、排出削減量として、保守的な対応が求められ、ケースによって は、ノーカウントとなることも留意しておく必要はある。 本プロジェクトでは、事後校正時に、調整前のずれが、MNS や JIS の許容レベルを超過しないような、計 測機器類の管理を行っていく予定である。単に省エネ技術を導入するということではなく、このような機器 管理の適正化は、発展途上にあるモンゴルにとって非常に重要なファクターである。 (3) プロジェクト実現に向けた調査: ① プロジェクト計画 ● CHP-3&CHP-4及びエネルギー省への訪問調査から、資金調達先は、モンゴル開発銀行を通しての 融資となることが想定される。 ● 平成26年1月29日:CHP-3&CHP-4 と会議を行い、議事録にサインをして、モンゴル側と日本側で合 意を確認。 A.平成26年6月に下記の実証案件組成プロジェクト実施(予定): ・CHP-3 で、「増し保温(エコ・エム工法)」による劣化部位のサンプル保温施工でのプラント効率改善及 び MRV 活動支援 ・CHP-4 で「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器効率改善及び MRV 活動支援 B.平成 27 年6月(設備補助金交付決定後)に下記の JCM 設備補助金事業プロジェクト実施(予定): ・CHP-3&CHP-4 における「増し保温(エコ・エム工法)」での保温施工及び「ブラシ打込み洗浄工法」で の復水器洗浄の効率改善及び MRV 活動支援 ※ 稼動開始は、平成28年4月(モニタリング開始時期)に行う。 ●平成 26 年7月下旬~平成 26 年11月中旬の間、CHP-3&CHP-4 には技術委員会の早期開催・協議、 また、エネルギー省には科学技術委員会開催・協議をして頂き、CHP-3&CHP-4 とは平成 26 年 12 月 中旬までに、下記について締結を行う予定である。 ・平成 26 年 11 中旬:CHP-3&CHP-4 と国際コンソーシャム締結 ・平成 26 年 12 中旬:CHP-3&CHP-4 と契約締結 < 15 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) ② MRV 体制 現地側と概ね合意した、CHP-3での「増し保温」施工に係るMRVの参加者と役割及びCHP-4での 「ブ ラシ打込み洗浄」工法による復水器細管洗浄に係るMRVの参加者と役割を、下表に示している。 ● CHP-3 での「増し保温」施工に係る MRV の参加者と役割 参加者名 First Deputy Director(Chief Engineer) 役割 総括管理者 Head of Technical of Strategy ・プロジェクトの計画、実施、モニタリング、報告の責任者 Department Technical Strategy and Monitoring ・報告書作成支援 Section ・報告のためのデータチェックとファイナライズ Production Department ・バリデーション/べリフィケーション対応 ・キーポイントの熱量、熱生成量/発電電力量のモニタリン グ Heat control and ・計測機器(流量計、圧力計、温度計、赤外線のサーモグ Automation Shop ラフィ)の管理 Mongolian Agency Standardization and Metrology for ・流量計器の校正 Joint Committee ・JCM プロジェクト登録, クレジット発行量の決定 関電プラント㈱ ・JCM プロジェクトのマネジメント ニチアス㈱ ㈱数理計画 (有)クライメート・エキスパート、 (一般財団法人)日本品質補償機構 EEC(Local consultants) ・JCM プロジェクトの施工管理のアドバイザー ・JCM プロジェクト MRV 活動支援 ・環境影響評価/利害関係者協議の手続き支援 ・報告やデータチェックの技術支援データのチェックとファ イナライズ Third Party Entity ・バリデーション/べリフィケーション対応 PDD の有効化審査、モニターリングレポート検証 ● CHP-4での 「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細管洗浄に係るMRVの参加者の役割 部署名 First Deputy Director(Chief Engineer) Head of Research & Development Department Research & Development Section 役割 総括管理者 プロジェクトの計画、実施、モニタリング、報告の責任者 ・報告書作成支援 ・報告のためのデータチェックとファイナライズ ・バリデーション/べリフィケーション対応 Production Department Joint Committee ・復水器熱負荷に係るデータ収集 JCM プロジェクト登録, クレジット発行量の決定 関電プラント㈱ ・JCM プロジェクトのマネジメント < 16 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) ㈱数理計画 (有)クライメート・エキスパート、 (一般財団法人)日本品質補償機構 EEC(Local consultants) ・JCM プロジェクト MRV 活動支援 ・環境影響評価/利害関係者協議の手続き支援 ・報告やデータチェックの技術支援データのチェックとファ イナライズ Third Party Entity ・バリデーション/べリフィケーション対応 PDD の有効化審査、モニターリングレポート検証 ③ プロジェクト許認可取得 当該プロジェクトの日本からの輸出に関する許可等に関して、下表に示している。 許可申請関係 項目 申請先 申請書類 1.製品 パイロジェル保温材(ノンアス モンゴル国税関 B/L、インボイス、原産国証明 日本国経済産業省 輸出許可書(輸出貿易管理令 ベスト製品)及び副材料 熱診断装置(サーモグラフィ) 別表第1 10-(2)、10-(4)) ブラシ打込み洗浄(らくちん モンゴル国税関 B/L、インボイス、原産国証明 モンゴル国税関 B/L、インボイス、原産国証明 ガン装置)及びブラシ(ポリエ チレン系) 無停電電源装置 ※「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工は、既設の補修工事を「モ国」の労働安全規則に準拠し て行うため、許可の取得を行う必要がないと考えるが、一応、モンゴルの労働安全衛生上の規制を確認 する。 ④ 日本の貢献 ニチアス㈱の特許である「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工は、主に、以下の点で貢献がで きる。 1) 既存設備に対して、既存保温材等を撤去せずに施工できる工法であるため、労働安全衛生の確保の 観点から既存保温材(アスベストなど)からの有害物質の飛散を回避できる。 2) シート状で施工が容易で、熟練者でなくても施工が可能であり、現地保温施工会社の人達も含め、新 技術による保温工法に対する期待が非常に高い。 3) パイロジェル XT 保温材の断熱性能としては、従来型(パーライト・シリカ・繊維保温材等)に比べて 1/2 以下の熱伝導率が確保できる。熱伝導率が高いため、厚くカバーする必要がなく、既存断熱材の上に 施工しても、断面積の膨張を回避できる。また、-40~+650℃の使用温度域で適用可能であり、モンゴ ル国のような極寒な気候の発電所への適用に適している。 関電プラント㈱が開発した特許製品「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法」の導入により、以下の < 17 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 点で貢献ができる。 1) 復水器細管洗浄作業の工期短縮が図れるため、発電ユニットの停止時間が短縮。 2) 復水器細管洗浄作業の要員数が削減でき、要員の効率的な配置が可能。 3) 異物の除去率が極めて高く復水器の真空度の改善度合が高いためタービン効率の低下の抑制が図 れる。 4) 従来法である水+長い金属棒にステンレス製のブラシによる復水器細管洗浄法に比べて 50%以上の水 使用量(廃水量)の削減が図れる。 5) 洗浄時の水の跳ね返りがなく、作業用のレインコートは不要で、作業負荷の軽減・作業効率化及びクリ ーン化が図れる。 6) ハンドガンの操作性が良く、作業者への負担軽減だけでなく、安全機能が付随しており、制御性も優れ ているため、熟練者でなくても作業が可能。 ⑤ 環境十全性の確保 当該事業・活動は、発電所の効率改善のため、石炭使用による大気汚染の周辺・越境影響軽減といっ た好影響を与えるものであり、稼働時の環境への悪影響は特にない。 なお、設備改良工事は発電所のごく一部で、足場を組むなど程度であることから、周辺環境への影 響はほとんどない。そのため、悪影響の回避のための措置は特にない。 「増し保温(エコ・エイム工法)」による保温施工は、既存保温材等を撤去せずに、増し保温施工をする 工法であるため、労働安全衛生の確保の観点から、既存保温材(アスベスト等)からの有害物質の飛散 を回避できる。 ⑥ ホスト国の持続可能な開発への寄与 モンゴル国の既存の発電所に工業分野向け柔軟性エアロジェル(パイロジェル XT10mm)保温材を用 いた「増し保温(エコ・エイム工法)」による断熱保温施工を実施することで、既存の設備の延命効果が図 られる。 発電所が所要の能力を発揮しつつ、設備が継続的に使われることは、社会的に追加的な費用の発生 が抑えられ、モンゴル国の持続可能な開発へ貢献する。なお、CHP-4 から 8 台あるボイラの内、代表 1 台 と附属配管に限定し熱効率向上を図りたい。そして、効果が判明すれば、残りのボイラ 7 台に、水平展開 したいと申し出があった。 また、モンゴル国の既存の発電所に「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法」を導入することにより、 使用水量及びポンプの消費電力が削減され、且つ、復水器細管洗浄の作業環境の大幅な改善が見込 まれる。エルデネット石炭火力発電所では、冷却水の水質が悪く、復水器細管洗浄実施後、1,2 年で復 水器の真空度が 95%程度から 85%程度に低下している。 このような状況下で、「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法」を導入すれば、明らかに発電所全 体のエネルギー効率の改善効果が期待できる。また、ダルハン石炭火力発電所から、「ブラシ打込み洗 浄(らくちんガン装置)工法」のデモンストレーションの実施を求められ、その効果が確認されれば、すぐに でも購入したい、と非常に前向きな反応を得ている。このように、「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置) 工法」」は日本の貢献が非常に見込まれる装置である。 < 18 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) ⑦ 今後の予定及び課題 <今後の予定> ● 平成26年1月29日:CHP-3&CHP-4 と会議を行い、議事録にサインをして、モンゴル側と日本側で合 意を確認済み。 ● 平成26年6月:GEC に下記の JCM 実証案件調査プロジェクトを提案。 ・ CHP-3 で、「増し保温(エコ・エム工法)」による劣化部位のサンプル保温施工でのプラント効率改善及 び MRV 活動支援。 ・ CHP-4 で「ブラシ打込み洗浄(らくちんガン装置)工法」による復水器効率改善及び MRV 活動支援。 (実施期間は約8ヶ月) ● 平成 26 年 11 中:CHP-3&CHP-4 と国際コンソーシャム締結 ● 平成 26 年 12 中:CHP-3&CHP-4 と契約締結 ● 平成 27 年 6 月(設備補助金交付決定後):GECに下記の JCM 設備補助金事業プロジェクトを提案。 ・ CHP-3&CHP-4 における「増し保温(エコ・エム工法)」での保温施工及び「ブラシ打込み洗浄(らくち んガン装置)工法」での復水器洗浄の効率改善及び MRV 活動支援(実施期間は約8ヶ月) ● 稼動開始は、平成28年4月(モニタリング開始時期)に行う。 <課題と改善策> 下表に示す主な課題と改善策(案)を提案いたします。 No. 1 課題 改善策(案) ● 表面温度の算出精度を高める: 「増し保温施工」による、劣化度の高い部 CHP-4 の現地調査の結果、熱量把握に関 位でのサンプル保温施工による実施検証を わる主要な計測器が設置されていないこと 以下の通り行いたい。 が判明したため、CHP-4 における方法論で ・CHP-3 の主蒸気配管でサンプル保温施 の GHG 削減量の算出をしていない。結果と 工を実施し、施工前・後のサーモグラフィに して、第3火力発電所の代表ユニットのみの よる表面温度測定を行い、施工部の表面温 GHG 削減量を算出している。 度の低減値及び放散熱量削減量を算出す 今回の CHP-3&CHP-4 での、赤外線サー る。 モグラフィによる表面温度や放射率のサンプ リング計測法を用いて、放射熱量を算定し、 保温効果に伴う放散熱量の定量化を試みた が、設備の形状、表面の形状。規模、放散 状況、周辺の環境条件を適切に把握するこ とができなかった。 2 ● タービン効率向上度合いの検証とリファ レンス排出量の調査: 「ブラシ打込み洗浄工法」による復水器細 管洗浄の実証案件組成調査で、データの 真空度が 1%改善した場合、およそ、有効 信頼性確保のために、1時間平均値データ 熱落差(タービン効率)が 0.5%改善すること により、「従来方式」と「ブラシ打込み洗浄工 が期待される。これは、CHP-4 では、2012 年 法」の比較検討を行い、タービン効率改善 の年間発電端電力量が 3,328.5GWh/y な 度合いの検証とリファレンス排水量の調査を < 19 > H25 JCM FS 最終報告書(概要版) ので、年間平均で、真空度が仮に 1%向上す 行う。 れば、約 16,600MWh/y の発電電力量相当 分が得られ、これは、CO2 排出削減量では、 約 15,000tCO2/y に相当する。 しかし、CHP-3&CHP-4 から入手データに より解析をおこなったが、データの信頼性が 確認出来なかったために、プラント効率向上 度合いが確認出来なかった。 < 20 >
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